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嘘つきは異世界譚の始まり 〜チート能力の無い俺が英雄となるに至るまで〜  作者: 伊達眼鏡
第三章 王国競技大会

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第三章 1話 『身体的苦痛』


 ベンザルでの一件の後、今のところ何事もなかったように普段通りの日々が続いている。変わったことといえば、可愛らしい妹弟子のような存在ができたことと……訓練の負担が増えたことくらいだ。


「ボスっ、おはよう!」


「おぉ、おはよう……って、あれ? また身長伸びたか?」


「え! ほんと? やったぁ!」


 まだミョルンがこちらへ来て1週間程しか経っていないのだが、どういうわけか普通ではあり得ない速度で身体が成長している。身長もそうだし、言わずもがな体つきも……。ちょっと前まで小学生低学年くらいだったのに、今や小学校高学年くらい。このままいくと、俺と同学年くらいの見た目になってしまうのも時間の問題だろう。

 なぜこんなことになっているのか不思議だったのだが、博識のトーナ曰く、獣人の子供は自分のボスを決めることで成長期を迎えられるそうだ。それに成長速度は、人間と比べて早いらしい。

 大抵の場合は自分の父や集団の長などをボスに据えるらしいのだが、両親が居なくて集団にも属していなかったミョルンは成長期を迎えられずにいたということらしい。そんなところに俺が現れミョルンのボスとなったことにより、今の状態へと繋がったと。


「ボスぅ〜っ」


「うぉっ!」

 

 ミョルンが慣れたようにミノルへと抱きついた。

 最初の頃は何とも思わなかったが、成長してきてからは、少し危うさを感じるようになった。ミョルンのほのかに膨らんだあそこが自分の身体に押しつけられて……いや、これ以上はダメだ。ミョルンとは一線を越えては絶対にいけない、それだけは強く言える。

 そうこうしていると、まだ少し眠そうなテオニアがトコトコと中から出てきた。


「2人ともおはよう〜っ、あっ! またミョルンちゃん大きくなってる! やっぱり子供の成長は早いねぇ」


「えへへ」


 テオニアはまるで自分の子を見るような温かい目で、ミョルンのことを見つめた……かと思えば、すぐにいやらしい目つきに変わり、当たり前のようにミョルンの耳を弄り始めた。


「うぅっ、や、やめてぇ、テオニア姉さんっ」


「え〜、そんな寂しいこと言わないでほしいなぁ」


「ッ〜」


「で、今日は何をするんです?」


 ミノルが問いかけるとテオニアは何事もなかったかのようにミョルンから離れ、こちらに振り向いた。


「いつも通りよ、ほら! 始めるわよ!」


 今までの訓練は、シリウスの剣術訓練、フレナの格闘術訓練、イングリットの魔法訓練だったが、テオニアが本部に戻ってきたことにより、ミノルの訓練項目が増えたのだ。

 テオニアとの訓練は、打ち込み訓練。俺は使えるものを全て使い、テオニアに攻撃を1回でも当てられれば良いというもの。一見単純なように思えて、とんでもない無理難題を押しつけられているのである。

 というのも、まず手加減しているとはいえ、テオニアもこちらに反撃してくる、それが中々に厳しい。そして1番辛いのがテオニアの聖紋で、彼女の聖能のせいでこちらの攻撃を全て見切られてしまう。

 他の訓練とは違い、目に見える成長がなく、先も見えないのでかなりキツイのだ。


「ミョルンちゃんはいつも通り、ちゃんと見て覚えてね?」


「うん、頑張る!」 


 ミョルンは今のところ訓練に参加することはあまりせず、基本的に俺の訓練を見ていることがほとんどだ。ロベルト曰く、訓練より先にとりあえず色々な動きを見て覚える方が大切、だそうである。


「じゃあ、いきます」


「かかってきなさい」


 ミノルは構えをとったかと思うと、すぐに木剣を抜き、素早く切りかかった。しかしテオニアはそれを余裕そうに避け、木刀の柄の部分で腹部に1発入れられた。正直めっちゃ痛い、手加減してくれていなかったら余裕で死ねるレベルだ。

 そこで俺は木刀を捨て、アッパーを打とうと拳を握った。だが足で踏ん張る前に、テオニアが腹部に足でもう1発入れ、軽々と俺のことを蹴飛ばしてみせた。


「ガハッ……!」


「ほら、もっと打ち込んできなさい?」


「なにくそっ!!」



▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



「よしっ! 今日はこのくらいでおしまい! お疲れ様〜」


 そう言って、テオニアはすぐにどこかへ行ってしまった。


「し、死ぬ……」


 散々テオニアからの攻撃を食らったミノルは、ボロボロになり地面に倒れ込んでいた。

 そんなミノルに、ミョルンは心配そうに駆け寄った。


「ボスっ! 大丈夫……? イングリット呼ぶ?」


「いや、大丈……やっぱ呼んでほしいかも……」


 ミョルンの前でくらいカッコ悪い姿は見せたくないのだが、こればっかりはもうどうしようもない。

 彼女はこの1週間の間、ひたすらボコボコにされ続ける俺を見続けても、今もなおボスと呼んでくれている。ミョルンから余程信頼を置かれているのだろう。


 しばらくすると、ミョルンがトーナを連れて戻ってきた。


「ふん、残念だったなミノル。あいにくイングリットさんは出払っていて今は本部に居ないんだ」


「マジかよ……身体中ズタボロなんだが……」


 ミノルの姿に呆れたトーナは、ため息を吐いた。


「はぁ、仕方がない。ちょっとした傷くらいは私が直してやろう」


「……なんかすまん」


「流石姐さん!」


 トーナはかがみ込み、生体魔法でミノルの傷を治していった。イングリットが治すのとは違い、表面の傷は治るため一見元通りのように思えるが、身体の中は相変わらずボロボロなのだ。

 なので、トーナの治療はあくまでも気休めにしかならない。こうしてみると、つくづくイングリットの凄さを感じる。


「ほら、治せる傷だけ魔法をかけたぞ。まったく、本当に貴様は怪我が多いな。自ら突っ込んでいくタイプの癖に、耐久力がなさすぎる」


「こればっかりは面目ない……」


「一息ついたら、訓練の続きをするぞ。イングリットさんが居ない分、いつもより激しめでいくぞ!」


「ひっ……」


 帰ってきてからは図書館から出てくる頻度も上がり、トーナも訓練に混ざってくれるようになった。

 しかしそのおかげかそのせいか、以前にも増して訓練のキツさが跳ね上がってしまった。

 相変わらず魔素回しは続けているが、それに加えて防御魔法の使いこなし訓練を最近はしている。

 どういったものかというと単純で、ひたすらトーナから放たれる魔法を防ぎ続けるというもの。それによって防御魔法の発動速度を上げ、なおかつ省エネ化を図るらしい。

 しかしこの訓練の恐ろしいところは……

 

「熱っ!!! 待っ――」


「敵は待ってくれないぞ!」


「ぎゃぁぁぁっ!!」


 100%トーナの攻撃を食らうということ。そもそもどんなに防げていても、俺が被弾するまで攻撃が止まないのだ。なので結果的にどう頑張っても、トーナの魔法を食らってしまう。

 炎に焼かれたり、電気で感電したり……拷問以外の何者でもない。そんなものをミョルンに見せてしまっても良いものなのか、そしてそれを見ているミョルンは何を思っているのか、いつも考えずにはいられない。


 ミノルがトーナの魔法を食らって叫び続けていると、本部の中からシリウスとフレナが出てきた。

 フレナはミノルたちに気がつくと、目を細め鼻をつまみながらシリウスと共に近づいていった。


「はぁ、何か焦げ臭いと思ったらミノルだったのね。見るに耐えないわ……ドーナツの食べる気が失せるからやめてほしいわねっ!」


「ははは……トーナは容赦ないね。ミノル君、大丈夫かい……って、意識が飛んでるじゃないか」


 先程よりもボロボロになったミノルは、意識を失い地面に倒れている。

 この光景に関しては、流石のミョルンも見るに耐えないのか、ミノルから距離を置き少し目を逸らしている。


「ん、気を失ったのか? まったく、防御魔法の扱いはまだまだのようだな」








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