表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/29

第二章 9話 『いけ好かないカウンセラー』


 ひとまず街を探索することにした。気持ちを切り替えるためにも、気を紛らせたいところである。


 改めて見てみても、やはり大きい都市である。王都との違いとしては、王都は道幅が狭く、区画がガタガタなのに比べ、ベンザルは道幅が広く、区画もしっかりと整備されている。まさしく商都と呼ぶにふさわしい都市である。人の往来も激しく、広く整った道路には馬車が常に行き来している。


「はぁ……、にしてもすることないな」


 最初こそ目新しく見えていたが、何処を歩いても似たような景色で見飽きてしまった。

 ひとまず、目に入った喫茶店で休むことにした。


「ご注文をどうぞ」


「コーヒーとクッキーをお願いします」


 たまにはこういう優雅な朝も良いだろう。まぁ先程の出来事のせいで、寝起きの良い気分はどこかへ行ってしまったのだが……


 コーヒーを飲みながら道を眺めていると、やはり奴隷たちがペットのように引きずられていたり、荷台に積まれ運搬されていたりする。それらを眺めていると、嫌悪感に苛まれる。だがこの世界で生きている以上、ルールに従うしかない。いくら納得できなかったとしても、そういうものだと思うしかない。この世界の普通をよそ者の俺に否定する権利はないのだ。


 コーヒーを飲み終え、会計を済ます。


「会計5000ベランです」


「……はい」


 この大陸の通貨であるベランの価値は、感覚的には日本円と変わらない。強いていうなら、日本円よりベランの方が価値が高いかなという感じである。

 しかし元の世界と違うのは、物それぞれの価値である。例えば今買ったコーヒー。そもそもコーヒー豆が大陸で栽培しづらいようで、希少価値がかなり高いらしい。なのでそこらの喫茶店のコーヒーでもかなりいい値段がするのである。


 またしばらく街を歩いていたが、こうやって暇を潰すのはもう限界である。


 特にこれ以上することも思いつかないので、広場のベンチで休むことにした。


「こうやって座ってると、こっちに来た時のことを思い出すな」


 今思えば、この世界に来てから今までずっと振り回されて続けている気がする。この世界に飛ばされて1時間足らずでロベルトに連行されたところから始まり、色々な事が考える暇も与えずに降りかかってきていた。

 そう考えると、自分の意思でやった事などあったのだろうか……いや、ない。ひたすらに周りに流されていただけだ。

 そう考えた途端に、虚しい気持ちが胸を襲った。

 俺は何がしたいんだ? くだらない英雄ごっこか? それともラノベの主人公ごっこ? 

 どうすればいいんだ、何をすればいい? この立場に甘んじて、流されるがまま生きるのか? ……もう、わからないな――――


 

「どうしたんだい? そんな暗い顔して」


「ッ!」


 隣を見ると、男が座っていた。長身でスラっとしていて藍色の髪をした、何というかいけ好かない顔をした奴だ。

 ……そんなことよりも、話しかけられるまで気がつかなかった。集中していたとはいえ、こんなに近距離に座られて気づかないわけがない。これが、敵だったら瞬殺されていただろう。訓練不足だな……まぁ、訓練などして何になるんだという話だが……


「えっと……あなたは?」


「…………通りすがりの者さ、気にしないでくれたまえ。そんなことより、どうしてそんな暗い顔しているんだい? 見た感じ君って、護国隊員だろ?」


「……まぁ、一応そうですけど」


「何か嫌なことでもあったのかい?」


「そんな顔に出てます?」


「あぁ、とんでもなく暗い顔をしているよ。どんなことがあったのか、僕に話してみてくれないか? 楽になるかもしれないよ?」


  男が優しい眼差しでこちらを見ている。まぁ、やんわりと話してみてもいいかもしれない。そうしたら少しは心の整理がつくかもしれない。


 俺は明確な表現は避けながらも、悩みを語り始めた。


「――という感じなんですけど」


「なるほど、要は周りから自分の身の丈に合わない期待をされている。そして、それは自分の本意ではないと……。それは大変だね、少し同情しちゃうな」


 男が思いの外ちゃんと話を聞いてくれたおかげで、自分の気持ちを少しは整理することができた。まぁ気持ち程度にだが……

 それにしても、せっかくの異世界に来てまでこんなことしている俺って……


「……君って、やっぱり『イセカイ』から来た人間なのかい?」


「!? わかるんで――」


 途端に強い衝撃が襲った。一瞬何が起きたのか理解できなかった。


「くっ……! 貴様、何者だっ……!」


 気がつくと、目の前でトーナが防御魔法を展開しており、その奥には先程の男がいた。

 そしてトーナの防御魔法の外周り地面が、抉りとられるようにしてなくなっている。


「君すごいね、こんなに速く反応できるなんて。護国隊の中でも上澄みの方だろう? ……なら、君も『聖紋』持ちなのかな?」


 周りにいた市民たちはパニックになり、慌ててその場から逃げ出した。

 

「トーナっ! 大丈夫か!? というか何でここに……」


「セツダ・ミノル! 貴様、人の心配をする前に自分の心配をしろ! 自分の身くらい自分で守れないのか?」


「面目ない……」


「そりゃっ!!」


 テオニアがかなりのスピードでミノルの横を突っ切り、そのまま男へ剣で攻撃を繰り出した。


「こらっ! ミノルくん? ちゃんと宿で休んでてって言ったでしょっ?」


「テオニアさんまで何でここに?」


「今はそんなこといいからっ! こいつをどうにかするよ!」


 目の前の男は、テオニアの剣による猛攻をギリギリでかわしている。いや、かわしきれずに服や髪の毛が切られている。


「っ! 流石にこのレベルを2人相手はまずいな。一旦撤退だな」


「逃がさないわよっ!」


 男が駆け出し、テオニアがその後を追った。そしてら、彼女が攻撃を繰り出そうとした瞬間、男は薄暗い光に飲み込まれて消え、攻撃は空を切った。


「はぁ……マズイのを逃しちゃったかも。気配も消えちゃってるから、かなり遠くに逃げられちゃったかもなぁ」


 そう言い、テオニアは剣を鞘にしまった。


「ミノルくん、怪我はない?」


「はい、お陰様で無傷です。というか、何でここにいるんですか? 戦兵団の方へ行ってたんじゃ……」


 護国隊の副隊長だとは言っても、そんな遠くから気配に気づいて対応できるとは思えない。トーナに関しては尚更だ。


「それはだねぇ――」


「何だ!? あれは!」


 トーナが目を丸くして、空を見上げている。

 俺もその目線を辿り空を見上げてみると――


「……何だ?」


 空一面が真っ赤に染まっていた。


前置き段階が終わり、いよいよ商都ベンザル行方不明事件編の本編に入り始めます。

ここまで読んでくれた皆様、この先の展開もブックマークを付けるなどして優しく見守って頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ