プロローグ『嘘つきの始まり』
世の中は理不尽で、どうしようもない。正直言ってクソだ。
いじめられている人を庇っても、周りや本人に感謝されることはなく、いじめの標的が自分に移り変わる。それどころか、いじめらていた奴もいじめに加担するようになる。
そんな状況で耐えて、強がっても、結局は奴らのいじめを悪化させるだけ。
それでも平然を装い、人には親切にし、他の理不尽を被っている人たちを庇い続けても、周りは冷笑、もしくは無視をし、ひたすら遠ざかっていく。
……こんなことをし続けて何になるというんだ、そのような考えが幾度も頭をよぎった。だが、そこから逃げるということだけは自分のプライドが許さなかった。
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「――おい! 待ちやがれ説田!!」
「しつけぇよ! 俺が何したってんだよ!」
「とぼけてんじゃねぇ!! ありもしねぇこと叫びやがって!!」
事の経緯を説明すると、俺はこの3人組にコンビニに行く最中に鉢合わせし、カツアゲされそうになったのだ。そこで逃げる隙を作るために、殺されるーだの、放火魔ーなどと叫んで上手いこと逃げたのだ。
しかしこれらは自衛のための嘘であり、何ら悪いことはないだろう。
「お前らに殺されそうなのは、あながち間違いじゃねぇだろ!」
俺の機転の利いた判断のお陰で、奴らは大人たちに視線に阻まれ下手なことをすることが出来なくなり、俺はその間に無事に逃げ切ることができたはずだったのだが……俺の思っていたよりも、奴らはしつこかった
「はぁはぁ――っ! くそ!!」
「ほれ行き止まりだ! 観念しやがれ!」
上手いこと撒くために咄嗟に裏路地へと入ったが、かえってそれが自分を追い詰めてしまった。
目の前は背の高いコンクリ塀であり、逃げ場は無く、どうすることもできない。絶対絶命だ。
恐る恐る振り返ると、奴らは拳を構えて激昂していた。
「てめぇ! 覚悟しやがれ!!!」
「はぁ…………またか」
拳が振りかざされるその瞬間、目をつむり、歯を噛み締めた。
「――――――?」
おかしい、何も起きない。それに日陰にいるはずなのに、急に強い日差しに肌がさらされたように感じられた。……もしかして死んだか?
目の前の状況を確かめるため、恐る恐る目を開けた。
「――ここ……どこだ?」
彼が目の前の情報を処理するのには時間がかかった。
中世ヨーロッパ風の街並み、目の前を横切るのは人間や鱗や毛皮を持つ見たことのない生き物たち。
目に映る景色は正しく、彼の持つ知識で言う『異世界』そのものであった。




