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異世界アーティシズム  作者: 凛々サイ
1章 アートの可能性
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1章 7.フシギな石に出会ってみた。

 クリスに様々な露店がある街を案内されつつ、討伐ギルドへ到着した。道は舗装されていない土の道もあるが、石畳が基本で車などはもちろん皆無だった。その変わりに馬が馬車を引き、一昔前の西洋の雰囲気がある街のようだった。


 そんな街中でネイチル・サンダリアンの顔を見つけた。私達の顔を見るや否や、にかと笑って手を振って来る。先程のいかつい甲冑姿から、こざっぱりとした麻色のシャツと細身の藍色のパンツ姿になっていた。腰のベルトからは剣を下げ、かなり軽装になっている。相変らず猫背で髪はぼさつき、顔はやつれてはいたが。


 3人で路面にある討伐ギルドという建物の中へ入ると、そこはどうやら日本で言う役所みたいな雰囲気で、中央には受付カウンターらしきものがあり、それぞれの場所で受付人が客人達の対応をしている。そのカウンターの奥では様々な人達が机に向かってタイプライターらしきものを打ち込んだり、打ち合わせをしている者達など、分担して仕事をしているようだ。受付カウンターの近くには大きな掲示板があり、A4用紙程の様々な白い紙が規則正しく貼り付けられている。その前に数人の人だかりが出来ており、腰から剣を差した者たち、長いローブ姿の者達などが真剣にその張り紙を一枚一枚吟味しているようだ。


 そしてその近くには、摩訶不思議な青白く光る石があった。壁際にある机の上に5つほど設置されており、その石に向かって皆が手をかざし、ぶつぶつと何かを呟いている。


「あの掲示板に貼ってある紙が討伐依頼書っす。それぞれに番号が振られていて、討伐依頼の理由、どんな魔物をどこで倒すのか、報酬などが記載されてるんす。そこで請け負いたい仕事を見つけて、記憶石に討伐依頼番号を知らせてエントリー完了っていう仕組みっす」


 サンダリアンが掲示板と光る石を交互に指差しながら、そう教えてくれた。


「記憶石ってなんだ?」


「やっぱり知らないんすね……。記憶石は様々な事を記憶できる不思議な石なんす。世界中の各ギルドにあって、どの情報も共有されてるんすよ。だからどの場所でも記憶として取り出す事ができる石っす。それで俺の戦士カードも見れるんすよ。実際触ってみたほうが早いっすね」


 私達3人はその光る石の前に立ち、サンダリアンがそっと手をかざした。


「ネイチル・サンダリアンの戦士カードが見たい」


 サンダリアンの発言直後に青く光る石が少し輝きを増したかと思うと、石の頭上にホログラムとしての映像が急に浮かび上がった。


「わ! すごいな! これが魔術なのか!?」


「うーん、魔術とは違うっすね。記憶を宿らせる能力を持っている石として存在していて、この石は世界の各地で発掘されてるっす。なぜこのような石があるかとか、他にどんな力が備わっているとかまだ研究の途中らしいっす。元々は一つのでかい石だった説もあるっす。なんで共鳴しあうのかはわかんないっすけど、その特性があるからこうやって世界中のギルドで記憶として共有されながら、有効に使われてるんすよ」


「そうなのか……」


 なんとも不思議な石だ。この世界にはこんな想像さえつかないようなものが存在するのか。他にもまだまだ面白いものが見れそうで期待が膨らんだ。


「サンダリアンさん、この自画像は記憶石から抽出してもらったものですか?」


 今まで戦士カードをただじーっと見つめていたクリスが急に口を開いた。すると無精ひげな猫背男は少し躊躇しながら答えた。


「……ああ、この石から読み込んでもらってる」


「ですよね……」


 なぜか肩を落とすクリス。その隣で私もホログラム上に映し出された戦士カードを見つめた。右上に表示されている画像がある。サンダリアンの顔だ。見るからに、ザ・履歴書といった姿だ。生真面目そうに真正面から写されたサンダリアンの顔は本来の姿よりも酷くやつれて見えた。


「まずは《《これ》》からだな……」


「何すか? これって」


「人は見た目から入る」


「へ……?」


 サンダリアンは目を丸くし、少しだけ首を傾げた。


「何より、第一印象が大事だってことだ。君の仕事はここから始まり、選別されているはずだ。まずはその見た目をどうにかするぞ」


 眉根を下げ戸惑うサンダリアンに、私は容赦なくその真実を告げた。

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