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異世界アーティシズム  作者: 凛々サイ
1章 アートの可能性
21/51

1章 21.新しく切り開いてみた。

「ラズユーめ!!」


「彼のやりそうなことですね……。また何かされる前にどうにか抑え込みたいところですが……」


 アルフェンが帰宅し、私が怒りを爆発させていると、サンダリアンがドアを開け、帰って来た。肩を揺らし、汗が顔中から染み出し、息も乱れている。どうやらここまで走って来たようだ。


「どうしたんすか?」


 汗をタオルでぬぐいながらきょとんとし、不思議そうな顔で私達を見つめて来るハートの剣士。


「悪いニュースと、いいニュースがある。さぁどっちが先に聞きたい?」


 私もちょっと言ってみたかった。 

 

「どっちでもいいっす!! 何があったんすか!?」 


 サンダリアンは洋画を分かっていない。


「……まずは決まったぞ、あの仕事がな!!」


「まじっすか!!」


「そして、ラズユーがおかしな行動を始めている」


「まじっすか……」 


 同じ言葉しか言ってないサンダリアン。なのに落差があり過ぎるサンダリアン。


「変な噂を流しているらしいが、気にすることはない。サンダリアン、君は引き続き鍛錬を積んでくれ。森でアルフェンの護衛をしかとするためにな……!」


「うっす!!」


 勢いよく笑顔で返事をするサンダリアンを見て、きっと今の彼ならもう折れる心配はないと私は思った。


***


「ちょっとレイさん!!」


 食材の買い物に出かけていたクリスが慌てた様子でドアを開け放ち、自宅に飛び込んできた。本日サンダリアンは不在だ。


「どうしたんだ?」


「どうしたんだじゃないですよ! 女性達に追い回されたかと思ったら、今度はめちゃくちゃ人相悪い剣士様に喧嘩売られそうになったんですから……!」


「はぁ!?」


「恐らくアルフェンさんの母親が流した情報と、ラズユーが流したあの変な噂のせいだと思います……。近くにいた女性達が急に僕の名前を尋ねてきて返答したら、次はサンダリアンさんのことをしつこく聞かれて大変だったんです! 彼の好きな女性のタイプとか……。僕にそんなこと聞かれても知らないですし困りましたよ……。あまりにも色々しつこく聞いてくるから逃げ出したんです。そしたら追いかけてきて……。慌てて逃げていたら、剣士の男の人にぶつかったんです! そこで『クリス待って~』と女性の声が届いた瞬間、『おい、金髪チビ、お前もしかして画家のクリスか~!?』と言い始めて、その男性に睨まながら『ラズユーが世話になったらしいなぁ~』と言い始めたんですよ! 剣を抜く勢いだったんですから……! それで必死に逃げてきたんです!」


 彼は青ざめた顔で一人芝居を本格的に入れつつ、必死に訴えている。

 

「そうだったのか……。無事でよかった。しかし参ったな、まさかそんなにも噂が回っているとは……」


 どうやらこの街では2つの噂が流れているみたいだ。まずはアルフェンの母が流したサンダリアンの良い情報。そして戦士カードに描かれた色の違うイケメンサンダリアンの風貌だ。幼い子を命からがら助けた素晴らしい情報と、あの肖像画がうまく結びつき、噂が肥大している気もする。しかも毎回依頼をかけていた討伐ギルド常連の貴族依頼者が、剣士ランク3位のラズユーからランク最下位剣士サンダリアンに乗り換えたとなれば、それだけでかなりの注目の的となっているはずだ。だが当の本人サンダリアンは、色味が違うイケメン肖像画のおかげで道端で誰かと出会っても顔バレはしないはずだ。それだけが救いかもしれない。


 そして一番の問題は、あのラズユーが流した酷い噂だ。このままでは仕事を取り合っているライバル剣士の間では、サンダリアンのことをよく思わない者も多く出て来るだろう。実際、先程クリスは喧嘩を売られている。しかも私とクリスがその原因を作っていることになっている。

 

 これは大変よろしくない。いやちょっと待て、これはまさしくあの絵画がもたらす、賛否両論ということではないだろうか。新しい事への挑戦はいつだって風当たりが強いものだ。それほどまでに皆が理解し難く、常識とは欠け離れているものだからだ。だが、ほとんどはそのようなものからしか新しい世界は生まれない。まだ皆には見えていない世界を切り開こうと、幾度となく戦い続けた者がいるからこそ、新たなる価値観が生まれるのだ。だからこそ、もしかするとこれは――


「クリス、私達はもしかしたら、とてつもないことをやっているのかもしれないぞ」


「え?」


 私は金髪天使の顔を見るなり、得意気に微笑んだ。


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