魔王追撃戦
3発4発、5発6発、7発8発。
懸命に逃げながら撃っても撃っても魔王は怯むことなく、猛然とこちらに突き進んでくる。
銃を改良し腕も上がり、しっかりと急所などに当てることが出来ているのけど、貫くことが出来ず……悔しいやら焦るやらで歯噛みする。
折角強くなっても魔王相手だとこれか……もっともっと前のめりになって鍛えておくべきだったか。
あれこれあれこれ考えていると、そんな俺の状態を察してか、俺のおでこ辺りに張り付き、ペシンペシンと頭を叩いてきたシェフィが声を上げてくる。
『こら! こんなことで心折れてたら先が思いやられるよ!
後悔するんじゃなくて今出来ることを模索しなきゃ……! とりあえず単発弾ばっかりじゃなくて散弾も試してみたらどうかな?』
「散弾!? いや、単発でも貫けないのに散弾じゃぁ尚更どうにもならないだろ!?」
散弾は名前の通り、いくつもの細かい弾が散って広範囲を攻撃するための弾丸で、主に命中率を上げるために使用される。
弾が小さい分だけ威力が低く、獣を狩る際に使うことは稀で、散弾でどうにかなるような小物相手なら使うこともあるらしいが、基本的には鳥を狩る際に使用するものだ。
あとはまぁ広範囲を攻撃したいとか、対複数とかの場合も使うらしいが……魔獣相手では効果的とは言えず、ましてや熊型魔獣や魔王相手になんて、通用する訳がなかった。
『確かに毛皮は貫けないかもだけど、目に当たればそれなりのダメージを与えられるはずだよ!
いくら魔王でも眼球を強化出来るとは思えないからね……! 散弾で顔狙って目を潰して、それから距離を取るなりして次の戦略を考えるとしよう!』
と、そう言ってシェフィは工房で作っておいてくれたらしい散弾を取り出して、こちらに手渡してきて……それを受け取った俺はすぐさま装填し、中折れていた猟銃を元に戻し肩に当て、体を大きくひねって銃口を後ろに向けて、魔王の顔に狙いを定める。
「なんだその醜い姿は! こっちの恵獣の美しい姿を少しは見習ったらどうだ!!」
そして声を上げる。
言葉が通じるとは思わなかったけども、それでも少しでも効果があればと思ってのそれは、ちゃんと通じたのか通じていないのか……とにかく魔王の目が見開かれ、表情が怒色に満ちた所で、散弾2連を叩き込む。
すると見事眼球に散弾が直撃したようで魔王は、
『ゴギァァァァッァア!!』
という凄まじい咆哮を上げながら瞼を閉じる……が、変わらずこちらへと猛然と向かってくる。
耳か鼻か、それ以外の何かか、とにかく何かでこちらを捉えているよう……だったが、目が見えないのはやはり不都合があるようで、時たま方向を間違えたり岩や木に頭をぶつけたりして、少しだけ距離が開く。
その間も散弾を装填してはぶっ放し、眼球の傷が治ってしまわないよう攻撃をし続け……そうしながら少しずつ距離を放して、どうにか時間を作り出そうとしていると、グラディスが急に声を上げる。
「グゥゥゥーー!」
いつもより高く、力強く、誰かに語りかけているようで……それから数度それを繰り返し、誰かとの会話のようなことを始める。
何かを話し合っているのか、それとも応えて欲しいと何度も語りかけているのか……。
毎回声の調子が違うので恐らくは会話していて……その内容を察することは出来ない。
その会話? は、かなりの時間続き……そしてそれが終わるなりグラディスは、急に進路を変えて速度を上げて、どこかへと向けて走り始める。
一体何があった? どんな会話をしていた? どこに向かっている? そんな疑問はあったけどもグラディスのすることを信頼して攻撃にだけ意識を向けて魔王が近付いてくるのを待って散弾を撃ち続ける。
そうやっているとグラディスの声だけでなく、
「グゥゥ~~~!」
「グゥグゥグゥー!」
と、別の恵獣の声も聞こえてきて……どうやらジャルアとスイネがグラディスに語りかけてきていたらしい。
恵獣はかなりの遠距離でも会話が可能で、その会話法でもって作戦会議をしていたようで、ジャルアとスイネの声がかなり近くなった所でグラディスは、ジャルア達ではなくこちらに声をかけてくる。
「グゥゥー!」
その声は魔王の目を潰せと言っているようで、俺はすかさず少し離れた所にいる魔王へと散弾を連射する。
正直適正距離ではないというか、この距離だとほとんどの散弾が散ってしまい効果的とは言えないが、それでも撃ちまくり……魔王はこれまでの経験から眼球を守ろうと瞼を強く閉じ、それが結果的に魔王の視界を潰すことに繋がる。
するとグラディスはぐぅっと力を込めた後、驚く程の勢いで跳び上がり……ユーラとサープが仕掛けたらしい『槍の茂み』を飛び越える。
何本もの槍を地面に突き立て交差させ縄などで結んでしっかりと固定し……馬防柵と言ったら良いのか、そんなものが出来上がっている。
そして瞼を閉じたままの魔王はそれに気付かず、ただ匂いか音だけを追って猛然と駆けてきて……精霊が作った普通の槍よりも強度のあるそれに物凄い勢いで突っ込む。
『ギアァァァァァァ!?』
それは悲鳴だった、しっかりと固定された槍柵に凄まじい勢いで突っ込み、その勢い全てが攻撃のエネルギーになり……槍が次々に魔王の毛皮を貫いて刺さり、そこに風切り音と共に槍が迫ってきて、追撃とばかりに魔王の体に突き刺さる。
「よぉぉぉし! まさかミミズ野郎みたいに上手くいくとはなぁ!!」
「よしよしよし! 上手くいったッス! 続けていくッスよ!」
そして二人の声。
声のする方へと視線をやると小高い山というか崖のようになっている所に立つユーラとサープの姿があり、二人はそこから次々と投槍器での投槍を続ける。
投槍器の力と高度とが合わさり、かなりの速度で迫ってくる槍は次々に魔王の体に突き刺さり……魔王は苦悶の声を上げながら悶えて、段々と弱っていく。
「やったか!?」
投槍を続けながらユーラの声、サープは無言のまま投槍を続けていて、俺の頭の上へと移動したシェフィがそれを受け、
『あ~、言っちゃった』
なんて声を上げる。
直後、魔王がむくりと起き上がり、怒り心頭……いや、今までも怒り狂っていたのだが、更に怒りに全身を染めて、そのおぞましく歪み動く体毛全てを逆立ててこちらに突進してくる。
すかさず散弾2連射。
だけども止まらず怯まず駆けてきて、グラディスがすぐさま駆け出し、魔王から距離を取ろうとする。
「ヴィトー、こっちだ!」
「こっちっす! 崖を駆け上がってくるッス!」
その声を受けてグラディスはユーラ達の足元の崖へとまっすぐに駆けていって……崖へと跳び込み、崖にあるちょっとした出っ張りを蹴り上がって、まるで断崖絶壁のヤギのように崖を登っていく。
そうしてユーラ達の下へとたどり着くと、魔王はいかりのままに崖に突進してきて……そして止まることも崖を駆け上がることもなく、崖へと突っ込み凄まじい衝撃音を周囲に響かせるのだった。
お読み頂きありがとうございました
次回決戦となります






