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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第三章

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手綱と洞窟サウナ


 改良された銃の性能の確認が終わったなら、お次は実際に使っての鍛錬だ。


 見学者であるアーリヒは族長としての仕事のために村に帰り、三精霊はまだまだ浄化の仕事があると去っていき……そして俺は厩舎に向かい、グラディスとグスタフの世話をしていく。


 いきなり鞍を乗せての鍛錬というのは流石にアレなのでまずは世話、それから食事をさせて……食後の消化休憩をさせて、それからようやく鍛錬という訳だ。


 という訳でブラッシングや蹄の様子の確認を終えたら餌場に向かい、焦らせることなくゆっくりと食事をしてもらう。


 そうして母子の食事の様子を見ていると、ちょっとした違和感があり、一体何の違和感だと気をつけて母子の様子を見てみると……グスタフの体が大きくなっていることに気付く。


 以前はグラディスの足と足の間に、簡単に潜り込めるような大きさだったのだが、今は少しかがまないと入れない大きさで……よくよく考えてみると食事量も増えているような気がする。


 ちょっとだけ顔も凛々しくなっているようで……グスタフも少しずつ大人になっているようだ。


 いつかはグラディスと一緒に狩りに出ることもあるのだろうけど……それはまだまだ先の話になるだろうなぁ。


 最低でも角が大きくなってからだろうし……レーダーのような役割までする角が小さい間は、危ない真似をさせる訳にはいかないだろう。


「ぐぅ~~」


 そんなことを考えていると、グスタフがそんな声を上げてくる。


 それは何かを要求している時の声で……撫でて欲しいのかと首を撫でてやるが、どうやら違うようでふるふると首を振って手を振り払ってくる。


「うーん……シェフィがいるとすぐに分かるんだけど……」


 と、俺がそう言うとグスタフは、


「ぐぅー!」


 と、声を上げてから元気いっぱい周囲を駆け回り始める。


 駆けて駆けて頭を下げて、邪魔な雪を集めておいた雪の山に頭突きをしたりして……その様子からするに恐らく……、


「あー、鍛錬についてきたいのか?

 ……今日は危ない所にいかないから、グラディスが良いなら構わないけど、たくさん走るから疲れるし、大変だぞ?」


 ということなのだろうと、そんな声を投げかけるとグスタフはそれそれ、それで合っているとでも言いたげな良い顔をしてから、大変なのは分かっているとばかりに何度も頷く。


 それからグラディスの方を見ると、優雅に雪の上に座っていたグラディスは、問題ないとばかりにゆっくりと頷いて……グスタフの同行が決定となる。


「なら鍛錬の時まではしっかり休んでおくように。

 その前に体力を消費したら、ついていけなくなっちゃうぞ」


 そう言うとグスタフは分かったと頷き……それからグラディスの下に向かい、グラディスに寄り添うように腰を下ろし、グラディスに体を預ける。


 母に甘えているし頼っているし、まだまだ大人とは言えない態度だったが……まぁ、うん、今回の鍛錬や様々な経験を糧に少しずつ成長してくれたらそれで良いのだろう。


 


 と、言う訳で休憩が終わったなら鞍など装備をグラディスに装備させ……一応グスタフにも簡単な、マントのようなものを装備させ、それからシェフィに預けず持っておいた銃を手にグラディスに跨り……すっかりと安全になった北の一帯へと駆けていく。


 全力ではなく程々の……グスタフがついて来られる程度の速さで駆けさせ、その間に銃を構えたり、銃剣があるつもりで突く練習をしたり、手綱を操りながら片腕で銃を撃つ練習をしたり。


 その中で手綱を咥えてみたらどうだろう? ということに気付き、試しにやってみた所、まぁまぁ悪くない操作性であることが判明し……それからは手綱を咥えながら駆けさせ、銃を構える練習を始めた。


 しっかり歯を噛み締め、手綱の操作も疎かにせず、それでいてしっかり前を向いて視野を広く持ち、両手で構えた銃の銃口を目標に向ける。


 それはかなり難しく、まだまだ練習が必要なことではあったが、可能性を感じるものであり……相応の練習を積んだなら実践でも使えるかもしれない。


 これが上手く出来るのなら片手で銃、片手で盾、口で手綱という強引な戦い方も可能になるはずで……うん、練習する価値はあるのだろう。


 と、言う訳で手綱を咥えたまま……しっかりグスタフが追いかけてきているかに気を使いながらグラディスを駆けさせていると……北の一帯を流れている川、いつも水風呂として使っている湖に水を注ぎ込んでいる結構な大きさの川の側で何かをしている村人達の姿が視界に入り込む。


 川の側の……岩山で何かをしているようで……岩山にある洞窟に何かを運び込んでいるようだ。


 そこにはジュド爺の姿もあり……俺が手綱を咥えている姿を見たジュド爺は、どこか感心した様子で顎を撫でてから……洞窟での作業を監督するためかそちらに意識を戻す。


 一体何をしているのだろうか?


 そんなことが気になったのとグスタフが疲れ始めているのもあって俺は、ジュド爺達の側で足を止めて……頑張ってくれたグラディスとグスタフのことを撫でて労りながら、ジュド爺に声をかける。


「洞窟で何をしているんですか?」


「あん? 以前にも話しただろ? サウナだよ、サウナ。

 開拓は魔物を倒し浄化し、罠や鳴子を仕掛けて安全性を確保し……そして拠点としてサウナを作ったら完了だ。

 ここに洞窟サウナを作って、今後の活動拠点にするんだよ」


「ああ……なるほど。

 ここにサウナがあればここで寝泊まりして体を休めさせることも出来ますからねぇ」


「春になったらこの先に村を移すことになるだろうし、その時の中継地としても役に立ってくれるだろうさ。

 と、言うわけでこれからしばらくは洞窟サウナを作るのがワシの仕事だな」


「なるほど……」


 と、そう言って俺はグラディス達のことをこれでもかと撫で回しながら考え込む。


 洞窟サウナ……確か以前にも聞いたかなり乱暴なサウナだったか。


 洞窟の中に薪を積み上げて、これでもかと積み上げてから着火し、入口を閉じる。


 薪が燃え尽きたら入口を開いて、中に水をたっぷりと染み込ませた毛皮などを投げ込み、その蒸気でサウナを作り上げる。


 そんな乱暴な方法だから温度も乱暴で……普通のサウナが90~100℃のところを、洞窟サウナはそれ以上の……シェフィによると大体150~160℃にしてしまうらしい。


 そんな高温だと当然肌が火傷したりと大変なので、体を守るためにローブなどを着用して中に入り……毛皮の上だけを歩き、決して壁などに触れないよう気をつけなければいけないらしい。


 もし仮に触れてしまったなら……火傷を負ってしまうだけでなく、それ以上の酷いことにもなってしまうんだとか。


 そんな洞窟サウナを作るにはいくつかの条件があり……まず洞窟がそれに適した広さ、環境であること、近くに水場があること、洞窟の壁や地面が熱を溜め込む性質であること、なんだそうで……この洞窟がその条件に適合している、ということなのだろうか?


 いや、それにしては少し狭いような……なんてことを考えていると、中からガツンッガツンッと何かを叩いているような音が聞こえてくる。


 ……ああ、なるほど、天然洞窟をそのまま使うのではなく、中を掘ったり改造したりして、無理矢理にでも条件を満たす訳か。


 そうやって壁や天井、床を削れば中にたまった汚れやらも一緒に削り取れるんだろうし……意外と悪くない手法なのかもしれないなぁ。


 それから俺達は作業を見守りながらの休憩をし……十分な休憩をしたならまた手綱を咥えての騎乗練習を始めるのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回は洞窟サウナやらになります。

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