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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第二章

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 食事を終えてコタを出ると、グラディスとグスタフの世話をしてくれていたアーリヒが出迎えてくれて……アーリヒからグラディス達を預かり、今日は厩舎でなく俺のコタでゆっくりしたいらしいグラディス達と共に自分のコタに向かう。


 交代でアーリヒは食事に向かい……食事が終わったならサウナに行って、それから俺のコタに来てくれるそうだ。


「ぐぅ~~~」


「ぐぅー」


 そこら辺の話を聞いたグラディスとグスタフがからかうような声を上げてきて、そんな二頭の横腹や背中をがしがしと撫でてやりながらコタへと入ったなら、焚き火に火を入れてコタの中を暖めながら頭の上に乗っていたシェフィに声をかける。


「シェフィ、防刃チョッキがお高いってことは、こう……特殊部隊とかの全身装備も当然お高くなるんだよね?」


『もっちろん、全身分の装備なんて揃えたらチョッキの5倍とか10倍とかになるんじゃないかな?』


「だよねぇ……。

 防刃チョッキは素材にも作るのにかかる手間もコストがかかりそうだし、全身装備なら尚更か……。

 じゃぁ盾はどう? 防護盾だっけ……ジェラルミンとか樹脂のやつとか、あれならチョッキよりはコストかからないイメージがあるけども?」

 

 俺のそんな問いを受けてシェフィは、ぷかりと浮かび、白いモヤを作り出してその中に入っていき……そこで誰かと会話をし始める。


『―――話きいてたー? ―――どうー?』


 シェフィの声だけが途切れ途切れ聞こえてきて……なんとなしに興味を抱いた俺は立ち上がり、モヤに耳を近付けてみるとシェフィの声がはっきりと聞こえてくる。


『樹脂の盾が欲しいんだってさー、本当にわがままな子で参っちゃうよね、そこが可愛くもあるんだけど。

 ……え? 樹脂の種類にもよる? 大きさにもよる? あー、そっかー……まぁ、ヴィトーのことだから、軍隊とかが正式に使ってるのにしたいんじゃない?

 そしてー……多分だけど恵獣に乗りながら使えるような大きさとか。

 え? それだと安くはならない? あ、そうなの? へー……あれも結構お高いものなんだ。

 ……あ、そうなんだ、それでも防刃チョッキよりは安くなるんだ? あー……そもそもあの魔獣の攻撃を受け止められる防刃チョッキって時点で普通の防刃チョッキじゃなくてお高いやつに限られるんだ、へぇー……なるほどなぁ。

 じゃぁ鎖帷子とかならどうなの? ……あ、うん、そっかぁ、普通に需要のある品じゃないから作るとしたら特注で余計にお高くなる上にそこまでの防御力はない、と。

 まー……そうだよねぇ、特にこっちで使うんじゃ凍傷の原因にもなりそうだし駄目だよねぇー……。

 うんうん、ありがとー、じゃぁヴィトーにはそう言っておくね』


 相手は一体何者なのか、相手の声が全く聞こえないままそんな風に会話が進み、それからシェフィが顔だけをニュッと白いモヤから出して、声をかけてくる。


『ヴィトー、樹脂の盾ならなんとかお安く出来るってさ。

 ポリカーボネートとかいう素材で出来てるやつで……騎乗状態でも使えるよう取っ手も工夫してくれるってさ』


「あー……うん、ありがとう。

 ……そうだな、とりあえず一つだけ作ってもらえるかな? それで良さそうなら三人分とか、将来的には村の皆の分を揃えても良いかなと思ってるんだけど……」


『りょうかーい! じゃぁ早速1個作ってみるね』


 と、そう言ってシェフィは白いモヤからポイント……例の金色の謎物体と作業台を持って出てきて、それに向けてハンマーをカンコンと叩きつけての謎作業を始める。


 ただ叩いているだけなのに何故か金色の物体が透明の樹脂……ポリカーボネート? に変化し、叩いているだけなのに形が整えられ、そうして周囲を囲う枠や、盾の中央や枠の側などにある複数の取っ手も作られていく。


『ああいう攻撃を弾くには、真っ平らじゃなくて丸みを帯びた形の方が良いらしいね。

 その方が上手く受け流してくれるらしいよ……だからちょっと丸みを帯びた感じにして、恵獣を守らなきゃだから大きめにして……うん、こんな感じかな』


 と、そんなことを言いながらシェフィがハンマーを振るうと、形が出来上がりつつあった盾が大きくなっていき……そしてドラマや映画などで見る樹脂製で透明の、丸みを帯びた大盾が完成となる。


『はい、どうぞ、とりあえずの1個目だよ』 


 なんてことを言うシェフィに「ありがとう」とお礼を言いながら盾を受け取ると、予想に反してズシリとした重さが両手に伝わってくる。


「う、うお……結構重いんだな、プラスチックみたいな見た目だから軽いものとばかり思っていたけど……。

 いや、大きさと厚さを考えたらこんなものなのかな……?

 普通なら騎乗しながら振り回せるものではないけど、精霊の加護で上がった身体能力ならどうにか……って感じかな。

 あとはグラディスがこれを持った俺を乗せても平気かどうかだけど……」


 と、盾を持ったり構えたりしながらそんなことを言うと、焚き火の側に足を畳んで座って、火の暖かさを堪能していたグラディスが立ち上がってこちらにやっていて……盾のことを頭で突いたり角で持ち上げたりして重さを確かめてから、口の端をクイッと上げて「フッ」と笑みをこぼす。


 こんな重さ余裕だと、そう言っているようで……まぁ、このくらいなら余裕なのだろう。


 10kgはないと思うが、7・8kgはありそうな重さで……それが余裕というのはなんとも頼もしい。


「よし……グラディスが平気そうなら、これをあと2個作ってもらおうかな。

 ……ユーラ達が恵獣との縁を紡げなかったとしても、普通に盾として使えるはずだし、悪くはないはず……。

 ……ああ、いや、3個か、まだポイントに余裕があるなら4個作ってもらおうかな。

 あの魔獣が村に来るなんてことは無いはずだけど、それでも念のために作っておきたいんだけど……どう?」


 じゃれているのか尚もグラディスがぐいぐいと角で盾を持ち上げてきて、それでも盾から手を離さず、落としてしまわないようコントロールしながらそんな問いを投げかけると、シェフィはその小さな手でぐっと親指を立ててのまさかのサムズアップを見せてくる。


 それからまた工房での作業が始まり……次々に盾が作られていき、追加で4個、合計5個の盾が出来上がる。


『よーし、完成!

 これでポイントはほぼ空になったからまた頑張って溜め込んでね!

 あ、それとついでにこれ作ったから……はい、精霊ポイントカード。

 残りのポイントが気になったらこれをチェックすると良いよ』


 と、そんなことを言いながらシェフィは、手のひらサイズのカードを渡してくれて……それを受け取った俺は「ありがとう」と言いながら、苦笑を浮かべる。


 そのカードには残りポイントと思われる、236という数字が書かれていたのだけど、その書き方……と言うか表示の仕方がなんとも懐かしい方法だったからだ。


 灰色の下地に黒い数字……そして隅には黒い粉が貯まっていて、恐らくその粉は砂鉄なのだろう。


 磁気を表示したい数字の形にカードに焼き付け、その磁気でもって砂鉄を吸着させ数字とする、昔懐かしいというか、今となっては知らない人が多いだろう砂鉄方式。


 まさか異世界に来てこんなものを見ることになるなんてなぁ……と、苦笑した俺は、軽くカードを振って砂鉄が数字部分に張り付く懐かしすぎる光景を特に理由もなく何度も何度も、繰り返してしまうのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回は、その後のあれこれです。

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