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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第二章

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ユーラの決意


「ぐーふぅ~」


 小さな体で力いっぱい不満の声を上げているグスタフのご機嫌を取るため、アーリヒが持ってきてくれた装備は一旦置いておいてグスタフのブラッシングをしていると、餌場にユーラがのっしのっしと大股でやってくる。


「サープはどうしたの? 一人で来るなんて珍しいじゃないか」


「サープならジュド爺となんか話してたぞ、俺がこっちに来たのはアレだ……向こうにいても暇だったのと、族長に恵獣様の話を聞いたからなんだ」


 俺がそう声をかけるとユーラは、何故だか照れた様子でそう言って、グスタフの世話を手伝ってくれる。


 世話用の道具が入った籠に手を伸ばし、道具一つ一つを手にとって吟味し……それから俺に使い方を聞いて実際に使ってみて。


 そうやって丁寧に世話を始めたユーラは、族長……村に先程の話を伝えにいったアーリヒから聞いた話についてを語り始める。


「族長から恵獣様がどうやって生まれたか聞いてよ、なんか尊敬したっつーかなぁ、もっと敬意を払う必要があるんだって改めて思ったって訳よ。

 恵獣様の世話が上手くなりゃぁ恵獣様に来てもらえるかもしれねぇし、恵獣様がいれば結婚の機会だって増えるかもしれねぇ。

 そうなったら良い事尽くめで最高だろう? だからよ、ヴィトーとグラディスとグスタフに世話の仕方を習おうかと思ってな」


 それは……まず間違いなく良いことなのだろう。


 ユーラのためにもなるし恵獣達のためにもなるし、手伝ってもらうことになる俺のためにもなる話だ。


 なんとも意外な形で良い結果に繋がったなぁと驚きながらも頷き、ユーラに世話の仕方を……と言っても俺もまだまだ始めたばかりの初心者なのだけど、それでも精一杯教えて、二人でブラッシングや角や蹄の手入れをしていく。


 それらが終わって一息ついたなら今度は道具の手入れをして……と、そこでユーラが手にした角磨きのための鉄ヤスリを武器のように振り回して声を上げてくる。


「そういやヴィトー、銃の先端に槍穂をつけるって話についてなんだがよ。

 確かに槍みたいな形状だし悪くないんだけど、それよりも使い方をもうちょっと工夫してみたらどうだ?

 ヴィトーは銃をこう、遠くからぶっぱなして攻撃しようとしてるが、そうじゃなくてよ……こう、なんつうか、あの爆発を上手く牽制に使えねぇかなって思うわけよ」


 そう言ってユーラは身振り手振りで何を言わんとしているのかを説明してくれる。


「敵が近付いてきた時とか攻撃してきた時、それは一種の隙でもある訳だよ。

 攻撃のために体勢も崩れやすくなってるから、そこにまず一発ドカンと撃ち込む訳だ。

 相手の顔とか武器……魔獣なら爪とか角になるか、そこらを狙ってドカンだ。

 すると相手の体勢が崩れるだろ、そこに足払いなり押し倒すなりしてだな、相手の口の中に銃を押し込んでもう一回ドカンってのはどうだ?

 精霊様によると、魔獣が防御に使ってる魔力ってのは、受けた傷が大きいとか致命的なもの程、大きく減るもんらしいんだよ。

 分厚い毛皮を攻撃した場合と、口の中を攻撃した場合じゃぁ天地の差ってくらい消費魔力が違うらしい。

 遠くから毛皮を何度も何度も攻撃するのも手なんだろうが……口の中一発で済むならそれで良い訳だしなぁ。

 魔力で防御しても傷ができねぇってだけで衝撃は食らってるようだし、それでよろけたりもするみてぇだし、そういう使い方も悪くねぇんじゃねぇかな」


 鉄ヤスリを銃に見立てて、懸命にどうやったら良いかと見せてくるユーラ。


 銃を狙撃に使うのではなく近接武器というか、牽制武器に使うというのはまさかの発想で俺は目を丸くしてしまう。


 ……可能か不可能かで言えば、可能……なのだろう。


 そんな乱暴な使い方をすると銃が歪んだり壊れたりして暴発の危険性があるとか、自分にも爆風や衝撃でのダメージが及ぶ可能性があるとか、問題もあるのだろうけど……一つの手札としては悪くないのかもしれない。


 精霊が作った銃ということで、普通の銃とは違う作りというか、頑丈さもあるみたいだし……俺の体はそもそも精霊の愛し子ということで普通の体より頑丈な上にレベルアップまでしていて、ちょっとやそっとでは傷つかない作りになっている。


 ならば……と、俺もユーラの真似をして、銃での牽制をするつもりで手にしたヤスリと体を動かしていく。


 すると俺達の頭上でふよふよ浮かんで昼寝をしていたらしいシェフィが目を覚まし、こちらに声をかけてくる。


『銃剣と騎乗戦闘と、銃での牽制かぁ……今出来る戦い方としては悪くないかもね。

 そしてそうやって色々工夫しようとしてくれているヴィトーに、ボク達からのご褒美だよ。

 精霊の皆と話し合って開拓に成功した場合でもポイントをあげることにしたよ。

 村の北部の更に北……サウナ用の川と湖のある谷間の一帯、ここの魔獣を殲滅して浄化して、鳴子なんかを仕掛けたら開拓完了と見なし5万ポイントをあげよう!

 そのポイントがあれば新しい銃を手に入れたり銃を改良したりも出来るようになるし、もっと生活が豊かにもなるはずさ!

 ポイントのため、皆のため、頑張って開拓してこーか!』

 

「ご、5万!?

 また一気に増えるなぁ……それだけあったら色々な物を作れそうだねぇ」


「お、おお、そりゃぁすげぇな。

 5万ったらアレだろ……あのカンポーとかいう薬が山のように作れる訳だろ? それを売っても良い金になんだろうし、塩や砂糖を売る側にもなれるかもしれねぇ。

 開拓しまくってもっと土地を広げたらもっとポイントがもらえるのか? たまんねぇなぁ!」


 俺とユーラがそう返すとシェフィはにっこりと微笑んで言葉を返してくる。


『もちろんあげるけど、変に焦って開拓するのも危険だから一箇所一箇所、丁寧にやってくようにね。

 とりあえずは今指定した北を目指そうか! あの辺りには結構な数の恵獣がいるみたいなんだけど、魔獣の動きが活発で追い詰められてるんだよね。

 だから恵獣も助けてあげて! もちろん助け出したら更にポイントあげちゃうよ!』


 その言葉を受けてユーラはぐっと拳を握って目を輝かせる。


 土地も欲しい、ポイントも欲しい、恵獣も欲しい、お嫁さんも欲しい。


 その全てが北の開拓の一手で手に入るとしってたまらなくなってしまったらしい。


「よぉぉぉぉし! 疲れが癒えたらすぐに行くぞ! 北だ! 北の魔獣共を殲滅だ!」


 そんな声を張り上げたユーラは全身から湯気を上げながらいきり立ち……その勢いのまま村の方へと駆けていってしまうのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回は開拓に向けてのあれこれです。

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