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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第二章

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開拓


 俺がメモをしていると、それを見て何か思うところでもあったのか、ジュド爺も荷物の中に入っていたらしい樹皮に、炭でもって何かを描き始める。


 文字ではない、シャミ・ノーマ族に文字の文化はなく……何らかの絵図であるらしい。


 そちらも気になるけども、今聞いた話も大事だからとメモを進めて……メモが終わると同時にジュド爺も何かを描き終える。


「魔獣を狩らなければならない理由を話はしたが……ワシらだけでこの世界全ての魔獣を狩ることは出来ん。

 まずはこの辺り……ワシらが住まう北限の地を浄化し、ワシらや恵獣様が安心して暮らせる土地として開拓していく必要があり……そうやって一族を豊かにし、一族の数が増えていけばいつかは世界全ての魔獣を狩れるようになるかもしれん。

 つー訳でお前らに与えられた役割はその先駆けだ、シャミ・ノーマ族が大きくなるための第一歩だ。

 今は世界なんかに目を向けてねぇで、足元を見とけってこったな。

ほれ、お前らが浄化すべきこの辺りの地図を描いてやったぞ……よく確認しておけ」


 と、そう言ってジュド爺は樹皮を地面に敷いた布の上に広げて見せて……なんともざっくりとした感じの、横長の台形のような図が視界に入り込む。


 それは俺の知っている前世の地図のようなものではなく、絵心も何もない人が書いた適当な絵図のようで、なんとも地形を把握し辛いが……その図の中に今の村の位置と池の位置が追記されると、なんとなく位置関係を把握することが出来る。


 俺達の村があるのは台形の中央からやや右辺りの南端、池はそこから左にあり……冬が終わったなら移動する先、北の奥地と言われる夏営地は、意外にも台形の中央辺りにあるようだ。


「今の所、浄化が済んでいると言えるのは今の村とこっちの……村の北側の一帯になる。

 今までは浄化が済んでいても魔物共が入り込んできていたが、今は鳴子やら罠やらがあるからな……侵入はほぼねぇし、あったとしてもすぐに気付くことが出来る。

 ってな訳でここらは完全に浄化出来ていると考えて良いだろう。

 他の地域はそれなりに汚染されちまってるが……沼地程の汚染じゃねぇからそこまでの変化はねぇ。

 とは言えいつまでも放置は出来ねぇ……いつかは浄化と開拓に向かう必要がある。

 ……ちなみにだが、ワシらの村の東西には別の村があり……そこには別のノーマ族が暮らしている。

 まぁ、わざわざ言わんでもお前らも知ってることだと思うがな」


 と、そう言ってジュド爺は台形の左右に丸を描き、多分ここらだとそんなことを言う。


 そこに済んでいる人達は、元々は同じシャミ・ノーマ族だったらしい。


 だけども方針の違いでとか、流行り病などで全滅するの避けるためだとか、そんな理由で別れて暮らすことになり……今ではそれぞれ勝手な一族名を名乗り、それぞれ好きなように暮らしているらしい。


「もしかしたら連中の住んでいる地域も浄化されてるかもしれねぇが……されてねぇかもしれねぇ。

 情報がない以上は判断できねぇからな……汚染されているものと考える。

 ……で、これからのお前らの方針だが、東西にはその連中が、南には沼地の連中がいるからな、そこらに手出しすると変に揉める可能性がある。

 つー訳でまずは北に向かって浄化していくべきだろう、これからは気温が上がる季節で……北に向かうのもそう辛くはねぇだろうからな」


 と、そう言ってジュド爺は台形の上へとふらふらとした線を描いていく。


 それはジュド爺が直線を描けないとかそういうことではなく、ジュド爺なりに把握している地形を加味した上で、こんな感じで開拓していけと、そう示しているらしい。


が……うん、元々の図が地図らしからぬ絵図な上に、縮尺も分からないのと高低差なんかも分からないのもあって、参考にならないというか……すべきではないのだろうなぁ。


 実際に自分達で足を運び、地図を作り……じっくりと浄化と開拓を進めていくしかないのだろう。


「……ふと思ったんですが、開拓って具体的にどんな作業をするんですか?

 シャミ・ノーマ族は遊牧をしている訳で……定住民のように家やらを建てるって訳でも、土地を切り開くって訳でもないんですよね?」


 その絵図を見ているうちに浮かんだ疑問をそう口にすると、ジュド爺とユーラとサープがぽかんとした……一体何を言っているんだこいつという顔をし、そんな三人を代表する形でユーラが口を開く。


「そりゃお前、サウナに決まってんだろ。

 サウナ用の小屋を建てるとか小屋のための場所を確保するとか、サウナに使える洞窟を見つけるとかして、目印になるようなコタや木の柱を立てたならそこら一帯は生活が可能な地域になる。

 サウナさえあればそこに村を移動出来るからなぁ……そこにサウナさえありゃぁシャミ・ノーマ族はもちろん、他のノーマ族だって村を移すはずで……そうやって村が移せる場所が多くなりゃぁ、それだけ多くの餌場が手に入る訳で、それだけ多くの恵獣様を養える。

 餌場が多ければ恵獣様だけじゃなく家畜なんかを飼えるようになって、売るもん食いもんがそれだけ増えて豊かになって、子供もどんどん増やせる訳だな。

 それと……さっきのジュド爺の話からすると、魔物侵入防止の鳴子やらも必要になるか……?

そうだな……サウナ作って魔物が侵入出来ないようにしたら、開拓完了と考えて良いだろうな」


 そう言ってユーラは、分かったか? と、そう言う代わりに鼻息をふんすと吐き出す。


 シャミ・ノーマ族が何故遊牧するのかと言えば、一箇所に村を固定してしまうと恵獣や家畜やらが一帯の餌をあっという間に食い尽くしてしまうからだ。


 だから定期的に土地の浄化をしながら村を移動させていて……その移動先が、選択肢が増えるということはつまり、それだけ多くの餌が得られるということに繋がる訳だ。


 浄化と開拓は世界を救うためだけではなく、そのためのものでもあり……それが成せれば村が豊かになり、大きくなる。


 そうやって村が大きくなって、一族が増えていけばいつか世界全部を浄化出来る……かもしれず、少なくとも今よりは良い状況になるに違いない。


 そのための浄化であり開拓であり……魔獣狩りであり、そのために精霊の愛し子である俺がこの世界に生まれたって訳かぁ。


 サウナのために、サウナに入れる場所を増やすために、そうやって一族を繁栄させるために……。


 サウナのためにと考えてしまうとなんとも言えない気分になるけども……うん、皆の暮らしを豊かにするためにって言うのなら納得は出来る。


 皆の暮らしが豊かになればアーリヒも喜んでくれる訳で……それならやる気も出てくると言うものだ。


「……まぁ、うん、俺達がやるべきこと、目指すべきことは分かったよ。

 それでジュド爺、これから狩りや開拓をしていくための、何か習うべきことはあるのですか?」


 今聞いた話を頭の中で咀嚼し、しっかりと記憶し……ついでにメモを取りながらそう言うとジュド爺は、ニカッと笑って、


「そりゃぁあるとも、たくさんあるが……今のお前らに教えてもしょうがねぇことばかりだ。

だから今は実戦で狩りを学べ、魔獣を狩りまくれ。

 狩りまくって浄化を進めて開拓地を増やせたなら、森との付き合い方、虫との付き合い方、豊かな森の作り方なんかを教えてやる。

 つー訳で、ほれ、早速一体か二体魔獣を狩ってこい。

 今日中狩れなかったら、冷水にその怠けた全身を押し込んでやるからな」


 と、そんなことを言う。


 それを受けて俺達は空を見上げ……太陽の位置を確認して、残り時間がそう無いことを察して大慌てで立ち上がり、狩りに出るための支度を手早く進めていくのだった。

 


お読みいただきありがとうございました。


次回は狩り開始です。

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