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食後の

 

 食事が一段落した所で、食堂コタの屋根付近に浮かんでいたシェフィが何かをし始める。


 モヤを作り出し、工房の中に入り……そこで何かを作っているらしい。

 

 事前許可もこちらからも希望もなく、そうするのは珍しいことで……一体何を作っているやらと、首を傾げながら眺めていると、モヤの中から球体が押し出されてくる。


 それは……地球儀だった、宙に浮かぶ地球儀。


 皆はそれが何であるか分かっていないようだが……食事のためにコタに入ってきた学者のビスカは、なんとなく察したのだろう、食い入るように地球儀に描かれた地図? 大地? を見やっている。


 それは……前世の地球によく似ていた。


 細かい部分が違って、いくつかの島がなくなったり、追加されていたりするが、各大陸の大体の形は一致していた。


 まぁ、そこが一致していないと気候とかとんでもないことになってそうだし……こうやって前世と変わらない感覚で過ごせていることを思うと、一致しないほうがおかしいのだろう。


 大きさも恐らく、前世の地球と一緒なのだろう……何しろ一日が恐らく24時間で、1年が365日で……太陽系の惑星とかも恐らくは一致している。


 ただ宇宙全ての星は一致していないはずだ……夜に星空を見上げても、全然星座が一致しないというか、都会でも見ることのできるような、大きく目立つ星や夏の大三角形のような、分かりやすい星座すら見当たらないのだから。


 しかし、そんな地球儀を作ることにどんな意味が? と、更に首を傾げていると、緑色だったり茶色だったりした大陸が赤色と青色に染まっていく。


 シャミ・ノーマやヴァークが暮らしているだろう極北は青色で、大陸中央部などは赤色が多い。


 大体青色が4、赤色が6といった割合となっていて……恐らくこれは瘴気による汚染地域を赤で示しているのだろうなぁ。


「……えぇっとドイツ、イタリア、フランス辺りも真っ赤なのか。

 ……中欧と東欧は半々だけど、中央アジアにいくと青色が多め、だけど中国辺りはまた赤多めになるのか。

 ……アフリカ大陸は青が多め……アメリカも青か。

 文明圏は全部赤色になると思っていたけど、アメリカが違うのは意外……あ、そうか、まだアメリカに植民していないのか。

 そしてイギリスは意外にも青多め……こっちの世界ではあまり発展していないのかな?

 日本は……いや、なんだこれ、弓状列島じゃなくて十字列島になっているな……佐渡から本州、本州から小笠原諸島とその先にある謎の島まで陸続きって……。

 そして結構赤いなぁ。」


『あ、その謎の島はムー大陸の残骸だよ』


「ムー大陸あんの!? いや、あったの!?!?」


 俺の言葉に対しシェフィがそう返してきて、俺は思わず叫び返してしまう。


 ビスカ以外の皆はそんな俺の様子に驚きながらも、前世関連のことなんだろうと察してくれて何も言ってこない。


「いやまぁ、ムー大陸は良いや……。

 これはつまり浄化MAPってことだよね? 意外と浄化出来ていると思ったら良いのか、まだまだ残っていると思ったら良いのか……」


『正解! ヴィトーが目覚めたばかりの頃は9割は赤かったから、だいぶ良くなったんだよ、これでも。

 これからはゲートであちこち行ってもらうことになるから、こういうのも必要かなって』


「なるほどねぇ……。

 まぁ、俺が来てまだ数ヶ月、それでこれなら……結構希望はあるみたいだね」


 と、俺とシェフィがそんな会話をする中、これが世界地図であることを知ったビスカを始めとした何人かが、地球儀の真下へとやってきて、背伸びをしながら地球儀のことを眺め始める。


「……それと、これは広めても問題ない知識なの?

 世界地図とか、地球が丸いこととか……問題ない感じ?」

 

 それを見て俺がそう問いかけるとシェフィは、


『うん、問題ないよ。

 地球が丸いことは古代の天文学で判明していることだし、地図もヴァークの皆が頑張って各地を巡って、その地方の地図を集めて張り合わせれば大体この形にはなるからね。

 多少のズルではあるけど、広めて問題になるような話ではないかな。

 古来から精霊との対話を重要視していた……ヴィトーの言うアメリカ大陸の人達なんかは、精霊の視線を借りることで、宇宙から地球を眺めたりもしているし、大陸東部の目覚めた人なんかは、自問自答の果てに地球はこんな形に違いないと何の根拠もなく察しちゃってるからねぇ』


 と、返してくる。


 な、なるほど? よく分からないけども、こちらの世界では天文学以外の手法でも、科学的なあれこれに到達出来てしまうらしい。


 俺達がそんな会話をする中も、興味津々な人達は地球儀を見つめて……そしてビスカにここが地球儀のどこなのか、極北とはつまり地球のどこを指すのかを教えてもらうと、そこが真っ青なことに喜び、頬を緩ませる。


 そんな面々を見てかシェフィもまたニコリと笑い……そしてハッとした顔となって、地球儀の上に座り、声を上げる。


『そうだね! 浄化を頑張ってるんだからエリア解放ボーナスくらいはあげないとだね!

 この辺りは完全浄化完了! 他にもあちこち浄化出来てるから、その分のボーナスをあげちゃおう!』


 と、シェフィがそう言った瞬間、地球儀の真下に穴が空いて、そこからポコポコと……ポイントが落ちてくる。


 なんか、こういうのバラエティ番組で見たなぁ、なんてことを思う中、皆がそれを拾い集めてくれて、余っていたツボに入れてくれる。


 そしてそれを持ってきてくれて……うん、かなりの量となったようだ。


「えぇっと……皆で頑張ったボーナスだから、皆の役に立つ何かを作ろうか。

 ……ただすぐには思いつかないから、何が良いか考えたり、皆が欲しい物あれば、それを作ったりしますよ」


 と、俺がツボを受け取りながらそう言うと、皆は一気に盛り上がる。


 食料! 酒! 薬! 武器!


 皆自由な意見を口にし、どれが良いあれが良いと意見を交わし合い……そうして食後のコタは、いつにない盛り上がりに包まれるのだった。





お読みいただきありがとうございました。


次回はポイントのアレコレの予定です

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