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 先ほどの一連の動きで見えたものがあり、猟銃を構えたならグラディスに指示を出す。


「グラディス、崩してくれ!!」


 細かい説明はしないけども、それで伝わったようで、今まで敵から逃げていたグラディスは動きを変えて、ステップを刻みながら相手との距離を詰め……そして隙を見て突撃、その角でもって影を突き上げ、姿勢を完全なまでに崩す。


 それから発砲。


 大剣や大鎌で防がれてしまっていた散弾だったけども、姿勢を崩してしまえばそれらを振るうことは不可能で……二連射で大鎌を構えていた影を散々に撃ち抜くことに成功し、その体が崩れていく。


 突撃のために多少の隙を作ってしまったグラディスだったけども、その隙を狙っての大剣の二連撃を華麗に躱してみせて……そして軽いステップで距離を取りながら装填のための時間を作り出してくれる。


 装填が終わって猟銃を構えたならまた突撃、グラディスの目には背に乗っている俺の様子もある程度は見えているようで、構えを取るだけで指示を出さずとも突撃をしてくれて、大剣のうち1体の姿勢を見事な突き上げで崩してくれる。


 するともう1体の大剣が、二度も同じことをさせるかと俺を狙っての横薙ぎを払ってきて……なんらかの邪魔はしてくるだろうとその動きを警戒していた俺は、迫る大剣へと発砲、切り払いならぬ撃ち払いをしたなら、もう一発の装填弾を崩した方へと叩き込む。


 一発だけで倒しきれるかは不安だったけども……無防備状態への至近距離散弾はトドメとして十分だったようで、体がボロボロと崩れ始める。


 残りは1体、そうなるともう苦戦の気配はしなかったのだけども、それでも油断なく丁寧に装填をし、構えて……グラディスが崩しにかかってくれる。


 すると大剣は、そもそも崩しをなんとかしようと考えたようで、グラディスを迎撃するかのように大剣を斜め上から振り下ろしてくる。


 すぐさまステップを刻んで回避するグラディス、すると大剣はそれを追いかけての追撃横薙ぎを払ってきて……グラディスはそれを角で受けることになる。


 ガァァァンという重い音が響き渡り、次にミシミシと何かが軋む音が聞こえてきて……どうやら角だけで受けるには無理があるらしい。


 すぐさま撃っても良かったけども、距離が近すぎて跳弾などの不安があったので銃剣を装着、グラディスと鍔迫り合いをしている影へとそれを突き立てる。


 影はグラディスに比べれば脅威ではないと判断したのか、特に対処も回避もせずにそれを受け、ザクリと突き刺さり……そこでようやく対処すべき攻撃だったと気付いたのか慌てた様子を見せる。


 銃剣もまた精霊が作った装備、ただの鉄より鋭く硬く、無視して良いような一撃ではないはずだ。


 大剣でもって打ち払うのか、それとも他の対処をしてくるのか、少し興味はあったけども、そのままの状態で待つ理由もないので、一旦銃剣を引き抜き、二度目の攻撃を試みる。


 すると影は鉄の……騎士鎧とはまた違う、丸い鍋を腹に貼り付けたような不思議な鎧を作り出し、銃剣の攻撃を受けとめる。


 一瞬防具を作れるとはと驚かされるけども、武器を作れるのだから当然の話と言えば当然の話。


 しかしそれなら武器も防具も作っておけばよかったのでは? 散弾を防げたのでは? と、思う訳だけど……どうやら無限に武器防具を作り出せる訳ではないようで、鎧を作った分なのか本体の影の濃さが薄れてしまっているようだ。


 全身を余裕をもって覆っていた影が、ギリギリどうにか覆っているというような、心もとない濃さとなっていて……なるほど、武器や防具を作りすぎると本体が弱るのか。


 そうなると当然、グラディスとの鍔迫り合いでの踏ん張りが効かなくなる訳で……あっさりと押し負け、角での突き上げを見事なまでに受けて、なんとも綺麗に吹っ飛ぶ。


 ……影が薄くなると体重も軽くなるのかな?


 大剣を手放し、手放された大剣は撃ち抜かれた体のようにボロボロと崩れて……どうやら彼らを動かしていた瘴気それ自体も、限界が近いようだ。


 ならばと猟銃をしっかり構えなおし、引き金を引き……地面に落下したばかりの影に散弾を打ち込む。


 鎧で結構な量を防がれてしまうが、頭や腕、足は無防備なままで……それらへの銃撃が致命傷になったのだろう、最後の一体もボロボロと崩れていく。


 こちらの手を読んでしっかり対策をしてくる点は厄介だったけども、他の獣のようなとんでもギミックなんかが無かった分、楽ではあったかもしれない。


 いや、グラディスの協力がなければやばかっただろうけども……うん、あとでたっぷり感謝のブラッシングをしておかないとだなぁ。


 しっかりと影が消えきって、シェフィが浄化するのを確認し……銃に問題ないことも確認したなら、ユーラ達の下へと向かう。


 焦って向かう必要はないはずだ、きっとユーラ達なら無事に勝っているはずだ、それでも一応援護に入れるように準備して……と、向かっていると、なんとも奇妙な光景が視界に入り込む。


 ユーラのハンマーがサープの前にいる影を叩き潰し、サープのマトックがユーラに襲いかからんとしている影の頭を貫いていて……一体何があったのか、不思議な交差状態が出来上がっている。


 お互いを助けようとしたのか、それともその方が戦いやすかったのか、効率的だったのか……光景から事情を察することは全く出来ないけども、とにかく影が崩れ始めていることだけは理解することが出来た。


 そしてすぐさまシェフィが浄化に向かい……影が完全に消滅し、それを確認したユーラとサープは、重い溜息を吐き出してから、それぞれの武器を引き寄せて、戦闘態勢を解除する。


「一つ貸しだからな!」


「いや、それはこっちの言葉ッスよ」


 と、ユーラとサープはそんな言葉を掛け合っていて……いや、本当に何があったのさ。


 そんな2人の体には結構な傷があるようで……息も乱れて満身創痍といった様子。


 そんな2人の下へと到着した俺は何がなんだか分からないながらも、


「……とりあえず一旦帰ってサウナ入ろうか、その傷とか綺麗にしなきゃならないでしょ」


 と、声をかける。


 すると2人はニッカリと笑って……ゲートがある方へと、予想外にもしっかりとした足取りで向かい始めるのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回は久々のサウナです

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