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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第五章

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まさかの


 休憩を終えて改めて装備の点検をし……それが終わったならそれぞれ出立の準備を整え、もう一度草原での狩りに出る。


 魔獣を何体か倒し、大物も通りすがりの一団が倒してくれた、十分な戦果を得られたと言えば得られているのだけども、まだまだ完全な浄化には至っていない。


 ゲートとその周辺の浄化はシェフィが頑張ってくれたけども、草原全体の浄化にはまだまだ遠いようで……とりあえずシェフィが指し示す、瘴気が濃いという一帯へと向かって歩を進める。


 さっきの一団が暴れたからか周囲に気配は薄く……草原、というか平原が広がっている。


 あちこちで地面が露出し、いびつに変形した石なんかが転がっているけども、移動しながらシェフィが浄化をしていくことで、そのいびつさも正されていく。


 そうやって平原を進んでいると、稀にサイ魔獣が現れる……が、数が少なく、三人で挑める状況ならば苦戦することはなく、あっさりと狩ることが出来る。


 狩ったなら死体の回収はシェフィに頼んでまた進み……と、平原の探索をある程度進めると、シェフィから指示が出る。


『そろそろ引き返そうか、ゲートから離れすぎると帰れなくなるし、任された区域を出ちゃうからね。

 ゲートまで戻ったら今日は終わり、続きは明日にしようか』


 特に異論もなく頷いた俺達は踵を返してゲートへと足を向ける。


 ここまでの道中、方角はしっかり確認しておいたし、落ちていた石を削ったり並べたりといった細工で道標は作ってある、それを遡れば迷うことなく帰れるはずで……方角の確認と道標探しを怠らないようにしながら進んでいく。


 ……と、そこまで大きくはないが、それなりに異様な気配が漂ってきていることに気付く。


 一体いつから漂っていたのか……いつの間にかといったその気配の主を探そうとすると、同じタイミングで気付いたのかグラディスも顔を上げ、耳を立てて周囲を探る。


 そんな仕草を受けてユーラとサープもまた周囲に視線を巡らせ……それからすぐに気配の主が見つかる。


 瘴気漂わす魔獣……の新種と言って良いのか、それは二足でまっすぐに立つ黒い影で……人にしか見えない人型の影だった。


「……猿の魔獣……ではないよね」


「……猿ってのをよく知らねぇからなぁ」


「しかしアレは……魔獣ってよりは……ッス」


 俺、ユーラ、サープの順でそんな声を上げる。


 それからお互いの目を見合い、考えていることはきっと同じなんだろうなと、そんなことを考える。


 人型の魔獣と言うか、人の魔獣と言うか……瘴気に飲まれた人間の末路と言うか。


 それが10体以上……そんな連中をしばらく見つめていた俺は視線を上げて問いを投げかける。


「そう言えばシェフィは以前、瘴気は人すらも歪ませるって言っていたよね……?」


『うん、言ったね。

 そしてアレは……まぁ、さっきの一団にやられた連中が悔いや恨みの中で飲まれたんだろうね』


 はっきりとした答えが返ってきた。


 人間の魔獣……と、言うか、人間の死体の魔獣か、ゾンビみたいなものなんだろうなぁ。


 人……人間の魔獣か。


「……人間って魔獣化したとして強いのかな?

 獣のように牙や爪がある訳でもなく、強固な鱗がある訳でもなく……知恵どうこうで武器を持った狩人に勝てるとは思えないんだけども……」


 思わずそんな感想が口からこぼれる。


 武器やら知恵やらを使ってこその人間の強さだと思うのだけど、武器や道具を持っている様子はなく、知恵があるような動きにも見えなかった。


『油断はダメだよ、武器だってボク達みたいに、いきなり作り出せてしまうかもしれないんだから。

 瘴気はなんでも歪めることが出来る……そこらに落ちてる石や木の枝から、とんでもない武器を作り出すことだって、ありえなくはないんだよ?』


 するとシェフィがそう返してきて、俺達はそれもそうだとすぐに気を引き締め、武器を構え直す。


 そんな俺達の方へと、そのゾンビ達はゆらゆらと歩きながら近付いてきて……そしてシェフィの言う通り、そこらにある石やら木の枝やらを拾い上げ始める。


 そして、シェフィの言う通りそれらに瘴気を……黒い霧のようなものをまとわせて変形をさせ始めて、そして全く予想もしていなかった形状に仕上げ、こちらに攻撃すべく構えを取り始める。


「うっそぉ……」


 思わずそんな声が漏れる、マンガで見るような大斧に大鎌、薙刀のような槍も構えている。


 見た目は派手だが武器としては非効率、あそこまでの大きさは必要ないと思うが……もしかしてここらの対魔獣武器だったりするのだろうか?


 魔獣相手ならば、ああいったとんでもなさは必要かもしれないけども……それにしても扱い辛そうだ。


 そんな武器を構えながらゾンビ達はゆっくりゆっくり、ふらふらと距離を詰めてきて……ある程度まで近付いた所で、一気に駆けてくる。


 すぐさま発砲、容赦出来る相手ではなさそうだとライフルでもって狙撃を試みる。


 一発、二発、引き金を引く度、レバーを操作して排莢と装填を行いまた引き金を引いて、三発までは普通に命中させることが出来た。


 どれも致命傷、食らったゾンビは動かなくなるが……残りのゾンビは、ライフルがどんな武器かを覚えてしまったようで、四発目の発射と同時に左右に凄まじい勢いで跳躍し、まさかの回避をしてみせる。


 加護を受けたユーラやサープでもそんなマネが出来るかは微妙な所で、これは本当にやばい相手そうだと、どんどん引き金を引いていく。


 こうなったらポイントどうこうなんて言っていられない、とにかく数を減らすことを優先し、狙うのもそこそこに連射を繰り返していく。


 外れるのだとしても、左右に跳んだ後は立ち上がるなり体勢を立て直すなりで動きが止まるので、全くの無意味ではないと、とにかくの連射。


 結果、接触されるまでに5体を倒せて……こちらに向かってきているのは、どうやら残り6体となったようだ。


 他にもゾンビはいるのだが、最初に確認した地点から動いた様子はなく……一体あそこで何をしているのやら。


 とにかく今はそちらよりも、向かって来ている6体に意識を向けるべきで……そうして俺達は元人間の、ゾンビもどきの魔獣との戦いを開始するのだった。



お読みいただきありがとうございました。


少し予定とは違ってきましたが、次回はVSゾンビです

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