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鍛練の続き


 その後夕方までかかって、ジュド爺による投石訓練はどうにか合格となった。


 その頃にはヘトヘトで何をどうしたかなんて分からない状態だったが、とにかく合格を貰えたということで厩舎に向かうことにした。


 ただ乗っていただけの俺でこんなに疲れたんだ、ずっと駆け回っていたグラディスの疲労はとんでもないはずで……厩舎では精一杯の世話をしてやることにした。


 たっぷり水を飲ませてやって、岩塩と黒糖を舐めさせてやって、その間にブラッシングをして……怪我などが無いかの確認をして。


 特に鞍を乗せていた背中は入念にチェックしてやって……それが終わったなら寝床を整えて、しっかりと休める環境を作り上げる。


 それが終わったならようやく自分の休憩タイムということで……同じく恵獣の世話をしていたユーラ達と共にサウナへ。


 サウナではぐったりとしてしまい、何も喋らず考えず、ただただサウナを楽しむ。


 ととのい終えたなら自宅に戻り……アーリヒが用意してくれた夕食をじっくりゆっくり楽しむ。


 サウナのおかげか、会話をする余裕はあったのでアーリヒとの会話を楽しみながらゆっくり過ごし……疲労回復のためなのか、山のような肉料理を平らげる。


 歯磨きをしたならそのまま倒れるように寝てしまって……翌日。


 朝食と最低限の日課をこなしたなら、またジュド爺の鍛練だ。


 今度は石投げではなく、本格的な鬼ごっこ、近寄ってくるジュド爺に捕まったら罰というものだ。


 接近してくる敵に備えての訓練とのことで……どうにかジュド爺を振り切りながらジュド爺に向けての射撃を成功させなければいけないらしい。


 更にグラディスには本気で駆けてはいけないという制限が付く。


 ……まぁ、グラディスが本気で逃げたら勝負にならないからなぁ。


 重りを乗せて強制的に速度を落とさせようなんて案もあったのだけど、それはグラディスに余計な負担をかけてしまうということで却下にした。


 グラディスならちゃんと説明しておけばその通りにしてくれるはずだし、そんなものは必要ないだろう。


 そうして鍛練は開始となる……相変わらず筋トレを強制されているユーラ達を後にして森の中に突っ込み……どうにかライフルを構えてジュド爺に銃口を向けようとする。


 が、昨日の切り返し作戦はもう何度も見せてしまっているし、昨日よりも速度を出せない中でそれを決めるのは難しいなんてもんじゃない、ほぼ不可能だ。


 ジュド爺が何も考えずに突っ込んでくる魔獣ならなんとかなるかもしれないけども、しっかりと考えて対策してくるものだから、どうにもならない。


 何か対策の必要があるが……どうしたら良いものやら。


「どうしたどうした、その程度か!!!」


 そう言いながらジュド爺が迫ってくる、頭を下げて鋭く駆けて、森の中の障害物もものともしない。


 と、言うか多分、森の中に何があるかを完璧に把握している、枝や小石の場所まで完璧に。


 その上、がっつり精霊の加護を受けて身体能力が増していて……なんかもうマンガの世界かのような動きを見せている、外見が老人なままなものだから、凄まじい違和感だ。


「余計なことを考える暇があるのか!!」


 更にそんな声を上げたジュド爺が、ものすごい勢いでこちらに迫ってきて……俺は仕方なく、ライフルを脇に挟んで後方に向けて引き金を引くという、苦し紛れに出る。


 しかしそんなものは所詮苦し紛れ、しっかりと狙えるはずもなく、ジュド爺からは、


「次にそれやったらぶん殴るぞ!!」


 と、きついお叱り。


 すぐさまライフルを構え直して、どうしたものかと頭を悩ませながら森の中を駆けていく。


 駆けて駆けて駆け抜けて……その間に、何か良いアイデアはないものかと頭を悩ませ、そしてこれしかないと、ある作戦を思いつく。


 すぐさまグラディスの首に抱きついて作戦を囁き……グラディスの了解を得て実行のための準備をする。

 

 弾丸が装填されているかを確認し、ライフルをしっかり持って手放さないようにし……今の段階からなんとなしの狙いをつけておく。


 その間グラディスは作戦のために都合の良い場所へ……実行しやすい場所へと駆けていく。


 この時点で森の全てを把握しているジュド爺に、何かしようとしていることはバレているだろうけども、作戦全てはバレていないだろうと考えて作戦は続行。


 グラディスは森の中を駆けて駆けて……そして跳ね跳ぶのにちょうど良い、開けた一帯へと到着したなら、切り返しに似た形で方向転換をしてから、ジュド爺の方へと向かって、ジュド爺を飛び越える形で大きく跳ねる。


 そして俺はジュド爺の頭上から真下に銃口を向けて、しっかり狙った上で引き金を引く。


 当たった。


 あくまで空砲だったけども、確実にジュド爺の頭を貫けたという確信を持つ。


 それで満足せずにすぐさま排莢を行い、次弾発射に備えた上で、ライフルを構える。


 するとグラディスは着地と同時に切り返しを行い、頭上を飛び越えられて驚きながらも良い笑顔をしているジュド爺へと、俺が構えたライフルの銃口を向けてくれる。


 すぐさま引き金を引く。


 今度はさっきと違って当たったという確信は持てなかったが、それでも待ってはいられない。


 そして排莢を行っているとジュド爺が声を上げる。


「だっはっはっはっはっは!!

 よしよし、悪くねぇ悪くねぇ、中々良いやり方だった! 二発目はどうかしらねぇが、一発目は確実に当たってただろう!

 恵獣様は賢く、力もあって俊敏だ、それに頼ればこういう結果になるってことだな。

 だがこれで満足するんじゃねぇぞ、よくよく考えて恵獣様と思考を一つにしろ、恵獣様ならそれが出来る。

 せっかくこんなに立派で力強い恵獣様と絆を結んだんだ、それを無駄にするんじゃねぇぞ」


 それを受けて俺が頷くとグラディスは満足げに、あるいは自慢げに鼻息を吐き出す。


 そうしてジュド爺からの合格をもらった俺とグラディスは、連携技の完成度を高めるために、他にどんなやり方があるかを考えるために、休憩ついでの話し合いというか作戦会議を行うのだった。



お読みいただきありがとうございました。


次回はその後のあれこれです。



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