表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/182

二人の新武器


 サイの角の力強さと、分厚そうな皮膚の圧迫感はいざ目の前にすると想像以上のものだった。


 散々加護を受けているのに思わず怯んでしまう、魔獣特有の悍ましさもあって体が震えてしまう。


 だからと言っていつまでも震えてはいられない、すぐさま俺達は武器を構えて……それぞれ攻撃を放つ。


 俺は猟銃で、ユーラとサープは精霊が作った特別製の槍で。


 しかしその全てが分厚い皮膚に弾かれてしまう……槍は当然として銃弾まであっさり弾かれたのには驚いた。


「なんか最近当たり前に弾かれるなぁ!?」


 そんな悲鳴を上げながらもう一射……しかしそれも通じず、すぐさま俺はその場から飛び退きながらの装填を試みる。


 それを支援するためにユーラとサープは二度目の刺突を放つが、それも弾かれてしまって……それでも俺達は何度も何度も何度も攻撃を繰り返す。


 決して諦めずに何度も何度も……サイ魔獣は三方向からの攻撃を受けてか咆哮を上げて、まるで人間かのようにパンチを繰り出してくる。


 力強く凄まじい風切り音を出してはいるが、そこまで速くはないパンチを回避しながらの攻撃を繰り出していると、ユーラとサープは槍ではどうにもならないと判断したのだろう、槍を投げ捨ててから大きな声を張り上げる。


「精霊様!」

「武器をお願いするッス!!」


 武器? どんな?? なんて疑問が浮かぶが、そちらに意識を向けている暇はないと再装填を進める中、ユーラとサープはシェフィがモヤから取り出した武器をそれぞれ受け取る。


 ユーラはシェフィ印のついた大きなハンマー……どでかい四角い鉄塊に柄を差し込んだといった作りの、バトルハンマーというやつだろうか。


 ユーラの大柄な体でも大きく見えて……精霊の加護を受けたユーラの力で振り回したならかなりの威力となるに違いない。


 そしてサープは……驚いたことにツルハシのような武器を手にしている。


 柄が長く、片側にはクチバシと言ったら良いのか、鋭く尖ったものがついていて、反対側には切れ味のよさそうな斧がついていて……あれは確かマトックと呼ぶんだったかな。


 それを両手で構えて振り回すつもりのようで……ユーラの武器よりは威力は無さそうだ。


 皮膚の分厚さから見ても今回はユーラのハンマーの衝撃頼りかなと思っていると、パンチではどうにもならないと思ったらしいサイ魔獣が暴れ始める。


 二本の足で立って、両腕を大きく振り回し……ついでに鼻の先の無駄に大きい角も振り回してくる。


 誰かを狙っているという訳ではなく、仁王立ちのまま駄々っ子のように暴れているといった印象で、そんなサイ魔獣に対して最初の一撃を入れたのはユーラ……ではなくサープだった。


 振り回される両腕と角を上手く回避しながら距離を詰めてマトックを鋭く振るう。


 どこかゴルフのスイングを思わせる動きで遠心力をクチバシの先端に一点集中……その一点でもって皮膚と皮膚の間というか、甲冑の隙間というか、膝の辺りに上手く突き刺す。


 刺したと思った次の瞬間すぐに引き抜き、そこから血が吹き出る中サープは反対側の膝にも同じく突き刺す。


 そうやって両足にダメージが入った所で力をたっぷりと溜め込んだユーラの横スイングハンマーが炸裂、サイ魔獣は思わずよろけて転び……地面をゴロゴロと転がる。


 遠心力を一点集中させることで非力さを補いつつ、器用さでもって弱点に命中させるサープと、とにかく力任せな一撃を当てるユーラ。


 両極端ながら相性はとても良く、息も合っているから効果は抜群、近距離での銃撃で全く怯まなかった相手が痛みに悶えている。


 そして起き上がる前に次々にバトルハンマーとマトックが叩きつけられ……なんだか絵面が酷い感じだ。


 ちょっとしたイジメに近い光景というかなんと言うか……適当にやっているのではなく的確に弱点を狙い、しっかりと力を込めているからたちが悪い。


 そうしてサイ魔獣は大した活躍もなく動かなくなり……これで終わりかと安堵しかけた瞬間、またもひび割れが現れて今度は二体のサイ魔獣が現れる。


 すぐさまユーラとサープは切り替えて構え直し、それぞれ一体ずつに向き直る。


 するとサイ魔獣達は、今度は暴れるのではなく頭を低くし突進するぞという構えを見せてきて……俺達はすぐさまそれに対応する。


 ユーラとサープは突進はさせまいと攻撃を仕掛け……俺は装填を終えた猟銃を構える。


 そうして始まるのは一対一の勝負、俺も援護しようとするが誤射が怖いので構えるにとどめて、ユーラ達の戦いを見守ることにする。


 ユーラはとにかく突進をさせまいとハンマーを振り回している。


 ゴガンゴガンと凄まじい音が響き渡り……何度も何度も何度も衝撃を受けたサイ獣人は突進出来ずに仕方無しの近接戦を展開する。


 両腕で殴るだけでなく角で突き上げるという第三の攻撃があり、手数が少ないユーラはいくらかの攻撃を受けることになる。


 角はヤバすぎるのでパンチだけを受け、受けながらハンマーを振り回し、一切怯まず戦い続ける。


 右から左、左から右……流れるように連打を繰り出し、サイ獣人はそれにカウンターを合わせているかのように何度もユーラの顔や脇腹を殴りつけている。


 サープはユーラのように突進を思いとどまらせるような威力はないので突進を止めようとはせずに、回避しながらの遠心力刺突を関節部に放っていく。


 突進を左右に転げて回避して、寝転がったままでもすれ違いざまの一撃を放つ。


 それがまた上手い具合に関節部に刺さり……じわりじわりとダメージを蓄積させていく。


 ユーラとは違ってすれ違った後は距離が離れるので、そこを狙って銃撃するがやっぱりダメージはなく……それでも諦めずに銃撃を繰り返していく。


 そうこうするうちに魔獣の出血は増えていって……段々と動きが鈍っていく。


 そしてサイ魔獣の動きが、それなりに鈍った所でサープが勝負を仕掛ける。


 今まで横に振るっていたマトックを大きく真上に振り上げて、脳天や目を目掛けての一撃を振り下ろし始める。


 角が邪魔そうではあるけども、それを上手い具合に避けてザクザクッと連撃に成功、脳天と右目に見事なクリティカルヒットが入る。


 後はもうサープの流れだ、血を流して目を潰され、完全に動きが鈍くなりきったサイ魔獣の全関節をツルハシで突いていく。


 そうして出現したばかりのサイ魔獣は弱り切ることになり……見事な決着となるのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。


次回はこの続きとなります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

書籍版紹介ページ

書籍、コミカライズ発売・予約中! 画像クリックで通販ページに飛びます。
mnijqs95k05fkifczb7j2ixim1p_k0i_15z_1nn_13kk2.jpg mnijqs95k05fkifczb7j2ixim1p_k0i_15z_1nn_13kk2.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ