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ライフル


 ユーラ達に居場所を知らせた後、そっと猟銃を地面に置いて……スナイパーライフルと並べる。


 それからじぃっとスナイパーライフルを見つめて、改めて人を撃ったということについて考える。


 ……こういう時、普通なら心に相応の負担があるものらしいが、自分は特には感じない。


 狩りの際の興奮のような、小さく泡立つ感情はあるけども……そこまでのことではない。


 こんなものなのか? もしかして自分は異常なのかも? なんて疑問も浮かんでくるけども……うぅん、どうなんだろうなぁ。


 これなら魔王と戦った後の方がストレス大きかったなぁとか、どうせ魔法に依存している連中だしなぁとか、不法侵入してきたのは向こうだしなぁとか、色々考えてみて……深呼吸もしてみる。


 相手と距離があって実感がないのか、ライフルでの狙撃という状況がそうさせているのか……あるいはシェフィ達が俺の心を守ろうとして何かをしてくれているのか。


 答えは出ないけども、何度も何度も真剣に考えても心に問題はないように思えて……とりあえず安堵のため息を吐き出し、地面の上にあぐらを組んで座る。


「グゥ~~~」


 するとグラディスがそんな声を出しながら顔を擦り付けてきて……慰めてくれているのか、戦勝を喜んでくれているのか、どうなのかは分からないけども、とりあえずその大きな顔を両手で撫で回してやる。


『ちなみにボクはなんもしてないからね? 純粋にヴィトーの心が強いんじゃないかな?

 まぁ、あんな連中、気にしてもしょうがない相手だから、仕方ない仕方ない。

 あ、それとすっごく頑張ってくれたからポイントはたくさんあげるよ!

 今ドラーがあっちで詳細調べてくれてるから、結果が出たらまた教えるね!』


 撫で回しているとシェフィが目の前にやってきてから、そんな声を上げてきて、俺は分かったと頷いてからシェフィのことも撫で回す。


 ……何もしてなかったのかぁ、まぁ良いかぁ。


 そんな事を考えながらグラディスとシェフィの顔をこれでもかと撫でていると、まずグスタフが駆けてきて「ぐー!」と声を上げて、自分も撫でろとの主張をし、それに続いてユーラとサープが駆け寄ってくる。


「……よくもまぁ、この距離から命中させたなぁ。

 ……その長いのは新しい武器か? それだとこの距離でも当たるのか?」


 と、ユーラ。


「この距離だと敵の姿を見るのも大変そうッスけど……精霊様の力ッスか?」


 と、サープ。


 それを受けて俺はグスタフのことを片手で撫でながら、もう片方の手でスコープのことをトントンと叩きながら言葉を返す。


「銃の性能と、これのおかげかな。

 このスコープっていうので覗くと、遠くまで見えちゃうんだよね……覗いてみる? 覗くだけなら俺以外でも使えるはずだよ」


 するとまずユーラが興味津々といった様子でライフルを持ち上げ……ライフルを肩に担ぐような形で持ち上げ、頬に押し当てながらなんとかスコープを覗き始める。


「おお……片付けしてる皆の姿が見えるな。

 ……ただこれ見にくくねぇか?」


 そう言いながら自分にも! と主張しているサープにライフルを渡すユーラ。


 サープはライフルの形状と、普段俺が銃を使っている様子から、なんとなしに使い方を予想したのだろう、しっかりと持ち上げて寝そべるのではなく、ストックを肩に当てる形で構えてみせて、概ね正しい構えでもってスコープを覗き込む。


「こうすると見やすいッスよ。

 ……ははぁ、こんなに遠くが見えるもんなんスねぇ。

 しかもこの、変なマークで弾が当たる場所が分かるって仕組みッスか。

 ……こんなのがあったら誰も弓矢とか槍とか使わなくなるんじゃないッスか? どんな獣も簡単に狩れちゃうと思うんスけど……」


 そしてサープなりの感想を口にして……俺はその疑問に答えていく。


「確かにあっちの世界で猟と言えば罠か銃だったね、弓矢や槍は少なくとも俺の国じゃ使えなかったかな。

 ただライフルはすごく危険っていうか、悪用もできちゃうから所有するための条件がすごく厳しいんだよ。

 猟銃を持つだけでも厳しいのに、それから更に10年だったか、安全に使用出来ていることが条件になるんだったかな?

 そのライフルだってここまで高性能じゃないからねぇ……シェフィ達は多分このライフルを作るのに、軍用のを参考にしたんじゃないかな」


「んー……確かにこの距離から攻撃できちゃうなら悪用は出来そうッスねぇ。

 でも銃声も相応にデカいっぽいッスから、誰が使ったかはあっさりバレちゃうんじゃないッスか?」


「……うん、基本的にはサープの言う通りなんだけど、銃口の先にあるそれ、サイレンサーっていう銃声を抑えるための道具で、それがあるとバレにくくなるんだよね。

 更に言うと今サープが持っているのは精霊が作った特別製だから……ほぼ無音というとんでも性能なんだ。

 向こうの世界のサイレンサーは、そこまでの性能じゃないんだけどねぇ」


 と、俺がそう言うとユーラとサープは、なんとも言えない顔で冷や汗をかく。


 そして顔を見合わせ……順番に感想を口にする。


「こんな遠距離から無音で殺されるって、冗談じゃねぇぞ」


「仲間が次々死んでいくのに、その原因が分からない、敵の居場所が分からない……冗談じゃねぇッスね。

 そりゃぁ泡食って逃げる訳ッスよ……」


 それから二人はもう一度顔を見合わせて……それから少しの間、考え込んでから、パッと顔を明るくする。


「まぁ、連中は沼地からやってきた、無礼な侵入者だし、問題ねぇか」


「そうッスね、むしろライフルに植え付けられた恐怖で、もう二度とやってこないんじゃないッスか?

 来たとしてライフルで一発どかんとやってやれば、すぐに逃げ出すッスよ」


 怖がっていたのは一瞬のことだったようで、なんとも弾む声でそんなことを言った二人は、交互にライフルを構えてあーだこーだと話をし始める。


 いつかは自分達もこれが欲しい、いや、これがあったら狩りの腕が鈍ってしまうかも、いや、それでも選択肢としてあるのは大事だ……なんてことを。


『ちなみにだけど、ライフルの弾はお高いよ、一発で2000ポイントはもらうからね?

 威力とか利便性を考えたら当然だよね、今回はサービスだけど、次回からはよく考えて使うんだよ』


 そこにシェフィがそんなことを言ってきて……まさかの2000、一発で2000。

 

 今日撃った分だけでとんでもない数字になってしまうと知らされた俺達は……喜んで良いのか悪いのか分からない、とんでも兵器となったライフルを、なんとも言えない顔で見つめることになるのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回は更に沼地の人々とのあれこれの予定です

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『ご利用は計画的に!』 『いつもニコニコポイント払い!』 「シェフィ…なんか毒されてない?」
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