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うどん


 アーリヒとの時間を過ごし、それからアーリヒと一緒にグラディス達の世話をし……改めて村に戻ると、広場で何やら人集りが出来ている。


 そこでは簡単な竈が組まれた上で、鍋を使っての料理をしているようで……一体何事だろうか? と、アーリヒと二人で近付いていく。


 するとその集団の中にはユーラとサープの姿もあって、二人がこちらに気付いて近付いてきてくれて、今何をしているかの説明をしてくれる。


「なんでも新料理のお披露目会なんだってよ」


「ヴィトーが色々なものを工房で作ってくれたのと魔獣の肉が余る程あるってんで、料理を研究する余裕が出来たそうなんスよ。

 で、前にヴィトーが話してくれてたサウナ飯ってのを研究してたそうなんスよ」


 と、ユーラとサープ。


 なるほど……それでサウナ飯が出来たから皆に試食をしてもらおうってことなのか。


 ちらりと横にいるアーリヒを見てみると、そういったことをしているという報告は受けていたらしく、笑顔でこくりと頷いて、


「どんな料理が出来たのか楽しみですね」


 と、弾む声を上げてくる。


 確かに楽しみではあり……俺が作ってきた調味料やハーブやらでこちらの人が新しく作った料理とはどんなものだろうかと鍋を覗き込んでみると……どうやらスープ料理のようだ。


 具は肉と山菜……それだけの具が入ったスープは透き通っていて美味しそうではあるのだけど、それだけかというガッカリ感もあり……これのどこが新料理なのかという疑問を抱きながらなんとも言えない気分になっていると、竈で煮込まれているのとは別の鍋を女性が持ってきて……その中身を鍋の中に投入し始める。


 おや? と、思って改めて鍋の中を覗き込んでみると、丸めて潰したといった感じの白い何か……恐らく小麦粉団子かな? というものが入っていて、それを入れた後で少し煮込み、器に盛り付けた上でたっぷりの下ろしショウガを入れて完成となる料理のようだ。


 試食会ということでその場にいる皆にそれが振る舞われ……一口食べてみると、なるほど、という気分になる。


 うどんだ、これ。


 干し肉か何かで出汁を取って、塩とハーブでスープを味付け、そこに肉と山菜、そしてやっぱり小麦粉団子だったものを入れて、最後にショウガ。


 和風出汁ではないし、醤油なども使っていないからうどんではないだろうという気もするのだけど、パスタ料理って感じでもないし、肉とショウガと山菜が合わさって作り出す風味がどうにもうどんを思い出させる。


 ちょっと薄味で、エスニックな肉ショウガうどん、といった感じで……小麦粉団子の食感もあって中々悪くない、というか美味しいといって良い完成度だった。


「おお、うめぇなこれ!」


「良いっすね~、コレ好きッス!」


「私も良いと思いますよ、ヴィトーが言っていた栄養バランスも悪くなさそうです」


 ユーラとサープ、アーリヒにも好評で……ついでに俺の器からつまみ食いしているシェフィからも良い笑顔とサムズアップがあって、かなりの好評のようだ。


「うん、俺も美味しいと思う。

 あとは麺状にするとか、小麦粉団子に工夫があるともっと美味しくなるかもねぇ」


 そして俺もそんな感想を口にする、この風味と組み合わせだとどうしてもうどんが思い出されて、麺状にしたいという気持ちが溢れた結果の言葉で……それを聞くなり料理担当の女性達が物凄い目をこちらに向けてくる。


 麺状とは一体なんだ? 具体的にどうするんだ? と、言わんばかりの目で……俺は知る限りのうどんの作り方の説明をしていく。


 と、言っても実際に作ったことはないのでふんわりとした説明だ。


 よく練って寝かせて踏んで寝かせて……それから伸ばして切り分け、束にして茹でる。


 こんな説明では再現は出来ないだろうなぁとか、シェフィに頼んで料理本を作ってもらうべきかとか悩んでいると、女性達はすぐさま行動開始……拙くても良いからとにかく作ってみるの精神で、うどんっぽい生地の作成をし始める。


 出来上がったなら湯で上げて、その間に作り直したさっきと同じスープに入れて配膳し……二度目とあって全員ではなかったけども、ほとんどの人がそれを受け取り、試食を開始する。


 形を変えただけで材料は一緒、そこまで味が変わることもないだろうと油断していたようで……食べるなり驚きの声が上がり、食欲を刺激されたのか物凄い勢いで食べ始める。


「おお、やっぱりうどんだ、エスニックうどん。

 そしてやっぱりこういう料理は麺状の方は食べがいあって良いねぇ……気持ちスープも美味しく感じるし」


 と、俺が感想を口にしたのをきっかけに皆が次々に声を上げる。


「いや、全然違うだろ!? こっちのが明らか美味い!」

「これが美味いのはそうだけど、俺はさっきのも好きだな、柔らかくてさ」

「俺はこっちだなぁ、一気に食べると満足感あるよ」


 そしてユーラ達も美味しい美味しいと声を上げ……特に気に入ったのかアーリヒはただただ無言で食べ続けている。


 そしてシェフィはやっぱりのサムズアップ……シェフィの体の大きさを考えるとさっきの小麦粉団子もこのうどんもかなりの量になるはずなのだけど、全く問題ないといった様子で食べ進めている。


 それからすぐにおかわりを要求し、盛り付けられるとまた物凄い勢いで食べ……どうやら大好物になったようだ。


 しかしまぁ、気持ちは分かる、今までの村の料理にはなかった食感だしなぁ、それを美味しく楽しめるとなったらハマるのも当然だろう。


 それからも試食会は賑やかに続き……同時に俺への、アーリヒまで参戦しての質問責めも続き、知る限りのうどんの話をすることになった。


 どんな味付けがあるのか、どんな料理法があるのか、俺が美味しいと思ううどんはどんなうどんか……などなど。


 それを受けて料理番の人達はしばらくの間、主に日々頑張っているアーリヒのためにうどん開発を頑張ってくれるそうで……そうしてしばらくの間、村の食事は様々なうどん料理が中心となるのだった。



お読み頂きありがとうございました。


次回は新しいあれやこれやです


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