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新しい琥珀と


 ざっと数えて10体程、植物魔獣の群れに散弾を打ち込むと、無数の枝が砕け散り……だけども倒しきれない魔獣達が迫ってくる。


 すぐさま再装填、こちらは高所に立っている、魔獣達が攻撃可能なとこまで来るには時間がかかるはずで……落ち着いて再装填したなら、すぐに構えて即発射する。


 一発弾ではないのだからと狙いはそこそこに、とにかく足止め優先だと散弾をバラ撒いて、即再装填と繰り返していく。


 これなら余裕かなと安堵し、冷静というか静かに魔獣狩りを続けていると、こちらに迫ってくる魔獣達の後方から増援……新たな植物魔獣の群れが現れて、余裕が一瞬で消え去ってしまう。


 全部で何体いるのやら、数える余裕もなくここで戦うべきか、一度逃げるべきかと迷っていると……増援の真横から凄まじい勢いで人影が突っ込んでくる。


 ユーラだ、力の琥珀を発動させているのか凄まじい勢いで突っ込み、そのまま植物魔獣を蹴散らしていく。


 片手に槍を持ち、片手にそこら辺で拾ったらしい木の枝……というか木の幹を持っていて、それらを振り回して次々に植物魔獣を砕いていく。


 それでも全ての魔獣が倒された訳ではなく、一部がこちらに迫っていて……それを迎撃しようと銃を構えていると、今度は素早い影が魔獣達の中を駆け抜けていく。


 おそらくサープだ、忍者の琥珀での奇襲を仕掛けているらしい、次々に影が植物魔獣を破壊していく。


 二度の奇襲を受けながらも植物魔獣は突撃というかこちらに迫ってくるのを止めず……俺はもう一度余裕を取り戻しながら引き金を引いていくのだった。



 

 結果としては怪我なし、問題なしの快勝、全部で32体の植物魔獣を倒すことが出来た。


 倒し終えてからの回収が大変だけども、残骸から琥珀を探す楽しさがあるので苦ではなく……小さな欠片も残さないようにかき集め、ある程度集めたら焼いて浄化し……と、作業を進めていく。


 ユーラとサープは別の場所でやる気いっぱいで片付けを進めていて……誰が最初に見つけるかと競争していると、見事1つ目を俺が散弾で倒した魔獣の残骸から発見する。


「……これ、散弾で壊れたりしないのかな、今更だけど」


 拾い上げながらの俺の一言に、


『精霊が作った弾で精霊の琥珀が壊れる訳ないでしょ』


 と、頭の上のシェフィ。


 その理屈はよく分からないけども、とにかく壊れないなら良かったと拾い上げ……そして早速だと力を込めてみる。


「ん!?」


 急に視界が歪む、歪んでいるというか、急に物が良く見えるようになったというか……そんな突然の変化に立ち眩みを覚えて倒れそうになってしまう。


『ん? ……ああ、これは遠くがよく見えるようになるのかな?

 うん、そうだね、視力が良くなったとかじゃなく、遠くの光景が見えちゃってるんだね。

 名付けるなら遠見だね、遠見の琥珀……急に視界に変化が起きたらそうなっちゃうか』


 と、シェフィが説明してくれて……なるほど、遠見かと体勢を立て直し、もう一度琥珀に力を込める。


 すると確かに目の前とは全く違う光景がよく見えるようになり……あらかじめ覚悟していたというか、どういう変化があるかある程度理解していたからか、今度は立ち眩みが起きることなく、その光景を眺めることが出来る。


 ……というかこれ、どこだ? 見たことないというか、ここから見える範囲にない何処かというか……相当先の光景まで見えてしまうらしい。


 視界全部がその光景となっていて、感覚的にはVRゴーグルをつけた感じと言ったら良いのか、周囲の光景が全く見えなくなるのは少し不便かもしれないなぁ。


 ああ、いやでも視線を動かすと光景も動いて……感覚的に視線の先にこの光景があるということが伝わってくる。

 

 手を伸ばしてみるとその先に何があるのかが分かって、試しに銃を構えれば銃口の先がどこであるかもしっかりと分かる。


「……まぁ、偵察には良いのかな?

 あとは狙撃とか……? 流石にこの銃でこの距離の狙撃は無理だろうけども……」


 と、どこかも分からない光景を眺めながら俺がそう言うと、その光景を見ることが出来ているのか『へー、ほ~~』なんて声を上げていたシェフィが、コホンッと咳払いしてから、改まった様子で声をかけてくる。


『ちなみにこの距離を狙える狙撃銃も作れなくはないよ?

 ほら、ヴィトーが前世で暮らしていた国では猟銃を長い間使っているとライフルの許可もらえるんでしょ? それと一緒一緒、同じ感じで許可をしてあげよう。

 その猟銃を狙撃銃にすることも出来るし、新しく作ることも出来る。

 ……もちろん、膨大な量のポイントが必要だけどね』


「……急に何さ。

 いや、他の銃を作れるってのは聞いてはいたけどさ……狙撃銃ねぇ。

 それを作ってもらうには魔王を何体倒せば良いの?」


『あっはっは、そうだねぇー……魔獣と戦えるレベルに強化した特別製だと魔王なら5体ってとこだけど、今ヴィトー達は琥珀を一生懸命集めてるでしょ?

 それってつまり精霊を助けてるってことじゃん?

 だから琥珀を10個集めたら作ってあげても良いよ。

 ……た・だ・し! 10個は自分達で使っちゃ駄目だよ、村の誰かにプレゼントしてね。

 そしたらそれも人助けってことで、たくさんポイントあげるから』


 ……自分で使っても精霊は助かるのだし、同じことでは? とも思うけど、シェフィなりのこだわりみたいなのがあるのだろうか?


 琥珀10個か……この遠見は自分で使うとして更に10個となるといつになるやらなぁ、そもそも10個も見つけられるか分からないし、役立つ能力なら自分で使いたいし……。


「……まぁ、うん、分かったよ。

 作ってもらえるならありがたいし、頑張ってみるさ」


 と、そう言ってから作業再開、どうあれ琥珀を集めないことには始まらないと、残骸を集めながらの琥珀探しを続けていく。


 シェフィに背負籠とゴミ拾い用ハサミも作ってもらって、それでもってヒョイヒョイと。


 それらで大雑把に集めたら、今度は掃除道具で……と、進めるうちに1個、2個と琥珀が見つかっていく。


 ……しかし今日はいやに景気が良いというか、琥珀がホイホイ見つかるなぁ。


 ……こっちで拾ってもらえるというか、助けてもらえることに気付いた精霊達がこぞって来てくれているとか?


 そのついでで植物魔獣まで来てしまうのだから困ったものだけど……まぁ、今はありがたいし助かるし、文句は言うまい。


 数が多いので能力の確認は後にしようと決めて作業を進めているとユーラとサープが合流してきて……両手でかなりの量の琥珀を抱えている。


 まさかの豊作、まるで狙ったかのようなタイミングに色々言いたくなるけども、とりあえず作業優先だと俺達は浄化するための火付けを開始するのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回はこの続き、新戦法のあれこれです


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