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第七話 リベンジさせてくれ

前回の更新ができなく、1回飛ばしてしまいすみません。

 

 短髪にサングラス、黒いライダーズジャケットに黒革のパンツ、履いているブーツも黒い、筋骨隆々の身長二メートル近い黒づくめの大男が、落ち着いた足取りで、のしのしと歩いている。

 その姿を見る人は一瞬ぎょっとし、異様な雰囲気を感じて、目をそらしそそくさと通り過ぎていく。

 男は交差点に差し掛かると一旦立ち止まり、何かを探すようにキョロキョロと周りを見渡してから、向かう方向を決め、再び歩き出す。


――――――


 風船少女にほっこりした俺たちは、一時中断していた話し合いを再開し、ノートに書き出した内容を改めて確認していた。


・超能力者を捕まえようとする

・銃を持った複数人の相手を全滅させるほどの力がある

・どんな攻撃もバリヤーの様な能力で防がれてダメージを受けない

・優子が金属バットで後頭部を殴った

・アナザー圭祐が捕まったとき、なんらかの攻撃で一度は振りほどいたらしい


 特に最後の二つ、黒づくめの男への攻撃について。優子の場合は俺への攻撃を止め、俺は逃げることができた。アナザー圭佑の場合も拘束されている状態から抜け出している。この二つを検討すれば、黒づくめの男に対しての有効な手段が見つかりそうな気がする。

 俺と優子はバットで殴った時の状況をはっきりと覚えているが、アナザー優子の場合は気絶していたため、何をしてそうなったのか、状況が不明だ。そのため、アナザー優子が気絶から覚めた時の状況をできる限り思い出してもらおうとしていた。


「改めて、思い出して欲しい。どんな些細なことであっても」

「はい。黒づくめの男は膝をついていました。そして、立ち上がって圭佑に向かいました。そして…」


 ここまで言いかけてハッとするアナザー優子。


「そういえば、足から血を流していました…!」

「足から血、それはアナザー圭祐の攻撃?」

「多分そうだと思います。圭祐の能力はお話しした通り、目からビームを出す攻撃です。それが当たったのだと」

「ふむ。それしか考えられないけど…。そうするとおかしいな、その後の、優子さんが見ていたときは避けるか、青い光で攻撃を防いでいたんだよね?」

「そうですね」


 ということは、何らかの方法で、青い光で防がれずに攻撃を当てた、ということか。


「もしかして、足を狙われたら防御できない…?」


 俺はノートに書き足した。

・足を攻撃されたら防御できない


「私が起きてから圭祐が何発か当てましたが、足に当たっても防がれていたので、それは無いと思います…。

「なるほど…」


 俺は書いたところに横線を引いて取り消した。


「あのさ、ちょっと質問」


 優子が何か思いついたように口を開く。


「どうした優子、何か気づいた?」

「二人は捕まってたんだよね? で、気絶しているうちに運ばれてた」

「はい、そうです。気づいたときは外でした」

「どんな体制で運んでたのかな?」


 なるほど、どういう体制から攻撃したのかってことか。俺はノートに運び方を書いていくことにした。


・どうやって運んでいたか

・おんぶ

・だっこ

・お姫様抱っこ

・腕や足を掴んで引き摺る

・肩に担ぐ

・脇にかかえる


「おんぶやだっこだと一人だけなら運べるけど、二人は無理ね」

「ましてや、お姫様だっこなんて両手で持つからな」


 俺は横線を引いて消していく。


「衝撃で目が覚めたので、私は引き摺られてはいなかったんと思います。圭祐は分かりません」

「なるほど、引き摺った可能性はあるとして、後は肩に担ぐか脇にかかえるってことか」

「確かに、その持ち方だと両手で片方ずつ二人運べそうだけど…」

「実際、そんな簡単に持てるのか?」

「そんな動画みたことあるよ」

そういって、優子がスマホを操作して、動画サイトを開いた。ファイヤーマンズキャリー、自衛隊尾で消防士搬送と言われる担ぎ方を紹介する動画だった。


「なるほど、これなら一人運んでも、片手が空くな。その空いた手でどこかをもってもう一人を引き摺ったか?」

「アナザー優子さんが引き摺られていないとしたら…」

「優子ちゃんを肩に担いで、圭祐を引き摺った?」


 俺と優子のやり取りを、アナザー優子は否定した。


「圭祐も、引き摺られてはいなかったと思います」

「どうして、そう思う?」

「私が目を覚ました時、圭祐の服は汚れていませんでした。スーツだったので引き摺られて汚れていたらわかったと思います」

「なるほど…」

「それに、引き摺られている体制から顔を向けてビームを撃つのは難しいかと」

「ということは、アナザー圭祐を肩に抱えて、アナザー優子を脇に抱えた?」

「うーん…」


 優子が見せてくれた肩に担ぐ動画をもう一度見てから、俺はトントンとボールペンでノートを叩きながら想像する。ダブル優子も顎に手を当てて想像している様だ。

 右肩に腹のあたりを乗せて股から片足を締めるように回して腕を持って担いでいる。頭は反対の肩の後ろ辺りにある。

 確かにこの体制だと…足を攻撃できそうだし、脇に抱えた優子が落ちたら衝撃がくる。それで目覚めたと考えられる。けど、脇に抱えるって大変だと思うけど。

 そういえば、圭祐を掴んで数メートル投げたんだっけ。そんな力があるなら可能か…。


「アナザー優子さん。黒づくめの男は足のどのあたりから血を流していた?」

「ええと、ふくらはぎ、だったと思います」


 なるほど、担がれた状態からふくらはぎを攻撃したんだ。


・ふくらはぎを攻撃


 書いてから、ちょっと考えて付け加える。


・ふくらはぎを攻撃←後ろから


 ということは…。


 後ろから攻撃したときは青い光は出ない?


 それってつまり、防御するために意図的に青い光を出している。だから、不意を突かれたときには出ないってことか?

 これは突破口になるかも…!そしてノートに付け足す。


・攻撃に気が付かないと青い光は出ない←不意打ち有効


 三人で顔を見合わせて頷きあう。これならいけるかも。だが、まだ問題がある。最初は不意打ちを仕掛けたとして、こちらに気づいた黒づくめの男に二発目、三発目をどうやって攻撃を当てるか。


「そこは、圭祐の能力なら後ろから何かをぶつけるとかすればいいんじゃない?」


 優子があっさりという。確かにそうだな。


「問題は、俺がどこまで力が使えるかだな…」

「そうだねえ」

「重くて、優子を持ち上げられなかったしなあ…」

「あ!?」

「いや、なんでもないです…」

「練習しましょう! 練習」

「そうだね、練習しよう!」

「じゃあ優子、リベンジさせてくれ」

「…絶対ヤダ」

「また山盛りパフェおごるからさー」

「ヤダ」


 眉間に皺を寄せてジト目で俺をみている優子。アナザー優子が周りを見渡して指を指して言う。


「あの自転車はどうでしょう?」


 アナザー優子が指さす方向を見ると、子供用自転車、クロスバイク、電動自転車などが何台か停められていた。


「やってみよう」


 まずは一番軽そうな子供用自転車から。俺は右手を伸ばして自転車を持ち上げるように動かす。自転車は難なく持ち上がる。少し持ち上げたところで止めて、下ろす。次はクロスバイクで試す。これもすんなりと持ち上がる。

 一番重そうな電動自転車はどうだろう。これも苦も無く持ち上がった。右手で電動自転車を持ち上げながら、左手でもう一台の電動自転車を持ち上げてみる。誰も見ていないのを確認して一気に十メートルほど持ち上げてみた。


「これぶつけたら結構なダメージになるんじゃない?」

「そうかもしれません」

「早くぶつけて!」

「優子お前、無茶言うなよ。」


 そう言って優子を見ると、優子は公園の出入り口のを見て固まっていた。その視線を辿ると黒づくめの男が公園に入ってくるところだった。


「あ、あれは…!」

「来やがった…、なんでここがわかったんだ…!」


 俺は両手を振り回して、黒づくめの男に向けると同時に、能力で掴んでいる自転車を手放した。黒づくめの男に向かって飛んで行く二台の自転車。

 黒づくめの男は飛んできた自転車を両手で払いのけるようにして跳ね返した。そして立ち止まりこちらをジッと見たあと、まっすぐこちらに向かってきた。


「こっちに来る!」


 俺は、止めてある自転車を能力で掴んで腕を振り回して黒づくめの男に投げる。男はのしのしと歩きながら、飛んでくる自転車を手で振り払っている。


「くそ! 全然効かない!」

「圭祐、後ろから当てないと!」

「わかってるけど…、今の状態じゃ無理だ!」


 俺たちは立ち上がり公園の別の出入り口に向かう。黒づくめの男は足を速めて迫ってくる。くそ、どうにかならないか…。

 原付スクーターが目に入る。俺は能力で掴むと振り向いて、今度は投げずに掴んだまま、殴りつけるようにぶつける。黒づくめの男が跳ね返しても、離さずに何度もぶつけるようにして攻撃する。

 奴は一切ダメージを受けてはいないようだが、スクーターをぶつけ続ける。すると黒づくめの男は振り払うのをやめ、ぶつかってきたスクーターを両手でグイッと掴んで引っ張った。


「うわ、うわわわ!」


 俺は綱引きで引っ張られたかのように前のめりにこけそうになり、能力で掴んでいたスクーターを手放した。そして、後ずさりながら振り向くと、ダブル優子とともに走り出した。






「はあ、はあ、はあ。逃げ切れたかな?」

「わからん。逃げられるだけ、逃げよう」


 さすがに、全力疾走すると息も切れるので俺たち歩きながら息を整え、また走っては歩きを繰り返し、駅前まで来ていた。


「こ、ここまで離れれば…」

「逃げ切れた、のかな?」


 ダブル優子の話を聞きながら、走ってきた道を振り返る俺。向こうから異様なものがやってくるのが見えた。


「あ、あれは…!」


 俺の様子に気づいた優子たちもそちらを見て驚愕している。身長二メートルはある黒づくめの大男が原付スクーターにちょこんと座って走ってくる。なんて似合わない。こんな状況じゃなければ笑ってしまう異様な光景だ。


「行こう!」


 俺たちは、切符を買い駅の改札を抜けた。

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