第五十話 誰にも言わないつもりだったけどね
予告通りに更新できなくてすみません。
やっと書きあがりました。
少しだけ長めなので、二話に分けています。残りは夜に更新します。
「私が超能力を持っているのは皆さんご存じですよね? そして、こちらの二人も超能力を持っています」
愛美が改まった口調で話だす。続けて、俺たちのほうに手を向け、紹介するように打ち明けた。ご老人たちは数人が頷いているが、言葉を発することなく彼女の話を聞いている。
「超能力を使った犯罪者が出たことで、政府は超能力者を取り締まり組織「超査室」を発足させたわ。一言でいうと、超能力者だと判明した者を拘束するための組織ね」
愛美がそう言い終わると、ご老人の中の一人が眉を寄せる。
「判明した者をって。それは、犯罪を犯してなくても?」
「ええ、超能力者というだけで、犯罪予備軍扱いされて、有無を言わさずとらえられるのよ。だから――」
「超能力者たちは自衛のために領域を作ったってわけだね」
愛美が老人の質問に答え、続けようとすると。別の老人が口を挟んだ。その具体的な内容に、俺は反射的に言葉を発した人物を見る。愛美とQちゃんも、いやご老人たちも同じように同様にその人物へと視線を向けている。
「キヌさん……。知っているのね?」
その発言は、押しかけてきて最初に捲し立ててきた、愛美にキヌさんと呼ばれていたおばあさんだった。愛美は驚いた様子だが、なぜ? とは聞かない。知っているということは、つまり、そういうことだからだ。
「まあね、本当は誰にも言わないつもりだったけどね。あたしの能力はこれさ……『開けゴマ』」
キヌさんがそういうと、広間のふすまが音もなく開いた。
「御覧の通り、開けるだけの能力だよ。これを使うと鍵が閉まっている扉も開くし、扉じゃなくても、引き出しや、瓶のふたも開けられるから、家事には便利だけどね」
そういって、彼女はにやりとわらう。ご老人たちはキヌさんを目を丸くしてキヌさんを見ている。誰も言葉を発しない中、愛美だけが疑問を口にする。
「じゃあ、キヌさんは、領域に?」
キヌさんの表情が苦笑する様なものに変化した後、愛美に答える。
「いや、お世話になったことはないよ。前に誘われたことがあるけど、拒否したよ」
「ちょっと、キヌさん。あんたも超能力を持ってたのかい?」
キヌさんが自身が超能力を持つことを公開したことで、ざわめきが起きる。中には、なんで教えてくれなかったんだと、非難めいた声も聞こえる。
「アタシのことはいいんだよ! 今は愛ちゃんの話をきくところだろう? あんたたち、ちょっと黙りな!」
ざわめく老人たちに、キヌさんが声を張り上げる。さっきもそうだったが、その小柄な体からどうやって出しているのか、実はそれが超能力と言われても信じてしまうくらいの大声だ。キヌさんの怒声ともいえる声に、ご老人方が口を閉じる。しかし目を見れば、キヌさんの言い方に不満があることは丸わかりだ。キヌさんは皆を見渡して大きく息を吐くと、音量を下げて話し出した。
「今まで黙ってたのは理由があるのさ。超能力があるって知られたら捕まっちゃうんだよ。場合によっては周りの人間も疑われちまう。皆に迷惑をかけるより黙ってたほうがいいだろ?」
皆に迷惑をかけないために秘密にしていたと言われ、老人たちの空気が少し緩んだような気がする。空気の変化を見届けた愛美が説明を再開する。
「領域はね、政府に見つからないように、超能力者たちが集まって、出来るだけ人との接触を断って隠れすむような所なのよ。だからキヌさんはたぶん――」
「アタシはね、家族も、あんた達とも離れてしまうのも嫌だったのさ。中には超能力者じゃない家族と一緒に領域にお世話になっている人もいるみたいだけどね。それはそれで、家族に迷惑をかけることにもなるし、何より、気心が知れた友人たちと離れるのはいやじゃないか。だったら超能力を使わず、誰にも言わないで秘密にしておくほうが何倍もましだよ」
キヌさんが愛美の言葉の途中に割り込んで、心の内を明かす。数秒の間があり、キヌさんが続けて話し出す。
「それで、愛ちゃんはあの写真の女性がリーダーの領域に居たってことだね? それはわかったとして、超能力者が捕まってもわざわざニュースになるなんて普通は無いのに、なんでこんな大々的なニュースになってるんだい?」
キヌさんが愛美のほうを向いて質問する。ご老人たちも同じように愛美を見ている。彼らの疑問の真意はそこにあるのだろう。黙って愛美が答えるのを待っている。
皆を見渡しながら、愛美はキヌさんの質問に答える。
「今説明した通り領域は見つからないように隠れて住む場所でもあるんだけど、自衛のための組織でもあるの。私たちの居たユイの領域は戦える能力を持った人たちがそれなりに居てね、政府に捕まった人たちを奪い返すようなこともしていたのよ。少し前にも、政府の建物を襲撃して、捕らえられた仲間を奪還したわ」
彼女はそこで言葉を切る。すかさず疑問が飛ぶ、この声はシゲさんだ。
「そんなことをしたらお嬢、隠れている意味がないのでは?」
「まあ、そうね。でも、言ったでしょう?自衛のための組織だって。超能力者だというだけで、政府に捕らわれ罪のない人を守るって意味もあるのよ。実際、そのために領域に所属した人もいるのだし」
シゲさんの質問に答えつつ、彼女の視線が俺に向く。それに気づいたご老人たちが俺を見る。愛美はなぜか言葉を続けない。誰も口を開くことなく静まり返る中、じっと見つめられ、ご老人からの圧を感じて、居心地が悪い。
「君は、お嬢の口ぶりからすると領域とやらの仲間だね?」
数秒はそのままだったろうか、沈黙をやぶり、シゲさんが俺に尋ねてきた。答えるべきだろうな。
「はい、俺は、愛美さんの話に出てきた、捕まった人を救出してもらうために所属した口です」
どうせ口を開くならと、愛美の話に関連した内容を返事とする。
「助けを求めるために身を寄せさせてもらったんですが、いろいろあって、俺自身も救出する部隊の一人として、襲撃に参加しました」
「まあ、そういうわけで彼は政府の組織と戦った経験があるんだけど、その時にとんでもない秘密を知ってしまったのよ」
俺の返事は愛美が伝えたいことに沿っていたらしく、再び彼女が口を開き、話を進める。
「とんでもない秘密、ですかい?」
またもやシゲさんが質問をする。この質問は愛美に向けたものだが、実際に遭遇した俺が答えるべきだろう。
「政府は、人体実験をしていたんです」




