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第五話 来月式を上げる予定です

前話で「超能力者調査室」の略称「超査室」をアナザー優子が言い忘れていたため、修正してあります。

圭祐、優子には既に略称は伝わっているものとして話がつづきます。

「ところで、優子さん、こちらに来た理由を聞かせてもらえないかな?」


 彼女達が同一人物ってことに気を取られて、話せていなかった本題に切り込む。

 隣の優子も神妙な顔になって見つめている。

 アナザー優子は辛そうな表情で話し出した。


「こちらの優子さんは違うようですが、圭祐と私はほぼ同時に能力が発現しました。ですが、先ほどお話しした「超査室」に見つからないように、二人の秘密として誰にも言わないようにして能力を使うこともないまま、日常生活を続けていたんです。まぁ、私の能力はお話ししましたが、彼…、圭祐さんのも日常で使えるような能力ではなかったのですけど…」


――――――


「行ってらっしゃい。気を付けてね」


 玄関で靴を履いている圭祐の後ろに立ち、優子は声を掛けた。

 靴を履き終えた圭祐は「行ってきます」と言うと、玄関ドアのノブに手を伸ばした。そのとき、突然ドアが勢いよく開かれた。ドアの外には背の高い筋骨隆々で、黒髪の短髪、黒い革のライダーズジャケット、パンツも黒い革でさらに黒い革ブーツを履いた、全身黒づくめの男が立っていた。


「「!?」」


 突然のことに声も出ない二人。黒づくめの男は圭祐に近づくと圭祐の胸倉をつかみ、中に向かって放り投げた。圭祐は優子の横を超えて吹っ飛び、壁に激突。ぐったりして動かない。


「圭祐!」


 優子が圭祐に走り寄り、屈みこんで圭祐に呼び掛けているが返事が無い。

 黒づくめの男はそのまま家の中に入り込んで二人に近づくと、手を払うようにして優子を突き飛ばした。吹き飛ばされた優子は壁に激突し、動かなくなった。

 黒づくめの男は無言のまま、圭祐を肩に担ぎあげ、反対の手で優子を脇に抱えると、玄関をでて外に出て行った。


 「う、…うーん」


 気絶から目を覚ました圭祐は自分が何者かに担がれていたことに気づくと同時に、何が起こったのかを思い出した。首を振り周りをみると、気絶した優子が抱えられていた。圭祐は自分の超能力を発動した。

 圭祐の能力、それは、目からビームを発射するものであった。圭祐は担がれている体制のまま、黒づくめ男のふくらはぎのあたりをめがけて、ビームを発射していた。

 突然の攻撃に、立ち止まる黒づくめの男。圭祐は緩んだ手を振りほどき、男の肩から逃れた。

 優子を抱える力も緩んだのか、どさりと地面に落ちる。その衝撃で目が覚める優子ががばっと顔を上げる。


「優子! 大丈夫か!?」


 圭祐の言葉にハッとしてそちらを向く優子、黒づくめの男は、足から血を流しながら立ち上がり圭祐のほうを振り向いた。


 「くらえ!」


 圭祐は男をめがけてビームを放つ。しかし、男は素早く動いてビームをかわした。

 外れたビームが、路上駐車している車にあたり、車は爆発を起こして炎上する。再び圭祐がビームを放つ。今度は命中。しかし、命中したところを中心に青い光が円のように広がり、まるで吸収されたかのようにビームの影響を受けていない。

 圭祐はビームを連発するが、黒づくめの男は当たっても青い光が広がるだけでダメージを受けていない。そして、圭祐の目の前まで接近した。

 黒づくめ男は圭祐に殴りかかる。男の拳を間一髪かわした圭祐は、男の脇を走り抜けようとする。黒づくめ男は振り向き、圭祐を捕まえようと手を伸ばす。その手をかわして、優子に向かう圭祐。

 優子が立ち上がり、たどり着いた圭祐の手をとると、二人はそのまま走り出した。


 黒づくめが追いかけてくるが走るのが遅い。このままなら逃げきれそうだと思う二人。

 しかし、角を曲がったところで立ち止まってしまう。二人の目の前には黒づくめの男が立っていた。

 反転し逃げようとする二人。だが、後ろにも黒づくめの男が立っていた。


「こいつら、一人じゃないのか…!」


 圭祐は目からビームを放つが、青い光で防がれる。

 黒づくめの男たちは前後からゆっくりと二人に向かってくる。このままではまたつかまってしまう。圭祐と優子がそう思った時、前後から、サイレンを鳴らしながら車が複数台現れた。その車に取り付けられたスピーカーから声が響いた。


「全員動くな! 超能力者捜査室だ! 超能力者が暴れていると通報があった。抵抗するなら発砲する!」


 それとともに車は停止し、中からスーツ姿の男達が下りてきた。彼らは圭祐と優子、そして黒づくめの男二人に銃を構える。

 銃口を向けられて、動けない圭祐と優子。しかし、黒づくめの男達は銃を向けた男達に振り返ると、そちらに向かった。

 超査室の男達はすぐさま発砲。パンパンパン! と乾いた音が鳴り響いた。黒づくめの男の体にいくつもの青い光が浮かぶ。銃弾のダメージは全くないようだ。超査室の面々に近づくと拳を振るい、一人ずつ仕留めいく。


「あの黒づくめは…、超査室のやつらじゃないのか?」


 動けないまま、訝しがる圭祐と優子。

 やがて、超査室の男達を全滅させた黒づくめ二人は、圭祐と優子のほうに向かいだした。

 圭祐が目からビームを放つが、青い光に打ち消され、黒づくめ男たちが迫ってくる。


「ビームも拳銃も効かないようだが、これならどうだ!」

 

 圭祐は地面に向けてビームを放ちながら首を振る。ビームが横に薙ぎ払われ地面が深くえぐり取られて大量の破片が飛び散った。破片が大量すぎて青い光で防いぎきれないのか、両腕を顔の前に交差させて立ち止まる黒づくめの男。

 やった! という顔をして優子のほうを向く圭祐。その瞬間ハッとした表情になる。もう一人の黒づくめの男が優子の目の前まで迫っていた。

 圭祐はとっさに、優子を襲う黒づくめの男に体当たりを仕掛ける。

 そのまま、男と一緒に地面に転がる圭祐。黒づくめの男は倒れながら圭祐を掴んでいた。


「優子、逃げろ!」

「だめ! 圭祐!」

「早く! そっちのやつが来る前に!」


 叫ぶ圭祐。破片で立ち止まっていた黒づくめ男が、動き出していて、こちらに向かっている。


「優子! 行くんだ!」


 倒れたまま黒づくめの男に掴まれて身動きできない圭祐が叫ぶ。

 優子は、泣きながら胸の前に両手を組んで祈るような姿勢でつぶやいた。


「ごめん、圭祐。かならずあなたを助けるから…!」


 優子は光に包まれ、その場から消えた。


――――――


 アナザー優子の話を聞いて、俺も優子もしばし言葉が出ない。


 彼女も黒づくめの男に襲われていたとは。なんとなく、こちらの朝の状況と似ている。あの時優子が来てなかったら、俺もつかまっていたんだろう…。そんなことを考え優子のほうを見たら、優子は目をキラキラと輝かせていた。

 え、なんで?


「ちょっとちょっと、優子さん! 今の話ひっかかることがあるんだけど!」


身を乗り出すようにして優子は早口でまくし立てた。


「朝の支度を終えて出勤って、そんな時間に一緒にいたってどういうこと? ねぇ、どういうこと?あなたとその圭祐さんってどういう関係!?」

「一緒に住んでますよ。来月式を上げる予定です」


 優子の剣幕に、アナザー優子は一瞬目を真ん丸にした後、くすっと笑ってこう言った。


「「えええー!?」」


 俺と優子は驚きの余り、腰を浮かして叫んでしまう。は、いかん。ここはファミレスだった。恐る恐る周りを見回すと、何事だといった表情で視線がこちらに集まっていた。店員さんも立ち止まってこちらを見ている。


「騒がしくてすみません…」

「すみません」


 俺たちはペコペコと頭を下げて席に着いた。アナザー優子も一緒に謝ってくれている。


「ごめん。びっくりしすぎて大声出しちゃった」


 優子が頭をぽりぽりと書きながらアナザー優子にあやまっている。

 そのタイミングで注文した料理が届いたので、話を中断してとりあえず食べることにした。


「もぐもぐ、…それでいつからお付き合いを?」


 優子が食べながら好奇心全開で聞く。


「高校二年のときですね」

「え。高校のとき? 圭祐と交流あったの!?」

「え、ええ、同じクラスでしたし」


 高校進学前に優子の引っ越で交流のなくなった俺たちは驚いた。優子もびっくりして、身を乗り出して聞く。アナザー優子はその権幕に頭の上に「?」なを浮かべながら返答する。


「で? で? きっかけは!?」

「圭祐が他のクラスの子に告られて、どうしようって相談されて…、そのとき私、嫉妬しちゃって…。圭祐に怒ってしばらく無視してたんです。さすがに圭祐も気づいたみたいで…、その子に断って、私に付き合おうって…、言ってくれたの」

「マジか…!」


 アナザー優子の話を聞いて絶句している優子。そこまで驚くことかね。男女のきっかけなんか色々あるだろうに。

 優子が沈黙したので、俺が話す。


「こっちの優子は高校進学前に引っ越したから、俺たちは高校は別だし、俺が就職してこっちに来るまで交流無かったんだよ」

「なるほど。それでその反応」


 アナザー優子は俺の説明で優子の態度に納得したらしい。さて、食べ終えたので本題に戻ろう。


「世界が違うとそんなところまで違うんだねー」


 …まだ言ってるやつがいるが、ほっといて進めるぞ。


「しかし、そちらの世界でも黒づくめの男が…。けど変だな」


 黒づくめの男が超能力者を捕まえようとしているのは確定だ。しかし、超能力捜査室とやりあっていたというのがよくわからない。黒づくめの男は政府の組織とは別に動いている…?

 考えれば考えるほどわからない。


「そこは私にもわかりません。けど、超査室の人たちは黒づくめの男も捕まえようとしていた様なので…、仲間ではなさそうですね」

「しかし、いきなり銃口突き付けたり、発砲するとか考えられないんだけど…」

「それは理由があるのです。こちらの世界では政府のやり方に反抗する超能力者たちの組織があります。彼らに対抗するために、超査室には銃火器の使用が認められているんです」


 アナザー優子の説明によると、超査室が超能力者を捕まえることに、反発した超能力者たちが集まった集団ができたらしい。そして、政府に対して示威行為を行ったという。

 連中は東京タワーを消失させた。忽然と消えたタワーの敷地には、タワー内部に居たはずの人たちが呆然と立ち尽くしていたらしい。

 そして、事が起こった直後、マスコミに各社に「超能力者解放同盟」と名乗る者から、犯行声明ともいえる内容が伝えられてきた。それは政府に対して超能力者たちを虐げる方針を取り下げ、捕縛された者の解放を要求するものだった。

 これはテロ行為とみなされ、政府は断固たる措置をとることを発表した。


「そんなわけで、政府はますます超能力者への警戒を強め、超査室の権限を拡大させていきました。銃の使用を認めているのもこのためです。そして、超能力者たちは地下に潜み、既に捕まっている人たちを実力行使で奪還すると表明しています」

「…なるほど」

「そして、この流れは国内だけではなく、全世界で起こっています」


 まぁ、それでも日常は続いていき、関係のないところでは対岸の火事、と言ったところであったが、そんな中に新たに能力者が発現した者たちは、テロ組織に加わる者と、能力を隠して日常を過ごす者に二分されていた。


「状況は大体わかった。で、優子さんはただこちらに逃げてきたわけではないんでしょう?」


 俺の言葉に、優子は一度目を瞑り大きく息を吸い込み、吐いてから、目を開けてこちらをまっすぐ見て言った。


「はい、圭祐さんを助けるための協力をお願いします」


四話までに比べて文字数が若干増えてしまいました。

戦闘描写難しい…。

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