第四十九話 薄情者にはなりたくないね!
相変わらずのスローペースですみません。
ひっそりと続けてます。
話の大筋や設定は決まってるので完結はさせたい……!
※タイトルとあらすじを更新しました。
「まずは現状確認からはじめましょうか」
愛美が口を開く。
Qちゃんが「ヒラメイカー」で作り出したホワイトボードの前に立って、「現状確認」と書き込んだ。どうでもいいことだが、畳敷きの部屋にホワイトボードがあるのって違和感が半端ないな。
Qちゃんはその下に「領域の壊滅」と書き加えると、こちらを振り返って話し出す。
「領域が襲撃を受けて、脱出した私たちは現在警察から手配されています」
そういって「お尋ね者」と書き加える。言葉のチョイス、独特だな。そんなことを考える俺に向って愛美が言う。
「圭祐君、他に書き加えることはある?」
「リーダーが逮捕された。ですかね」
俺がそう返答すると、Qちゃんが「リーダー逮捕」と書き加える。それを見て言葉を続ける。
「……俺達三人以外に、誰が無事なのかはっきりとわからない。これもですかね」
Qちゃんがさらに、「静岡愛美、藤沢圭祐、門脇唯奈が脱出」と書き、その下に「他は不明」と書き加える。そして、ホワイトボードから少し離れる。
俺はボードを見ながら言葉を続ける。
「現状、不明なことが多すぎですね。俺たちはこうしていますけど、領域がどうなったのか……。あのニュースだけでは何もわからない」
「そうね。行動を起こそうにも、不明なことが多すぎるわ」
俺と愛美の言葉に続けてQちゃんが言う。
「確かに、私たちは領域への襲撃から脱出できましたけど、他の人たちはその後どうなったのか、それが分からないと、これからどうするのか決められませんね」
俺達は三人とも、「現時点では何もわからない」という状況を再確認した。
「じゃあ次は、何をしたいのか。それぞれの意見を挙げて行きましょ」
愛美の言葉を受けて、真っ先にQちゃんが発言する。
「リーダーを助け出さないと」
彼女はそう言うと、ホワイトボードに「目標」と書いてその下に「リーダーの救出」と書く。
「そのためには、もっと状況を知らないとね。情報集めが必要だわ」
Qちゃんが「情報収集」と書き足し、愛美を見ながら言う。
「落ち着いて情報収集するには、拠点が必要ですね。とりあえずはここになるんでしょうか?」
最後は愛美への確認なのだろう。Qちゃんの問いかけに俺も愛美を見る。彼女は困ったような、思案気な表情をしていた。
「うーん。ここを拠点にするのは、ちょっとねぇ……」
腕組みしている愛美の答えは、どうやら賛成しかねる様だ。はきはきと話す彼女が珍しく語尾を濁している。彼女と関わってそれほど時間が経ったわけではない俺でも違和感を覚えた。横目でQちゃんを見ると、わずかに目を見開いている。やっぱり珍しいのか。
愛美は俺達二人の視線に気づくと、腕組みを解いて、手を左右に振りつつ答える。
「あーごめんごめん。深刻な話じゃないのよ? この辺りってご近所ネットワークが強いから、拠点にするには難しいと思うのよ」
苦笑しながら言う言葉の意味を考える。つまりここにいることは近所に筒抜けで、すぐにばれるってことか?
「え、それじゃあ。俺達通報されるんじゃ?」
俺がそう問うと、愛美はさらに激しく手の左右にふりつつ、苦笑しながら答える。
「ちがうちがう。そうじゃないのよ」
愛美その返事に混乱した俺はQちゃんを見る。Qちゃんも俺の方を向いていて目が合う。彼女の顔に疑問符が浮かんでいるのがわかる表情をしている。多分、俺もそんな顔をしているんだろうな、と思いながら、愛美に再度問う。
「それって、つまりはどう言うことです?」
その問いへの答えを愛美からは聞くことはできなかった。
なぜなら、突然部屋の入口のふすまが開くと、お年寄り数人が乗り込んできたからだ。
どやどやと入り込んできた六十代、七十代と思われるお年寄りたち。部屋の中に入りきらないのか、ふすまの向こうにもまだ人がいる、全部で二十人くらいか? そんなことを思っていると、その中の一人がダミ声を張り上げた。
「帰ってきて挨拶も無いと思ったら、あのニュースは一体全体どういう事なんだい!?」
大きな声を出したのは、小柄なおばあさんだった。入ってきたご老人の中で最も小柄に見えるその体から、どうやって出しているのか、叫び声と言ってもおかしくない音量で捲し立てる。
突然の展開に驚いて声も出せず。振り返って二人を見ると、突然の闖入者とその口調に驚いたのか、Qちゃんはフリーズしていた。愛美は額に手をやり、あちゃ-とでも表現する様な仕草をしている。
「ちょっとちょっと、キヌさん、落ち着いてよ。ちゃんと話すから」
愛美が苦笑交じりに、おばあさんに答える。どうやらキヌさんというらしい。一緒にやってきた他のお方々が、キヌさんをなだめるようにポンポンと彼女の両肩を叩いている。
その横から男の人が出てきて、前に立った。おじいさんというには若く見える。この集団の中では若手なんだろう、老人一歩手前のおじさん、という雰囲気だ。
「突然押しかけてすみませんな、お嬢。オートバイが止まってるのは気づいとったが、そこにあのニュースじゃろ? わしら皆心配でしとるんですわ。だもんで、何がどうなっとるのか、お嬢の口から聞くために来た次第なんじゃわ」
興奮しているキヌさんとは対照的に彼は落ち着いているようで、ここに押し掛けてきた経緯を説明してくれる。その話しぶりから心配していることがわかる。愛美さん、可愛がられてるんだな。でも、お嬢?
「ん、皆が心配してくれてるのはわかるわよ。ごめんね、ありがとう。ちゃんと説明するから許してね」
愛美がそう答えて、言葉を切ると俺とQちゃんをちらりと見てから、おじさんに言う。
「それに、こちらの二人はこの家の事情を知らないのよ。突然見知らぬ集団が入ってきてドン引きしているから、ちゃんと落ち着いてから話しましょう」
そういうと愛美は俺たち二人に言う。
「Qちゃんと圭祐くんも、事情は話すからね。……ここじゃ狭いから、広間に移動しようか」
そういって彼女は俺たち全員に移動を促した。
Qちゃんが口をあんぐりと開け、真ん丸に目を見開いて呆然としている。俺も驚いている。愛美に案内された「広間」は想像以上に広かった。その部屋の中央に長い座卓が置かれていて、座布団が敷かれている。これは三十人、いや、五十人が座っても余裕がありそうなお座敷だった。
「広すぎますよ、これ……」
Qちゃんのつぶやきが耳に入る。俺は心の中で同意する。突然のニュースに続いてのご老人方の闖入、そして、広すぎるお座敷。驚きの連続だよ。
「Qちゃんも圭祐君もとりあえず適当に座ってくれる? あ、私ここに座るからその近くがいいわね」
愛美は、俺たちにそう言った後、老人たちにも同じように座るように促す。おばあさんが何人か外にて行き、湯飲みと急須をお盆に乗せて戻ってきて、全員にお茶を出してくれた。
お茶を入れてくれたおばあさんたちも席に着き、俺たちは全員、座布団の上に座るのを見届けた愛美が口を開いた。
「皆さんには悪いけど、まずはこの二人の紹介と静岡の家についての説明からするね」
そういって愛美は俺とQちゃんをご老人たちに紹介した。Qちゃんを教師時代の生徒と説明したことで、俺も同じく生徒だと思われたらしいが、全部を説明するのは面倒なので否定しなかった。続けて、愛美がこの家のことと、ご老人たちについてのことを俺たちに説明してくれた。
話をまとめるとこうだ。静岡家は古い家柄で、このあたりの大地主であり、自他ともに認める名士なのだそうだ。愛美の母は一人娘で跡取りだったので、父親は婿入りして静岡性を継いだとのこと。今では土地もほとんど手放して、この家ぐらいしか残っていないが、それでも古くから住む人からは静岡家は一目置かれているという。ここに集まった老人たちは元使用人だったり、静岡家に恩があったりする方々で、幼少期をここで過ごした愛美をかわいがってくれていたという。愛美を「お嬢」と呼んだおじさんはシゲさんと言い、愛美の祖父が存命中には丁稚として働いていたらしい。そして、今集まっているお座敷は、集会所として活用していたらしい。
「はえ~。マナちゃん先生が、大地主のお嬢様だったとは……」
少し前から驚き続けている、Qちゃんが絞り出すような声で言う。
「今は没落した家だけどね」
愛美が自嘲気味にそう答えるのを聞く、老人たちはわずかに顔をしかめるが何も言わない。
「まあ、そんなわけでね。私が事件に巻き込まれているとわかったら、無理をしてでも助けてくれようとする人たちだから……、迷惑をかけたくなくてね、ここに来るのは避けようと思ってたのよね~」
愛美が肩を竦めてそう返すと、今度はキヌさんが愛美に向かって口を開く。
「何言ってるんだい、迷惑なんてとんでもない。私たちはね、静岡の旦那さんには大変お世話になったんだよ。その孫娘の愛ちゃんが困っているときに、手を貸すこともしない薄情者にはなりたくないね! それで、どうして指名手配なんてされてるんだい!?」
相変わらず声が大きく勢いのある話し方だが、先ほどよりはほんの少し落ち着いており、その声色からは愛美を心配していることがわかる。
愛美は湯飲みをとってお茶を一口飲み、のどを潤すと、ここまでの経緯を話し出した。
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