第四十八話 私たちじゃないですか!
……更新止まってました。すみません。
前回までで逃げ切った感があって、ちょっと安心したら、次の展開がうまく浮かばなくて。気づけば半年以上放置してました。
でも、やっぱり最後まで書きたい。だから再開します。
また止まるかもしれないけど、見捨てずに読んでくれる人がいたら、めちゃくちゃ嬉しいです。
郊外の住宅地。
狭い路地の奥にたたずむ古びた家。平屋だが敷地は広く、車を数台とめられるだけのスペースがある。愛美の運転するサイドカーはそこで停車する。
「ここがマナちゃん先生の心当たりですか……」
「ええ、母の実家なんだけどね。今は誰も住んでないの。私が時々様子を見ることになっているのよ」
Qちゃんのつぶやきに、愛美がヘルメットを脱ぎながら答える。彼女は脱いだヘルメットを持って玄関に向かうと鍵をとりだして扉を開けた。
「さ、入って」
俺とQちゃんは愛美に促されるままに、広い玄関で靴を脱いで上がり込む。
「おじゃましまーす」
玄関から上がってすぐの引き戸を開けると、8畳くらいの畳の部屋があった。いかにも古い日本家屋と言った感じだ。住人は居ないと言っていたが、タンスやテレビなどの家具は普通に置かれたままで、普通に人が住んでいるように見る。
愛美がふすまを開けて座布団を取り出して、部屋の中央にある大きな低い木の机の周りに並べた。机は磨き込まれて艶があり、縁は複雑な模様が彫り込まれていて高級そうだ。
「とりあえず、一息入れよっか。ちょっと休んでてね」
俺とQちゃんが腰を下ろすと彼女はそう言って入ってきたのとは別の引き戸を開けて部屋を出て行く。なんだろう?とQちゃんと顔を見合わせていると、愛美が湯飲みをお盆に乗せて戻ってきた。
「ありがとうございます」
どうやら、お茶を入れてくれたようだ。礼を言って受け取る。
「水道は止めてないんですね」
「そうねー。年に数回は様子を見に来ていたから、水道だけじゃなくて、電気やガスも止めてないわ。まぁガスはプロパンだけどね」
そこからしばしの間、会話が途切れて無言が続き、俺達がお茶を啜る音だけが響く。
そして、愛美が湯飲みを机に置くと、ふうーと大きく息を吐いた。
「静かね。テレビでもつけようか」
そう言って、リモコンを手に取ると部屋の隅にあるテレビに向けスイッチを入れると、何度かボタンを押して番組を切り替える。そしてニュースをやっているらしい番組で手を止めた。
「え、これって?」
愛美がつけたテレビに目を向けていたQちゃんが、ひとりごとの様に言う。俺は、背中側に画面があるので見ていなかったのだが、Qちゃんの声に反応して、振り返って画面を見た。
「――連行されたのは、自称リーダーの女で、本名は不明。ユイと名乗っています」
テレビ画面の画面中央ではアナウンサーの女性が話しており、その横にはユイの領域|のリーダー、ユイの顔写真と「超能力者のテロリスト集団を逮捕!」というテロップが大きく映し出されていた。
「リーダー!」「「ユイさん!」」
驚きのあまり、大きな声を出してしまったが他の二人も同じだったようで、俺たち三人の声が重なる。その後に言葉が続かず、アナウンサーが話す声だけがテレビから聞こえる。
「なお、現場からは逃走した者も複数おり、超能力捜査室が付近に検問を設けて調査に当たっております。目撃情報から周辺には超能力者が多数潜んでいるとみられており、現場近くでの不審者の目撃情報を募るとともに、警戒を呼び掛けています」
そして、アナウンサーの横に映し出されていたのユイ写真が、遠目に写した人物の写真や、似顔絵に切り替わった。写真の画像が荒くて分かりにくいがあのシルエットは鳴海さんか?そして似顔絵のバンダナをまいた髭の男はヨシシか。ほかにも何人かの似顔絵があるが、俺が見てもだれかわからない人たちだった。
しかし、二人にはわかったようで、それぞれ口に出している。
「さやかさんに、園田君?……」
「……これは目撃情報と言いながらの情報公開ね」
真美が言うには、彼らは滅多に表に出ることもないし、仮に一般人が見ても不審者として報告されるような見た目でもないため、目撃情報というにはおかしいらしい。
その説明で俺は状況を察する。奴らはかなりこちらのことを調べ上げていた様だ。近隣の目撃情報としつつ、実質には調査内容を露出させているのだろう。となるおそらく……。
俺がそう考えたところにタイミングを合わせたように、また画像が切り替わった。そこには俺と愛美、Qちゃんそしてアナザー優子の写真が映し出されていた。
「私たちじゃないですか! それに優子ちゃんまで」
Qちゃんは自分が手配されていることに戸惑いを見せている。それに対して愛美は落ち着いているようだ。
「写真写り悪いわねえ。もうちょっと良いものはなかったのかしら」
「いやいや愛美さん、こういう写真はわざと写りが良くなくて人相が悪く見えるものを使うらしいですよ」
彼女の軽口に付き合って、どこかで聞いた気がすることを伝えているとQちゃんが口を挟む。心なし焦っているような感じだ。
「ちょっと、お二人とも。そんなこと言ってる場合じゃありませんよ! どうするんです、私たち、手配されちゃったんですよ!?」
焦った様子のQちゃんに対して、諭すように愛美が答える。
「Qちゃん、起こってしまった出来事は変わらないわ。今更焦っても意味がないわ。いいえ、焦れば焦る程、マイナスよ。こういうときは、これからどうするか、落ち着いて検討する。そうじゃなきゃ、私たちも捕まっておしまいよ?」
愛美の正論に、Qちゃんの表情が歪み声を荒げそうになるが、口を開きかけたところで動きが止まり、歯を食いしばるようにしながら目をつぶる。そして、ふうーっと息を吐きだすと、落ち着いたトーンで言葉を発した。
「マナちゃん先生は落ち着きすぎている様に思いますし、反論したいこともあります。ですが、先生の言う通りなのは確かです……。私たちはどうするべきか、方針を決めるべきですね」
Qちゃんの手は強く握られている。本人が反論があると言ったように、何かしら思うところはあるのだろう。しかし、愛美の言うことは正論であり、反論が建設的でないことは明らかだ。彼女もそれがわかっているから、感情を抑えたのだろう。愛美はそんなQちゃんをじっと見ている。心なしか嬉しそうに見える? なんというか慈愛に満ちた表情? 言葉にしがたいが、中学時代とは言え、Qちゃんの先生だった愛美には思うところがあるのだろう。
そのやり取りを見ていた俺に、真剣な表情になった二人の視線が向く。そして愛美が口を開いた。
「この状況で私たち三人がどう行動すべきか、作戦会議をしましょう。圭祐君もそれでいいわね?」
俺は、愛美の問いかけに頷いた。
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