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第四十六話 ロマンがないでしょう?

アクションシーンを上手に書けるようになりたい……。


誤字報告していただき、ありがとうございます。

黒づくめ→黒ずくめとするべきというご指摘をいただきました。

「黒尽くめ」の読みは「黒ずくめ」とするのが一般的ではありますが、「黒づくめ」でも間違いではないため、本作品では「黒づくめ」を使っております。

何卒ご理解いただけます様お願い致します。


 俺達三人を乗せたバイクは愛美の運転で走り出す。

 

 追ってくる黒づくめの男達のバイクは、すでに交差点を越えて、俺たちの後方、十数メートル程まで近づいてきている。

 さらに加速して追ってから離れようとするが、向こうも加速してくるので、つかず離れず、と言った距離だ。愛美が俺たちに叫ぶ。


「飛ばすわよ! しっかり掴まっていて!」


 エンジン音が大きくなり、体が後ろに引っ張られる。俺は膝に力を入れ、腕を回して愛美にしがみつく。もちろん、運転の邪魔にならないように気をつけてだ。


「ひええええええ、こんなに怖いとはー!?」


 Qちゃんが悲鳴を上げながら、サイドカーの手すりに必死にしがみついている。何キロくらい出ているのかはわからないが、ぐんぐんと加速するバイク。

 だが、一瞬引き離したものの、相手も加速して追いつこうとしてくる。


「振り落とされないでね、がんばって!」


 大きなカーブに差し掛かったところで、愛美は左へハンドルを切る。サイドカーになっているので、バイクが傾くことはないが、横Gかすごくて返事をする余裕は無い。俺はステップに乗せた足に力をいれて踏ん張る。カーブを曲がりながら愛美がひとりごとのように言うのが聞こえる。


「サイドカーなんて初めてだから、勝手が違うわね」


 かなりの速度が出ているためか、バイクはずるずると中央線に近づいていく。このままではカーブを曲がり切れないのでは? と焦ったが、大きく膨らみながらもなんとか曲がることができた。

 カーブを抜けたときに、愛美が超能力を発動させるのを感じて。振り返って後ろを見る。追手の黒づくめの男たちが、曲がり切れずに道の外側にあるガードレールに衝突している。「アクセル」であいつらのバイクを加速して、コースアウトさせた様だ。

 クラッシュしたのは二台。残りの四台はカーブを曲がり切り更に追ってきている。


「まだ残ってるか……」


 バックミラーをチラ見した愛美がつぶやいた。

 そのまましばらく俺たちは走り続け、やがて海沿いの道に出た。

 奴らはずっと俺達を追い続けている。時々速度を上げて距離を詰めてくるが、その度にこちらも加速して引き離す。一定距離を保ったままの追走がずっと続いている。それに加えて新手のバイクもやってきて数が増える。カーブや交差点に差し掛かるたびに愛美の能力でやつらをクラッシュさせるのだが、それでは減らしきれず、追手は今、六台に増えていた。


「このまま増えていかれるとまずいわね……」


 そのつぶやきに反応するQちゃん。その横顔を伺うときらきらと輝いていた。


「大丈夫! 私に抜かりはないですよ!」


 自信満々なその様子から、サイドカーにしたときに、他にも何か仕掛けを用意した違いないと確信する。運転している愛美の表情を見ることはできないが、彼女も同じように思っているのが声から伺えた。


「なにをする気よ?」

「するのはマナちゃんですよ。ウインカーのボタンの上に、ボタンが追加されてるのわかりますか?」

「え!? 気づかなかったわ……なにこれ」


 戸惑う様子の愛美にQちゃんが自信満々に答える。


「ポチっとおしちゃってください!」

「う、うん」


 愛美の左手の親指が動きボタンを押すと、俺の後ろからバシュバシュバシュッと音がした。何かの発射音の様だ。振り返ると、複数の何かがやつらに向かって飛んでいくのが見える。

 一直線に向かう物や、左右に広がってから収束するような動きを見せる物、上昇しながら進んでいき一定距離から下降する動きになる物。様々な動きをしているがどれも、黒づくめの男達を目指して飛んでいく。そして、彼らの元にそれらがたどり着くと、すさまじい爆発音が響いた。

 

ドン! ドン! ドン! ド! ド! ド! ド! ドカーン!!


 ミサイルの着弾地点は炎が燃え上がりもうもうと煙が上がっている。奴らの周りを含めて埋め尽くす様に着弾したようだ。だからあんな不規則な動きをしていたのか?

 これはエグい! なんだこれ!? 思わずQちゃんを見る。


「追ってくる敵を倒すための超小型ミサイルですよ!」


 ドヤ顔をしながら声を張り上げるQちゃん。愛美が運転しながらQちゃんを振り返った。いや、怖いからやめてくれよ。


「そんな物騒なもの、私のバイクにつけないでよ!?」

「何を言ってるんですか、カーチェイスの基本ですよ! バイクですけど……。追ってくる敵を攻撃する手段を用意するのは当たり前でしょう!」


 それなら最初から使えばよかったのでは? と思うのだがQちゃんはタイミングは重要なのです! とすごくイイ顔で答えてくれた。その直後、後方からエンジン音が響いた。

 後ろを振り返ると爆炎の中から、黒づくめの男のあやつるバイクが一台飛び出してきていた。あのミサイル攻撃を抜けてきたのか! そしてぐんぐんと距離を詰めてくる。

 ん? 遠目ではわからなかったが、これだけ近づかれると黒づくめの男の後ろにもう一人乗っているのがわかるぞ。少し細身のようだ、黒づくめの男以外も居たのか。


「あ、一台残りましたねぇ」


 Qちゃんも気づいたようだが、あいかわらずマイペースな彼女はのんびりとした声を上げている。その間にも追手が接近してくる。愛美は速度を上げずに追いつかれるがままにしている。ちらりと見ると、ハンドルを握る手の指がミサイルの発射ボタンに掛かっている。今度は避けられないように近づけて仕留めるつもりだな。


「見事だな。だが、この俺様、板野助次郎(ばんのすけじろう)の『ディメンジョン』の前には無駄な攻撃だ!」


 追手のバイクの後ろに乗る人物が声を張り上げた仮面の男以外にも協力者がいるのか。そして超能力か。もしかしてさっきの奴か?

 そんなことを思っていると、板野と名乗った男が超能力を発動する気配がする。すかさず「ジャミング」を発動して阻害する。


「な!? 俺様の『ディメンジョン』が発動しないだと!?」


「吹っ飛べ!」


 愛美がボタンを押した。


 ………………


 しかし何も起こらない。


「あれ? ミサイルが出ない。ちょっとQちゃん!?」


 愛美が声を張り上げる。Qちゃんは当然といった調子で答える。


「あれは一回だけですよ、秘密兵器ですからね。そう何度もつかえたらロマンがないでしょう?」


 ロマンよりも、実利を取って欲しい…。俺は切にそう願った。Qちゃんなら仕方ないと諦めて思考を切り替えたのか、愛美が呆れが混じった様に言う。


「このまま何とか引きはがすしかないようね……」

「大丈夫ですよ」


 それに答えるQちゃん。やけに自信満々だ。


「え?」

「このまま加速してください、『アクセル』を使って限界まで」

「そんなことをしたらこの先のカーブで曲がれないわよ、ガードレールにぶつかって海に落ちちゃう!」


 Qちゃんの言うことが意味不明すぎて理解できないようだ。だがQちゃんは愛美の様子を気にも留めてない様で淡々と続ける。


「大丈夫ですよ。まっすぐ突っ込んでください。ガードレールにぶつかる直前で今度はセルスターターボタンをダブルクリックしてください」

「まだなんか仕掛けがあるの!? あんた私の愛車にどんな改造してるのよ!」

「それはやってみてからのお楽しみということですよ」

「ええいままよ!」


 愛美がやけくそ気味に叫ぶと『アクセル』が発動する気配がして、追手のバイクから離れていく。かなりの速度のはずなのだが、能力での加速だからか慣性を感じられず、後ろに引っ張られるようなことは無かった。

 愛美の肩越しに海とガードレールが近づいてくるのが見える。


「ほら、ガードレールが近づいてきますよ。手前でダブルクリックを忘れずに!」


 「アクセル」で直線的に加速しているバイクは、カーブを曲がること無く直進する。このままではガードレールにぶつかって、海に投げ出されること必至だ。


「今です! ダブルクリック!!」


 Qちゃんが叫ぶとともに、妙な浮遊感が襲ってきた。エンジン下から、ロケットの噴射のようなものが出て、俺たちは飛び上がる。すごい力でシートに押し付けられるが踏ん張って耐える。


「ひえええええええ!」


 予想外の出来事に、愛美の叫び声がこだまする。そしてそのまま、俺たちはバイクと共にガードレールの上を越えて海に向かって飛んでいく。


「大成功ですよ!」


 Qちゃんの声がする。今は彼女の方を見る余裕が無いが見なくてもわかる。きっとドヤ顔をしているに違いない。

 ある程度すすんだところで、噴射が止まった。それに気づいて愛美が慌てる様に叫ぶ。


「ちょ! 下、海! 海! どうすんのよ!」

「そこは抜かりありません! 大丈夫ですから!」


 上昇する噴射が止まったバイクは重力に引っ張られ、山なりに下降していく。自由落下の浮遊感が気持ち悪い。俺も愛美もQちゃんに返事をする余裕もなく、バイクにしがみつく。

  足下に海が近づいてきて、思わず目をつぶってしまった。


「「うわああああああああ!」」


 俺と愛美の叫び声が重なる、このままでは海にドボンだ。こんな勢いで海にたたきつけられれば、バイクも、乗っている俺たちも無事では済まないはず。


「え、なにこれ!?」


 海に突っ込んだ衝撃が感じなかった。目を開けると俺たちの周りにはなぜか空気があった。目をこらしてみると俺たちの周りには何か膜のようなものが丸く張られており、そこが海水と空気の境目となっていた。

 そして、そのまま空気の膜と共にゆっくりと沈んでゆき、海底に着地した。


「ふっふっふー! 海に潜れるバイク! いいでしょう!素晴らしいでしょう!」


 Qちゃんが得意満面の笑顔で言う。


「秘密装備として海上装備は外せません! 車なら水上艇に変形させるんですが、バイクですからね。海底を走行させることにしましたよ!」


「は、はあ」


 並々ならぬこだわりを見せるQちゃんに俺と友美は顔を見合わせる。


「まぁ、さすがに海底まで追ってくることはないだろうし……。行こっか」


 Qちゃんの謎技術で空気に包まれた俺たちは彼女の運転で海底を走り出した。


読んでいただき、ありがとうございます

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