第四十五話 これは来ますよ、無茶振りが
ちょっと書けなくなってしまい、随分と間が空いてしまいました。
いくつか短編を書いて落ち着いてきたので、なんとか再開できそうです。
ラストは考えているので、途中休んでしまうことはあっても、完結までは持っていきたいです。
宜しくお願いします!
「私も微妙なんですよねえ。藤沢さんはどうです?」
Qちゃんが俺に向かって言う。俺がアナザー優子の能力で別宇宙からきた存在ということは知っているはずなので一応確認、と言ったところか。
こっちの俺も、隠してたみたいだが超能力者だったので、その仲間はいたかもしれない。しかし、当然ながら俺は知らない。
「俺の話は知っていると思うけど、こっちに来てすぐにユイの領域のお世話になったから、外に知り合いはいないんだよ」
Qちゃんは俺の返事に普通に頷く。そして、愛美はそうだったと言わんばかりに大きく頷きながら話し出す。
「あー、そういえばそうだったわね。じゃあ、あっちの世界? あなたが居たところに逃げるってのはどう?」
「あーそれは……」
愛美は俺たちが別の宇宙の存在ということは知ってても、誰の能力でこっちにきたのかは知らなさそうだな。
「それはアナザー優子の能力なんですよ。彼女と合流しないと移動はできませんね」
「そうなんだ。うーん……」
愛美は俺の返事を聞くと腕を組んで目を瞑った。何かを考えてる様だ。そんな彼女を見ているQちゃん眉間に皺を寄せている。どうした?
「あー。これは来ますよ、無茶振りが……」
「無茶振り?」
予想外な単語に思わず聞き返す。Qちゃんは俺のほうに少し近づくと声を顰めてささやくように言う。
「マナちゃんが中学で私のクラスの担任だったと言ったでしょう? 彼女が何か考え出すと、大抵はですね、生徒への無茶振りが出るんですよ」
よくない思い出でもあるのか、顔を顰めながら話すQちゃんの話を聞く。
「体育祭での話なんですけどね。三千メートルの長距離走があるんですけど、誰もやりたがらなくってなかなか決まらなかったんです。そしたらね、そこまで生徒が話し合うのを見守ってたマナちゃん先生がパンと手を叩いて立ち上がりまして、決まらないんだったら担任の私が決めるわって言ったんですよ。そして、生徒を一人指さしてあなたが出なさいって」
まぁ、担任が指名して決めるとかよくある話ではあるな。と考えながら、まだ続くQちゃんの話を聞く。
「指名されたのが私だったんですよ。運動は得意じゃないどころか、むしろ苦手で体育の成績もよくない私です。そんなに走ったら死んじゃうって抗議しても決定済みだって取り合ってくれなくって、しかたなく走ったんですけど……、ゴール直前でぶっ倒れました。真夏日だったのもあって熱中症になりまして、意識不明になりました……。マナちゃん先生が適切な処置をしてくれたそうで無事だったんですけど、処置が遅かったら危なかったそうです」
そう話すQちゃんは遠い目をしている。熱中症で意識不明か……。トラウマもんだな。救ったのが愛美だと言っても、原因作った本人だしな。さっき愛美が担任だったことを話さなかったのは、嫌な思い出があったからか……。
「一番強烈なエピソードはこれなんですけど、他にも色々とありまして……。マナちゃんが何か考えだすと碌なことにならないんですよね」
そういって引きつるような笑顔を浮かべるQちゃん。顔はこっちを向いているが、視線はどこか遠くを見る様に中空に向いている。ご愁傷様。俺は心の中で合唱した。
「それじゃあ今度は私のターンかな? 中学生時代のQちゃんのアレやコレを圭佑君に教えてあげなくっちゃね。何がいいかなー、あれかな? 二年生の時、屋上から−」
Qちゃんの話を聞いているうちに愛美は目を開いていて、ウキウキといった調子で話し出した。
「わーっわーっ! ヤメてくださいっ! ダメですううー!」
Qちゃんが両手を振りまわして絶叫し、愛美の言葉を遮ろうとする。彼女も色々とやらかしているみたいだな。愛美はノーダメージの様だが、対してQちゃんは必死だな。Qちゃんに勝ち目はなさそうだ。そんなことを考えていると、ふっと周囲に違和感を感じた。
この感覚は……! 俺はその正体を探ろうと辺りを見回した。
「どしたの?」
「どうしました?」
二人も俺の様子に気づいて周囲を窺っている。
「今、ほんの僅かですが、超能力の発動を感じました」
二人にそう伝える。時間にして一瞬、気づけなくてもおかしくないくらいの僅かな感覚。だが、間違いなくあれは能力の発動だ。撒いたとはいえ、俺たちは追われている。敵かもしれない。突然すぎてジャミングすることはできなかったが、気づけただけでもマシだ。
「せめてどんな能力か、わかればいいんだけど……」
愛美が周りを見回しながら言う、俺を見る。俺は首を横に振り答えた。
「どんな能力なのかはわかりません。俺にできるのは超能力の発動を感じてそれを邪魔することだけです」
「だとすると、厄介ね。姿を現さないってことは離れたところから何かできる能力かもしれないってことよね」
「でもでも、直接攻撃できるような能力じゃないかもしれませんよ」
こうやって相談しているうちにも、敵の攻撃が来るかもしれない。話をしながらも俺たちの目は周囲に向いている。
「もしかして……」
俺の後ろを伺っていた愛美が言う。Qちゃんと共にそちらに視線を向けるが、何も見えない。二十メートルほど先に交差点があり、その先は見通しの良い直線が続いているが、走っている車は一台もない。
一体何が? Qちゃんにも見つけられていない様で、俺の後ろを中心にきょろきょろと見回している。俺は不思議に思い愛美の顔を見るが、彼女の視線は依然として俺の後ろに固定されている。
「何も見えませんよ? どういうことです?」
俺がそう言うと、彼女は何か考え込むように手を顎に当てる。しかし一秒くらいで俺の顔を見て、彼女が口を開いた。
「圭祐君、『ジャミング』について、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なんですか?」
彼女の突然の確認に反射的に返事をすると、彼女が続けて質問してきた。
「どんな超能力が発動しているかわからなくても、『ジャミング』って効果ある?」
「……正体不明の能力で攻撃されているかもしれないということですか?」
突然すぎて質問に質問で返してしまう。彼女は俺の言葉に一瞬にやりと口の端が上がるが、すぐに真顔に戻って言う。
「勘だけどね。あなたの『ジャミング』で、能力をキャンセルすることはできる?」
うーん。継続して効果のある能力に対して、効果中に『ジャミング』を使って解除できるか、ということか……。
「やったことないのでわかりません」
俺は正直に答える。
「それでもいいわ。試しに発動してみてもらえないかしら? すぐそこの交差点から先を包む感じでお願い」
愛美は俺の後ろを指差して言う。さっきから彼女が見ていたのがその辺り、と言うことだろう。できるかどうかわからないと答えたのに、範囲指定までされてしまったな。どうせ、俺の答えが何であってもやらせるつもりだったのだろう。なるほど、これが無茶振りか……。おそらく今、俺はさっきのQちゃんみたいに遠い目をしていると思う。
俺は後ろを向き、交差点を対象と考えながら「ジャミング」を発動させた。
ヴオン! ヴオン!! ブロロロロー!!!
俺が能力を発動させた直後、エンジン音が辺りに響き渡った。
「「なっ!」」
俺とQちゃんの驚く声が重なった。何もなかった交差点の向こうから、突如バイクが現れたのだ。5台、いや6台か? それらすべてに黒づくめの男が乗っている。これは間違いなく襲撃だ。
愛美がすぐさま自分のバイクに駆け寄りエンジンを掛け、こちらを振り返りながら叫ぶ。
「圭祐君、後ろに乗って!」
その言葉にQちゃんが反応する。
「私は…!?」
「バイクなんだから二人までしか乗れないわよ! 追われているのは私たちだから、Qちゃんは自力で逃げて!」
「いやいやいや! あそこからなら、私たちが三人だって見られちゃってますよね!」
二人が言い合っている間にも奴らが迫ってくる。
どうする? 詰めて乗るか? などと俺が考えているとQちゃんがにやりと笑った。
「このバイクを三人乗りにすればいいんですよー!」
その言葉に合わせるように能力の発動を感じた。Qちゃんヤル気だな。
「急いでいるので色々略して…、それー!」
辺りにピコーンと言う音が鳴り響き、バイクの左側にサイドカーが突如現れた。
「は? ちょ、人のバイクに勝手なことしないでよ!」
愛美の抗議を無視してサイドカーに乗り込むQちゃん。俺も急いで後ろにまたがり、愛美に言う。
「追いつかれる前に行きましょう!」
「仕方ないわね、行くわよ!」
愛美は諦めたように言うと、アクセルを握り込んだ。
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