第四十二話 このままじゃジリ貧よ
俺と鳴海はいつの間にかあちこちから現れた黒づくめの男達に取り囲まれていた。
「鳴海さんだけでも逃げてくれ!」
「逆よ。あなたがここを抜けられれば私は能力で跳べる。どうにかして突破口を開くのよ」
俺と鳴海がそう話している間にも黒づくめの男たちはじりじりと包囲を狭めてくる。鳴海が他人を連れて瞬間移動できるのは、24時間に1回だけ。俺を連れて逃げることはできない。
じりじりと近づいてくる、黒づくめの男達。その壁の少しでも薄いところを見極め突破しようと考えを巡らせる俺たち。
黒づくめの男たちはゆっくりと歩きながら俺たちに迫ってくる。これ以上近づかれては突破も難しくなる。俺と鳴海は抜けれそうな一点を見つけ目配せする。そして、そこに突っ込んでゆく。
黒づくめの男の腕が伸び鳴海を捕まえようとする。腕が届く瞬間、鳴海が転移して消える。その空いたところに俺が突っ込んで足払いを掛ける。狭いところでバランスを崩した黒づくめの男はほかの男にぶつかり、共に倒れそうになる。その二人の前に転移で現れた鳴海がナイフを振るい、今度は男達を完全に倒す。彼らが倒れたことで包囲に穴が開いた。
ここを崩して包囲を抜くことができれば脱出できる。伸びてくる腕をしゃがんでかわす。黒づくめの男は筋肉質で大柄だ。多少の攻撃ではダメージを与えられないし、捕まえらたらばその怪力から逃れるのは困難。だが、2メートル近い身長なだけに低いところを動かれるのは苦手なはずだ。
俺は動ける範囲でなるべく身を低くしながら、方位に穴が空いた箇所に突っ込む。鳴海が瞬間移動で現れ、俺を掴もうとする男をナイフを切りつけて一瞬でまた移動する。斬りつける瞬間に「ジャミング」を発動するのも忘れない。
黒づくめの腕が伸びてくる。左に軽くステップして避ける。左から伸びてくる手を鳴海が切りつけて牽制する。俺は倒れそうになるくらいの前傾姿勢になりつつ地面を蹴って前に進む。低くした頭の上を風切り音を立てながら黒づくめの男の拳が通り過ぎる。前方に残り三人。こいつらを躱して進めば包囲を抜けられる。もう少しだ。と思った瞬間目の前の男から足払いが飛んでくる。前方にジャンプ。ここを躱したら後二人。なんとか脱出できそうだ。
しかし甘くはなかった。ジャンプしたところにすかさずパンチが飛んでくる。空中では躱すこともできない。咄嗟に両腕を体の前にクロスさせガードする。黒づくめの男のパンチと激突。咄嗟のガードが効いてダメージはほとんでおなかったが、後ろに飛ばされてしまった。
追撃が飛んでくるのを必死に避ける。前後左右からの攻撃を必死に避ける。反応しきれない攻撃は鳴海が瞬間移動してきて捌いてくれる。しかし、攻撃を抱けるため後退することもあり、奴らとの位置関係は元に戻ってしまい、俺は包囲された状態から抜け出せないでいる。
倒れていた黒づくめの男はすでに起き上がっていて包囲に空いた穴は塞がっていた。鳴海が瞬間移動で俺の隣にくる。
「まずいわね、このままじゃジリ貧よ」
一連の攻防で体力が削られた俺は返事もままならない。こんな状態が続けば動けなくなってしまう。ここまでだろう……。せめて、鳴海だけでも逃げてもらわないと。俺は息を整えつつなんとか声を振り絞る。
「鳴海さん―――」
ブロロロロォーン!!!
俺が鳴海に話しかけようとしたとき、唐突にエンジン音が響き渡り、一台のバイクが黒づくめの男を体当たりで吹き飛ばして突っ込んできた。
そして、俺たちの横まで来ると、後輪を滑らせながら急停止する。その形状からアメリカンバイクといわれるタイプだろうか。
何事かと驚いて固まっている俺に向かって、運転手がヘルメットのバイザーを上げこちらを向く。
女性!?
「乗って!」
その女性は俺に向かってそう叫ぶと、黒づくめの男を威嚇するかのように、アクセルを吹かしてエンジン音を鳴り響かせる。
「早く!」
その女性はエンジン音を響かせながら、再び俺に向かって叫んだ。この人は味方なのか? 乗るべきなのか? 俺は迷いながら鳴海を伺う。
「あなたは乗せてもらいなさい! 私一人なら転送で脱出できるから!」
俺は鳴海にそう言われ反射的にバイクに向かう。そして、後部座席にまたがった。
「しっかりつかまって!」
言われるまま、運転席の女性にしがみつくと、俺を乗せたバイクは黒づくめの男を体当たりで吹き飛ばしながら包囲を抜けて走り出した。ぐんぐんと加速してその衝撃で体が後ろに引っ張られるため必死にしがみつく。
振り向くと鳴海はすでに瞬間移動で脱出した様だった。やつらから逃れられたことでほっとした俺は運転している女性に向かって、バイクで走りながらなので、叫ぶように誰何する。
「助かりました! あなたは!?」
「安心するのはまだ早いわよ! 追ってくるわ!」
女性のからの予想外の返事に振り向くと、後ろには数台のバイクがすごい速度で走ってくる。四台、いや五台か。運転しているのは黒づくめの男のようだ。ヘルメットをかぶっていないのですぐ分かった。
「振り切るからしっかりつかまってて! 手でつかむだけじゃなくて私の体を挟むようにもっと膝を締めて! いい? 絶対に自分でバランスを取ろうとしないこと。あなたは荷物になってバイクと一緒に揺られていて。遠心力に逆らったりしないでね! そうじゃないと思い通りに走れないから!」
そう言われ、足に力をいれて腕と膝で彼女にしがみつく。後ろのバイクは速度を上げて追いすがってくる。
こちらのバイクも奴らに追いつかれないように加速する。今走っているのは対向車線とはレールで区切られていて片道2車線になっている幹線道路だ。幸いなことに前を走っている車はおらず、バイクはどんどんスピードを上げていく。しかし、相手のバイクのほうが性能が良いのか、二人乗りで負荷がかかっているのか、少しずつ差を縮められてきている。このままだと、追いつかれるかもしれない。
俺は運転している女性に話しかけようと前を向く。そのとき彼女肩越しにこの先交差点になっていることに気づいた。しかも赤信号だ。さらにタイミングが悪いことに交差する道路を2台の大型トラックが横断していた。
しかし、俺たちの乗っているバイクはスピードを落とすことなく交差点に突っ込んでいく。ここで止まれば追いつかれるが、かと言ってこのまま信号無視して交差点に突っ込めばすればトラックに衝突してしまう。俺は運転している女にしがみつきながら叫ぶ。
「おい、前! 前!」
「わかってるって! 大丈夫だからしっかりつかまって荷物になってて!」
彼女は前を向いたままそう叫ぶが、このままだとトラックの先頭の横っ腹に突っ込むのが目に見えている。バイクの速度がさらに上がった気がする。こんなにスピードを出せば避けることも出来そうにない。トラックの横面がどんどん近づいてくる。だがバイクは傾く様子もなくまっすぐ突っ込んでいく。どうやってこれを抜けるつもりなんだ。
あと数秒でトラックに激突すると思われたとき、彼女から超能力の発動が感じられた。
その瞬間、目の前のトラックが加速するようにするすると前に進み、俺たちが乗ったバイクは荷台のトラックの前後の隙間をまっすぐと突っ切った。
目の前をバイクが通り過ぎたことで、後ろ側のトラックがクラクションを鳴らす音が聞こえてくる。その音に続いて激突音。
俺達を追っている黒づくめの男達のバイクが後続のトラックに派手にぶつかったようだ。振り向いて確認すると、よほどの衝撃だったのか、トラックが斜めになっていた。
「よし!」
女性は短くそう言うと、スピードを落とさずそのまま十五分ほど走り続け、追ってくるバイクがいないことをミラーで確認すると道路のわきにバイクを止めた。
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