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第四十一話 抵抗するかい?

「お前…、草野さんを!」


 男が、怒りに震える俺の言葉に反応する。


「敵を倒すのは当たり前だろう? 君だって大暴れしたそうじゃないか」


 そう返す男の声はひどく落ち着いていて、なんの感情も感じられない。大暴れとは俺が暴走した時の事を言っているのか…。


「藤沢君、下がるんだ!」


 背後から東野の声がするとともに、銃声が響く。その刹那男の剣が素早く動いた。キンキンキン!と金属がぶつかり合うような高い音がリズミカルに聞こえたかと思えば、彼の足元には銃弾が転がっていた。


「無駄だ」

「銃弾を剣で防ぐだと!?」


 信じられないことに、彼が銃弾を叩き落したとき、俺には超能力の発動が感じられなかった。超能力を使わずに、身体能力だけでこれをやったというのか!?


「一斉射撃! 藤沢君、『ジャミング』を頼む!」


 ダメだあいつは超能力を使っていない! 俺がそう告げる間もなく東野と三人の隊員が銃を撃ち始める。俺は無駄だと知りつつも「ジャミング」を発動する。

 俺の予想通り、男はすべての銃弾を剣で防いだ。それも、叩き落すだけではなく、器用にはじき返してきた。返ってきた銃弾に肩を撃ち抜かれ、銃を取り落とした東野の表情が驚愕に変わる。


「うぐ! なんで…!」

「『ジャミング』を使っても無駄だ。俺は超能力を使っていないからな」

「な!?」


 東野が俺のほうを伺う。確かに超能力の発動は感じられなかった。俺は黙って頷く。


「俺に銃が効かないということをわかってくれたかな?」


男の声は、なぜか少し楽しげだ。仮面で見えないがその下には楽し気な表情があると思わせるものだった。

 男はゆっくりとこちらにレイピアの切っ先を向ける。次の瞬間、彼の姿がぶれるように掻き消え、俺の背後で叫び声と共に人が倒れる音がした。

 いそうで振り向くと、男は背後に表れており、草野達四人が床に倒れていた。男がこちらをゆっくりと向き、口を開く。


「さて、残るは君一人。抵抗するかい?」


 男のほうを向いている俺の背後、瓦礫で埋まった通路からガラガラ音がする。目の前の男を警戒しつつも後ろを確認すると、積み上がった瓦礫が崩れだしていた。そして、ぽっかりと穴が開く。そこから黒づくめの男たちが這い出して来た。

 俺は細長い通路の前後を仮面の男と黒づくめの男たちに挟まれていた。攻撃する手段もなく、かといって逃げることもできない。前方で男がゆっくりとレイピアを構える。

 その時、不意に聞き覚えのある女性の声がした。


「ここであきらめたら、戦闘終了になっちゃうわよ~」


 西沢鳴海が「転送」を使って俺の傍らに現れたのだ!


「鳴海さん!」

「よくがんばったわね〜。脱出するわよ〜」


 そういうと彼女は俺の手を取る。「転送」を発動させる気だ。しかし、俺はその手を振り解き、鳴海に待ったをかけた。


「待ってくれ! 東野さん達がいるんだ!」


  そうして彼らを助けるべく身構える。仮面の男はレイピアを構えたままこちらの様子を伺うように動かない。


「お前は自分が追い詰められていることも理解できないようだな?」

 

 男は静かにそう話すが、威圧感が尋常じゃ無い。まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。俺は身構えたまま指一本動かすことができなかった。

 動けないでいる俺の肩にポンと手がおかれた。


「あなたもわかっているでしょう? 無理よ……」


 彼女がそう言うと同時に浮遊感に襲われそれが戻ったかと思うと目の前の景色が変わっていた。鳴海の「転送」で瞬間移動したときはいつもこうだ。


 今俺と鳴海がいるのは、はじめて彼女と出会った工事現場だった。


「なんでっ! 東野さんを! 草野さんを! 彼らを見殺しにするようなことをっ! あのまま見捨てるなんて―――」


 俺は叫ぶように言いながら振り返る。しかし鳴海の顔を見てその先を続けることができなかった。鳴海の表情は、今にも泣き出しそうなほど辛いのをはを食いしばって必死で堪えている様に見えた。

 俺はハッと息を呑んで固まってしまう。そうだよな。仲間を見捨てるような形で逃げるのに辛くないわけがない。それでも、彼女はあの中で唯一無事な俺の脱出を優先したんだ。


「……ごめん」


 なんとか俺の口から出たのはそれだけだった。それ以上何も言えなかった。その言葉を聞いた鳴海はふと表情を和らげた。


「あなたが謝るようなことじゃないわ」


 それも一瞬のことですぐに真剣な表情に変わり、彼女は言葉を続ける。


「優子ちゃんは調達班の人たちと脱出しているわ。あなたも早くここから離れて落ち着いたら彼女と合流しなさい」

「それなら、鳴海さんも一緒に行こう」

「私は一緒にはいけないわ。やらなければいけないことがあるのよ。ここは領域(テリトリー)からそれほど遠い場所ではないわ。すぐに追手が来るわよ、早く逃げなさい」


 そう言って辺りを見回す彼女の動きが止まる。視線は俺の背後に向けられている。


「追ってきたにしては早すぎる。マークされていたのね」


 俺も辺りを見回す。俺の背後だけではなく、前後左右、そこいらの物陰から黒づくめの男達がゆっくりと現れた。ここは領域(テリトリー)外での活動時の集合地点などによく使われている場所だ。情報をつかんだ奴らが見張っていたのだろう。

 全方位取り囲まれているこの状態はかなりの窮地だ。どうにかして突破しないと。


読んでいただき、ありがとうございます

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