表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/54

第三十六話 名付けて「特訓ちゃんマーク2」です

気が付けば、開始してから1年経過しておりました。初めて10万字超えました。なのに、お話はちっとも進んでません。書くのが遅い! ……ごめんなさい。

【850ポイント獲得。ランキング外です】


 特訓ちゃんの声が響いて、動きが止まる。本間達は今朝、領域テリトリーを発った。俺は基地に残り、「特訓ちゃん」で「ジャミング」を使いこなすための訓練を行っていた。


「あれあれ? 藤沢さん、獲得ポイントが下がってませんか? 調子が悪いのでしょうか?」


 停止した「特訓ちゃん」の陰から門脇唯奈が現れた。この人は唐突に現れるなあ。

 彼女は俺の訓練ポイントが低いことを気にしてくれている様だ。


「ああ、それは問題ないんですよ。門脇さ」

「Qちゃんです」

「アッハイ、Qちゃん」


 俺の言葉にかぶせる様に訂正され、言い直す。自分の呼称に異常なこだわりを見せるキャラの濃い人だ。


「ポイントが低いのは良いんですよ。そういう戦い方を想定していますので」


 井上千佳との模擬戦の後、俺は「ジャミング」の使い方を全面的に見直していた。相手の超能力の発動を感知してから反射的に「ジャミング」を使うのではなく、ここで相手が使ってくると予測する、つまり、戦闘の流れを読んで「ジャミング」を発動させる様にしていた。

 このやり方は、プログラムで能力発動をエミュレートする「特訓ちゃん」とは相性が悪かった。攻撃や防御のタイミングで発動する場合はいいのだが、ランダムに発動する場合はそもそも予測が意味を成さない。

 そのため、「ジャミング」成功による加点が無く、訓練でのポイントが低くなっていた。


「なるほどなるほど。私、戦いは素人なもので、理解しきれてはおりません。しかし、戦いに流れというものがあるというのは何となくわかります。……ふむ、ふむふむふむ」


 何事か考えだした彼女を放置して、俺は俺で思考する。今のやり方は正しいのか、自分が迷走しているのではないかという不安もあり、まだ自信が持てなかった。

 彼女は、本間さんが自分より上と認めるほどの強者だ。戦いの流れに沿って、ベストなタイミングで能力を使っているのは言うまでもない。

 だがあの時、最後の瞬間だけは分からなかった。

 後から思い返してみても、あの時の彼女の動きがわからない。いつのまにか目の前の千佳が消えていた。俺は真後ろにまわった千佳に踵落としを食らい意識を失った。

 空白を使われたのかどうかも分からない。だが、その後の彼女とのやり取りを思い返すに、空白を使われたことは間違いないだろう。

 彼女は、本当に俺ががすべての「空白」に対応できていたのか?と言っていた。

 それはつまり、俺が対応できなかった「空白」があり、それにより、彼女を見失ったということだ。

 千佳はどうやって俺に「空白」を叩き込んだのか?

 おそらくあれが彼女の能力の使い方の工夫なんだだろう。

 それを知る手がかりとして、彼女のスタイルを真似して、「ジャミング」を使ってみているが、それで彼女が最後に使った「空白」の謎にたどり着けるのかはわからない。

 俺が思考の海に沈んでいると、考えがまとまったのか、唯奈が話し出した。


「では……ランダムで発動していた予兆を、戦闘の流れに沿って発動するようにして、フェイントもかけるようにして、駆け引きを意識するように……よし!」


 その途端、ピコーンという音が鳴り響くと共に、彼女の頭の上に電球のようなものが出現し、フラッシュのように一瞬光を発して消えた。


「これで、藤沢さんのご希望に添える形になったと思います。名付けて『特訓ちゃんマーク2』です。それでは私はもどりますね」


 そう言うと彼女は、俺の返事も待たずに去って行った。相変わらずマイペースな人だな。

 俺は特訓ちゃんに向き直り、訓練を再開した。







 「敵の数が多すぎだよ!」


 十数人の黒づくめの男に囲まれながら、千佳が叫ぶ。彼女の目の前にいる黒づくめの男が、離れていてもブンと音が聞こえてきそうな勢いでパンチを放つ。

 千佳はそれを避けつつ蹴り放つと同時に「空白」を叩き込む。目の前の黒づくめの男はフリーズしたかのように動かなくなった。

 別の黒づくめの男のが左右から同時に拳を放っつ。


 「鬱陶しいんだよ、この野郎ども!」


 千佳はその場で軽く屈みこむと、拳は彼女の頭の上を通り過ぎた。一拍置いて千佳がジャンプしつつ両足を広げるように振ると左右にいた黒づくめの顔面にヒットする。

 顔面を蹴られた黒づくめの男が後ろによろけ、その後ろの黒づくめの男にぶつかる。前方と左右の男たちの動きが止まった隙に千佳は再び叫んだ。


「本間さん! なんと出来ない!?」

「今やってる! もう少し堪えていてくれ!」


 本間からの返答を聞いている間に、止まっていた黒づくめの男は再び動き出し千佳に襲い掛かってくる。今度は三人同時だ。目の前の男が彼女を捕らえようとするかのように両手を伸ばしてくる。右側の男は先ほどと同じくパンチを放ち、左側の男は足元を狙ったローキックを放ってくる。


「これじゃ避けようが無いじゃないか!」


 千佳は顔を顰めそう毒づくが、次の瞬間口角を上げる。


「滾ってきたあ!」


 不敵な笑みを浮かべた千佳はそう言うと、両腕を顔の前に立て、格闘技で言うガードの構えを取った。

 そこに突っ込んでくる三人の黒づくめの男達。一人が千佳の両腕を掴むと動きが止まった。千佳は捕まれた両腕を左右に開き、なんなく振りほどくと、右側の男のパンチを右腕でガードする。ガードされた男は拳が届いたその瞬間に動きが止まる。もう一人、左側の男のローキックが迫るが、千佳の足にヒットした瞬間。これもピタリと静止した。


 「これがボクの奥の手だよ! でやああああああっ!!」


 両手を開き、胸を張り、少し上向きになり、力を込めて気合をいれるかのように叫ぶ千佳を中心に、取り囲んでいた黒づくめの男たちの動きが止まっていく。


 「よし、いいぞ! 鳴海!」


 本間の声が聞こえるとほぼ同時に千佳が力を抜く。少し遅れて鳴海が千佳の後ろに現れ千佳の方に手を置くと二人は同時に消えた。


「オラアアアアアァッ!!」


 本間が体に青い光をまとわせながら、静止している黒づくめの男達に突っ込んでいく。青い光に触れた男たちは吸い込まれるように消えていく。本間はその勢いのまま黒づくめの男達がいるところを走り回る。

 まるで、えんぴつ塗りつぶした黒い紙を消しゴムで消していくように、黒づくめの男たちは消えていき、本間が通り過ぎた場所には誰もいない空間しか残っていない。

 すべての黒づくめの男が消え去り、その場に残るのは3人だけとなった。


「はぁ、はぁ。ナイス本間さん!」

「はっ、はっ、はっ。よく堪えてくれた」


 本間と千佳の二人はその場に腰を下ろし、荒い息をしながらお互いをねぎらう。

 唯一人、立っている鳴海が素朴な疑問を口にした。


「ところで〜、彼らはどこに消えたのよ〜?」

「海だよ…」

「海?」

「街の向こうに港があっただろ? そこからまっすぐ十キロほど沖合だ」

「うわ、鬼畜……」


 本間の答えに、鳴海と千佳が絶句する。そんな様子を気にすることも無く、本間は言葉を続けた。


「まあ、とりあえずは切り抜けたし、領域(テリトリー)に戻って報告だな」

「そうね〜。あれだけの数を投入してきてたのを撃退したんだから、確実に狙われるわね〜。ユイちゃんに報告しないと〜」

「『空白』を使いすぎたし、もう打ち止めだよ。帰って休みたい」


 本間の言葉に鳴海が同意し、千佳は疲れた顔で立ち上がった。


「じゃあ、帰ろう」


 本間が立ち上がり、領域(テリトリー)に帰るためのゲートを開こうとするところを、千佳がささやくように、小声で本間を制した。


「まって、本間さん。……誰かいる」


読んでいただき、ありがとうございます

宜しければ、ブックマークや下にある星での評価を、是非ともお願い致します!

ご意見、ご感想もいただけたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ