第三十五話 一歩間違うと大惨事になっちゃうのよ
三か月近くも開いてしまいました…。書くのが遅すぎて泣ける…。
特訓を開始してから二日が過ぎた。
俺は食堂で、夕飯のカレーうどんを食べながら、アナザー優子と情報交換をしていた。
しかし、ここの食事はカレーが多いな。美味しいからいいけど。
「ま、そんなわけで俺は今、『ジャミング』の使い方を工夫しているところだよ」
カレーうどんを啜りつつ、近況をアナザー優子に伝える。
千佳との模擬戦でやられたことが何なのか、この3日間、その答えを探して試行錯誤の日々だ。おそらく、発動させた能力を相手に与える方法に、工夫の余地があるのだろうと、おぼえろげながら考えている。しかし、具体的にどうやるのかがまだ掴めていない状態だ。
「で、そっちはどんな感じ? 資源調達は順調?」
俺は残ったスープを飲み干すと、アナザー優子が所属する調達班の近況を聞く。
彼女はとっくにスープも飲み干しており、俺の話をふんふんと聞いていたが、尋ねられて口を開く。
「実は……、ここ数日、厳しいんですよね」
表情を曇らせながら、彼女は重い口調で話出す。
「厳しい? 何かトラブルでも?」
「ええ、報告はあげているので、そのうち圭介さんにも伝わると思うのですが、黒づくめの男達の数が多いんです」
「ふうん?」
「以前、真美さんのことを話したの、覚えてます?」
確か室山真実子さんだったか。一度マークした人物が一定範囲内にいることがわかる能力を持っている人のことだな。
「確か、『アラート』の能力で、超査室の人間や黒づくめの男達に近づかれない様にしてるんだったっけ」
「ええ、そうなの。それで、黒づくめの男に関しては、一人をマークしただけで、何人現れても全員感知できるって言ってたの、覚えてます?」
「ああ、本人も不思議がってるって言ってた件な? 俺は便利でいいじゃんとは思ったけど」
「最近、どこに行っても黒づくめの男達が複数いるらしいんですよ。 だから見つからない様に移動するのも難しくなってきていて……。今日なんて十人くらい居たらしくて、ほぼ囲まれている様な状況だったんです。向こうには気づかれてはいませんけどね」
「それは……、厄介だな」
「ええ、このまま彼らの数が増えていけば、私たちは身動きが取れなくなってしまいます」
なかなか厳しい状況の様だ。奴らの数が増えているってことは本格的に、超能力者を狩ろうとしているってことなのかもしれない。
俺は本間と鳴海が言っていたことを思い出す。超査室が領域を潰して回っていて、それに協力する寝返った超能力者がいるらしいって噂、信憑性が出てくるのではないか。
俺は声を潜めてアナザー優子に考えを話す。
「それってあの噂と繋がらないか?」
彼女も、声を落として答える。
「やっぱりそう思います? なんとなく私たちの行動範囲を先回りしている様に感じるんですよね。けど、滅多なことは言えないですし」
「そうだな。ここではこれ以上、この話はしないほうがよさそうだ。今度本間さんに状況を聞いてみるよ」
気軽に話せる話題でも無いので、一旦話を切る。その後はアナザー優子が仲の良い調達班メンバーとの話を聞いたり、戦闘好き千佳が、毎日俺のところに来ては、答えが出たか?出たなら模擬戦で試そうとしつこく言ってくるなど、たわいもない話をした。
話が一段落すると、アナザー優子は立ち上がり自室に戻っていった。
俺も休むかと立ち上がり、食堂を出たところで、呼び止められた。
「圭介、少し話がある。来てくれるか?」
声のする方を見ると本間と鳴海が連れ立っていた。噂の件を聞きたいと思っていたタイミングなので、是非もない。
俺は頷く。
「こっちだ」
本間はそう言うと、先へ進む。鳴海は無言で本間の横を歩いていく。
俺は二人の後について行き、俺たち三人は作戦室と呼ばれる部屋に入った。
部屋の中は大きいテーブルを囲む様に椅子がある。本間と鳴海は適当な椅子に並んで座る。
俺は二人に向かい合う位置の椅子に座った。
「突然呼び出してすまないな」
本間が俺を見ながら言う。言葉自体はどうでもいい、話しだすきっかけだろう。俺も話したいことがあったので、ちょうど良かったと伝える。
「何かあったんですか? ちょうど、聞きたいことがあったので俺としては都合が良かったですけど」
「ああ、お前に伝えておくことがあったんだが、まずはその聞きたいこととやらを聞いておこうか」
まぁ、何を聞かれるのかは予想できているだろうし、本間達の話とも繋がってるだろう。話の導入として俺から話させてもらえるのならそうしようか。
「アナザー優子から調達班の話を聞きました。こちらの動きが相手に悟られているのではないか、と。以前に聞いた、寝返った超能力者がいる話と繋がってる話と繋がっていると思うんですが、どうでしょうか?」
遠回しに言っても時間の無駄なので、直球で投げた。本間の表情は変わらない。やっぱり、俺がそう話すと予想してたな。
「やっぱりそう思うか。だけど、確信が無い話だからな……」
本間は腕を組んだままそう返してきた。
「そう考えるのは、流れとしては当然ね~。だけど、今の時点で口にして、犯人探しが始まっちゃう目も当てられなくなるわ~」
これまで黙っていた鳴海が口を開いた。
「こういう話は、一歩間違うと大惨事になっちゃうのよ~。以前にね、似た様な状況で疑心暗鬼に陥って、崩壊した領域があったのよね~」
「そんなことがあったんですか」
「うむ。超査室に捕まったメンバーから領域の場所が漏れたことがあってな」
「位置自体じゃなくて、活動している地域がバレたって感じでね~、超査室が人員を増やして徹底的に探り出したの。それで、『誰かが裏切った』っていう噂になっちゃって~」
「疑心暗鬼に陥ったメンバー間で同士討ちが発生してしまってな、混乱しているところに超査室に踏み込まれて、壊滅したそうだ」
「……だから、そうなる前に動こうと思ってるのよ~」
何かしらの対策を打つと言うことか。
「その話を俺にするってことは……」
俺も参加するのか、と聞くと、それは否定された。
「お前には領域に残って、不測の事態に備えてもらいたい。参加するのは、俺、鳴海、千佳の三人だ。人数を最小限にして奴らの動向を探ってくる。探ると言っても、万が一奴らとカチあうことがあれば潰してくるけどな。戦闘班の残りの人員には領域の防衛に備えて待機して欲しい」
なるほど。基本は本間の「ゲート」で移動しつつ、鳴海が「転送」で様子を探る。千佳は万が一のための戦闘要員ってところか。
「この任務のことは戦闘班の中でも一部の人にしか伝えないわ。だから内緒にしておいてねー。あなたはメンバーになって日が浅いけど、主力の一人だから、知っておいて欲しかったのよー」
「俺たちは明日の朝から動く。情報が掴めるかどうかはわからんがな。留守は頼んだぞ」
二人はそう言うと、話はこれで終わりとばかりに立ち上がった。
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