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第三十四話 ボクの「空白」に敗北の二文字は無いよ

なかなか筆が進まず、更新が遅めですが完結まで続けます!

よろしければ読んでください!


 目の前に突然現れた千佳の拳を俺は避けることができず、まともに食らってしまった。


 「があっ」


 ものすごい勢いで頭が吹き飛ばされる。上半身と下半身がそれに続き、足が地面から浮く。

 俺は猛烈な勢いで後転する様に縦方向に回転しながら吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされながらも、何とか手をついて勢いを殺し、バランスをとって着地する。

 辛うじて立ったが、これはやばかった……。これが「空白」か。突然意識が飛んだ様だった。


 唇の端を歪ませ、にやりと笑いながら千佳が言う。


「ボクの能力はどう? 時間が飛んだみたいでしょ?」


 そして、すっと真顔になり、じっとこちらを見つめる。


「ボクの『空白』に敗北の二文字は無いよ」


 彼女はそう言うと彼女は一気に間合いを詰めてきた。


 なんとか立ったが、体制を整えきれていない俺へ千佳の攻撃が迫る。

 右、左、右。続けざまに左のハイキック!

 ギリギリでパンチを躱し、肘でキックをブロックする俺に向かって、またもや「空白」を発動しながら攻撃してくる。

 もう失敗は出来ない、俺は「ジャミング」を発動し彼女の能力と攻撃を防ぐ。

 怒涛のラッシュと共に放たれる「空白」への対処で、こちらから、反撃する余裕がない。


「ほらほら! もっと早くなるよ!」


 彼女の攻撃を俺が防ぎ続ける。最初とほぼ同じ展開だ。ただ一つの違うのは彼女が攻撃とともに

「空白」を放ってくること。左右の連打の間に組み込まれる蹴りが厄介だ。

 一度でも「ジャミング」に失敗するとやられる。俺に反撃の隙を伺う余裕はなかった。


「いいね、よく集中しているね!」


「おかげさまでね、いい訓練になるよ!」


 俺は必死に避けながら言い返す。本当はそんな余裕はないんだけどね。

 ふと、千佳の攻撃の手が止まる。

 釣られて、俺の動きも一瞬止まるが、彼女が「空白」を発動しようとしていることに気づき、「ジャミング」を発動する。

 それと同時に、止まっている彼女へと間合いを詰める。動きが止まっている今が攻撃のチャンスだ。

 俺は千佳に向かって蹴りを繰り出した、彼女は肘でガードしながら、再度「空白」を発動する。それを「ジャミング」しつつ、踏み込みながら右の拳を前に出す。

 彼女が素早く反応し、腕を使って俺の手首あたりを外に大きく払い、俺の拳をそらす。千佳は攻撃を逸らしたものの俺の打ち込んだ勢いで体制を崩している。

 畳みかけるチャンスだ! 腕を払われて外側に崩された勢いを利用して俺は左のミドルキックを放つ。

 そのタイミングに合わせたかの様に、彼女が「空白」を打ってくる。

 俺は咄嗟に対応できず、「ジャミング」の発動がワンテンポ遅れてしまった。

 しかし、ギリギリで間に合ったのか、意識が途切れるはなかった。俺の蹴りが彼女に襲い掛かる。

 崩れた体勢からでは、この蹴りは避けられまい。反応できても腕でブロックするのがせいぜいだろう。俺はブロックされてからの連続攻撃を頭で組み立てながら、左足を振り切る。

 しかし、予想に反して左足は空を切った。千佳の姿は俺の前には無かった。

 どこへ!?

 そう思った瞬間、後頭部に衝撃を感じて俺は意識を失った。


「かなり良かったけど、超能力を使った戦闘の駆け引きはまだまだだね〜」


 気がづくと俺は天井を見ていた。仰向けに床に転がっている様だ。

 千佳が俺の横に座っている。俺が目を覚ますまで待っていてくれた様だ。

 俺は両手を付き、上半身を起こす。


「……最後の攻撃はなんだったんだ」


 俺のつぶやきは自問自答だったのか彼女への質問なのか自分でもわからない。これを彼女は質問と受け取ったのか、口を開く。


「踵落としだよ。ガッツリ入っちゃったね。痛かったらごめんね」


腕を組んでにこやかな顔で俺を見下ろす井上千佳が答える。ごめんねとは言っているが、全然そう思ってないだろ。


「いつ『空白』をいれられたんだ? 全て『ジャミング』で対応したはず…」

「ほんとに、そうだった? 全部の『空白』に対応できてた?」


 そう聞き返す彼女の顔からは笑みが消え真顔になっていた。まるで俺を試しているように質問をしてくる。いや、試されているのか。

 俺は自分の記憶にある反撃を繰り出した攻防を思い返す。

 そういえば、左の蹴りを叩き込む直前、彼女の「空白」への対応が遅れたんだ。だけど、思考が飛ぶことは無かったので、ギリで間に合ったと思っていた。

 その後に起こったことを考えると、彼女が何かしたのならば、あの時しかない……?

 俺が考え込んでいると、今度はにやにやと笑みを浮かべた彼女がこちらを眺めている。笑顔から真顔になったかと思ったら、また笑い顔か、忙しい奴だな。


「思い当たることがあったみたいね?」


 彼女の言葉を聞けばわかる。やっぱり、あのとき何かされたんだな。


「あのとき、何を?」


「答えは圭介さんが自分で考えてね。あの時、何を感じて、どんな行動をとったか。その結果、何が起こったか……」


 彼女は俺の疑問には答えず、謎めいた言葉を発すると立ち上がった。


「んじゃ、帰るよ。ボクとの練習が圭介さんの糧になってくれたらうれしいな」


 そういうと、彼女は出口に向かって歩き出しかけて、途中で立ち止まって振り返った。


「本間さんに奥の手を使わせた圭介さんなら、大丈夫。期待してるよ、訓練がんばってね」


 彼女はそう言うと背中向けて、今度こそ振り向くことなく去って行った。

読んでいただき、ありがとうございます

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