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第三十三話 ボクもう我慢できないよ!

間が空いてしまいましたが、完結までは続けていくつもりです……。

改めて宜しくお願いします。


「いや、終わりというか、ちょっと休憩ってとこ」

「ふうん、休憩したらまたやる?」

「そのつもりだけど」

「訓練は順調?」

「まあね、ところで、どうしたの?」


 何しに来たのか……。薄々はわかるけど、一応確認すると、千佳は笑顔で聞いてきた。


「あのときの約束、覚えてる?」


 ……やっぱり。この戦闘民族め。


「あの時の……? なんのことだっけ?」

「とぼけても無駄だよー。ボクと手合わせするって約束したじゃないかー。あれから忙しかったのもあるけど、ボク、ずっと待ってたんだよ?」


 そう言われてもなあ……。今は「ジャミング」を使いこなすための訓練に集中したいし。


「最近時間取れるようになってきたところに、圭祐さんの訓練が難航してるって聞いてたから、いいタイミングだって思って来たんだけど。なんだか人形で訓練してるし。順調そうだし……。どうなってるの?」


 そっか、俺が訓練で行き詰っていることを聞きつけて、手助けを兼ねて手合わせしようと見に来たってわけね。


「まぁ、行き詰ってたんだけどね、ご覧の通りこの人形『特訓ちゃん』のおかげで何とかなりそうだよ」

「ちぇー、出遅れちゃったか。……それってQちゃんの発明だよね?」

「分かるんだ?」

「彼女、有名だからね」


 濃い人だったからなあ。能力も凄いし。そんなことを思っていると千佳が目を輝かせた。


「じゃさ、その人形での訓練の成果を試してみたくない?」

「いやいや、まだ二、三時間しか使ってないし。まだまだ訓練しないと成果はでないよ」

「ええー。女の子をどんだけ待たせる気? ボクもう我慢できないよ!」


 千佳は口を尖らせて文句を言う。


「ちょっとだけ、ちょっとだけだから。軽く練習するだけだから。ね、いいでしょ?」


 最終的に、千佳に押し切られて練習と言う名目の手合わせを行うことになってしまった。


「ありがと、圭介さん! じゃあ、いっちょやりますかあ!」


 らんらんと目を輝かせ、嬉しそうにしながら、千佳が練習場の中央に立つ。


「あくまで練習だからな? 軽くやるだけだぞ?」


 俺は、ため息をつきながら彼女に向かい合うように立った。


「じゃあ、開始ね」


 そう言うと千佳は両手を前にしてファイティングポーズを取った。俺も同じく噛める。気は進まないが、やるからにはちゃんとやらないとな。


「まずは、小手調べっと」


 そう言うと千佳の状態が少し沈むとともに、彼女の拳が目の前に現れる。

 っ! 踏み込みの速度が半端じゃない。

 俺は状態を捻って踏み込んできた拳を交わすと、彼女の手首を取る。

 そのまま、腕をひねりながら背負い投げをしかけるが、彼女はそれに合わせて飛ぶことでそれを躱す。

 この攻防でお互いの立ち位置は入れ替わった形だが、距離は元に戻っているので、相対的には最初にもどった感じだ。


「いいねー、圭祐さん」


 彼女は嬉しそうにつぶやくと、再び上半身を沈める。さっきと寸分変わらぬ左拳が飛んでくるが、今度は届かない位置までバックステップして拳を躱す。千佳は瞬時に拳を弾き、間を詰めつつ左の連打を放ってくる。

 俺は状態を左右にそらし、彼女の連打を全て避けつつ反撃の機会を狙う。

 千佳のパンチは四連打、五連打と続くにつれ、勢いが少しずつ落ちている。それでも続く連打を避け続ける。

 戦闘慣れしていても、空振りしつづけることは意外に体力を使う。体力が落ちれば、攻撃の間隔が長くなっていき、付け込む隙ができやすくなる。

 ここは我慢比べだ。

 彼女のパンチを避け続けていると、ほんの僅かではあるが、彼女のパンチとパンチの間が空いてきた。

 その間に向かって、俺は左を叩き込む。

 千佳は拳を引いた瞬間から次を繰り出すまでの間に打ち込まれたパンチをどうすることもできない。俺のパンチを受けて彼女の動きが止まる。

 そして、一瞬でも動きが止まれば、こっちのペースだ。

 俺は左の連打を叩き込みながら、タイミングを図る。

 三連打目が入った直後、彼女に大きな隙ができた。俺はすかさず右を叩き込もうとする、。

 その瞬間、彼女の雰囲気が変わった。

 能力を発動させようとしているのか!

 しかし、状況が悪かったな。数時間前の俺なら能力にやられていたかもしれないが、「特訓ちゃん」のおかげで、とっさの「ジャミング」もある程度はできる様になってるんだよ。

 俺は右パンチを放ちながら、「ジャミング」を使い千佳の能力の発動を阻止する。

 振り抜いた右拳に手応えがあった。

 彼女はバランスを崩しながら、よろよろ二歩ほど下がり、そこで踏みとどまった。


「やるね」


 千佳はこちらに顔を向けてにやりと笑うと、両手を構え踏み込んできた。


「ここからは、ペースを上げるよ!」


 そう言うと、ローキックを放ってくると同時に能力発動の気配がする。


「甘いぜ」


 何をしようとしても無駄だ。

 俺はすかさず「ジャミング」発動させて、千佳の「空白」を阻害する。同時に相手の蹴り足に向かって膝を上げ、ブロックする。

 俺はブロックとほぼ同時に間合いを詰め、左右の連打を繰り出した。


「甘いのはそっちじゃないかな」


 千佳が俺のパンチを両手でさばきながら、「空白」を発動してきた。俺は攻撃することに意識を割いていたため、対応できず、能力の発動を許してしまった。

 次の瞬間、千佳の拳が目の前に迫っていた。


読んでいただき、ありがとうございます

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