第三十二話 わかってもらえましたか!
唯奈に背中を軽く叩かれて、面の奥が光った人形から女性の声がする。
【訓練を開始します】
声を発した人形は竹刀を両手で構える。
俺も竹刀を構え直し、人形と対峙する。
人形はすり足で近づいて来ると、おもむろに竹刀振りかぶり、打ち下ろしてきた。
「よっと」
俺が自分の竹刀で受け振り払うと人形からポーンと言う音がした。そのまま、返す刀で胴を打ったところで再度ポーンと言う音がした。
胴を決めた瞬間、俺は人形から超能力発動の予兆を感じ取った。俺は反射的に集中して「ジャミング」を発動する。また、人形からポーンと音がした。
特訓って、こういうことか!? しかしなぜ人形から予兆が……? 俺がそう思っていると頭に衝撃が走り、ブブーという音が響いた。
「ジャミング」に集中したことと、その後の疑問などで反応が遅れたため、人形に面を入れられたらしい。
「はい、ストップー」
そこで唯奈からの合図が来た。人形は構えを解いて元の位置まで戻るとまた女性の声で話し出した。
【訓練を終了します。今回の成績…防御2回中1回成功。攻撃1回中1回成功。能力発動1回中1回成功。300ポイント獲得。ランキング1位を獲得しました】
そのまま、人形は動かなくなった。
「どうですか? 私の発明品、特訓の役に立ちそうでしょう?」
満面の笑みを浮かべた彼女が聞いてくる。
「いや、すごい。能力発動の予兆が人形からしてきましたよ。これ、どうなってるんですか?」
「うーん、その辺は私もわからないんですよね。いわゆるブラックボックスと言うやつです」
ニコニコしながら唯奈が言う。ブラックボックスって……。
「実はね、あぁ、能力で発明しているから、詳細不明なんですよね!」
「詳細不明でも、必要な機能を実現できから気にしないってことですか?」
「そうですそうです! 藤沢さん、わかっていらっしゃる!」
いつの間にか彼女は俺の両手を掴みブンブンと上下に振っている。なんだかテンション高いな。
「この『特訓ちゃん』は攻撃もするし、今回は決められましたが、防御もします。そして何より、能力の発動をエミュレートするんです! 『ジャミング』されたこともちゃんと検知しますよ!」
ヒートアップした彼女が顔を近づけてまくし立てる。……近いよ。
「あと、ランキング機能! これにより、藤沢さんが上達しているかが分かり安くなるでしょう! そして、学習機能もありまして…! 藤沢さんの動きの癖に合わせてその隙をつくように動きます。『特訓ちゃん』で訓練を重ねれば、きっと藤沢さんのお役に立ちますよ!」
「ありがとうございます。門…、Qちゃん」
俺は顔を離しつつ、礼を言う。名前で呼ぶと訂正されることは学習済みなのでQちゃんと呼んだ。
そう呼ばれた彼女は、目を見開いた。
「……! わかってもらえましたか! そう、Qちゃんです! Qちゃんです! 」
え、そっち? この人にとってQちゃんって呼ばれることは重要なことらしいけど、よくわからん。だが、この人形は役に立つだろう。これを使えば、一人での訓練にも意味が出てくる。
「あの、このお礼はどうしたら……?」
「いえいえいえいえ! 何をおっしゃいますか! お礼など不要です! 私にとっては発明できる貴重な機会! それだけで十分なんです!」
強く否定されてしまったが、手助けしてもらってそのままにはできないなぁ…、などと考えていると唯奈が続けて言う。
「実はね、あなたのこと、優子ちゃんから頼まれたんですよ!」
え? 優子? アナザー優子のことか。
「知り合いだったんだ……?」
「知り合いというか、鳴海ちゃんから紹介されましてね。こう見えて私も忙しいので、最初はお断りしようと思ってたんです。けど、彼女の熱意に負けまして」
「あ、でも様子を見に来て興味がわかなければ、そのまま帰るつもりでした! ですけどね、あなたと本間さんの訓練を見てたら、ピコーンと来ましてね! 協力することにしたんですよ!」
「は、はぁ」
捲し立てられて、会話のペースが掴めない俺は相槌を打つのがやっとだ。
「ですから、お礼は鳴海ちゃんと優子ちゃんにしてくださいね! よっ色男!」
色男…ってなんのこっちゃ。
だが、この「特訓ちゃん」のおかげで訓練方法の目途は立った。
その後、彼女から「特訓ちゃん」の操作方法を教えてもらった。
「あなたが『特訓ちゃん』との特訓で、能力を使いこなせるようになれば、私の発明がすばらしいという言うことになりますから! 是非とも! がんばってくださいね!」
唯奈はそう言い残すと、スタスタと訓練所から歩き去った。
俺は三人に感謝しつつ、訓練に励んだ。
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【1200ポイント獲得。ランキング1位を獲得しました】
唯奈が去ってから、3時間ほどたった頃だろうか、「特訓ちゃん」を使った訓練にも慣れてきて、一度の対戦もそれなりに時間を掛けられるようになってきた。
「ふう、一度休憩しよう。『特訓ちゃん』、動作停止」
唯奈から教えられたとおりに、音声コマンドで「特訓ちゃん」を停止させ一度休憩することにした。
「あれ? 圭祐さん、訓練終わり?」
後ろから唐突に話しかけられ、振り向くと戦闘班隊長の井上千佳が立っていた。
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