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第二十四話 ピークに達しています

予約投稿していると思い込んでました…。慌てて更新します。

なお、本文中の専門用語っぽいところはデタラメです。

 二手に分かれたあと、俺たちA班は廊下を先に進んでいく。途中、桜子が示した方向に扉があれば、念のため扉を開き、部屋の先に続く扉が無いかを確認することも怠らない。

 これまで見つけた部屋の中は誰もおらず、先へ進む扉はなかった。しかし、今回見つけた部屋は中に人おり、奥に扉があるようだ。部屋の中には警備員が三人と、黒づくめの男が一人いる。


「ようやく出たわね」


 出会い頭に、鳴海が「転送」を使って警備員の背後に跳び一人を倒す。山内が矢を射る。胸部に命中し二人目を無力化。残りは警備員と黒づくめの男が一人ずつだ。

 三人目の警備員が銃を撃つよりも早く、荒木が突っ込み刀で腕を切り付けるた。警備員は崩れ落ちて呻いている。

 俺は部屋の中にある机や椅子を黒づくめの男に叩きつけるが、黒づくめの男は腕を払い跳ね返す。

 すかさず、鳴海が奴の背後に瞬間移動して、ナイフを背中に突き立てねじる。そしてナイフを引くと黒づくめの男の背から血が流れだした。しかし黒づくめの男は負傷を気に留めていないかのように、後ろを振り向きつつ鳴海に向かって拳を振るう。当たる直前で鳴海が消えた。


「相変わらず厄介な相手ね」


 俺の隣に現れた鳴海がつぶやく。黒づくめの男は鳴海が消えると、俺たちの方に向き直る。

 鳴海が、ナイフを逆手に持ち構える。荒木は刀を構え、山内は狙いをつけている。

 黒づくめの男が前に進み始めるのと同時に、荒木が突っ込み刀を振るう。男の体が青く光り、荒木の刀が素通りする。黒づくめの男が手を伸ばすより早く、バックステップして逃れた荒木は刀を八相に構え直した。

 俺は警備員の所持していた全ての小銃を自分の能力、「コントロール」で掴み、黒づくめ男の前面に配置、フルオートで射撃する。少し遅れて荒木が踏み込み、鳴海が跳ぶ。山内は弓を引いて狙いをつけている。

 両腕を前に構えた黒づくめの男の体中に青い光が斑点の様に浮かんで、銃弾が吸い込まれていく。

 鳴海が、男の背後に移動し、アキレス腱をナイフで薙いだ。

 がくんと沈み込む黒づくめの男の隙をつくように荒木が刀を振るう。鮮血が飛び散り、黒づくめの男の右肩から先が宙を舞った。

 俺は全弾を撃ち尽くしてしまった小銃を、黒づくめの男に向かって投げた。同時に山内が矢を放つ。

 飛んでくる小銃を男が残った左手ではじき返した瞬間、黒づくめの男のサングラスに矢が突き刺さった。

 黒づくめの男の動きが止まり、ゆっくりとうつ伏せに倒れる。

 鳴海が追撃とばかりに、首筋をナイフで切り裂くと、傷口から勢いよく血が流れ出した。


「これで復活するなら、どうしようもないわね」


 感情の無い声でつぶやく鳴海。

 倒れた警備員と黒づくめの男を、念のため全員をベルトで縛り上げてから一か所に集め、奥の扉を抜けた。

 扉の先に続く廊下の左右には扉は無く、しばらく進むと突き当りに扉があった。

 扉の向こうからは今までとは違い、歩く音や話し声が聞こえてくる。警備員や黒づくめの男ではなさそうだ。捕らわれている人達かもしれない。

 俺たちが構えると、鳴海が扉をそっと開けた。

 部屋は広く、明るかった。ごちゃごちゃと大型の機器が置かれており、白衣を着た男女がコンソールに向かっている。

 中の人間は皆、何かに集中して扉が開いたことに気づいていない。俺たちは素早く中に入ると機器の陰に隠れ、様子を窺う。

 部屋の左手に扉があり、正面の奥には一面ガラス張りの壁があった。ガラスの向こうには人の背丈くらいの機器がいくつも並べられている。中央には椅子があり、誰かが静かに座っている。手足は固定されており、腕からはチューブが伸びて、周りの機械につながっている。頭にはヘルメットのようなものがかぶせられていて、顔が見えないが男性の様だ。ヘルメットからは太いチューブが椅子の向こうに伸びていた。

 周りには大型のモニターがいくつも存在し、何かを表す波形グラフが波打っている。

 コンソールに向かっている白衣を着た男女が三人。彼らはかたかたとキーボードを叩きながら、状況報告をし、中央でガラスの向こうを見ている男が、それを聞いて指示をだしているようだ。


「セロトニン神経活動、活発化」

「膜電位の振幅がピークに達しています」

「そのまま無意識化に移行」

「現在の心拍数、70bpm」


 ふと、グラフを移すモニターの一部が違うものに切り替わった。人の頭部のエックス線画像に似ているが、脳の部分がカラーになっており、一部分だけが赤から青、緑そして赤と目まぐるしく変化していた。

 脳の一部分、色の変化している個所は縞模様になっている。その部分が拡大されていき大写しになる。モニターの中で色を変え蠢く縞模様は、単色で書かれたどこかの風景のようにも見えなくもないが、色変化しながら形をゆがませては戻りを繰り返している。例えるなら抽象画を動画にしたみたいに見える。

 

「サイキック発動体の活動を確認。キャプチャーを開始します」


 その発言と共に、白衣の一人がコンソールを叩きだすと、ガラスの向こうの椅子に座っている人物に変化が現れた。

 

「うがあああああああああ!!」


 大音量で叫び、縛り付けられた体をよじらせて、苦痛から逃げようとしている様に見える。ガラスの向こうの機器がそれに呼応するかのように、備え付けられたランプを激しく点滅させた。


「行くわよ」


 目が釘付けになっていた俺は、鳴海の言葉で我に返る。周りを見ると、荒木も山内も準備ができている様だ。俺は気持ちを入れ直し、うなづく。


「中央の男は情報を聞き出すために抑えるわ。あとはお願い」


 そういうと鳴海が中央の一人の後ろに跳び、ナイフを喉元に突き付けた。相手は四人、コンソールを操作する残りの三人を山内は矢で、俺はそこらに転がっていた台車で、荒木は刀で行動不能にする。

 彼らが動かなくなったことを確認した後、鳴海の元に集まる。

 鳴海は男を抑える役を荒木と交代すると、ガラス壁の向こうに跳び、いつの間にか叫ぶのをやめ、ぐったりしている男のヘルメットに手を掛ける。


「待ちたまえ! 今はずしたら二度と意識が戻らない!」


 それが聞こえたのが、鳴海の手が止まる。荒木が刀を首筋に押さえつけながら白衣の男に低い声で聞く。


「何をしていた?」


 白衣の男は言いよどむが、荒木が更に刀を押さえつけると、抵抗を諦めたのか口を開いた。


「超能力のキャプチャーだ」

「キャプチャー?」

「……刺激を与えて、超能力を無意識化で発動させると脳に強い反応がでる。我々は該当箇所の動きを記録し、解析している」

「何のために?」


 白衣の男は答えるのを躊躇し、荒木を見る。

 荒木は何も言わず、じっと白衣の男を見つめ返す。

 十秒ほど無言が続いた後、荒木を見据えたまま、白衣の男が答えた。


「……解析した脳の活動状態を再現させることで、超能力者を人為的に作る研究を行っている」


 人為的に超能力者を作る……? そんなことができるのか!? 荒木と山内の表情からも俺と同じことを考えていることが分かる。白衣の男の返答の内容に俺たちは無言になる。


「その話はあとにしましょう。彼を解放する方法を答えなさい」


 鳴海が白衣の男の正面に跳んできて、訪ねた。

 白衣の男は荒木から鳴海に顔を向けると、答える。


「コンソールからロックを解除する必要がある」

「……解除して。妙な真似はしないように」


 山内が狙いをつけると、荒木が刀を突きつけたまま男と共にコンソールのところまで行き、荒木が一歩横に離れて刀を上段に構える。

 無言で備え付けられたキーボードをカシャカシャと叩く白衣の男。しばらくして男はキーボードから手を離すと、電子音が鳴り響き、モニターに「非常モード:被験者覚醒」と表示された。

 それを見た鳴海が再びガラス壁の向こうに跳び、意識を取り戻した男のヘルメットを外す。

 その時、入口左側の扉が開き、黒づくめ男と警備員が飛び込んできた。


「テレポート能力者がいる! 殺さず捕らえろ!」


 そう叫びながら、警備員のもとへ駆け寄ろうとする白衣の男に、山内が矢を射る。背中に矢が刺さった白衣の男は、声を上げることもなく前のめりに倒れて動かなくなった。


 警備員が銃を乱射した瞬間、落ちるような感覚と共に視界が変わる。俺たちは入ってきた扉の前に瞬間移動していた。


「撤退するわよ!」


 助けた男に肩を貸した鳴海はそう言うと、素早く扉を開ける。俺たちは開いた扉から飛び出した。扉が閉まるのと同時に、銃声が起こり、扉から衝撃音が響いてくる。


「山さんお願い! 走るわよ!」


 鳴海は山内に男を預けると、廊下に向かって走り出した。俺たちもあとに続く。足元の床からチュインともカキンともつかない音がする中を、後ろから聞こえる銃声から逃げるように走った。


読んでいただき、ありがとうございます

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