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第二十三話 意味不明だな

 目が覚めて起き上がると、窓から差し込む日が陰り、少し暗くなっているような気がした。

 どれくらい眠ってたんだろうか。

 自由時間はまだ継続中の様で、周りを見渡すといくつかのグループに分かれたままだった。ヨシシと荒木は中村と山内を加えて四人で話をしている。本間は少し離れたところで、壁に向かって持たれて腕を組んでジッと前を見て何かを考えている様だ。千佳は相変わらず一人でコンテナに座って足をぶらぶらしている。あ、目が合った……。サムズアップしてくるが気づかない振りをして俺は目をそらす。

 優子達は俺から離れた位置で、鳴海と桜子を加えた四人で何やら会話していた。俺が眠っていたので放っておいてくれたみたいだな。

 俺が起きたのに気づいたのか、優子が話しながらちらちらとこっちを見ている。それにつられたのか、残りの三人も時折俺の方をみては、何事か笑顔で話している。……いびきでもかいてたかな俺? 

 なんとなく、入りづらい雰囲気なので優子には手を軽く挙げるだけにして、近寄らずにおく。

 眠ったおかげか頭がすっきりしている。

 これから、政府の施設に忍び込んで、拘束されている超能力者達を救出するんだよな。その中にもう一人の俺、アナザー圭祐がいてくれるといいんだが。

 などと考えていると、ヨシシから集合の声がかかった。


「もうすぐ日が落ちる。作戦開始だ」


 俺たちは、本間が作り出したゲートで移動する。出現先はどこかの建物の陰だ。覗いてみると道を挟んだ向こう側には大きな壁と門がある。開いている門の左右の脇に警備員が立っている。門の向こう広い空間がある。その広大な敷地の向こうに、工場の様な建物が建っていた。

 門から建物までは十メートルくらいで、ところどころに車が駐車されている。それ以外は特に隠れられるようなところは無さそうだ。


「あの建物の奥の方地下に姉の反応があります」


 桜子が姉の位置を報告する。


「よし、建物に入るぞ、荒木が警備員の注意を逸らしたら門を抜けて、まずはあそこに見えるライトバンの陰へ」


 ヨシシが小声指示をする。


「んじゃ、やりますよ」


 荒木がそういうと、敷地内のライトバンが停まっているのとは反対方向から、ギターの音が鳴りだした。

 メロディというか、表現するならギターの音で「ウワーッハッハッハッハ」と無理やり笑い声を演奏した様な音だ。荒木の能力なんだろうけど、これ、音楽なのか?

 突然響く異質な物音に警備員が、敷地の中を振り向く。そして二人そろって音の鳴る方に近づいていく。

 そのタイミングで俺たちは駆けだした。荒木は俺達の位置とは反対側に移動させながらギターの音を鳴らしている。ギターの笑い声はいつしか、メロディアスな速弾きに変っていた。

 その音に釣られている警備員に気づかれることなく、俺たちはライトバンの陰に隠れる。そのタイミングで荒木が音を消すと、警備員は狐につままれたような顔をしながら元の位置に戻った。


「お前の選曲は意味不明だな」


 本間があきれ顔で荒木に言う。荒木は無言のまま笑顔を返している。

 ここからは、三~四名ずつに分かれて、建物の仲間で静かに進み、中で合流した後、扉から続く廊下をまっすぐ進んだ。

 廊下にそって扉があるが、目的の方向ではないので、無視しつつ進む。しばらくすると正面にガラス窓がある扉がある。俺たちはガラス窓から見えないように扉の陰に身を潜める。

 鳴海が扉の陰に隠れながらガラス窓から中を覗くと、小声でささやく。


「小部屋に小銃を持った警備員が二人」

「厳重だな…。鳴海いけるか?」


 ヨシシの指示に返事はせず、鳴海が掻き消える。そして部屋の中で物音がしたと思うと、扉が開き鳴海が顔をのぞかせ手招きする。部屋に入ると、警備員が倒れていた。息はしているようだ。気絶させたんだろう。

 ヨシシが銃を取り上げ、カシャカシャといじった後、床に放り投げてから、桜子に方向を確認する。桜子は入った扉とは反対側の扉を指さした。


「よし行こう」


 窓から外を見て、誰もいないことを確認したヨシシが扉を開け、俺たちは外に出る。外には廊下がまっすぐ続いている。先ほどと同じように左右の扉は無視だ。さらに進むと、突き当りに階段があった。

 振り返って桜子を見るヨシシ。桜子が頷いて答える。

 桜子の返事を確認したヨシシの指示で、俺たちが階段を降りると、右に折れる曲がり角があった。壁際に身を隠して、ヨシシが曲がり角の向こうを確認するが誰もおらず、数メートルですぐに左に折れている。

 俺たちは左に折れる曲がり角の手前まで進むと、ヨシシが向こうを確認する。


「扉の前に警備が一人」


 ヨシシが振り向きそう言うと鳴海が答えた。


「まかせてー」


 彼女が掻き消えると人が崩れ落ちる音がする。その数秒後に彼女が目の前に現れた。荒木が倒れた警備員のところまで行き、両腕を持ってずるずると引っ張ってきて、物陰に隠れるように警備員を転がした。


「扉の向こう、七人いるわ」


 鳴海がヨシシに伝える。


「荒木の音で隙をつき、本間、井上、藤沢が突入。鳴海はサポート。残りはここで待機。なるべく静かに」


 そういうと、ヨシシはアサルトライフルを手に持ちゆっくりと扉まで進んでいく。それに続く、本間と井上、更にその後に俺と荒木。最後尾に鳴海が続き、扉の前まで進む。

 この扉にも窓があるので中を覗くと、大きめの部屋の様だ。銃を持って立っている警備員が四人、椅子に座っている警備員が三人いる。

 荒木が能力を使うと、奥に見える扉の向こうから、ファンファーレの音が鳴り響いた。戦う前から勝った気分になりそうな音だった。

 立っている警備員のうち二人が扉を開けて向こうを覗いているのを見て、俺たちは中に飛び込んだ。

 座っている三人と扉の向こうを見ていた二人はワンテンポ遅れるが、立っている二人の警備員は素早く反応し、銃をこちらに向けて構えている。

 千佳が銃を構えているうちの一人に空白を叩き込んで思考の隙を作る。引き金を引く動作が一瞬止まった警備員に、そのまま千佳は突っ込んでいき、顔面に拳を叩き込んで無力化する。

 もう一人が発砲するより前に、ヨシシが発砲。肩を撃たれた警備員は銃を取り落としたところを、鞘をつけたままの荒木の刀で打ち伏せられて動かなくなる。

 俺は、立ち上がりかけている警備員が座っていた椅子を、能力で持ち上げて足元を掬う。バランスを崩した警備員に本間がつぎつぎとハイキックを放ち無力化する。

 向こうがわを覗いていた二人は、能力で跳びこんだ鳴海が後頭部にナイフの柄を打ち据えて気絶させた。

 七人全員を無力化できた俺は改めて部屋を確認する。入ってきた扉の奥と左右の四方向に扉がある。どうやらここを経由しないとどこにも行けない作りの様だった。

 倒れた警備員を全員部屋の片隅にまとめると、ヨシシが小銃を取り上げて何やらいじりだした。俺は先ほどからの疑問を口にした。


「さっきから何を?」

「ああ、撃てないように、ちょっと……、な」


 どうやら、銃に細工をして発砲できなくしている様だった。

 待機していた五人を呼ぶと、ヨシシが桜子に進む方向を確認する。


「この奥、です」


 桜子が示した扉を開け廊下を進んでいくと、突き当りで左右に別れていた。ヨシシはまた、桜子に確認する。


「どっちだ?」

「わかりません……。方向はこの壁の正面としか」


 ヨシシは手を顎に当て数秒思案すると口を開いた。


「よしここからは、二手に別れよう。鳴海、荒木、山内、藤沢はA班。俺と残りのメンバーはB班とする。A班は右、B班は左だ。何かあればここまで撤退して合流だ」

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