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第二十一話 責任もって守れよ

第二十一話です。模擬戦ではありますが、戦闘シーンが続きます。

宜しくお願いします。


「それでは、次はアナザー優子君の成果を見せてもらおうか」


 ヨシシに告げられ、アナザー優子と対戦相手の女性がへの中央に出る。

 アナザー優子はバックアップ要員なので、攻撃よりも身を守る事に比重を置いている。敵に攻撃された際に援護を待てる時間、相手の攻撃に耐えることに重点を置いて訓練をしてきたと聞いている。

 今回の模擬戦ではは一対一で、応援が来るまでに、できるだけ長い時間攻撃を凌ぎ切れるかが試される。


「それでは…はじめ!」


 開始直後、相手の女性はアナザー優子にもう突進してタックルを仕掛けた。アナザー優子は横っ飛びで避ける。

 相手はそのまま地面に手をつき、一回転して立ち上がると同時に反転し蹴りを放つ。今度はバックステップで避けるアナザー優子。

 そのままじりじりと睨みあう両者。

 相手の女性は仕掛けるタイミングを計りながら、アナザー優子はいつ攻撃が来ても対処できるように、お互いから目を離さない。

 相手の女性が足を踏みだし、右手を伸ばす。アナザー優子は左手でそれをはじく。

 すかさず相手は左手を繰り出すが、アナザー優子は屈んで避ける。そして屈みこんだまま一回転しながら蹴りを繰り出す。

、足元を薙ぎ払うよう放たれたアナザー優子の蹴りを 前に向かってジャンプして躱しつつ、相手の女性はアナザー優子に飛び掛かる。蹴り終わりの体制から動くのに一瞬遅れたアナザー優子が、かろうじて防御のために腕を出す。

 アナザー優子の右腕を両手で掴んだ対戦相手は、勢いのまま彼女を振り回して床に転がせた。

 慌てて起き上がろうとするアナザー優子。だが、相手の女性は優子の上に乗り抑えつける。

 アナザー優子は脱出しようともがくが、対戦相手を振り落とすことが出来ない。

 十秒ほどその状態が続いた後、ヨシシの「それまで」の掛け声で終わった。


 対戦相手の女性は立ち上がり、床に転がるアナザー優子に手を差し出す。アナザー優子も彼女の手を取って立ち上がると、お互いに少し離れて対面し互いに礼をする。


「三分、正確には二分四十七秒か…。正直に言うと、もう少し耐えて欲しいところねー」


 手に持ったストップウォッチを見ながら、評価をする鳴海。時間計ってたんだ。

 悔しそうな顔をして俯くアナザー優子。


「まあ、本番では一人にはしない様にするし…。二分凌げるならなんとかするわー」


 若干の不安を残しながらも、アナザー優子の成果確認が終わった。

 壁際に戻ってきたアナザー優子に対戦相手を務めた女性が何かを話しかけている。彼女の言葉は聞こえないが、相手に返事をしているアナザー優子の表情が暗くはないので、まぁ大丈夫だろう。


 最後は優子だ。

 優子は木刀を手に持ち中央に進む。相手をする人は同年代に見える男性だ。彼も木刀を持ち優子と対面する。

 優子は木刀を武器として選んだのか…。しかし、防具もつけずに木刀で打ち合うのはかなり危ない気がする。勢いあまって怪我しないか心配ではある。

 ヨシシが二人に声を掛ける。


「改めて言っておくが、優子君はこの立ち合いで一本取ることが、作戦参加の条件となる。それでは…はじめ!」


 ヨシシの掛け声で二人が構える。

 優子は中段の構え、剣道の基本として最初に習う構えだ。剣先を相手にまっすぐ向けている。相手は八相。頭の右側に刃となる部分を相手に向けて木刀を立てる構えだ。

 お互いにじりじりと間合いを探るように動いている。

 まずは優子が仕掛けた。

 振りかぶりながら足を大きく上げて相手に踏み込む。相手は素早く横移動し、振り下ろされる木刀を躱す。そのまま流れるように横なぎに木刀を振るい優子に叩きつける。

 優子は素早く腕を引き木刀で受けて凌ぐが、無理な体制で受けたためバランスを崩しかける。素早く腕を引きよせ、再び横から叩きつける相手の男。

 今度は木刀で受けず、屈みこんで躱す優子。そのまま起き上がる勢いを利用して突きを入れる。

 バックステップで突きを躱す男。お互いいったん離れた状態で、構え直す。振り出しに戻った形だが、今度の優子は上段に構えている。相手の男はかわらず八相。

 想像よりスピーディーな展開だ。優子は受けに回ってはいるが、なかなか健闘していると思う。

 今度は男から仕掛けるようだ。八相から振りかぶりつつ、優子に向かって大きく近づいて木刀を振り下ろす。相手が近づいて自分の間合いに入ったことで、優子も上段から振り下ろす。

 木刀と木刀が交差する刹那、相手の動きが変わり、優子の木刀をまくり上げるようにして切り上げた。

 優子の両腕がはじかれるように上にあがり、木刀が手から離れて離れて飛ばされる。

 男は斜め上に切り上げた木刀を返し、優子の頭に向けて横なぎに木刀を振った。

 優子ははじかれた体制からしゃがみながら、くるんと一回転して男の攻撃を避けると、その勢いのまま男の足元めがけてローキックを放つ。

 避けられて空を切った木刀を地面に突き立て、男は木刀で優子のローキックを受ける。

 男は木刀から手を放し、蹴りを止められ動きが止まった優子に向けてかかと落としを仕掛けた。

 優子は蹴りをとめられた姿勢で止まっている。躱せる体制じゃない。このままでは決まってしまう、そう思ったとき俺は咄嗟に能力を使ってしまった。

 男の足元の地面を少しだけ凹ませたのだ。

 かかと落としの体制で片足立ちの男はバランスを崩し、攻撃が不発に終わった。すかさず、優子が男の手から離れて地面に転がった木刀を手に取り、体当たりをぶつける。

 体当たりされ仰向けに倒れた男の上に馬乗りになった優子が、男の喉元に木刀を突き付けた。


「それまで! 優子君の一本だ」


 ヨシシが終了を告げた。

 相手の男は腑に落ちない顔で何か言いかけたが、本間が近づき、彼の耳元に何かをささやくと黙った。


「やった! やったー!!」


 飛び上がって喜んでいる優子。互いに礼をしてこちらに戻ってくる。彼女ははやり遂げた顔をして、アナザー優子と両手を合わせて喜んでいる。

 咄嗟のこととは言え、手助けしてしまった俺は、罪悪感で素直に喜べなかった。相手の男にはばれているはずだ…。本間が知れば、優子の参加は認めないだろう。そう思うと、優子に申し訳ない気持ちで一杯だった。

 俺は不安になり本間の方を見ると、本間もこちらを見ていた。これは…ばれてるな…。優子、ごめん。

 本間は静かに俺に歩み寄ると、俺にだけ聞こえる程度の小声でささやいた。


「責任もって守れよ」


 やっぱりばれてたか…。だが、参加を取り消すことはないようだ。良かったのか、悪かったのか…。複雑な気持ちだ。

 本間が俺の傍から離れたところで、ヨシシが俺たちを集めて言う。


「皆訓練の成果は出ている様だな。特に優子君は成長が著しかった。約束通り三人には参加してもらうことになる。明後日が本番だ。明日は一日休んで、作戦に備えるようにしてくれ」


 次の日は訓練も無く、完全な休養日として体を休ませることができた。

 さらに翌日、いよいよ奪還作戦の決行日がやってきた。


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