第二十話 それが俺の工夫だよ
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「そもそもお前は、自分の能力をどこまで理解している?」
何度試しても、腕を動かさずにを能力を使えない俺は行き詰り、本間に助言を求めた。
「理解…ですか?」
「お前は超能力が発現してから日が浅い。それでもここまで使えているのは、手で掴むという、扱いやすいイメージのおかげだろう」
まさにその通りだと俺も思う。そもそも無意識に腕を動かして能力を使っていたんだ。優子に指摘されるまで、俺は金属バットを持ち上げることすらできなかった。
「お前は固定観念に縛られている」
「固定観念…ですか」
「お前は自分の能力が発動してすぐに、扱いやすいイメージを見つけてしまった。そこにとらわれすぎて、その先に進めなくなっている。それでは能力を使いこなしているとは言えない」
「扱いやすいイメージに固定されて、そこから発展できなくなっていると?」
「そうだ。お前は自分の能力を理解する必要がある。お前の能力はお前だけのものだ。工夫しろ。そして使いこなせ」
イメージが固定されている、か。それを聞いて思い出したのは、手をつかって物を持つイメージで能力を発動しているのに、明らかに手で掴めないものを掴んでいる、という優子の指摘だった。
この矛盾がなぜ起こるのか。そこに突破口がある気がした。
「俺には門番の仕事もある。常にお前についていてやることは出来ん。今日はここまでだ」
そう言って本間は訓練所を去っていく。
元々、本間が組手を行ってくれている以外の時間は、能力の使い方を一人で模索していた。本間の助言を受けて、一人残された俺は能力について考え続けた。
手で掴んで物を動かす延長で発動する俺の超能力。それなのに、あきらかに自分の手で掴むことのできないものを掴んでいるという矛盾。これ解消するためには、とらわれたイメージを手放す必要がある…?
俺は、訓練所に転がっているバスケットボールに掌を向けると目を瞑って集中する。そして手で掴むというイメージを頭の中から追い出し、頭の中を空っぽにしていった。
ボールのことも、それを動かすことも、頭の中から追い出したことを自覚すると、今度はボールが浮かぶことだけを考える。そして目を開けると。
バスケットボールは、俺の腰くらいの高さで浮いていた。掌は向けているが腕は動かしていない。
「動いた!」
思わず声がでる。その拍子に、集中が途切れボールが落ちて転がった。
切っ掛けは掴んだ。後はこれを成長させるだけだ。俺は何日もかけ、能力の扱い方を試行錯誤していった。
最初のうちは、時間をかけて集中しても、動かない時があった。しかし、日が経つにつれて動かしやすくなり、集中に必要な時間も少なくなっていった。
完全とはいえないまでも、実戦で使えるかもしれない形になったのは、ギリギリ、昨日のことだった。
――――――
俺は、叩き落とされた鉄パイプを左手の能力で掴み、右手には何も掴まず、両手を振ることでフェイントを入れながら本間を攻撃する。
鉄パイプは本間に躱されるが、俺は構わず、壁際に積まれた鉄パイプを掴み直し、連続攻撃を加えていく。攻撃の合間に、何も掴まないフェイントを入れることも忘れない。だが、俺の攻撃は的確に回避され、時には撃ち落され、足元に転がる。
それでも俺は、躱されるたびに、攻撃に使う鉄パイプの本数を増やしたり、減らしたり、出来る限り不規則に攻撃を仕掛け続けた。
本間も防御に徹しているわけではない、攻撃を躱すと同時に本間の蹴りが飛んでくる。その蹴りをバックステップで避けつつ、鉄パイプを掴んで投げる。鉄パイプを避ける動きと一体化した踏み込みで、間合いを詰めた本間からの突きがくる。
今度はサイドステップで躱しながら、攻撃すると見せかけたフェイントの空振りを放つ。フェイントを見切った本間が、最速で拳を放つ。
顔面に向かってきた拳を首をひねり紙一重で避ける。拳が頬をかすめ、風を切る音が聞こえた。今のは危なかった! 冷や汗を流しながら、新たな鉄パイプを数本掴んで投げつつ、足を使って間合いを調整する。
本間との絶え間ない打ち合いがつづき、かなり体力を消耗していた。そろそろ限界が近い…。訓練所の壁際に積まれていた鉄パイプも、ほぼ全て攻撃に使いきり、今は床に転がっている。
俺は体力が尽きる前に渾身の一撃を放つために、床に転がった中の一部を左右の手でそれぞれ掴み、力を込めて本間に向けて振り下ろす。
本間は、俺の振り下ろしを躱すことなく、超速の踏み込みからの突きを叩き込んできた。振り下ろした鉄パイプは本間には当たらず空を切り、床に転がる。
ここを凌がないと! 俺は限界直前の体を後ろに反らし、顔面を狙う本間の拳をスウェーバックで避ける。
避けた体制のまま、手を動かさず、床に転がった鉄パイプ全てを本間に向けて全力で打ち掛からせた。
すべてはこの時、この攻撃の為に、足を使い位置を調整しながら、見切られていようと、体力の限界まで、腕を振りながら攻撃してきた。
このタイミングでの、腕を振らない攻撃は、避けられまい!
しかし、そう思った瞬間、本間の体の周りに青い光の渦が現れ、鉄パイプは全て吸い込まれてしまった。
そのまま本間は、後ろ廻し蹴りを放ってくる。避ける体力すら使い果たしてしまった俺は、まともに蹴りを受けてその場に崩れ落ちた。
「そこまで!」
ヨシシの掛け声で模擬戦が終了する。本間が出してくれた手を掴み、なんとか立ち上がって礼をする。
「いい作戦だった。俺に能力を使わせるとはな」
「『トランスポーター』でしたっけ、まさか戦闘中にゲートを出すとは思いませんでしたよ」
「それが俺の工夫だよ」
「…ところで、鉄パイプはどこに?」
本間が壁のほうを顎で示す。そちらを見ると元あった場所に、鉄パイプが詰まれていた。本間は俺に背を向け、壁際に立つ皆のところに歩いていった。俺も後について壁際に戻る。
「圭祐、惜しかった!」
「圭祐さん残念でしたね。でもすごかったです」
すぐさま優子達が近づいて来て、声を掛けてくれる。しかし、本間はゲートを出したとは言え、本気ではなかったことは明白だ。俺はまだまだ足りない。もっと工夫をしないといけない…。
黙り込む俺にダブル優子が訝しんでいることに、ハっと気が付き、笑って返事をする。
「やっぱ本間さん、強すぎだなー」
そう言って優子達と一緒に笑っていると、いつの間にか近づいてきた鳴海が言う。
「圭祐君、おつかれさまー。これだけ戦えるなら、作戦参加に心配はないわねー」
俺は礼を言い、ちょっと疲れたので、壁に体を預け、寄りかかって立つ。俺たちの会話が終わったのを見てか、ヨシシが次の番を告げる。
「それでは、次はアナザー優子くんの成果を見せてもらおうか」
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