表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/48

第十九話 絶対認めてもらうから!

 忙しい日々が続き、あっという間に作戦決行の二日前になった。


 今日は訓練の最終段階として、俺たち三人の成果を確認する日となっていた。特に、優子はここで成果を認められなければ、お留守番が決定となる。そのため、朝から気合が入りまくりだった。


「圭祐、見ててよね! 私、絶対認めてもらうから!」

「気負いすぎて失敗するなよ」

「わかってるって!」

「そろそろ向かったほうがよさそうですよ」


 俺たち三人は部屋をでて第二訓練所に向かう。途中でヨシシと鳴海と出会い、そのまま合流して到着すると、先に来ていた本間と初対面の二人が立っていた。一人は片手に木刀を持った男性で、もう一人は女性だ。

 俺たちが入って来るのに気づいた本間が声を掛けてきた。


「おう、来たな。こっちの二人は、お嬢さんたちの対戦相手だ。自己紹介なんかはまた今度な」


 自己紹介は省略されたが、俺たちは頭をさげ「よろしくおねがいします」とあいさつをする。二人もこちらに向けて軽く頭を下げ、会釈してくれた。


「リーダーは直接確認には来られないが、本間さんと鳴海、そして俺の三人で、君たちの訓練の成果を見させてもらう。方法は既に伝えてある通り、模擬戦を行うこととする」


 ヨシシの言葉の後、いつものようにパンと手を叩いて鳴海が言う。


「じゃ、さっそく始めましょうー。トップバッターは圭祐くんねー」


 そういえば順番は聞いていなかったな。まずは俺から始めるようだ。本間共に部屋の中央に向かうと、皆が壁際に離れて立つ。

 俺と本間は少し離れてお互いに向かい合い、始まりの合図を待つ。俺は両手を左右に開き、本間は腰を落とし腕を前にして構えている。


「はじめ!」


 ヨシシの合図とともに本間が飛び出してくる。

 今回は先制攻撃を仕掛けてくるようだ。動きが速い! 事前に寸止めで行うとは聞いていても、この速度でこられると怖い。

 俺は近づいてくる本間の間合いから外れるべく、バックステップ。それとともに左右に広げた手を体の前に交差するように振る。掴んだ鉄パイプを、一部は本間めがけて、残りは本間の頭上にばら撒くように投げた。

 本間は飛んでくる鉄パイプを拳ではじき返すと、時間差で頭上から落ちてくる残りの鉄パイプも最小限の動きで躱す。

 俺は右手で木刀を一本掴み横なぎに腕を振る。木刀は俺の動きをトレースするように、本間に迫る。

 体をひねり、木刀を躱した本間が踏み込んできて、そのまま突きを放とうとする。俺は両腕を振りかぶり、振り下ろした。本間は、くるりと回転し俺に背を向けると、その勢いのまま、後ろから襲い掛かる木刀の横面に、拳を叩きこんだ。


 バキィン!


 木刀がへし折れはじけ飛ぶ。

 能力で掴んだ木刀を、投げつけずに掴んだままにしておいて、後ろから不意を突こうとしていたことはお見通しだったようだ。

 本間はすぐに俺の方に向き直り、突きを繰り出してくる。首をひねって躱しながら腕を前に突き出す。本間の拳が頬をかすめながら空を切った。

 俺が素早く腕を振り上げると、本間は素早く飛びのき迎撃の体制を取る。しかし、それはフェイク。俺は何も掴んではいない。そのまま前に踏み出し、両掌を組み合わせ本間に向かって打ち下ろした。

 防御のタイミングをはずされた本間には、俺の攻撃を躱す余裕はないはず。しかし当たる直前、本間は腕を頭の上で交差させガードする。


「腕を振ることを逆手に取ったフェイントは悪くない。考えたな」


 本間はそういうと、動きが止まった俺の両腕を払いのけながら、蹴りを放ってきた。

 俺は、払われた両腕で鉄パイプを掴んで引き寄せ、ギリギリで本間の蹴りを防御。そのまま腕を振るい、鉄パイプで足元を薙ぐ。

 素早く蹴り足を引き、バックステップで避ける本間。すぐさま間合いを詰め、鉄パイプを振りぬいた体制の俺に今度は拳を突き出した。

 体をひねりつつ、相手の腕を内から外に能力を使って押し出す。

 突きをいなされ、体制が崩れる本間。押された方向に体が泳いでいる。俺は体当たりを仕掛けようとするが思いとどまる。

 本間は体の動きに逆らわず、いやむしろ積極的に動いている。一見してバランスを崩しているように見えるが、あれは誘いだ。あのまま攻撃していたら、間違いなくカウンターを食らっていただろう。

 俺は本間の方に素早く向き直る。本間も、足をしっかり地面につけこちらに向かって構え直している。


「隙があるように見せかけて、カウンター狙いとか、ちょっと意地悪じゃないですかね…」


 俺はゆっくりと両手を広げながら後ずさる。本間は俺の攻撃に備えているのか、構えたまま動かない。

 俺が足を止めると共に、床に転がっていたすべての鉄パイプが後ろから本間に襲い掛かった。

 その瞬間、本間ははっと目を見開くと、まるで後ろに目があるかのように、降り注ぐ鉄パイプをギリギリで躱していく。躱しきれないものは、拳ではじき返して叩き落とす。

 すべての鉄パイプを避け切った本間が、にやりと嗤いながら言う。


「…出来るようになっていたとはな」

「それを指導してくれたのは本間さんじゃないですか」


 俺は()()()()()()()()答えた。


読んでいただき、ありがとうございます

できましたら、下にある星の評価を是非とも、お願い致します!

ご意見、ご感想もいただけたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ