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第十八話 そういう風に思っていたんですか!?

 ユイから計画のことを教えられ、作戦への参加が決まった。

 その翌日、俺たちの部屋の割り当てが変更になり、男女別に分けられた共同部屋に振り分けられた。今まで居た部屋は、保護した人の今後が決まるまで、一時的に割り当てられる部屋ということだった。

 俺の同部屋は気さくな人たちばかりで、すぐに打ち解けることができた。彼女たちも物資調達班で一緒に仕事をしている人たちと同部屋になり、仲良くやっている様だ。

 お互い、自分のやることに忙しく、訓練も別なのこともあり、食堂で晩御飯を食べる時間がたまに一緒になるくらいしか、顔を合わせることのない日が続いた。




「圭祐さん、先に終わってたんですね」

「お、カレーライスだ! ここのカレー、めちゃくちゃ美味しんだよね!」


 食堂でカレーを食べている俺に気づいたダブル優子が声を掛けてくる。物資調達の仕事仲間と食堂に来たようだが、手を振って別れると、カレーライスの器を持って来て、俺の向かいに並んで座った。


「おう、おかえり、優子達は仕事終わり?」

「ただいま。仕事終わって戻ってきたところだよ」

「今日は午前中が訓練で、午後から調達に出ていました」

「…なんか微妙に浮かない顔してるか?」

「それがねぇ、今日の調達、上手く行かなくって」

「調達って、結局買い物だろ? 売り切れで買えなかったとか?」

「ううん、それがね…。黒づくめの男が現れちゃって…」

「なるほど…って、えええ!?」


 何気なく話す優子の口調に、俺も何気なく相槌を返しかけたが、黒づくめの男が現れたって、めちゃくちゃ危険なことじゃないか!


「あー、そこは大丈夫なんだよ」

「安全マージンを十分とってあるんで、直接の遭遇はしていないんです」

「遭遇してないのに、現れたってわかるのか…。誰かの能力か?」

「うんそう。えっと、あの人の名前なんだっけ?」

「マミさん、室山真実子(むろやままみこ)さんよ」

「そうそう、マミさん。その人のね、『アラート』っていう能力で、登録した人が一定範囲に居ると分かるんだって」

「便利そうだな、それ」

「彼女、最初はその能力で危険を避けて暮らしていたそうです。ですが、能力に制限があるらしくて…。目視して登録した人物しか分からないそうなんです」

「目視…つまりは一度遭遇しないといけないのか…」

「そうそう。それで結局危ない目に合って、ここにたどりついたって話してくれたよ」


 新手が現れると、能力の効果が無くなるってことか。それは…厳しいな。ん? ということは、黒づくめの男が複数来たら、彼女が居てもわからないんじゃ…。


「それがね、黒づくめの男に限っては例外なんだって。何人現れても、全部分かるらしいんだ」

「それは…不思議だな。どういうことなんだろう」

「本人も、わからないそうです」

「ってことだからさ、危険はあっても回避できるから、大丈夫!」

「今日は調達半ばで、戻ってくることになっちゃいましたけどね…」


 黒づくめ男のみが例外ってところに何か引っかかるが、そのおかげで安全ならば、幸いな例外ということなんだろうか…。考えてみてもわからないな。

 ガッツポーズを取りながら大丈夫をアピールする優子が、俺の思考を遮って、今度はこちらの状況を聞いてきた。


「私たちの話はこれくらいかなあ。圭祐の訓練はどんな感じ?」


 俺の話…、訓練のことはあまり話したくないんだよなあ。さすがに初日のような限界ギリギリのしごきは無いが、未だに本間に一撃入れるための方法が思いつかない。

 能力の使い方の工夫も、腕の振りをなんとかするという答えはあっても、どうやればいいのかわからないままだ…。

 優子達は俺が口を開くのを待っているので、仕方なく俺は現状を伝えた。


「なるほど…、中々に苦労しているんですね」

「そういえば、腕を動かさないでバットを持とうとして失敗してたねぇ」

「そうなんだよ。なんとか持てるように訓練してるけど、今も出来ないままだ」

「圭祐の能力って、手で物を掴むイメージで、離れたところにある物を自在に動かす。で合ってるよね」

「うん、合ってる」

「私、思うんだけどさ、手で持つイメージなのに、鉄パイプや木刀を何本も一度につかめるのは矛盾してない?」

「あ、言われてみればそうですね。超能力だから持てるんだと思いますけど、自分の手でそんなに掴めるはずはありませんね。…直接手で掴むのと、そのイメージで能力使って掴むことに、何か違いがあるんでしょうか」


 なるほど…、俺はダブル優子の指摘について考えてみる。手で持つにしては一度に掴めるものが大きすぎる。自動車を持ち上げられることもそうだし、手で持ち上げられる優子が能力では重くて持ち上がらないのも、おかしいと言えばおかしい。その辺りに、突破口があるのかもしれない…。

 そんなことを考えていると、いつの間にか優子達はカレーライスを食べ終わっていた。早っ、俺はまだほとんど食べていないのに、後から来た彼女たちが先に食べ終わるとは。


「もうちょっと食べたいんだけどねえ。おかわり出来ないのは辛いね」

「調達班のお仕事をやっていると、無駄遣いはできないことがわかりますからね」


 相変わらず優子たちはよく食べるなあ。でもまあ、今の状況では我慢するしかないよな。そして俺はうっかり、言ってはいけないことを言ってしまった。


「はは、ダイエットと思って我慢するしかないな」


 そのとたん、ダブル優子の4つの目が半目になり、静かに、俺を射抜くように見つめてきた。気のせいか気温が下がって寒くなってきた気がする…。その目で見つめられると、怖い…。


「誰がダイエットが必要だって!?」

「私たちのこと、そういう風に思っていたんですか!?」

「あ、いや、ちがくて…」


 俺の否定は無視され、優子は手を伸ばして俺のカレーライスを取り上げる。そして、二人で分けて全部食べてしまった。俺は何も言えないまま、カレーライスの皿が空になるのを見守るしかなかった。


 その晩は空腹に耐えながら寝た…。


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