第一話 正当防衛だから!
初投稿です、よろしくお願いします。
2024/11/10 追記
誤字報告していただき、ありがとうございます。
黒づくめ→黒ずくめとするべきというご指摘をいただきました。
「黒尽くめ」の読みは「黒ずくめ」とするのが一般的ではありますが、「黒づくめ」でも間違いではないため、本作品では「黒づくめ」を使っております。
何卒ご理解いただけます様お願い致します。
突然だが、朝起きたら超能力が使えるようになっていた。
俺は藤沢圭祐、社会人3年目の24歳。2DKのアパートに一人暮らしをしている。
朝、目が覚めて時間を確認しようとスマホを手に取るときに、超能力の発動に気づいた。
スマホの時計を見ると8時半。
今は夏季休暇中で、本来ならもう少し遅く起きるのだが、今日はなんとなく目が覚めたのだった。
とりあえず、友人に電話をかけて相談することにした。
「こんな早くからに電話してくるなんてめずらしいな、圭祐」
電話の相手は二宮優子。小中と同一の幼馴染で、高校進学前に引っ越していったが、俺が就職で今のアパートで一人暮らしを始めたあとに、彼女の引っ越し先の近くだったということが判明。そこから友達付き合いが再開した。
なぜかこいつは俺にだけはぞんざいな口調なので、特に異性と意識することもなく、親しい友人としてつきあっている。
それこそ、突然発動した超能力について相談できるくらいだ。
「俺、超能力者になったみたいだ」
「マジか。とうとう身近で出たかぁ」
「その言い方、珍しいもんでもないの?」
「圭祐、ニュースみてないの? 最近そういうのが多いみたいだよ?」
「そうなんだ。全然知らなかったよ」
テレビは見ないし、新聞も取ってない。最近はネットニュースすらも見てなかったからな。
なんてことを考えてると、優子が踏み込んできた。
「ところで、どんな能力に目覚めたんだよ」
「えーっと、離れたところにある物をうごかしたり、ひきよせたり、かな」
「どっかの宇宙騎士かよ。具体的には?」
「さっき部屋の隅にあるスマホを取ろうとおもったら、スマホが手の中に飛んできた。で、驚いてそのまま電話した」
「ふうん。もちっと詳しく知りたいな。今からそっち行っていいかな?」
「おう、待ってる」
俺が返事するかしないかのうちに、通話が切れた。せっかちだな。
とりあえず、あいつが来るまで少し時間があるので超能力の発動について調べてみることにした。
「ふむふむ、半年ほど前から、突然超能力に目覚める人が続出。政府が調査開始。悪用を防ぐための立法を検討中。なるほど」
ネットでは超能力発動に関しての情報でいっぱいだった。
SNSでも「俺も目覚めたー」なんて書き込みが飛び交っているみたい。今まで発動されたとされる能力一覧をまとめたサイトまであった。
それを見ると、変身能力や、瞬間移動する能力なんてものまであるらしい。
他の人はどんな能力を発動しているか興味津々で眺めていると、優子が到着したらしく、玄関チャイムが鳴った。
「おう、そのまま入ってきてくれー」
俺はスマホに目を向けながら立ち上がり、玄関ドアのほうに手をかざして鍵を開けるように念じてみた。
カチっと鍵が開く音が聞こえたと同時に勢いよくドアが開け放たれた。
おいおい、壊すなよ。
そう思ってスマホから目を離し、玄関ドアのほうを向くと、そこにいるのは優子ではなかった。
玄関には、サングラス、黒髪の短髪、背の高い筋骨隆々体に、黒い革のライダーズジャケット、パンツも黒い革でさらに黒い革ブーツを履いた、全身黒づくめの男がいた。
「え? 誰? いったい何?」
予想外のできごとに固まったまま間抜けなつぶやきがでたが、黒づくめ男は何も答えず土足で上がり込んできた。
男は無言のまま目の前に来るると俺の両肩をがっしりと掴んだ。
「え? え? え?」
突然のことに俺は何一つ動けず、両肩をつかまれたまま強い力でがくがくと揺らされる。俺はなすがままに激しく揺らされ続けた。
肩から激しく揺らされているため、頭も激しく揺れる。
あ、やば。このままだと、意識がなくなりそうだ。
ゴン!
そのとき、黒づくめ男の背後で重いものがぶつかるような音がして、揺れがとまる。
揺れがおさまった俺は、男の背後を見る。
そこには、金属バットを男の後頭部に叩き込んでいる優子がいた。
茶色がかったショートで英語が書かれた白のタンクトップにデニムのホットパンツ。足には黒のバッシュを履いていた。
お前も土足かよ…。
遠のきそうな頭でぼんやりとそんなことを思っていると優子が大声を張り上げた。
「おらおっさん! 圭祐に何してんだ! その手を離さないとしばきまわすぞ!」
いや、もうしばいてるし。なんで金属バットなんて持ってきてるんですかねえ。そんなもんで後頭部叩いたら、普通死ぬよ?
しかし普通ではなかった。男は動きを止めたがほとんどダメージは無い様だ。
黒づくめの男は俺の肩から手を離すと後頭部に手をやりながら優子のほうを向く。
「お、やるのか!? やるのか!?」
優子がバットを剣道の形の様に構えて小刻みに振りながら、大声を張り上げている。男は完全に俺に背を向けて優子のほうへじりじりと迫っている。
今がチャンスだ。
「どっせーい!」
男が優子のほうへ近づいていくその後ろから、俺は渾身の体当たりをかました。
後ろからのぶつかられた勢いで、男は前のめり、床に手をつく。
その隙に横から回り込んで、優子の手を取った。
「とりあえず、走れー!!」
俺たちは玄関から脱出した。
優子は靴を履いているが、俺は裸足。玄関を抜けるときに靴はつかんできたが履いている暇はない。
裸足のまま息の続く限り走って、二辻向こうの神社に駆け込んだ。
後ろを伺うが、追ってくる気配は感じられない。
「はぁ、はぁ、はぁ。一体なんだったんだ、あれは」
息を整えながら靴を履く。
「心当たり無いの?」
優子が俺に聞いてくるが、心当たりなんてあるわけない。
「あるわけ無いでしょ」
「じゃ、警察行く?」
「うーん」
「なんでそこで悩むのさ?」
「お前、そのバットで頭殴ったろ? さすがに警察に言うとまずいと思うぞ」
「あー」
優子は手に持ったままのバットを見た。
「けどさ、なんともなかったみたいだし大丈夫じゃない?」
「いやいやいや。バットよく見てみ? 少しへこんでるぞ?お前殺すつもりで殴ったのか?」
「あれは…圭祐があぶないと思ったから、咄嗟に…。せ、正当防衛、正当防衛だから!」
「普通死ぬし。死んだら正当防衛にならんし」
「死んでないしー! なんともなかったから大丈夫だよ!」
「それを結果論と言うのだよ」
俺に言い負かされた、優子は少し頬を膨らませて「むー」と唸っている。
機嫌が悪くなると面倒だな…。
「とにかくありがとう。優子が来てくれて助かったよ」
「え? いやー、いやー。そうでしょそうでしょ。感謝したまえよー」
笑顔になりつつ、俺から目をそらしながら偉そうに言う。これでよし。
「とりあえず追ってきては無いみたいだし、警察は一旦保留。これからどうしようかねえ」
面倒事は先延ばしにするとして、これからどうするか思案するのであった。
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