明確に射抜かれた鳥についての考察
彼女は躊躇いなく引き金を引く。
それは単純に慣れているからという要素が大きいが、それにしたって、命の奪取に抵抗が感じられない。でも、僕はそれで彼女を謗るつもりは全くとしてない。彼女は奪われる命への敬意を欠かしてはいないからだ。だからこそ、彼女は美しい。
今も、彼女の猟銃から放たれた弾丸で一羽の鳥が墜落した。
青い鳥だった。
僕はその鳥が射抜かれる様をしっかりと見た。
あまりに静かな森に銃声が波のように広がっていく。
「どう?」
彼女が僕に訊ねる。
「当たってたよ」
「墜ちた?」
「うん」
僕と彼女は特に急ぐわけでもなく、ゆっくりと歩いて仕留めた獲物がいるであろう場所に向かった。
「大きかったかな?」
「普通よりちょっと大きかったかな」
「最近は小鳥しかいない」
「君が仕留め過ぎたんじゃないか?」
「そんなに知能は高くないと思うな。結局は生活に向いている場所に戻ってきてしまうでしょう?」
「でも、この森って餌も乏しいように思うよ」
彼女は僕よりも背が高い。そして、僕よりも遥かにボーイッシュだ。僕は彼女とは見た目も性質も真逆である。
「遠いね」
彼女が言う。
「何処に墜ちたかわかる?」
「わかってるつもり」
「ふわふわした言い方だなぁ」
「でも、この辺りだよ。えっと、確かいつかの流れ弾で抉れてる白樺の木の近くだったと思うんだけど」
「あぁ、あの白樺ね。あの時も小鳥だったな……」
彼女は思い出すように言った。
あれはちょうど半年前だったように思う。
「あれだ、あの白樺だよ」
僕が指差した方には、確かに幹が抉れた白樺がある。
「でも、何処にもいないね。珍しい青い鳥だったから、いたらすぐにわかるとは思うんだけど」
「また飛んでいった?」
「まさか! 明確に射抜かれていたよ?」
「弾丸は貫通してた?」
「そこまでは見れていないけど……でも、確実に深手だったよ。明らかに羽に当たってたから」
「なら、飛べないよね……鳥が這って逃げたりする?」
「それはないとは思うけど……」
彼女は腕を組んで、抉れた白樺に凭れ掛かった。凛とした眼は鳥が墜ちたであろう地面を睨んでいる。
「ねぇ……」
「何?」
「もしかして、鳥は最初からいなかったのかもね」
「いなかった? 私も君も鳥を見てるのに?」
「でも、そうじゃないと……」
「場所が違う可能性は?」
「白樺があるよ」
「他にも流れ弾が当たったのがあるかもしれない」
「少なくとも僕は知らないよ」
「……何処からおかしくなった?」
「最初からじゃない? 本当は僕、鳥なんて見ていないよ」
「見ていない?」
彼女が怪訝そうに僕を見た。
「でも、撃ち抜かれたものは見たよ」
「え?」
「つまり、あれは鳥じゃないってことだね。君は飛んでいるものが全て鳥だと思ってたりする? 自分の眼に映ったものが全て正しいと思っていたりする?」
「じゃあ、何?」
「考えてみてよ」
「わからないから訊いてるの」
「あれは何だったんだろうね?」




