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夢の影の声(声の影の夢)

 ある時の夢は砂糖菓子のようにふわりと浮かんでいて、僕はその白くて少し粉っぽい大地に立った瞬間に、何とも言えない喜びを感じた。

(百余分の明晰な剥奪を経て、銀の渡航者は飾り気のない蒙昧の扉に面し、堆い夜の破片で刻まれた純白の鍵を手に泣いているのだ)

 白い大地を手で掬ってみると、それは砂よりも遥かに細かいようで、さらさらと僕の手から消えていった。

(湿り気のある鉄筋の頭蓋にて、反復する声の証明を行うことは欺瞞とは言えぬが、果たしてそこに意義などあるというのか)

 僕が白い粉を舐めてみると、それはとても甘く、やはり、ここが砂糖菓子でできた夢なのだと知って、僕は駆け出し、遠く、それは現実ならば歩いて数時間もかかる丘に瞬間的に到達した。

(忌憚なく述べるのならば、それは苦々しい嘘や淋漓たる銀河の虹色の灯火のようであり、また、或いは遥かなどという凡そ不透明な単位系統に支配された悪夢、間違いなく流転する無限の想像である)

 丘から世界を見渡すと、それは何処か洞窟のように思えたけれど、その天井部分には輝く球体が浮かんでいて、僕はそれを瞬時に「人工太陽」なのだと理解することができた。

(ある定説を覆すべく、鴉の眼を借りたなら、この青い夜の右舷に隠れた純粋な月の嘲りさえも耳に来ず、地の果てと自称する雨の匂いの彷徨に端を発するそれを「希死念慮」と呼ぶ)

 世界の遠く遠くには雲が浮いていて、その白く重厚で石英のような雲に隠されるように、黄金の城があるのが見えて、僕はまたしても喜びを感じて、駆け出したのだった。

(宇宙より来る腐乱した臓腑の限界を試すべく、あの黒曜石で構成された第四の中空にあり、その瞑想の邪魔をせんと進む濁った廃墟の名前を忘れてしまった)

 それは風のように。

(痛み、そして、喜び)

 ソーダの海を越え、カステラの山を越え。

(溢れる月、瞑想の雲)

 砂糖の大陸も越え、宇宙の近くへ。

(因果の対蹠点、惑う精神の墓場)

 僕の背中には翼があるようで、時間さえも無視して、僕はその城のバルコニーに降り立った。

(忘れたものばかりがここにはあり、それを思い出そうとして人は死んでいくのだと言う)

 僕が歩み出すと、城の開いていた窓から誰かが出てきた。

(虚構、虚構、されど虚構と貴方は理解している筈だろう)

 そして、微笑むと、徐に銃を取り出し、僕に向けて撃った。

(まだ気付かないのは貴方の純粋さ故か、虚構を認めたくないからか)

 僕は倒れる。

(愚昧)

 血の感覚。

(繰り返す)

 意識が遠退く。

(正常)

 そして、暗転。

(残響)

 僕はひとつの呼吸をして、帰り道に向かう。

(まだ)

 煉瓦の道を歩く。

(電球が切れている)

 そして、辿り着く。

(墓場に近く、そうではなく)

 倒れ込む。

(貴方なりの方法で)

 貴方が顔を出す。

(貴方が望む故に)

 貴方は笑っている。

(貴方がそう思う故に)

 朝が来る。

(夜が終わる)

 ありがとう、また夜になったらお願い。

(またどうぞ、貴方ならいつでも)

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