ぐるりん投影、誰かの夢景色
僕とKとYは食事に出掛けた。僕の我儘で召集したのである。Yの車にみんなで乗って、看板がサイケデリックなレストランに向かった。そこで席が空くのを待つ間、僕らはショッピングモールで輪っかにした針金を探して投げて遊んでいた。
青果売り場で遊んでいたら、レストランの店員がやって来て、席が空いたことを教えてくれた。
「やっと空いたか」とKが言う。
僕らは針金なんか放っぽり出して、店から出た。夏の夜の空は艶やかに暗く、駐車場は人里離れた何処かのように光がなかった。故に夜空には美しく儚い星が舞っていたけれど、これは僕しか見ていなかった。
レストランに入る時、僕はふと、携帯電話を持っていないことに気がついて、少々、狼狽した。
「車の中だよ」とYが言って鍵を渡してくれた。
僕は車に向かい、ドアを開けて携帯電話を掴んだ瞬間、意識がぼやけて、ぐにゃりと歪曲し、戻った時には自分の家の玄関にいた。
玄関ではYとSと知らない女がいた。
「もう少しでご飯できるって」とY。
「そう」
「あ、なんかさ、Sが体調が悪いみたいでさ、水持ってきてくれない? 何だか熱っぽいんだよな」
「いいよ」
僕はリビングに入り、キッチンへ向かった。途中、ダイニングテーブルには鍋や青椒肉絲が置かれているのを見た。どちらも僕の苦手なものだ。僕はコップに氷を入れて麦茶を注ぎ、玄関に戻った。
「はいよ」
「ありがと」とS。
「そういえば、Kは?」
「二階にいるって」
「ふぅん」
「あ、もう一杯水くれない?」
「いいよ」
僕はSからコップを受け取って二階に向かった。二階の冷蔵庫にある天然水を持っていくつもりだった。階段を上って僕の部屋に入ると、なかなかに酷い有り様で、留守中に何の悪戯か、積み重ねていた漫画本が散らばっていて、部屋には足の踏み場がなかった。
どうにかこうにか本を片し終えて、部屋の外に出てKの名前を呼んだけれど、返事はなかった。仕方がないので、水を注いで下に戻った。しかし、今度は玄関に誰もいない。灯りさえも点いていなかった。
「ふぅむ、どういうことだ?」
僕はコップを置いて、二階に向かった。
物置部屋の奥に僕が知らない扉があって、そこから灯りが漏れていた。そこにKがいるのだと思った。
「おい、K!」
僕は呼んだが、返事はない。
すると、僕の後ろの方から母親の声がして、「Kもみんなもとっくに帰ったよ」と言った。
なるほど、帰ったのか。
そう思った後の記憶は存在しない。




