軋んで軋んで
目覚まし時計の音で眼を醒ました。上体を起こして眼を開ける。朝の光は毒なので見ない。見たら吐いてしまう。
約三時間の睡眠だった。浅く深く、食べ残しの夢であった。
私は上体を起こしたものの、そこから動く気になれず、次なる信号を待つばかりの機械人形のように止まっていた。
果たして、私は私だろうか。
切にそう思うのだ。
夢の中でさえ、その問いについて考えを巡らせ、答えが出ないまま、質の悪い睡眠を終える。
私は私の身体が別のもの、それも生き物ではないように思えて仕方がない。錯覚だろうが、肘や膝は球体関節になっているようである。眼球だってガラス質の球体なのだ。
思考だけは私なのだろうか。
そうだ、身体が非人間的な物体であろうが、思考できるのならば私は人間であると言えるだろう。
私は硬質の眼球をくるくると回した。
口をパカッと開けた。
抑揚のない、古呆けたオルゴールのような声。
毛布を退けて球体関節の膝を見るのは嫌だった。
私は精一杯感覚し、認識し、考える。朝の冷たさ。窓からの眩しさ。毛布の柔らかさ。身体の硬さ。声の悍しさ。世界の遠さ。夢の浅さ。
シャリュモーの音色が何処からともなく聞こえる。
キスで人間に戻る蛙が忙しく鳴いている。
川が逆流する。
私は死滅回遊の最中。
夢から現実、あぁ、眼を醒ました。どうして朝が来るのだろう。ほら、丸い関節が軋む。首だって、腰だって、足だって、軋んで軋んで仕方がない。言うことを聞かなくて仕方がない。
銀河が夜に弾けたのは誰の所為?
ああ、軋む軋む軋む軋む。
どうして朝は来るのだろう。
どうして夜になるのだろう。
どうして現実は現実なのだろう。
どうして夢は夢なのだろう。
今日も人形の身体を軋ませて、壊すのだ。
私は私でありたいがために、壊れるのだ。




