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午前三時の盲目と魔法

 部屋が回り始めたのは夜に染まりきって、乾いた星が酔ったように微細な振動を繰り返す人定の頃である。

 腐ったテーブルの上にはいつかの食べきれなかったカップ麺が、見るも悲惨な膨れ上がり方を見せている。

 カップ麺の近くに転がって久しい銀色の缶は、泡立つ黄金色の液体を有していたが、それを失い、今は軽い殻となり転がっている。

 虚飾と傲慢に満ちて溢れたクローゼットは扉の蝶番が壊れてから無数の日々が経過している。中には分不相応な布が襤褸であれ何であれ、何とも杜撰に仕舞い込まれている。

 腐ったテーブルは腐った床の上に立っていて、その床には染みだらけのラグが数々の醜い傷とともにあり、その上には数ヵ月前にコンビニで何となく買った自己啓発本が、狂犬に襲われたように、ぐしゃぐしゃでずたずたのゴミになって置かれている。

 穴と染みだらけの座椅子には、いくつかの錠剤が転がっている。それらの効果は隠匿されている、または失われていると考えるべきだ。

 燐光放つ亡霊のようなランプは眠りを妨げる気力があるようで、それは煌々と灯っているわけだが、いい加減に無意味であることに気付くべきだと、何度も告げた筈だ。

 午前三時の私は盲目である。

 この陰惨な世界の実情が何ひとつ見えないのだ。

 ウィアードな現実ばかりが世界を跋扈し、私の居場所を、この腐りきった六畳間に押し込んでいるのだ。右も左もなく、あるのは上と下で、今やそれすらも失われつつある。

 盲目である私は、眼に触れ、確かに光を遮っていることを確かめる。ここは回る部屋の中心にあって、唯一の居場所とも言えるベッドの上。踊る銀河が淡々と睡眠薬の香りを滴らせる、厳密には曖昧な白いシーツ。玉響の時間にあって、私は永劫だと勘違いし、盲目であることから逃げられなくなり、沈んでいくばかり。

 玉石混淆の星々が浮かぶ夜を眼にして灼けた。

 誰かのポートレートが陰鬱な影を部屋に齎す。

 午前三時に魔法を掛ければ、それは午前七時まで続く。午前七時に新たな魔法が掛けられて、それっきりである。

 最早、何もないのだ。盲目である私が視力を取り戻す時、私は深く絶望し、死にたいという意思を抑圧して、死ぬための生命を全うせんと、薬の香りがするベッドで蘇るのである。

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