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親愛なる友よ

友達は簡単に作れるけれど、問題はそこからだ。

 小学生は些細なことが気になるらしい。それは大抵が人間関係についての些細なことが多い。泥沼化するような大人の人間関係とは違って、なかなかに潔く、それでも半ば泥臭い人間関係だ。その輪に入ることが小学生のルールとも言えた。

 当時、クラスは表面上温厚だった。小学生の段階では派閥のようなものはなく、殆どの子供たちが手広く薄い関係を持っていた。つまり、基本的には対等な関係だった。しかし、いずれは派閥を作る素質がある子供たちは、個人崇拝にも似たことを始めた。勿論、本人が「崇拝」を意図して誘導したわけではないだろうが、結果的にそうなるのだ。

 その束縛のワードは「親友」だった。

「お前、もう親友じゃないからな」

 この言葉を告げられるのを、みんな恐れていたようだ。実際のところは、言葉だけの話で、そもそも、そんな通告には何の重みもない。それだけで切れる関係など願い下げだ。しかし、小学生の頭では処理しきれないらしく、そのワードの維持を求めて縋りつくのだ。

 ゲームのソフトを貸したなら、「お前、親友だよ」

 給食のデザートをあげたなら、「お前、親友だよ」

 問題の答えを教えたなら、「お前、親友だよ」

「お前、親友だよ」

「お前、親友だよ」

「親友だよ」

「親友だよ」

「親友だよ」

「親友」

「親友」

「親友」

「親友」

 価値が薄い。そんな何の権力もないポジションを求めて、小学生は奔走するのだ。質が悪いことに、「親友の権利」を提供する側は立派な独裁体制を敷く傾向がある。でも、盲目で愚かな小学生は見えないまま、聞こえないまま、繋がりを求めて手足となるのだ。

 勿論、与える権利を行使しすぎれば離反されるだけなのだが。

 その離反される立場に陥った独裁者を何人も見た。

 僕は傍観者を決め込んでいた。何故なら、僕は誰かの上に立ちたくもないけれど、それより、下で支える方が性に合わないからだ。傍観者という立場はヒエラルキーで言えば、何処にもいないような高尚で卑怯だが、中立な立場なのだ。だから、僕は訊ねた。

「『親友』って駒をストックして優越に浸ってるんだね?」

「は?」

「楽しい?」

「お前、親友じゃないわ」

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