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霊笛  作者: 野中
霊笛・第二部
20/72

第三章(1)

足元から上がる水泡が、耳元をくすぐる感覚に、意識が蘇生する。


周囲に満ちるのは、ただ、沈黙。音がない。

…音が、不在だ。


無音は、孤独を募らせる。独りの恐怖が、魂の奥まで浸透する。



まるで牢獄だ。逃げられない。そのとき。



衝撃があった。地面にたたきつけられたような。乱暴に、魂を揺さぶられる。

弾かれたように水面を見上げる。

水面は、しずかだ。揺らいでいない。


ならばこれは外部から訪れた刺激ではない。内側の嵐なのだ。けれど、なんて。


喘ぎに似た呟きが水泡と共にこぼれ出る。




―――――きれい。




そのときはじめて、耳に音が届いた。

それは、空洞になっていたような身体の芯を、大げさなほど強く震わせる。

何の音だろう。笛の音?

聞き覚えがある。


でもどこで。


他人事のように考えた直後。


叱りつける勢いで彼方から答えが飛びかかってきた。


ぱっちりと目が開く。これは。




豊音!




聞き覚えがある、どころではない。一息で、我に返る。自覚した。



私は、夢の中にいる。



気付かず、すっかり同化していた。

でも…夢?


水底を蹴って、浮上していきながら、私は首を捻った。

それにしては、やたら現実感が強い。そのとき。




振り向いてしまったのは、なぜだったろう。




最初に目を射たのは、寂しい水底では怖いほど印象的な華やかな袖。

艶やかに着飾った、ちいさな女の子。


目があった。


一瞬、息が詰まる。いきなり生じた恐怖のせいだ。

よろめく。怖さに、絡め取られそうになって。


いえ。

待って。恐怖? どうして。相手は、ちいさな女の子だ。なのに。

思う端から、答えが響き返る。

胸の内から。


違う。あの子は、ただの女の子ではない。





彼女は、―――――死者だ。





女の子自身に、ではない。私は『死』に恐怖しているのだ。

正体がわかれば、大丈夫だ。

恐怖は薄れる。

だって。


恐怖は私のもの。私が臆病なのは、ただの事実。事実からは逃げられない。

逃げられないなら、受け入れるだけだ。

なぜなら、否定すれば、苦しくなる。

逆に。


受け入れ、腹の底まで呑み込んだなら、それは力になる。とたん。


重くなりかけた四肢が、枷が弾けたようにいっきに自由になった。

浮上に勢いがつく。

行かなければ。

帰らなければ。

でも。


どこへ。


一瞬、惑う。とたん。

待ちかねた響きで名を呼ばれた。






「凛」






返事をしなければ。

思うのに、声が出ない。

ただ震え、私は瞬きした。


目に映ったのは、―――――天井。



「眠っている方を、そう幾度も呼ぶものではありませんよ」



女性のやさしい声が、まだぼんやりとした私の意識に、じわり、沁みる。

「離れ難いのはわかりますが、こうやって眠っている方の枕元で会話するのも、いかがなものかしら」

肉体の感覚すら、まだ薄い。

起き抜けの感覚に漂いながら、私は庇の向こうの空を見上げた。


日は既に中天にある。もう昼だ。


「それ以上に問題なのは」

屋根の向こう、巨木の緑が見えた。

豊かな緑がさわりと揺れるたび、周囲がやさしい息吹に満ちる。




「こちらへやってこられてから、挨拶をするどころか、口にするのは奥方の名だけなんて腑抜けたとしか…あの、聞いておられます?」




「許してあげてよ、八重。位階持ちの人外にとって、伴侶は尊い。命よりもね」

くすくす笑いながら問題発言をかましたのは、青柳伯だ。


「…両軍がぶつかるとしたなら」


少し呆れた響きを宿し、気を取り直したように、優しい声が再び言葉を紡いだ。

朱首峠あけくびとうげですね」





――――ここには首の成る木がございます、いくつもいでゆかれるか――――





不意に、私は遠い昔、旅の商人から聞いたわらべ歌を思い出した。

歌をきっかけに、次第に意識が明晰になっていく。

「あとは、互いの勢いによって、」

女性の声が、ひどく冷静に沈んだ。情が消えれば、声は石のように響く。


「佐倉家が優勢なら、焔花の谷へ」


佐倉。

その名を耳にするなり、危機感に似たものが、私の全身へ勢いよく血を巡らせた。


「雪待原の方へ至れば、白鷺家が優勢でしょう」


おそらくこれは、―――――生臭い話。

耳を塞いでしまいたい。

跳ね起きそうになった刹那。


「凛」


呼ばれた。

「はい」

今度こそ、返事ができた。だって、史郎の声だ。

史郎だ、彼がいる。どこ?

溺れるように起き上がろうとするなり、

「ん」

布団がはぎとられる。


寒さに身が竦んだ。次いで、…浮遊感。


思わず、目の前のものに縋った。

それが着物の襟と気付くなり、私は目を見張る。


「え、あ、あの」

思わず間の抜けた声を上げてしまった。

私はどうやら、抱きあげられている。

それも、史郎に。


起き抜けはもう少し、心臓に優しい状況であってほしい。


史郎の顎先を見ながら、私は縮こまってしまう。

「あらあら」

ころころと笑い声が響いた。

私は恥ずかしさに泣きたい気分でそちらへ目を向ける。


「平然としてらっしゃるのね、霊笛の君は。いつものことなのね? 慣れていらっしゃる」




壮絶な誤解だ。




「睦まじいこと。羨ましいわ」


藤色の着物の上に、淡い印象の牡丹が刺繍された白い肩掛けを、品よくまとった女性と目が合う。

歳の頃は、三十。左の目尻の黒子が印象的だ。


そこは広い座敷だった。

一部屋なのに、随分と広い。

思えば、ここはどこにある誰のお屋敷なのだろう。

その座敷の真ん中に、彼女は座していた。

「懐かしくもあります。わたくしも夫とそのような時期がございましたもの」


女性の微笑みも口調も、ホッとするほど物柔かだ。



「八重ちゃんが玄丸と結婚して五百年くらいだっけ?」



部屋の隅で、青とも銀ともつかない印象の髪が揺れた。

奥の壁にもたれた青柳伯が、片膝を立てて猪口を煽っている。今は昼間のはずだが。

というのか。






玄丸?






珍しくきちんと合わせられている史郎の襟を握り込む指に、思わず力がこもった。

まじまじと八重と呼ばれた女性を見つめる。

彼女の微笑みがほろ苦くなった。


「まだまだ新婚でしょ」

青柳伯は、我関せずと唇を舐める。

行儀が悪いと言えそうな態度だが、彼だと色気に変わるのが不思議だ。


見れば、青柳伯の隣では、久嵐が正座していた。

安堵したものの、かわいそうなほど緊張している。


そして、障子側の部屋の隅。


影のように座す柘榴がいた。

首にかけられた枷と鎖はそのままだが、目を伏せ、楽しげな表情で室内の声に耳を傾けている。

意外だ。

柘榴は、とっくにいなくなっていると思っていた。


何が、彼女をここに留まらせているのだろうか。


私が状況を把握している間に、史郎が上座に腰を下ろした。胡坐をかく。

私はその間に座る格好になった。

当然、もたれかかるなどできない。膝を抱える。

小さくなった。


途方に暮れて、史郎を見上げる。


脳裏で礼節とか節度とか体面とか羞恥とかいう言葉が、ぐるぐる回った。

が、何も言葉にならない。

史郎は相変わらず不機嫌そうに、私を見下ろした。

何を言うかと思えば、




「俺に望むことはあるか」




…ぶっきらぼうな口調で、いつもの台詞。


声を出すのも憚られるほど険しい顔で口にする言葉ではない。

それに、尋ね方も最初と違った。

答えを待つ姿勢はない。


最初から返事は分かっているという決め付けた態度だ。


だとしても、嘘はつけない。

第一、史郎に嘘は通じない。


彼の望む答えを返しても、―――――火に油。


私は首を横に振った。

鋭い舌打ちが聴こえる。

逃げることもできず受けとめた私の耳に、青柳伯のくすくす笑いが届く。


「放浪癖のある捨て猫をひとまず檻に投げ込んだって感じだよ、傍から見てると」

史郎が唸った。心外と言いたげだ。

「鎖にはつないでねえだろ。逃げる自由は、やってる」


史郎の元でなら、鎖に繋がれていても自由だろう。


思いつつ、身を竦めた時、気付いた。

右肩に、痛みがない。そっと指をあてる。包帯が巻かれた形跡もなかった。


私は肩を槍で貫かれたはずだ。


斬り傷などではない。肉を貫かれた傷だ。

簡単に塞がる傷ではなかった。私の常識で考えれば。


血の気が引いた。

私が眠っている間、重い怪我が治るほどの時が経過したのかと一瞬、混乱したからだ。

私の動きに目を止めた史郎が、こともなげに告げる。






「他の野郎がつけた傷なんざ目障りだ。消したぞ」






「うむ、あのような術はじめて見たが、まさに『消した』としか言いようがないのぅ」


柘榴が童女のように無邪気な声を上げた。

私を見て、楽しげに言葉を続ける。

「昨日の朝、怪我を負った凛が気絶した直後にの?」

私は息を呑んだ。


怪我を負ったのは、昨日の朝? つまり、今日は。





宴の三日目ということだ。宴の終わる日。





いっとき上の空になった私の視線の先で、柘榴が自身の肩を抱いた。

自分の手柄のように言葉を続ける。

「北竜公がこう、凛の肩を覆ったのよ。たちまち、血は止まり、皮膚は塞がった。痕も残っておらなんだ。どうやったのだえ?」

「そのうちてめぇもできるようになるさ、鬼女」

史郎の歯に衣着せぬ物言いにも、柘榴は動じない。

むしろ愉快そうに目を細めた。

史郎は適当さを隠さず柘榴をあしらい、私を見下ろす。


「失った血までは戻せねえからな、夜のうちにある程度俺の気を注いだ。調子はどうだ」

思えば、確かに眩暈もない。

なんとはなしに肩を押さえた。

傷どころか、痛みも感じられない。


「いつもと変わりません」

「ふん」

「あの」

「なんだ」

「ありがとう、ございます」

「残すんなら、俺がつけたぶんだけにしろ」

「はい」


私は神妙に頷く。

当然だ、と言いたげな史郎の向かいで、八重がからかうような声を上げた。

「あら」

「…んだぁ?」

少しの反応でも、つまらんことを言ったら命はない、と言いたげな態度に見える史郎の荒っぽさにも動じず、八重は袖で口元を覆い、にっこり微笑んだ。

「いぃえぇ? 意味深なお言葉、なんて思っておりませんとも」

「その邪推を遺言にするか」


史郎の場合、一瞥すら、立派な暴力だ。すぐさま八重は口を閉ざす。


彼女を背後から見ていた柘榴が、どういうわけか不思議そうに言った。

「難しい話はわからんが。ふむ、見れば見るほど変わった女子だの、そなた」

「八重さまに失礼を言うな」

久嵐が憤然とした態度で柘榴を指差す。


「この場所で一番『変わった』存在は、お前だろうが」


柘榴が変わっている、ということには同意する。




ただ『一番』が誰かは甲乙つけがたい。




「そうかえ」

柘榴は涼しい顔で応じた。

腹立たしげに久嵐が続ける。

「大体なんで、お前がまだここにいるんだよ」


「仕方あるまい。凛はわたしの主じゃからの」


初耳だ。

え、いつから。

私の疑問を、久嵐が代弁してくれる。

「嘘つけ。凛は怪我してからずっと眠ってたじゃないか。いったいいつからだよ」

「無論、わたしが勝手に決めたわけではない」

当然だ。


むしろ、柘榴はそんなこと、考えもしないはず。なら?


「あのあと、北竜公に選択しろと言われたのよ」

なにを。

思わず史郎を見上げた。

彼はどうでもよさそうに口を開く。


「柘榴は世の理を学ぶ必要がある。その間、凛を主にする気はあるか、と」


そこで私を取りあげた理由を、納得いくまで説明してほしい。

史郎が決めたのなら、従うだけだが。

ほほほ、と八重が笑った。


「そうしないなら、南方の、ある霊山の奥へ当分の間封じると仰せでした」

柘榴は、うむ、と重々しく頷く。

笑いごとではない。


それでは、脅しだ。それだけ、柘榴の存在は危険と言うことだろうか。


柘榴の態度は軽い。

悩むそぶりも見せなかった。




「どちらがよいか、選ぶまでもなかろう。ゆえにな、凛を主にする、―――――わたしは是と言った」




他人事のように告げ、柘榴は豊かな黒髪を後ろに払う。

何を思ったか、その勢いのまま、乱暴に自身の着物の襟を開いた。

私はギョッとなる。


「北竜公は恐ろしいお方じゃの」


柘榴の左胸が露わになった。

つい、私は彼女と史郎を見比べる。

史郎は、ただ柘榴がいる場所に、置物でも置かれているように無反応だ。

けれど、私が落ち着けない。


気持ちのままに、手を上げて史郎の目もとを覆う。


史郎は特に抵抗しない。

無言で、私の行動を受け入れた。

見れば、青柳伯も特に動じた様子はない。


久嵐だけ、唖然としている。

八重は困ったように微笑んでいた。


落ち着いて柘榴を見遣れば、露わになった褐色の肌の上に、漆黒の紋様が刻まれているのが見える。

「触れることもなしに、他人の心の臓を縛りよったわ。これは呪いよ」

私は眉を潜めた。


「呪い? 裏切らないための、ですか?」


基本的に相手への信頼を捨てない史郎が、裏切らないための手段を事前に打つとは想像がつかない。

目を塞がれたまま、史郎が答えた。

「それは、柘榴の居場所を正確につかむためのものに過ぎねえよ」


「やろうと思えば、わたしは凛を殺すこともできる」


ただし、と柘榴は笑う。

「その場合、わたしの命もないと心得ておる。場所を掴まれているのだからな」

少なくとも、彼女は愚かではない。

そこまで理解していて、私を遊び半分で殺すような真似はしないだろう。


柘榴は襟を正す。

彼女は最後まで、羞恥の欠片も見せなかった。

ほっとして、私は史郎の顔から手を離す。


「逃れられぬ流れなら、わたしはただ受け入れるまで――――すまんが、凛。しばらく、よろしく頼む」

「あ、ご丁寧に。こちらこそよろしくお願いいたします」

頭を下げた柘榴に、私も慌てて頭を下げる。


「理以前に、常識もわからぬ身よ。指導は、正直に行ってほしい。凛なら、信頼できよう」

「そんなっ。私こそ、まだまだ世なれぬ身です。おかしいと思ったら遠慮なくご指摘ください」

「ほう、半人前同士の支え合いか。それも楽しそうじゃの」

「支え合い、ですね。ええ、それなら私もなんとかできそう」


互いに顔を上げ、状況を確認し合うように頷く。

私はほっと胸を押さえた。

柘榴は楽しそうに周囲を見渡し、久嵐に目を止める。


「思っておったのだが、ふむ、そなたも変わった子供じゃ」

柘榴の凝視に、久嵐はたじろいだように身を引いた。

「か、変わってなんかない! …ない、はずだ」


八重は、にこにこと二人のやり取りを聞いている。

その姿からは、『変わった』と指摘されるなんの要因も見つけられない。まっとうだ。


不意に、その目が私に向けられた。

「霊笛の君」

いきなり、彼女は改まった態度で畳に両手をついた。


「このたびは、夫が失礼をいたしました」


頭が、躊躇いひとつなく下げられる。

私はただ驚いて見下ろした。

確かに、彼女は私に頭を下げている。


史郎に、ではない。


「貴女に恐怖を与え、惑わし、挙句、怪我を負わせた責は、玄丸の妻であるわたくしにもあります。

怪我は、史郎さまのお力なくしてはひどい痕が残ることになったでしょう。

お詫びの言葉もございません」


すぐそばにある史郎の身体の熱が、じんわり、肩にしみてきた。

八重の決意に満ちた言葉は続く。


「まずは、行方不明の霊笛を、命に代えても見つけてごらんにいれましょう」

咄嗟に、私の指が帯に触れた。

何もないといやになるほど感じる。

「どうか、寛大なお心で我ら夫婦をお許しください」


「許すも何も」

ようやく口を挟み、私は首を横に振った。

「この状況は、私が選択した結果です」

できれば、史郎の膝から降りて正座したい。


できない以上、この状況で可能な限りの誠意を込めて言葉を紡いだ。

「お願いします、顔を上げてください。私のような半端者に頭を下げる必要などありません」


北王の伴侶として相応しい行動とは、どういうものなのか、未だに手さぐりしているような頼りない状況だ。

私は自分が、八重のようにしっかりした女性に頭を下げられるのに相応しいとは思えない。

たとえ謝罪であっても。

彼女が、玄丸の奥方であるなら、なおのこと。

ところが。


「なんというお言葉でしょう!」


驚いた声と同時に、八重の頭が跳ねるように持ちあがる。

「霊笛の君は既に証しておいでです。己は王の伴侶に相応しいと」

…寝耳に水だ。

憤然とした声に面食らった。咄嗟には言葉もない。


「去年の秋から」

激情を抑え込むように、八重は低い声で続けた。

「霊笛を奏でられていらっしゃるでしょう?」

勢いに押される格好で頷く。

八重は得意になった子供のように、勝ち誇った声で言った。

「わたくしにはそれほど力はございませんが、今年は新年の訪れから、澄んだ波動が北方から感じられるようになったと思ってはいたのです。

位階持ちの方なら、もっと鋭敏に感じられておいででしょう」


言われて、よくよく自分の行動を思い出す。

確かに私は、大好きな豊音を、望みのままに奏でていた。

好きなことを、好きなように行えた。行った。


それだけだ。


大それたことではない。

「春の宴の演奏は決定的でした。遠く、この地にも影響はございましたよ?」

何の話だろう、と言いたげに首を傾げた柘榴と対照的に、久嵐が身を乗り出した。


「お、おれもっ。おれも感じた! あれか…っ、おれは、泣きそうに、なって」

久嵐が言葉を詰まらせる。

彼に頷き、八重は自身の胸を押さえた。

「音は聴こえずとも、猛烈な波動が波紋のように大地に広がりましたもの。

北王のお力と共に、果てなく増幅した清い、――――あの、透明な波動。

わたくしなど、しばらく心がしびれて動けなくなりました」


なぜか、己の誉れのように八重は胸を張った。

「耳にした人外すべてが惚れ込む調べであったと、夫から聞いております」

「玄丸殿が?」

意外だ。


奏でた音を褒められた気はするが、役不足の烙印を押された感が強くて、素直に受け取れない。


「…言い訳のつもりは、ございませんが」

やさしげな八重の双眸に、ふとかなしみが過ぎる。

「玄丸が何を申し上げ、行動したにしろ、それはわたくしのためです。

夫が何を言ったとしても、まるごと本音のはずはございません。

本当に、お許しくださいませ」


ただ、何も恥じるものなどないと言いたげに八重の背はすっきりと伸びていた。潔い。


柘榴が真紅の双眸を細める。

「玄丸、のぅ? 凛を西方へ投げ込んだ御仁と聞くが、凛が西へ訪れることがどう、そなたのためになるのだえ?」




「玄丸は戦を止めたいのさ。佐倉家と白鷺家の衝突をな」




答えたのは、史郎だ。声が低い。

引力にひかれたように、全員の目が、一斉に史郎へ向く。


史郎は醒めた目を八重に向けていた。

「西の事情に俺を引っ張り込むために、玄丸は凛を西方へ放り出したな」

八重は自嘲気味に微笑んだ。


「わたくしから、戦と言う危険を切り離したいがために」


「戦に巻き込まれたくないなら、逃げればよかろう」

柘榴はあっけらかんと言った。

青柳伯が苦笑する。

彼は、屋根の向こうに見える大きな緑を指差した。


「柘榴ちゃんは、屋敷中央の大木を、直に見なかった?」

記憶を探るように、柘榴の目が上を向く。




「畸形であったな」




すぐさま、断じた。

「幹に、血管も丸だしの肉がまくいついていたぞ。

人間にとって、人外そのものが異形であるが、その異形たる人外の中でも、さらに異形と言えるような姿じゃ」



「黙れ、鬼」



唸ったのは、久嵐だ。

「それ以上は、」

「構いませんよ、久嵐」

宥めるように少年の名を呼び、八重は微笑む。


「その異形の中の異形が、わたくしの本体です」


畸形と言う断定に臆することもなく、八重は堂々と告げた。

「今、ここにあるこの姿は、分身と言えます。花か種子と思って頂ければ…ゆえに、壊れやすい」

柘榴が八重を、『変わった』女子と評した理由は、ともするとそこにあるのかもしれない。


「凛ちゃん、八重はね」

青柳伯が、さらりと爆弾を投げ込む。



「混血だよ。人間と人外の」



玄丸は言った。

人間と人外の間に生まれる子は総じて異形、と。だが。


彼の大事な相手こそが異形だとは。




ならば、彼の言葉には侮り以外の気持ちが込められていたに違いない。


それは、どんな気持ちなのだったろう。




「樹木、なのですか」


「ゆえに、わたくしはここから動けないのです」

戦が身近で起ころうとも、逃げることはできない、というのはそういう理由なのか。

ただ、見守るしかできない。


「ですが、戦がどこで起こるかは分からないのでしょう?」

「拾い集めた情報から、あるていど推測できます。両軍がぶつかるのは、朱首峠」

八重は南を見遣る。

「この屋敷のすぐそばです」


「わらべ歌に出てくる、あの朱首峠ですよね?」

「いやだわ、ご存知なの」

私の言葉に、八重が、恥ずかしげに身を竦めた。

なぜ、と思うなり、爆弾発言をする。


「そこに出てくる樹が、わたくし」


にっこり微笑んで言うのだから、侮れない。

私は屋根の向こうに見える緑をまじまじ見つめた。


「首を成らすのですか」

「ほほ、まさか。昔、人間の虐殺を行っただけですよ。ほんの、数百ほど首をちぎって」

心臓に悪い。

私は話を変えようと質問の方向性を変える。


「ですが、ここが朱首峠というわけではないのでしょう?」


先ほど、動けないと言ったばかりだが。

「史実で言われる朱首峠は、間違いなく屋敷のあるこの場所です」

八重は断言し、首を傾げる。


「ですが、強固な結界で秘されておりますので、人間には見つけることが難しい」



「だけど、惨劇が風化してもわらべ歌とかは残ってねぇ、いつしか別の場所が朱首峠と呼び習わされるようになったってわけ」



青柳伯が言葉を続けた。

結界。

私は周囲を見渡した。

それでも、推測は推測だ。戦が朱首峠で起こることは、確実ではない。


楽観する思考に、八重が水を差す。

「朱首峠で両軍が衝突することは、あらゆる情報通の意見が一致をみております。まず、間違いないかと」

そして玄丸も、この家屋が戦の火にさらされる危険があると判断したのか。


「人間同士のものでも、戦となれば、まず結界が綻びるだろうねぇ」

青柳伯は遠い場所で起きていることのようにのんびりと言葉を紡ぐ。

「この邸を囲む結界は強力だけど、保たないのは確実だ」


「だから人間どもの戦を俺に止めさせる、か」

史郎の一言には、いきなり抜き身の刃が閃いたような感があった。

親身になって同情する態度ではない。

めいっぱい、突き放す気配に満ちている。

「力づくでか? 話し合いの場を設ければいいのか? いずれにせよ」

史郎が喉の奥で笑う。






「王を駒にするか」






逃げ出す気力も萎える恐怖で、いきなり心臓の奥まで貫かれた感覚があった。

そこから逃れるように、不意に八重は、叱責に似た強さで言った。


「愚かにも、死ぬ物狂いの、賭けです。それで解決できる確約もないのに」

「西方のことは西方で解決するのが筋だよね。史郎はいくら王でも、あくまで北の柱だ」

青柳伯が呟き、猪口を煽る。


「骸ヶ淵のヤツは動かないの? …面白がっていそうな気はするけど」



「―――――…あの方は…」



八重が言葉をとぎらせた。強く、拳を握り込む。

人外たちにしか通じない共通の認識でもあるのか、それだけで事情を察したように、史郎と青柳伯は頷いた。

「だから玄丸は、打てる手はぜんぶ打っときたかったんだな。…焦ったか」

史郎が独り言のように声を割りこませる。


「そういうのは、嫌いじゃない。ただ、凛を選んだのは死ぬ覚悟だったとしか思えん」


八重は苦笑した。

「わたくしのように、面倒な女を妻に迎えてくれたひとです。もう五百年、一緒に生きてくれました。ほんとうは、やさしいひとなのです」

きっと、そうなのだろう。八重には。それに。


一緒に死ぬことは簡単だが、一緒に生きることは難しい。

死ぬのは一瞬で終わるけれど、生きるのはずっと続くから。


それが、五百年だ。私には想像もつかない。


戦から逃げられない、と言いつつも、八重の態度は清々しくて、私はふと思った。

逃げられないことを、彼女は受け入れているのではないか。

戦火に巻き込まれたなら、そのまま殉じる覚悟が、…あるのではないか。


もしかすると、それが、玄丸の焦りの原因なのかもしれない。

今、この席にいない彼はどこでどう過ごしているのだろう。

彼女は落ち着こうとするように、胸を押さえ、大きく息を吐きだした。


「捻くれ者なりに、玄丸は霊笛の君の演奏に全面降伏しておりましたよ」

悪戯気に睨まれる。こちらに話が返ってくるとは思わなかった。しかし。

(―――――…演奏、と言ったの?)


宴の話だ。だとすれば。


「あの骸伯までもが本音で、霊笛の君に媚びておられたとか。それがどれほどのことか御承知?」

間違いない。

私は上目遣いに史郎を見遣った。

応じて、満月色の双眸が、細められる。




―――――あのあと、八重は玄丸と会っている。




話をしている。

でなければ、そのようなこと、知りようもないはずだ。

ともすると、玄丸が今どこにいるのか、八重は知っているのではないか。


けれど、史郎も青柳伯も何も言わない。なら、私も倣うだけだ。


なんにしろ、今、八重が語った言葉に偽りはない。目を見れば分かる。

とはいえ、どれほど熱弁を振るわれても、戸惑いは強くなる一方だ。

笛の技量に自信を持てたことなどない。

私はただ、笛を奏でるのが好きなだけだ。

その、どうにも根深い自信のなさが、


「あれっぽっちのことで?」


…悪い言葉を導き出した。

すぐ、口を閉ざす。しまった。


これでは――――せっかくの八重の言葉を、想いを、ばかにしたも同じだ。


八重が一瞬、目を丸くした。直後、

「ふふ…、おほほ、我ら人外を心底魅了した音を、あれっぽっちと仰せとは!」

楽しげに笑い出す。


「なんて傲慢。突き抜けておられるのね。逆に爽快です」


攻撃的な響きはない。

痛快、と言いたげな態度だ。

違う。自信がないだけだ。

しかしそんなみっともないことを口にすることはできない。私は黙って八重を見つめた。


「さすが、真牙の血統です」


八重の表情に、揶揄は感じられない。だが、奇怪な含みを感じた。

久嵐が息を呑む。

惑う目で、私を見た。


当惑に、私はつい青柳伯を一瞥する。

記憶はおぼろげだが、彼も最近、その名を口にしたはずだ。


気付いているだろうに、青柳伯は俯いて酒を舐めている。

答えてくれる気はないらしい。

ただ、聞くな、とも言われなかった。


私は八重に、おそるおそる尋ねた。

「シンガ、とは…誰です?」

私は取引のやり方など知らない。


こんな真っ直ぐな問いかけは、愚かなのだろう。


八重はばかにはしなかった。ただ、目を丸くする。久嵐もだ。

「あら、ご存知ないのですか? 人外には常識の名ですけれど」

「しょうがないよ、八重さま。凛は人間なんだ」

柘榴は聞いているのかいないのか、欠伸をこぼしている。


「でも久嵐、霊笛の君の御母君は、あの巫女――――澪さま、なのよ?」


久嵐は、つい、と言った態度で小さく唸った。得体の知れない化け物と遭遇した態度だ。




「霊笛の君、血筋の所以について母君からは何もお聞きになっていらっしゃらないの?」




困ってしまう。

母は、母だ。

『あの』と名指しされるような存在ではない、…はずだ。


八重は、…青柳伯は、――――史郎は、母の何を、知っているのだろう。


興味がない、とは言わない。けれど、つい口ごもる。

思い出したのは、母の明るい笑い声。

しあわせしか知らないと言いたげな彼女の笑顔のおかげで、座敷牢の中にいても、私は窮屈さや不自由を感じたことが一度もなかった。

知ることは、必要だろうか。母の、別の顔を。


血統、血筋、というからには、真牙という存在は、私の祖先――――つまり、遠い過去の人物と言うことだろうけれど。

「澪さまの祖は真牙、――――正確には、真牙の姉君です」


「五千年前に実在した人物だって話だ。だから人外の中では、伝承としてじゃなく、実際に会って知ってる方も多い」




五千年前『だから』、と続く言葉が『会って知っている』となるのは、人間には不可能な話だ。


人外と人間の感覚の違いを、こういう何気ないところで思い知る。




それにしても、五千年。


その間、人間の中で脈々と血を受けつがれ、気ままな人外にも記憶され続ける真牙と言うひとは、どういう人物なのだろうか。いや。






…何を、したのだろう。






八重は一旦、言葉を切った。

嫌な役割を振られたことに気付いたと言いたげに。

「彼の血脈は、人間たちの中で、守られ続けました。なにせ」

思い切ったように、八重は言葉を続けた。




「真牙ははるか昔、四柱の王のうち、先代の北王を弑し奉った人間なのですから」




一瞬、頭の中が真っ白になる。

つまり。

真牙の血統に期待されるのは、対人外の戦力、ということだ。

「そして」

八重は、言葉を淡々と紡いだ。






「人外の裏切り者」






「そこまでだ」

面倒そうに、史郎は言葉を挟んだ。

「時はない」

史郎が皮肉げに答えを促した。


「凛の霊笛がどこにあるのか、見当はついているのか」


時は、ない? 私は面食らう。

私の霊笛――――失った豊音がそこにどう関わるというのだろうか。

とはいえ、史郎にはあまり切羽詰まった様子もない。


八重は霊笛を見つけてくれる、とは言ったが、急ぐ理由は私には見当がつかなかった。

史郎を見上げれば、彼は肩を竦める。

「今回の春の宴はあの音ではじまったろう」

だからな、と史郎は宥めるように、私の背を軽く叩いた。気にするな、というように。

「しめるのもあれでなけりゃならない」

初耳だ。

おそるおそる、尋ねた。


「…それができなければ、どうなるのでしょう?」






「終わらないだけさ。宴がな」






こともなげに史郎は答えた。

私は言葉を失う。

それはおおごとではないのだろうか。


宴は儀式だ。守るべき形式がある。

あの、宴の始まりを体験すればわかる。

人間と違って、人外が形成した形式は、それだけで、確実に何らかの力を持っているのだろう。


史郎が終わらないと言うなら、本当に終わらないのだ。

経験の浅い私では、その意味合いを正確に把握はできない。


だが、不穏さは理解できた。


となれば、簡単に霊笛を奪われてしまった私にも、非はある。

どうにか、最初に出た場所を思い出そうと頑張ってみる。

手がかりはないだろうか。


八重が表情を曇らせた。

「心当たりの店をあたらせているのですが、めぼしい結果が得られないのです」

「おそらくは、売られたはずじゃがの。伝えた店にもなかったかえ」

『商人』の元にいた柘榴の言葉に、八重はため息で応じる。


「ここまでなしのつぶてだと、見込み違いと判断した方がよい気がいたします」


「売られたわけではないと?」

史郎が低く呟いた。

結果につながらなければ容赦はしない、と無言の圧力がかかる。

彼の威圧は、簡単に死を連想させた。

証拠に、久嵐はすっかり青ざめている。


だが、八重は強い目で胸を張った。


「はい。売られる前にその場にいた何者かが所有している可能性が高いかと」

このヒトは、見た目に反して、葦のようにしなやかな強さを兼ね備えている。

「私がこの西方で、最初に出た場所をご存知なのですか」

感心しながら尋ねれば、八重はしっかり頷いた。


「気配を辿ればなんとか。眷属に、探索を得意とする者もおりますゆえ」

玄丸に聞いたのかもしれない。

とはいえ、そうも言い切れない感覚もあった。


直観だが、玄丸は知らなかったのではないかと思うのだ。





私がどのような場所に出るのか。





「なにより、霊笛の君の気配は間違いようもないものですし」

「玄丸殿は」

他者を他の場所へ転移させる術の生みだし方など、私は知らない。


だが、おぼろな感覚は、疑問となって口からこぼれ出た。



「私がどこに出るか、事前に知っていたのでしょうか?」



私がはじめてあらわれたのは、座敷牢だ。

妙な場所ではないだろうか。


次いで、玄丸の態度を思い出してみる。

拒絶の言葉は痛い。その痛みを押しのけ、冷静に考えてみた。

…ああ、そうだ。


「玄丸殿は、転移の寸前、緊張し、焦っているようでした」


考えてみれば、おかしな態度だ。


――――事前に、私が出る場所を知っていたなら。


気のせいかもしれませんが、と自信なく言葉が消えようとした刹那。

ビリッ、と空気が帯電したような心地がした。


思わず腕をさする。

青柳伯が、くわばらくわばら、とそっぽを向いた。

「八重」

史郎の声が、ひどく重い。

八重が震えながら頭を下げた。




「直ちに、かの一家に眷属の見張りをつけます。…どうかっ、ご容赦を!」


「なるか!」




放たれたのは、ほとんど怒号。

天地が鳴動したかと思った。






「凛を道具にしやがったな、玄丸!!」






反射で、身が竦む。

けれどこのまま縮こまっていると、とんでもないことになる。

よくわからないが、この状態は、私がまいた種だ。

刈り取らなければ。

「道具、とはどういう意味、ですか」

自身が怒られているわけではないが、きっと涙目になっていた。

どうにかこぼさないようつとめながら、史郎を見上げる。


噛みつく勢いで見下ろしてきた史郎が、とたんにぐっと何かを堪える顔になった。


きつく目を閉じる。

乱暴に、言葉を吐いた。

「八重」

「はい」

重そうに頭を上げた八重が、ぎこちなく私に微笑んだ。


「おそらく、玄丸は知らなかったのです。霊笛の君がどこにでるか、その場所を」


やはり、と思いつつも、一瞬、私の全身からすべての力が抜けた。

なんだろう、それは、その。


あれ? 可能、なの? そんなこと。


「知らずに、できるものなんですか?」

「単に移動する以外にも、転移の術は意図によって、様々に変化いたします。

今回玄丸が使ったのは、…術者の望む答えが『存在する』場所へ対象が出る術でしょう」


望む答え。

玄丸の目的を考えれば、それは自明だ。

彼の目的は、八重を守ること。そのために、戦を止めたい。




玄丸は、戦を止める、その、解答を求めたのだろう。




史郎の怒りは、私のためだ。

なるほど、『道具』扱いとも言える状況だ。

私は目を伏せる。


そっと史郎の胸に、身をもたせかけた。


とたん、彼の身体が小さく震え、わずかに緊張が溶ける。



ひどいような重圧は、まだそのままだけれど。





●こぼれ話:彼がそうする理由

青柳伯「僕は面倒くさがりってわけじゃないよ。好きなことしてたいだけ」

青柳伯「うん、王に心を配るのは、普通の話だよ?」

青柳伯「ヒキコモリになった責任も感じるし…それがさぁ、史郎って、ああじゃない?」

青柳伯「人間で言うその筋のヒト、みたいな? 顔の造作は冷たく見えるくらい端正なのに別の意味で怖いでしょ」

青柳伯「昔はそうでもなかったんだけどさ、年々迫力に磨きがかかって…ねえあれどこまでいくの?」

青柳伯「いやだからさ、ある日とうとう卒倒したやつらがいて、僕、真顔で言っちゃったのよ」





青柳伯「史郎は立ってるだけで暴力だから、呼ぶまで引っ込んでて」





青柳伯「…」

青柳伯「わかってるよっ!?」

青柳伯「でもねっ!?」

青柳伯「誰かが指摘しなきゃいけなかったでしょっ!?」


青柳伯「…それまで完璧に自分の威圧に無自覚だったんだもん、史郎のヤツ…」


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