然々と
笑わなくなった訳を、
斯く斯く然々と説明してみたら、
言葉は想像以上に、
すっぽぬけてしまって、
ぼくは、また黙ってゆく。
山間の谷間にあるぼくの記憶に、
何が嬉しいこととしてあるのかと、
それとなく、聞いてみる。
とにかく、尋ねてみる。
今更、思いつくことなどなくて、
だらだらと、同じような場面が
殻の中で、繰り返される。
人の願いは、さほど大差なく、
自分が笑えることだと言えば、
それで、片付いてしまう。
少しずつ、少しずつ、
ぼくの顔や、ぼくの声を元に戻せば、
どこかで、笑えていた頃に、
行きつくんだろうか。
台風が危な過ぎて、今日が見えにくい。
明日も見つめにくい。
秋の錦は、誰もが気づくけど、
冬の、春の錦は、ぼくにしか、
見つけられない。
笑わなくなった訳も、ぼくにしか、
見つけられない。