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アフターゾンビアポカリプスAI百合 〜不滅の造花とスチームヘッド〜  作者: 無縁仏
セクション2 スヴィトスラーフ聖歌隊 大主教『清廉なる導き手』リリウム
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番外 いろいろスチーム・ヘッド その1

この項目では基本的な設定? みたいなやつを載せています。

もともと「いろいろメモランダム」という独立したセクションを作りたかったのですが、

管理が上手いこと行かなかったので、

別のセクション内へと引っ越しすることとなりました……。

:スチーム・ヘッドの基本的なこと

 不死病が蔓延した世界で、恒久的な自律活動を可能とした機体群です。

 構築には以下の四つの要素が必ず含まれます。

 1.正常な症状進行により自発的な思考活動が不要となった『不死の肉体』

 2.恒久的な眠りに落ちた生体脳に、新しい言葉を与える機械『高性能人工脳髄』

 3.人格のエミュレートに必要な諸情報を収録した『人格記録媒体』

 4.それらを半永久的に稼動させるための『蒸気機関(スチーム・オルガン)

 人間のように思考して自律活動するという点が大事で、仮に同じ装備だったとしても、ドローンとか無人機みたいな単純な行動しか出来なかったり、電波とかで操縦されるだけの機体は『ラジオ・ヘッド』と呼ばれます。


 大抵の歴史において、全盛期はどの国も先進的機械兵器とラジオ・ヘッドで部隊を作って「無敵の軍団だー(キャッキャッ)」ってしていましたが、それが電子戦の仁義なきエスカレートを招き、その結果として高高度核爆発で地表全部を電磁波で掻き乱すような、信じられないぐらい馬鹿みたいな戦争に発展するのでは? 

 さすがにそんな馬鹿みたいなことにはならないでしょ。

 さすがにね。みんな立派な大人なんだからね。

 常識的に考えれば、ならない。

 でも、なんか、なる。

 なるのだな。

 どうして……? 馬鹿だったのかな? どうしてだろうね。


 スチーム・ヘッドたちは人格記録媒体の差し替え/使用する肉体の乗り換えが可能で、現在使っている肉体がその人格の元々の肉体であると言うのは、スヴィトスラーフ聖歌隊以外では特務仕様となります。対応している肉体の規格が多いほど完成度が高いスチーム・ヘッドと考えて差し支えありません。

 使用する不死病患者のことは、理念的な思い入れが無い限り『肉体(ボディ)』と呼びます。

 継承連帯のパペットに積み込む場合は『生体CPU(リアクター)』。

 スチーム・ヘッドは不死を得たヒトの肉体に立脚するものだという思想から、一部の技術者集団やそれに由来する機体は『不死病筐体(ファウンデーション)』と呼称します。

 スヴィトスラーフ聖歌隊では肉体=本人の生前の肉体であり、人類が神と婚姻したことの証として『花嫁』として扱ったり、しなかったりします。供犠と見做す者もいるようです。あるいは聖隷だったり……。大主教によってまちまちですね。


 人格記録媒体の呼び方にも組織間でばらつきがあり、人継承連帯では単なる記録媒体と見做して『アイ・メディア』だとか、消耗品としての性質を強調して『カートリッジ』だとか。

 スヴィトスラーフ聖歌隊においては、魂そのものであり神の息吹の具現であるとして『プシュケ』と名付け、他の組織よりも殊更大事にしています。

 調停防疫局では『プシュケ・メディア』となります。



 さて、スチーム・ヘッドという名前についてですが、本編でも出ているとおり、『スチーム』の部分は、旧時代の名残です。

 これまでに登場している機体でも、本当に蒸気機関オンリーで動いている機体というのはかなり珍しいです。

 ただし、それぞれの時間枝で、スチーム・ヘッドが蒸気機関だけで動いていた時代は、確実に存在します。

 例えばアルファⅡモナルキアの歴史では、黎明期のヘッドはEMPノイローゼの都合で実戦投入されたという事実とは異なる史実(カバーストーリー)があります。カバーストーリーなんですね。そうだったのか。ただし、全部が嘘ではなく、とにかく絶対にバグらないよう本当に蒸気機関で駆動させる必要があったようです。何か極めて厳しい環境で運用するための装備だったんですねー。

 しかし、殆どの歴史において、時代が下るにつれてスチーム・ヘッドの形態は変わっていきます。パワーとか精密性とかの加減でやっぱり蒸気駆動一本だと厳しい面があり、不朽結晶科学やEMP対策の発展によって、蒸気要素が薄れていき、段々とデジタル制御に移行していったのでした。

 とは言え、今でも一般的な機体はみんな背中とかにある蒸気機関(スチーム・オルガン)から、ちゃんと蒸気を出しています。煙とか血煙とかも蒸気か? どうだろう。



 スチーム・ヘッドのパーツは基本的に『不朽結晶連続体』と通称される特殊な素材で構成されており、これらは他の物体では破壊不可能です。不朽結晶は不滅であることを約束された物質であり、この連続体を崩壊させるには、同等以上の純度の不朽結晶連続体をぶつけるしかありません。

 不朽結晶連続体で構築された装備を、特に『蒸気甲冑(スチーム・ギア)』と呼ばれます。

 これは絶対に誤動作を起こさず、核爆発とかでも壊れない、とてもすごい鎧です。でも熱とか遮断するわけではないし、核爆発に巻き込まれたら中の人は……死なないから大丈夫! 死ななくて良かったー。不死身って悪いことだけじゃない。良いことは多いですか? どうでしょう。

 不死病患者にはデッドカウント(死亡回数)という概念があり、この数字が進めば進むほど死亡耐性が強化され、再生能力が上がっていきます。

 さらに特定の死に方を繰り返すほど、環境への適応が加速し、どんどん大丈夫になっていきます! 同じ死に方を何回もする状況、大丈夫なのか? 

 核兵器で何回も死ねば、そのうち核兵器も平気になるはずです。そんな何回も核兵器食らわないと思いますが……。

 余談ですが(今回の更新分、全部余談)、序盤の序盤でチラッと出てきた機械甲冑(マシーナリー・ギア)は、一般的な蒸気甲冑(スチーム・ギア)よりも強力です。

 製造コストも遙かに低く、拡張性も高く……そして、オーバードライブみたいなことも出来ました。パイロットも機械式人工脳髄を挿れた不死病患者だったり。

 ただ、不死病蔓延後の世界では服の一枚を調達するのも難しいぐらいなので、複雑な精密機械なんてもう整備のしようがなく、現在(いつ?)ではおおよそ廃れてしまっています。

 まぁクヌーズオーエ解放軍だとなんか魔改造されたやつが残っていそうですね。趣味の品として。



:戦闘用スチーム・ヘッド

 読んで字の如く、純粋に戦闘に特化したスチーム・ヘッドです。

 多かれ少なかれ蒸気甲冑(スチーム・ギア)の装甲面積が拡大しているのが特徴です。スチーム・ヘッドの戦闘力は積んでいる不朽結晶連続体の量にある程度までは比例するため、必然的に全身甲冑となります。デッドカウントも製造段階から計画的に進められており、デフォルトの状態で非戦闘用よりも再生能力が高いです。

 また後年の機体は破壊的抗戦機動(オーバードライブ)を実現するためのシステムを搭載しており、全身甲冑とあわせて超高速で動けるのが戦闘用スチーム・ヘッドを名乗って良い最低要件となっています。


 嘘です……。

 オーバードライブは特殊技能です……。


 高倍率オーバードライブ対応機がゴロゴロ転がってるのはクヌーズオーエ解放軍やアルファⅡウンドワートの世界の継承連帯ぐらいなものです。超音速で走れるような手合いは戦闘用スチーム・ヘッドの高級モデルですね。


 戦闘用スチームヘッドに関しては、パペットよりも数は遙かに多いのですが、当たり外れも非常に激しいです。人格記録媒体の質が残酷なほどダイレクトに戦闘能力に繋がるのも、人を超えているのにヒトの形からは外れられない戦闘用スチーム・ヘッドの特徴でしょう。


 そもそもスチーム・ヘッド同士の戦闘はめちゃくちゃ面倒くさい。全身不朽結晶装甲が前提、超人的な身体能力はあって当然、火薬式の銃なんてアクションが遅すぎて牽制ぐらいにしか使えない。

 先に距離を詰めて対応不能な位置から敵に刃を物理的に叩き込んだ方が勝ち! という世界なのです。

 そんなだから、生前から刃物振り回してないとあんまり活躍できません。

 聖歌隊の時間枝以外では、小銃弾が敵を追尾して爆発する……とかが普通。未来な世界なのに、刃物振り回して目標を殺すのが得意で、なおかつ犯罪者じゃない人がいっぱいいたら、困ります。それゆえに貴重な人材なのでした。

 

 生前暗殺者だったり武道を修めていたりすると戦闘能力は格段に上がります。

 本編中だとシィーが典型的な『生前の経験値のおかげで強力な機体』でしょうか。

 後述するスチーム・パペットと比較すると、コストが抑えられること、生体への負荷が少ないこと、稼働率が安定していること、等がメリットになると思います。

 人類文化継承連帯ではシンプルに『機関人間』、スヴィトスラーフ聖歌隊では神との契約によりもう一度新しく生まれ、任務を受けた者……ということで『再誕者』と呼ばれています。厳密にはレーゲントと再誕者は別の概念なのですが、レーゲントではない再誕者はほぼいないため、外部からは全員ひっくるめて『レーゲント』と呼ばれています。

 解放軍ではあんまり区別せずスチーム・ヘッド(あるいは単に『ヘッド』)呼びが一般的です。



:スチーム・パペット

 特に大型蒸気甲冑を装備したスチーム・ヘッドを指します。

 機関人形。主に人類文化継承連帯が量産しました。

 一般的なヘッドが『機械化された不死病患者』ならば、パペットは『不死病患者を組み込んだ機械』と言って良いでしょう。

 人工脳髄と蒸気甲冑が基本的に一体化しており、人格記録媒体はいくらでも交換可能。

 そして設計思想上の主体は()()()()()()にあります。

 不死病患者と人格記録媒体を使い捨てにする非人道的兵器です。

 4~10メートルほどもある不朽結晶製の大型機械に、人工脳髄を取り付けた不死病患者を生体CPU(リアクター)として放り込んで、ヒトの形状から大きく外れたその機械の塊を自分自身の肉体として処理させることで動かします。無理がありますね。とうぜん、無理矢理です。強引です。人間の尊厳へのファックです。

 絶対に壊れない巨大な機械が暴れ回るわけですから、戦力として見れば図抜けています。凡百の戦闘用スチーム・ヘッドでは「刃が奥まで徹らないので攻撃が何も効かない」というレベルで太刀打ち出来ません。

 ヒトの形を一定程度無視出来るというのも強みです。自走する巨大な一輪バイクとしか言いようが無い轢殺特化型パペット『コンカッション・ホイール』などはその最たる例でしょう。

 いかんせん大型かつ複雑なので、建造コストが高騰するのは自明ですが、さらに深刻な欠点があります。

 ストレスです。ボディへの負荷と、ボディから人格記録媒体へフィードバックされるストレスが常軌を逸して高いのです。

 生前の肉体とは全く違う形状のボディに閉じ込められて戦闘を強要されるため、適性の無い人格記録媒体は極めて短時間で不可逆的に変質(フリーク・アウト)して、自己連続性喪失の状態に陥ります。

 人格記録媒体には身体運動よりは特殊な空間把握能力、機械兵器の操縦経験といったものが重要で、そうなってくると軍属の元パイロットが適しています。実際、パペットにはそういう出自の人間が積まれがちです。


 それでも半日も連続で戦闘させれば発狂してしまうのが普通。

 そしてパペットとはそれを良しとする技術体系なのです。

 中の人が発狂しても、次の人格記録媒体を装填すれば良いだけですから。


 フリーク・アウトを起こさなくても、高負荷環境におかれたパペットはどんどん暴走していくため、すさまじい残虐行為を働くようになります。

 身体性を著しく侵害する兵器であるため、負荷の反動は、多くの場合、狂気的な破壊衝動の解放による残虐行為を通した己自身の肉体の実在の確認、という面倒くさい形で発露します。

 特に弱そうな相手や、嬲りがいのありそうな相手に暴力衝動が発生するため、見目麗しい存在ほど危険です。

 攻撃性の高いパペットに捕縛されたレーゲントなどは悲惨の一言でしょう。


『誰がなっても強い』。これがスチーム・パペットの最大の利点であり、最悪の特徴です。

 長期的な運用を目指すのであれば、適性の高い人格記録媒体を使うのは勿論、連続しての稼働は控えるのが絶対条件。

 機体トラブルも整備チームで可能な限り抑えていく必要があります。

 リアクターとなる人間には、ストレスを解消するための方策を常に用意してやらなければなりません。もちろん、不死の時代では、そんな万全の状態を求めることなど出来ないのですが……。



 といった具合で、本来ならば運用に割り切りが必要な兵器ですが、クヌーズオーエ解放軍では安定して運用されています。何でもござれの技術者集団である衛星軌道開発公社、欲求のコントロールに長けたスヴィトスラーフ聖歌隊の面々で、あらゆる面を上手くメンテナンスしているためです。

 戦闘後は現在でも多少荒れますが、どの機体も平時は穏やかに過ごしています。

 なお、元パイロットなどの方が継戦能力や身体動作は上手になるにせよ、パペット自体が既に強力なので、素人でも適性が高ければ十分にやっていけます。

 解放軍の軍団長を務めているファデルなどがその一例ですね。

 

 人を選ばないのが特徴とは言うけど、やっぱり専用の人材を育成して、専用の改造を施して、それで専用のパペットを与えるのが一番だったりします。




:レーゲント

 神の花嫁にして万人のために開かれた楽園の褥。スヴィトスラーフ聖歌隊のスチーム・ヘッド(再誕者)は、九割方『レーゲント』です。

 聖父スヴィトスラーフから再誕の機密を受けて製造されます。

 ヘッドが「ヒトであること、歩き続けること」を、パペットが「蒸気甲冑であること、戦い続けること」を重視するなら、レーゲントは「ことばを話すこと、例えば愛し続けること」に重点を置いています。

 スチーム・ヘッドとしては低機能、低性能。戦闘には全く不向き。そして彼女たちの人格記録媒体及び人工脳髄は、自分自身の肉体以外には合致しません。

 規格が違う肉体を全く動かせないのです。

 その反面、人格のエミュレート精度と連続稼働時間が圧倒的に長く、しかもメンテナンスをする必要が全くありません。神の愛を説くために永久に歌い続けることが可能です。


 例外なく若く美しい女性を素体とした不死病患者であり、『原初の聖句』と呼称される特殊な音声を操るのが特徴です。

 単独での戦闘能力は皆無に等しく、『原初の聖句』で周囲の不死病患者を数十~数万のオーダーでコントロールして活動します。

 これらの技能はいずれも生前から使用可能だったもので、実を言うと見目麗しくて聖句を使いこなせるなら、再誕者でなくともレーゲントとして扱われます。


 カルト以外の何物でもない盲目的な神の愛の肯定、性愛をベースにした、度を超した献身を至上とする破綻した思考形態。これらはレーゲントが共通して持つ要素です。積極的に目標を誘惑し、絡め取った対象に歪められた神の教えを囁き、聖句によって洗脳していく様は、冒涜者以外の何者でもないでしょう。

 しかし、彼女たちはあくまでも非暴力による世界秩序の安定を志向し、心からの善意によって我が身を誰かに捧げようとします。その意思の確固たること、善なる世界を求める気持ちは、(彼女たち自身が聖句で自己洗脳を行なっているにせよ)偽物ではありません。だからこそ、まがりなりにも聖なる者として信仰されたのです。


 また、護衛はともかくとして、本人たちは武装らしい武装を使いません。

 彼女たちは戦争を終わらせるために歌で世界と対峙し、平和を実現するために狂った教義を吹き込んで回ります。


 他に特徴的なのは、造花の装飾が施された独特な形状の人工脳髄。

 そして沈黙してしまった世界には不釣り合いなほど見事な装飾の制服。

 『行進聖詠服』と呼称される衣装です。

 愛と平和を謳う者が武器を持っていてはならないという理念の元、聖父スヴィトスラーフは装飾鎧の生産を持ちかけてきた技術的な支援集団に『花嫁のためにドレスを、聖愛を飾る華を』と要請し、籠絡・洗脳した企業群の資金力を背景に、不朽結晶連続体で、衣服を編ませました。

 技術部は「ええ……」ってなりながら、とてもがんばった。

 行進聖詠服は如何なる弾丸も徹さず、如何なる刃でも裂くことの出来ない極めて純度の高い不朽結晶の連続体ですが、構造が布なので、暴力に対する防御力がほぼありません。殴られるだけで普通にダメージが入ります。

 そして特に上級レーゲントでは、退廃と華美、蠱惑と貞淑、などといった対立する二者をスポンサーたちの欲求と本人たちの要望で混在させた結果、なんかやたら露出度が高かったりするので、そもそも防具としての実用性がありません。狂気です。

 そのくせ、コストが青天井なのです。下手をすると服一枚が、パペットよりも何倍もコストが高い。技術部は「これだけの予算でただの服を作るんですか?! 同じコストで移動要塞でも作りませんか?!」ってなったけど、とてもがんばった。狂気です。


 技術部にも意地があったらしく、デザインを洗練させていく一方で、ただの服では終わらせない努力をしています。不朽結晶繊維自体に発電素子を組み込んで蒸気機関の代わりにして、外付けのオルガンは独自機構の楽器にするなど、他の可能性世界には無い、先鋭的な蒸気甲冑(スチーム・ギア)として研ぎ澄ませていったのでした。


 余談ですが(ずっと余談だぞ)、最初の行進聖詠服は着用する本人が土壇場で「お腹の子を産んでから改めて再誕の秘技を受けます」などと言い出し、聖父もそれをあっさり了承してしまうなどのトラブルにより、いざ再誕の時期が来たら(その間に本人が成長してしまったため)丈が合わない有様になっていました。

 脚の剥き出し加減がかなり際どい感じになったのは成り行きだったわけです。スポンサーには好評で、以後スタンダードになりました。

 

 聖句の力が強大な一部のレーゲントは、スチーム・ヘッドさえも原初の聖句でコントロールしてしまいます。それほどまでに支配力のある『ことば』なのです。

 この『ことば』を用いて特殊な改造を施されたスチーム・ヘッドは『使徒(あるいは祝福者)』と分類され、他の機体には無い特性を授かります。

 ただし、この原初の聖句も、特務仕様スチーム・ヘッドや、アルファⅠの系譜に連なる調停防疫局のエージェントには、二個以上の人格記録媒体によって防壁を作るという形で対策を取られており、あんまり通じません。



:テスタメント・ヘッド

 不滅者。テスタメント。

 スヴィトスラーフ聖歌隊の大主教が一人、『徹宵の詠い手』ヴォイニッチが実用化した、新機軸のスチーム・ヘッドです。

 正式には存在核確立済自己言及式テスタメント・言詞駆動人造脳髄(トーキングヘッド)と言います。スチーム・ヘッドに、さらに聖句による演算式を組み込んで製作します。


 不滅者は肉体の外側に『大切なもの』『信念』『想い出』『目的意識』などの物理的・抽象的なリダンダンシーを確保しており、そこに恒常性の核を仮託しています。

 そのため、他のスチーム・ヘッドのように物理的に破壊されても、実質的にダメージを負いません。

 肉体や装備にどのような損傷を受けても、非肉体的な恒常性から『殻』の正常な状態を読み出して、即座に『復元』してしまいます。

 撃破するには、外側のどこかに安置された恒常性の核を破壊するしか無いのですが、こちらも肉体の恒常性で補完されているため、やはりすぐに復元します。

 両方を同時に完全に破壊する以外に、彼らを撃滅する方法はありません。

 無理に破壊しようとしてオーバードライブを起動すると、その演算に相乗りして同速で活動してきます。迷惑。また、外観や音声の全てに、存在の承認を要求する非言語的な『聖句』が含まれており、稼働時は周囲のスチーム・ヘッドの生体脳に侵入して、自身の恒常性を強化するために、勝手にリソースを持って行きます。迷惑すぎる。

 言ってしまえば煙や夢のようなもの。実体があるように見えるにせよ、実際は曖昧で不確かな概念が、『ことば』を積層装甲のように着込んでいる状態に近いです。

 この要素は言詞甲冑(ワードローブ)と命名されています。

 前述の特性等から、安定稼働しているテスタメントを撃破することは不可能となります。

 それ故に不滅者と呼ばれるのです。

 言わずもがな、非常に危険な在り方です。リソースは常に不足していて、自己連続性は無制限に分割されているだけで、殆ど揮発しています。

 自由意志による行動などは基本的に起こらず、意思疎通が可能な機体さえ稀という有様。ほぼ全てのスチーム・ヘッドは、テスタメントに変化すると、不滅性と引き換えに非常に多くの要素を失います。

 一部の例外は存在しますが、九割九分九厘は、元の状態から大幅に劣化するのです。

 優れているのは不滅であると言う点だけ。

 侵攻よりは防衛寄りの戦力と言えます。


 もっとも、防衛に徹するのであればまさしく無敵です。

 大主教ヴォイニッチの占拠する第百攻略拠点は、現在に至るまで、彼女の指揮する不滅者の軍勢によって完璧に封鎖されています。


ほぼ無意識でサブタイトルつけて疑問に思ったんですが、その1って何ですか? その2があるのか? 今のところ無い。

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