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アフターゾンビアポカリプスAI百合 〜不滅の造花とスチームヘッド〜  作者: 無縁仏
セクション4 殺戮の地平線  世界生命終局管制機 アルファⅣ<ペイルライダー>
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セクション3 試作型救世主 その2 祭壇の羊、再誕と祝福(11)

 ネレイスは身震いした。

 白い防音壁で四方を囲まれているだけなのに、氷室にでも閉じ込められたような気がした。

 スタジオの骨組みから奪われたライトの偽物の光が、煌々と二人の頭上で輝いている。

 偽物の光が。偽物の光が……偽物の……。

 偽物の。

 絶対者の威容を視界に収めたまま、意識を僅かに逸らした。

 集中しようとすると、怖気が這い上がってくる。

 零れ落ちた臓器から体温が失われたせいでも、肉体が極度の疲労状態に陥っているからでもない。

 支配者は玉座で微動だにしない。

 この御方され居ればFRFの都市群は永久に安泰だと信じさせてくれる。

 だが、どうしても、このプロトメサイアが、数分前までそこに君臨していた不死者と同じとは、思えない……。

 この発狂した月光のようなライトの下でも、選択的光透過性を備えたバイザーの奥に鎮座するレンズは、古いクヌーズオーエの道路上にある水溜まりのように暗く淀んでおり、直視していると、やはり言いようのない不安感が湧いてくる。

 二千年の時を経ても色味の褪せない漆黒の装甲と合わせて、全体的なバランスが、酷く崩れて見える。

 気付いてしまえば、何もかもがそうだった。

 プロトメサイアの装備は、全ての部位に違和感がある。

 黒い色で彩られているせいで一見そうとは分からないが、頭部と左腕以外の全ての箇所で意匠が異なっている。

 これではまるで、補修を重ねられた襤褸の機械甲冑ではないか、とネレイスは困惑する。

 これが支配者の真実の姿なのだろうか?

 仰ぎ見るべき唯一の光輝なのだろうか……?


『貴官は何を怯えている?』


「いいえ……」

 

 動揺を見透かされて、ネレイスは目を伏せた。

 適当な言い訳を考えようとする。

 不信を悟られまいとする……。


「……瓶に閉じ込められたアド・ワーカーのような末路を思って、それが怖いのです。私は……殺処分されるのですから、私の運命もそうなるのかと……」


『アド・ワーカー。この拠点だと、検体として保管している彼女のことか。脅し文句にあれを使うのは不死者フラウロスだけだ。それを見せた機体は、自分はかつて床屋であったと仄めかしていただろうか』


「はい」ネレイスは頷いた。「昔は床屋であったと……」


『嘘だ。彼は常に嘘しか言わない。貴官の言うアド・ワーカーにしても、刑罰の結果あの姿になったわけではない。貴官の肉体をあのような標本という形で生き長らえさせる予定もない。フラウロスの言うことは何も信じてはいけない』


「ではあの御方は何故、私の髪を……?」


『自分好みの娘の外見を、自分好みに整える。これは定命者を肉体的に痛めつけるよりも、遙かに強い快楽を不死者に生じさせる。稼動時間の長い不死者ほどそういった娯楽を好むのだ。例えば、そう、貴官も……エリゴスと非常に親密な関係を築いていた。山のように洋服を用意して、二人で散々に着せ替え遊びをしていただろう。提出された記録によれば一回につき三時間ぐらいだったか。君が着せられる回数の方が多かったはずだ。端的に言うならば、あれと同じだ』


「あれ、と言われましても」ネレイスは純粋に困惑した。「着せ替え遊び……そのような記憶はございませんが……」


『……すまない、それは貴官の先代の市長だった』総統は一瞬の硬直のあと首を振った。『気にしないで良い。とにかく貴官は、不死者の無聊を慰める道具にされたに過ぎない。からかわれたのだ』


「は……」


 畏まりながらも、ネレイスは思わぬところでショックを受けていた。

 頬を赤らめるのを止められず、顔を隠すために頭を下げる。

 これほどの力をお持ちなのだから、総統閣下が再度あの凄惨な解体作業を開始するとは考えていなかったが、予想外に与えられた情報は、ネレイスという一個人として、思うところが大いにあった。

 耳が熱い。恥ずかしい。

 一般的には、支給品以外の衣服を入手して、他者へ差し出すというのは、常習的な交配の相手や、直系の血族のうち特に愛しいものにしか施さない、極めて重大な価値の提供だ。

 ただの一着で、そのレベルである。

 愛が如何に重いかを表現する手段の一つなのだ。

 クヌーズオーエにおいて、支給品以外の衣服は貴重品だ。ネレイスが他の市長との会合において、生きているだけで麗しい我が娘を、着衣によってさらに美しく、扇情的に飾るのは、彼女らの生命資源としての価値と市の資産状況を誇示するための処置であった。衣装次第で生命資源製造を取引の材料に出来るかどうかが決まる場面すらある。即ち衣服とは、都市の利益にすら影響を及ぼしうる重大な道具と言えた。

 下位の市民の間でも、衣服への意識はさほど変わらない。

 私的生殖権を獲得した花嫁たちが婚姻の儀式で華やかに着飾るのも、それが一生に一度かはさておき、永久に記憶に留めておきたいほどに価値のある事件だからで、一昼夜その装束を借りるだけで、一月分の稼ぎがなくなってしまう。

 それが『プレゼント』だというのならば、着衣するほうも命がけになる。

 下手をすれば下位の生命資源では一生かかっても袖を通せない貴重な衣服だ。

 朽ちてしまうまで全力で着こなし、愛に応えるのが、愛を注がれる者の礼儀となる。

 これ以上に費用と時間が掛かる愛情の確認作業と言えば、自己の生命資源としての権利を購入してパートナーと物理的に心臓を交換するだとか、互いの子宮で互いの後継となる生命資源を同時に製造し始めるだとか、ネレイスの知識ではその程度が関の山だ。

 だが、山のような衣服で、互いに着せ替え遊びをするというのは……?


『心拍数が上昇しているが』


「いえ……個人的な事情です……」


『ふむ。冷厳な表情と苦痛の表情ばかり見ていたが、その顔色なら、貴官もゴシック調のドレスが似合いそうだ。前市長ネレイス四七〇号と同じでマルタ・レースのついたドレスを肴にして何日か遊べる人格と判定する』


 その通りだった。羞恥の余りネレイスは汗ばみ始めていた。

 市長を継いで資産を確かめたときには「やけに自分に体型の似た衣服が貯蔵されているな」と不思議に思いはした。自分で着て楽しんだり、生命資源製造の相手や少女騎士たちに着せてみたり、他市に娘を売却するときの土産に使ったりもした。

 しかし、隠居した前市長は衣服の出自を詳らかにしなかったが、事と次第によれば、あれは全て、不死者エリゴスから前市長への、プレゼントだったのか……?

 二人はあれらの衣服を着て、パートナーとして愛を確かめ合っていた……?


 とにかく居心地の悪い想像だった。少女期にテロメア延長と年齢固定を施されて長命者(メトセラ)となったのは前市長も同じだ。

 最期まで若く、瑞々しい美貌をしていた。

 ソイレント工場へ送るための横たわらせたとき、その眠りについた裸の肉体を通して、ネレイスは自分が寝ているときの顔というものを知った。

 ネレイスと前市長は、大凡のところで同じ外見だった。

 それだけに前市長が不死者エリゴスと懇ろにしていた情景が生々しく想像出来てしまう。

 その姿は、容易く自分とエリゴスが情愛を交している姿にも容易く挿げ変わる……。

 そして、おそらく総統閣下は、その時の情景を間接的にか、直接的にか、把握しており、前市長とネレイスをまさしくこの瞬間、重ねている……。

 恥ずかしい……。ますます耳が熱くなる。首筋から湯気が出そうだ。

 ネレイスはプロトメサイアに対して抱いた不信感を、いっとき、完全に忘れてしまった。

 どれほどの身分を得ても、私的な権利を行使している場面を他者に予期せぬ形で知られてしまうのは、耐え難い恥辱であった。


『話題を修正する。貴官は前市長のことを聞きたいわけではないだろう』


 プロトメサイアはもっともなことを言った。


『時間が残り少ないため、本来の情報の訂正作業を続行する。貴官の意図するところの初期型アド・ワーカーは、刑罰ではなく()()()()()として活用されている。我々プロトメサイアが手脚を切除し、臓器を再編集したが、あれは代謝を低下させ、また老廃物を限りなく少なくするための処置だ。彼女の意識は既に終了しているが、彼女の肉体には、今後も長く働いて貰わなければならない……』


「冷凍睡眠装置が健在ならそれを使っていただろう」という補足は、ネレイスには意味が分からなかったが、恥じらいの感情を振り払う機会にはなった。


「……アド・ワーカーとは、何なのですか? どうして、この都市に現れるのですか? 集団としての実態は確かなのですか? 機密なのは存じています。ですが、なにとぞ。死にゆく私めのはなむけに、教えてはくださいませんか……」


『要請を受諾した。開示する。アトロシズム・デストラクティブ・ワーキング・グループ、通称アド・ワーカーは、実在する集団である。我々プロトメサイアの聖句によるコマンドに抵抗を示し、従来の条件付けが正常に機能しない個体で構成されており、都市にとって致命的な思想によって虐殺を励起させる。これらの特性は一千年前に製造された初期ロットのグリゴリ・モデルの市民クラスにおいて最初に確認された』


「グリゴリ・モデルの市民クラス……?」


 市長たるネレイスも聞いたことのない生命資源だった。

 特殊な市民なのだろうか。

 全都市を統べるプロトメサイアの命令を聞かないらしい、という点が気に掛かる。


「ある時期に製造された市民において、重大なエラーがあった、ということでしょうか」


『それらは全て正常な挙動である。純粋雄性体、あるいは純粋雌性体として製造されたこれらの市民は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()個体として設計されていた。新規不死者(イモータル)となる素体として期待されており、二次性徴を迎え、生命資源製造能力が有効化された時点で加齢が停止する、先天的な長命者(メトセラ)でもあった。換言すれば生まれながらの都市支配クラスだ。我々プロトメサイアに盲従するだけでは不十分だということだ。しかし……この要素が、特定方面に対して顕著に表れたとき、虐殺主義的な無差別殺戮の扇動を始めてしまう。これらは衝動的かつ、時に無意識だ』


「アド・ワーカーは、やはり、ある種の病として存在するのですね……」


『一部訂正する。感化・洗脳されて覚醒する者と、特定の目的意識によって活動を開始をする者の二種が確認されている。前者は精神疾患に近いが、後者は明確な志向性を持ったムーヴメントであり、確固たる意志を以て活動する思想集団である。初期ロットの200名のグリゴリは全てアド・ワーカーに成り得る欠陥を持っていた。虐殺のための虐殺を扇動する虐殺の申し子が200名だ』


 絶句する。

 筆舌に尽しがたいほど危険な血統であり、集団だ。

 何故廃絶しないのか。そう問おうとしたのに先んじて、プロトメサイアは回答した。


『これらのグリゴリ・モデルは、生命資源としてのヒトという種の限界点だ。我々は都市の次世代を担うべくこれらの市民を製造した。大多数のグリゴリは平穏に暮らし、既存市民と交雑した。一部は不死者になった。これらの交雑が、都市の発展の一つのブレイクスルーとなった。現在ではほぼ全市民がグリゴリの血を引いており、身体能力は30%以上向上、免疫機能も強化され、そして俗に<メサイアの血統>と呼称される血統が確立した。ただし、領域外遠征隊に参加した50名のグループは僅か3名を残して全滅。この生き残りから初期のアド・ワーカーが生まれたと考えられる』


「待って下さい……メサイア?」ネレイスは色を失った。「メサイアの、血統?」


『肯定する。貴官のような、我々プロトメサイアが使用する素体と同系列の市民は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 プロトメサイアはネレイスの動揺を制するように片手を軽く上げた。


『案ずることはない。貴官たちだけが、特別に危険なわけではない。彼女らの因子は千年をかけて全市民の中に拡散しており、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「そ、んな、そんなことが……そんなことが……!」


『気持ちは分かるつもりだ。下位の不死者は、この真実を知っただけで発狂して機能停止することもある。だが、この生命汚染の深刻さであっても、一向に問題はないのだ。ただの市民クラスであれば、真なるアド・ワーカーたる千年前のグリゴリ、彼らの情報因子(ミーム)に汚染されない限り、暴走は起こさない。メサイアの血統も、直接暴露しなければ、まず覚醒しない』


「感染源となる千年前のグリゴリが、まだどこかに生き残っているのですか!? 元凶が明らかであるならば、その真なるアド・ワーカーとやらを放置する理由は……!」


『アド・ワーカーは都市に寄生するネットワークへと存在の在り方を移行している。物理的に破壊しても情報因子から蘇る。物理実体を保ったままの個体もいるが、身体を改造し、交換し、交雑し、地位を確立し、都市の外部、あるいは内部で活動し、検知網では補足不能な方法で情報因子を拡散している。これらの影響下にあるもの全て、即ち()()()()()を絶滅させるのは困難かつ不利益であり、活動を開始した際に、対処療法的に駆除していくのが最適であるというのが我々の結論だ。補足しておくと、貴官も既に汚染されている』


「私も……?」また震えを感じた。「私は、では、まさか、無意識のうちに、不要な虐殺の扇動を……」


『否定する。永らくそうであると確認されていたが、虐殺主義的行動は、現在まで確認されていない』プロトメサイアは鷹揚に頷いた。『妄執に囚われて殺戮を求めるだけの彼女たちよりも、()()()()()()()()()。医療技術を手に入れるために都市の外部に旅立った点などは、むしろ本来想定されたグリゴリ・モデルの在り方に近い。彼女らは、次の目的地を目指すための集団だった。君は言ってしまえば、千年を経て祖の意思を継いだ、滅んだ遠征隊の遺児だ。帰還が三百年遅れてさえいなければ、血族を根絶やしにする必要も無かったのだが……これは我々プロトメサイアの責任である』


「三百年……そうです、それも分からないのです、総統。総統閣下! 何故三百年も経過しているのですか? 私はせいぜい、半月か、一月ほどの旅を終えただけなのに、それなのに三百年も経っているというのは、道理に合いません……」


『謝罪させてほしい、ネレイス。これは貴官には不要と考えられたため開示されていなかった情報だ。FRF領域から遠のくにつれて、クヌーズオーエの時間連続体は動きが()()()していく。現在の事象接触面のエネルギー損失から推測するに、我々が中枢を据えている<宇宙塔>付近と外端では、時間の流れ方に三百倍近い差がある……。端的に言えば、クヌーズオーエ解放軍が展開しているような遠隔地で一日を過ごせば、FRF領域内では三百日が経過するのだ。器官飛行船の無許可での利用を厳しく禁じているのは、管理外の勢力に渡る可能性よりは、むしろこの狂った時間の渦に飲み込まれることを案じての処置だ。徒歩での移動ならさほど影響は受けないが、都市群の上空を水平移動出来る器官飛行船においては事故が起きやすい。この事実さえ知っていれば貴官も軽率な行動はしなかっただろう……』


 そういったお伽噺は、ネレイスも聞いたことがあった。

 単なる寝物語ではなく、実のある警句として記憶していた。

 都市外部へ進出するに当たって、少女騎士たちにも一日が千日に相当すると思えと告げた記憶がある。

 そもそも、領域外部の浄化作戦にあたった後には、『ジサボケ』なるものが起きるのを体験していた。

 時間の流れ方に多少の差異があるのも分かっていた。

 だが二週間を三百倍にしても十紀年と少しだ。

 千倍にしても、三百年にはならない。

 総統の説明は不十分だ……。


『追記しよう。計算が合わないのは承知だ。我々プロトメサイアは、リスクについて論じている。危険性を把握していれば、危険行動は抑止出来ただろうという嘆きだ。貴官は、記録螺旋の情報が確かならば、蒼い炎に誘導されて往来しただろう』


「はい……」帰り道では特にはっきりとその存在を感じた。「あれが時間経過の元凶なのでしょうか」


『断言は不能だ。しかし、そうだと推定される。あの蒼い炎の本質的実体、症例0号<時の欠片に触れた者>は、森羅万象を裁断して並置し、編まれたアラベスクを非対称に、川から海へと至る水を海から川に逆転させる。貴官はおそらく干渉を受けたのだろう。自然災害に遭遇したようなものだ……。死に向かう貴官には開示しよう、FRFに属する何者も、二千年以上かけてあの変異体の実体を究明出来ていないのだ。我々プロトメサイアだけは交戦経験があるが、何体か()()()()のが限界だった』


「総統閣下は、あの炎と戦って退けたことが……?!」


『FRFの領域内部に限っては、遣りようがある。だからこそ市民には、領域外に出て欲しくなかったのだ。守りようが無い。……総括すれば、我々は貴官に時間の流速に隔たりがある事実の説明を怠ったがために、悲劇を招いた。それが全てだろう』


 ネレイスは、無感情に呟く漆黒の甲冑をじっと見つめた。

 奴卑の如き格好で跪く長命の少女の、その黒曜石のような瞳は、陶然として濡れている。

 三百年という有り得ない時間経過が、災害に比定されるものだということは承服出来た。

 そして総統はこれほどに市民を思って下さっているのだと感じ入り、頬を憧憬と歓喜で赤く染めた。

 臓物を全て引き摺り出されて辱められるという責め苦を経ても、ネレイスの忠誠心は揺らいでいない。

 率直に様々な責任について非を認めてくれる現状に、畏れ多いという感情すら抱く。

 超越的な機能へ服従したいという欲求もあるが、ネレイスが総統に従うのは被支配への欲求だけによるものではない。

 基本的に、この不死者は、事実しか口にしない。

 語らないことはあるが、虚構を語ることは無い。

 多くのクリアランス制限を特例的に解除してまで自分に真実を教えて下さっているのだ。

 こんな状況でさえなければ、ネレイスは総統の具足に接吻して、更なる忠義を示していたことだろう。


『……どうして、と貴官は繰り返していた。どうして貴官と貴官の民を疫病から見捨てたのかと。これもグリゴリの血の拡散と関係がある。だがあらゆる説明を行えるほどの時間は無い。だから、貴官が問うべきだ。時間が許す限り、我々プロトメサイアは語ろう。如何様にも問うが良い』


 呼びかけられて、ネレイスは総統を正視した。

 もうすぐ自分は殺されてしまうのだという実感が改めて呼び起こされる。

 甲冑の中に潜む虚無などというものは、最早気にならない。

 その奥にあるのが空洞だったとしても、眼前の玉座に腰掛けるのが都市を守護し市民を導いてきた偉大な存在であることには何ら変わりが無い。煌々と降り注ぐ光の中で、脆く儚い己の肉体よりも、眼前の黒い装甲だけが真理に近いと信じられる。

 慈悲深くも強烈な一撃によって、殺処分は確実に果たされるだろう。

 同時に、この恩寵を甘受しないままでは、自分が生命資源として終了出来ないとも考える。

 ネレイスは死後の世界を信じていない。

 だがこのままでは死んでも後悔が残るように思える……。

 落ち着き払い、問いかける。


「どうして、そうご決断をされたのですか? 医療技術すら、我々に授けてくださらなかった。我々から医療技術を奪い、闇の中に隠したのは、何故ですか?」


『質問を受諾した。幾つかの回答があるが、まず貴官の認識を訂正しよう。収容所と呼ばれている施設があるだろう』


「は……」


 ネレイスはすぐに有様を想像出来た。

 少女たるネレイスは、浄化チームの破壊工作の一環で、あの滅ぼされた都市で、まさしく収容と拷問を受けていたからだ。

 数日前まで刑吏たちに爪を剥がされ、肌に針を通され、あちこち殴られ、蹴られ、転がされ、拘束され、あらゆる権利を侵害されていた施設。

 収容所は、思想統一や危険思想の矯正を目的として稼動する、全ての都市に設置されている基幹設備の一つである。


『銘板の文字も変質しているので分からないだろうが、あれは正式名称を「大規模流行対策緊急()()()()()」という』


「だいきぼ……りゅうこう……?」


 ネレイスには、よく聞き取れない。

 どれも馴染みのない単語だ。


『あの施設の本来的な機能は、君の切望する()()()()()なのだ。思想矯正施設としての在り方は単なる側面に過ぎない。これが、一つ目の回答だ。我々プロトメサイアが貴官たちから医療を奪った事実はない。それは、既に君たちの手にあった』


「収容所が、医療施設?」


 ネレイスは受け入れがたい言葉に首を振った。

 内心で叫ぶ。

 医療? どこにそんなものがあったというのか!

 我が身を嬲りつくした暴虐を思い返す。

 あそこには暴力と屈辱、悲痛な呻き声しか存在しなかったではないか!

 怒鳴りたい気持ちを抑え込み、おもねる声音を意識して問う。


「で、でも……あの場所には、病や怪我を治療するための道具などないではありませんか。あるのは弱い毒や小さな刃物、拘束用の器具といった、拷問具ばかりで……! 周囲だって、堅牢な壁で囲まれています! 思想的な敵対者に攻められることを前提とするような構造で……!」


『正しい認識だ。原型たるフォーカードの都市において、あそこは最後の砦だった。防疫のために隔離された都市の内部で、それでも大規模な流行が起きてしまった場合には、非感染者を集めて、籠城するというプランが存在した。だから堅牢な外壁を持っているのだ。本来の役割について気付いていなかったのだとしても、それは無理からぬ話だ、君たちの生活観では、あれらの道具には、苦痛や屈辱を与える以外の用途を見いだせないだろう。何故ならば、全ての市民は不死病を利用して強化を重ねられ、血液を流体生物に置換され、さらにはグリゴリ・モデルと交雑することで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……え?」


『旧人類と比較した場合、単純な破損に対しての()()()()()()()()()()()。Tモデルをベースに交雑が進んでいるために華奢な体になってしまったが、しかし諸君はおそろしく頑強だ』


 どこがだろうか、とネレイスは胸を悪くする。

 治せない病が現にある。

 死に繋がる切創がある。

 銃弾を脳天に受ければ死ぬ。

 造反者たちの血を継いで、申し訳程度に強くなった、などというのは、下らない目くらましの情報ではないのか……?


『不満を検知。納得がいかないか』


「……はい」


『気持ちは分かるつもりだ』プロトメサイアは頷いた。『ではネレイス。()()()()()()()()()()。君は利き腕を切断された。左右どちらかの大腿部にも一撃を受け、大量に出血した。肺も一部損傷。少なくとも片方は機能しない。甲冑には必要最低限の機能しか期待できない。その傷を与えた敵は殺害した。さあ、君ならばこの状態から、どう行動する?』


 無言という選択肢は少女には許されない。

 突然の状況設定に、真っ白になった頭で必死に回答を考える。

 利き腕を切断されたなら間合いを取る、他に敵はいるのだろうか、必然的な負傷であれば、体当たりをして反撃の糸口を掴む、無事な手に武器を持ち替える、この程度なら降伏は有り得ないが、腕や肺よりも、大腿部の損傷のほうが問題だ、機動力がなくなってしまう、無事な脚を使って次の敵に膝蹴りを放ち、可能なら転倒させて時間稼ぎを……。

 ネレイスも伊達に少女の身で戦火に飛び込んではいない。

 クヌーズオーエ解放軍のスケルトンが相手なら殺されることしか出来ないが、対人戦であれば生き残るための一手が、幾らでも思い浮かぶ。


 しかしどの回答が望まれているのか、咄嗟には判断出来ない。

 プロトメサイア、はまた頷いた。


『音声入力による回答は不要だ。推測。君は、そこからどう行動するか、それを考えている。戦闘続行か、撤退か? 続行ならどう攻撃を繰り出すか。……どれも旧世代型の人類には不可能な思考だ。旧人類ならば、十秒後には大量流出血により失神し、無作為な記憶の読み出しが開始する。六〇秒も経てば心停止を迎える。具体的に何か考えたり行動を起こしたりする前に、死ぬのだ』


「死ぬ? ()()()()()()、ですか……?」


『その反応こそが新型の人類たるFRF市民の特性だ。傷口を縫合する、などと言っても理解出来ないだろう。君たちは四肢を切断されても部品さえ揃っているなら傷口をただ合わせているだけで自然治癒する。何なら、他人の四肢や臓器でも、当然に体に馴染む。我々はそのように我が市民を改良した。……旧人類は、違った。些細な切創ですら長く苦しんだ。傷口に医療用アルコールを塗布し、滅菌した針と糸で縫い止めなければ、綺麗には塞げなかった。それどころか、小指の先ほどの大きさの傷が壊死を起こして、病毒を造り、それで負傷者が絶命することさえあった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()貴官には、想像が出来ない世界だろう」


 ネレイスは目を瞬かせる。にわかには信じられない。

 FRFにおいては、一般市民であっても、手脚の一本や二本、臓腑の一つや二つ、喪失しても、死にはしない。心臓や脊椎を破壊されたなら話は別だが、肺の片方ぐらいなら、重傷だが致命的では無い。

 そんな、あまりにも程度の低い生命資源が、どうやってクヌーズオーエのような大都市を築き上げたというのか。矛盾しているように感じられて仕方がない。旧人類の遺産たるクヌーズオーエ市街は、FRF市民では再現不能な、極めて高度な技術が詰め込まれている。理想都市アイデスにおいてはある程度当時の文化継承がなされているが、所詮はどの点も、栄華の究極点に達していた旧人類の模倣にすぎないのだ。

 総統の言うような脆弱な生命体が、どうやって人類文化などというものを紡いできたのか……?


「……そうか、あの技術力こそが、旧い人類の纏う鎧だったんだ……」


 ネレイスは卒然と理解して、呟いた。

 旧人類は本当におそろしく脆い肉体を持っていたのだ。

 あまりにも儚い命の群れを、どうにかして守護しなければならないと考えたものがいたに違いない。それはFRFで言うところの、市長であり、総統であり、指導者であり、戦士だったのだろう。絶滅から無力な民を救わなければならないと確信して彼らは行動した。

 彼らは絶滅の運命に抗うために、彼らは凶器で何かを殺すしか出来ない不器用な両手を使って、殺すためではない、様々な複雑な機構を創造した。市民を守るために絢爛たる都市を創り、市民の飢餓を癒やすために豊穣なる食料を創り、そして市民の壊れやすい肉体を繕うために、医療を創り出した……。

 だが現在のFRF市民は、過去の人類より圧倒的に頑強で、そんなものは必要が無い……。


『ネレイス。改めて、君の質問に回答しよう。君たちに<医療>なるものが伝わっていないのは、我々が知識を制限した結果ではない。()()()()()()()()()()()()()()()。アイデスにおいてすら、医学的知識は人類学者たちの扱う小さな研究テーマでしかない。医療収容所はその実態を忘れ去られ、辛うじて残存していた精神医療サービスを提供するための側面だけが残され、いつしか思想矯正を行うための場へと変質していった。それが真実だ』


 ネレイスは現在のFRF市民の他には不死の病に冒された者を通してしか人類を認識出来ない。旧時代を知るプロトメサイアが語るからには、全て事実なのだろうが、あまりにも途方もない世界だった。

 しかし、現実は違うではないか。治癒できない病が、疫病が存在していた。

 プロトメサイアに縋り付くような表情で叫ぶ。


「では、ではどうして、私の都市は疫病に冒されたのですか! もはや医療など必要ないほどに、市民は恩寵を賜っている、それは納得いたしました、ならば疫病など流行するはずも……」


『回答する。()()()()()()()()()()()()()()。我々プロトメサイアとウォッチャーズが協議し、決定して、フェイク・ヨーロピアへ投入した。旧人類を物言わぬ不死に造り替えた疫病のうち、秀でて毒性の高いものを編集して作り上げたウィルスであり、一定範囲に死を拡散して最終的には宿主ごと死滅する、高度に制御された生物兵器だ』


「……っ」


 少女は端正な顔立ちを歪ませ、歯を食いしばり、涙を滲ませた。

 怨嗟の言葉を吐き出すのを、必死になって耐えた。

 半ば予想していた答えではある。自然にあんな奇異な病が発生するはずがない。偶然出来上がるようなものではない。

 医学的知識の乏しい現在の市民では生物兵器の開発は難しい。フェイク・ヨーロピアが秘匿していたエンブリオ・ギアが技術的な限界点だ。スケルトンの破壊工作という可能性も低い。スケルトンならば病毒が蔓延するまでの間に数千回は都市を滅ぼせるため、疫病を使う必要が無い。

 最初から、全ては総統とウォッチャーズの仕業だと考えるのが、最も妥当だった。

 その可能性は、しかし、可能な限り考えないようにしていた。

 納得出来ても、認めたくない現実だったからだ。ネレイスは総統、メサイアドールたち、ウォッチャーズに対し、心からの尊敬と畏怖を抱いている。仰ぎ見るべき偉大なる存在だと信じ、愛し、彼らもまた同じ分だけ自分たちを愛してくれていると思い込んでいた。ネレイス自身がそうであるように、彼らの愛の形もきっと似ていると、そう勘違いをしていた。


『我々プロトメサイアは貴官を裏切っていた、と言える』


 だが、ネレイスは、裏切られた、とは思えない。

 愛を捧げていたのは自分たちだけで、相手はそうではなかった。

 不出来な市民をこの地上から抹消するために、粛々と工作を実行していた。

 それだけのことだ……。

 裏切ったのは、むしろ総統の期待通りの成果を出せなかった自分たちだ。

 自分がよかれと思って取り組んできた全ては、ぜんぶまちがいで、有害だった。


 そう考えて、命を終える日まで少女であることを要求されたその生命資源は、殆ど泣き出しそうになった。

 プロトメサイアは、漆黒のフルフェイスヘルメット越しにネレイスを無言で眺めていた。

 超越的権能で無から編み上げた真っ白な防音壁の一角を見た。

 それから頷いた。


『君、ネレイスよ。我々に弁解の機会を与えてくれたまえ』


「はい」ネレイスは命令言語に従った。「機会を与えます」


『君の都市に病を蔓延させたのは、決していたずらに都市を滅ぼすためではない。事後的な情報開示となるが、我々は君に極秘裏に試験を行っていた。君に単なる市長以上の資質があるのか、それを量ろうとしていた』


「市長以上の、資質、ですか」


『肯定する。それは、不死者としての資質だ。正確性を期して換言するならば、君の都市の後見人だった不死者エリゴス、即ちメサイアドールの後継と成り得るかを試験していた。あの病を乗り越えたとき、君は<次のエリゴス>になる権利を獲得出来た』


 涙をこらえながら、ネレイスは総統の告げる真実を呆然と受け止めた。


『聞くよりは見る方が早いだろう』


 総統が手を翳すと、防音壁の一部が剥落した。

 見慣れた蒼い甲冑の不死者が入ってくる。エリゴスだ。


『彼女の貌を見るが良い……』


 エリゴス命じられるがままに、しかし躊躇いがちに蒸気甲冑のロックを解除し、ヘルメットを脱いだ。

 現れた顔貌に、ネレイスは息を飲む。

 それは、まさしくネレイスだった。

 総統と似通った造形ではある。

 前市長と似通った造形ではある。

 それ以上に自分と酷似している……。


 少女期で年齢固定されたネレイスを幾らか加齢させれば、まさしくこのような外見になるだろう。体格は全く異なるのだが、正常に年齢を重ねれば二次性徴の終わりに急激に身長が高くなるのが、メサイアの血を引く者たちの特質だ。

 しかし、エリゴスがメサイアドールだというのは、ネレイスには初耳だ。総統たるプロトメサイアに率いられた特に高性能な十二機(ラウンズ)だけがメサイアドールと呼ばれるのではないのか?

 その後継者として試されていたなど、当然、聞いた覚えがない。

 そもそも、自分と瓜二つの外観をしているなど、考えたことさえなかった。


『情報を開示する。彼女は、我々プロトメサイアの構成を参考に建造された人類文化継承連帯製のアルファⅠ改型スチーム・ヘッドであり、使用している肉体は、君の遺伝子提供元になっている。ネレイス系列自体が、エリゴスをベースにした廉価な量産モデルだが、ネレイス五〇七号たる君は、実質的にはエリゴスの使用するTモデル不死病筐体の、直接的な改良系に相当する』


「しかし、私を製造したのは、先代市長、ネレイス四七〇号です。エリゴス様ではありません……」


『肯定する。だが、もう片方の血筋は知らないだろう。エリゴスは名君として成長した貴官の母を愛し、交配機を使って自身の遺伝子を託し、彼女に与えた。そして前市長ネレイス五〇六号はエリゴスの愛に応え、貴官という生命資源を受胎したのだ』


「エリゴス様が?」戸惑うばかりだ。「そんなこと、一度も……」


「発話の許可を」エリゴスが俯いて言った。「総統、我が娘ネレイスと、どうか話をさせてください」


『発言を許可する。ただし手短に頼む』


「ネレイス。私はね、君の遺伝子上の親の一人に相当するの。私と先代ネレイスは愛し合っていた。だけど無許可での遺伝子提供だったから、ペナルティを与えられてしまった……」


 プロトメサイアが言葉を継いだ。


『不死者が新規の生命資源を不正規に製造するのは禁忌だ。遺伝子プールが不死者由来のもので埋まってはならない。少なくとも、正規の手続きを得ていない製造は罪である』


「でも総統、正規の手続きをして、私がネレイス四七〇号との間に子をもうけることは出来た?」


『不可能だ。合理的な理由が無い。ネレイス四七〇号と生命資源を製造するには、無許可で既成事実を作る以外に方法は無い』


「お母様は……じゃあ、そっか、私は雌性体同士の子供なんだ……えっとエリゴス様……エリゴス母様……? 両方ともお母様の場合はなんて言うんだっけ……」ネレイスはあまりのことにパニックを起こしそうになった。「四五〇号は……エリゴス……エリゴス母様が私の母様だと……知っていたのですか?」


「うん。だけど、認知能力をロックして、出自を忘れさせた。覚えてはいなかったでしょうね。同意の上でそうしたの。それしか二人で子供を作る手段がなかったから」


『計画的犯行だ。我々はエリゴスを処分し、市民との接触についてペナルティを与えた。エリゴスからは市政に関わる発話の権利を剥奪。また無許可で製造した生命資源に対して、我々プロトメサイアが支配権を得た』


「本当はあなたに平穏な人生を与えてあげたかった。理想都市アイデスで恋人と暮らせるような人生を……。だけど、夢物語だったわ」ネレイスと同じ貌で不死者は呻いた。「どうかしていた。愛欲に身を任せて、罪を犯した……」


『肯定する。夢物語で、何もかもが罪だ。熾烈だが慈悲深く、愛が強いのがメサイアドールとしてのエリゴスの在り方だが、あの行動は完全なエラーだ。耐用年数の限界に達していることの証左である』


「さっきも……さっきも、私は自分の体を止められなくなった。これ以上苦しめるぐらいなら楽にしてあげたいって……」


『補足する。我々プロトメサイアが刑罰を執行しようとしている際に、エリゴスが激して君を殺害しようとしたのも、善意によるものだ。なおかつ、完全なエラーであると評価される」


 プロトメサイアは伝聞でしか知らぬ誰かの評価であるかのように訥々と語った。

 まるで目の前に居るエリゴスのことなど一度も見たことがないとでも言いたげだった。


『現在のエリゴスは、結果的に貴官に多くの責任を押し付けたことを病的に自責していると解釈される。貴官から責任を降ろすために、何の説明も無く君を殺し、苦痛の総量を減らし、その罪を被ろうとした。こうした傾向は以前から確認されていた。永年都市に仕えてきたが、エリゴスは市民を愛しすぎる。擬似人格に破綻が訪れるのも当然だ。彼女自身にも自覚はあった。それ故に我々は彼女が製造した資源を代替として新たなエリゴスに据える計画を立てた』


「ごめんね、エリゴス、ごめんね、私が不甲斐ないばかり、つらい思いをさせた……」


 どうしても涙を出せないのだという表情で歯噛みする不死者を、呆然と眺めることしか出来ない。


『これ以上の発言は無用だ。エリゴス、速やかに退去し、別命あるまで待機せよ。ここで人格が摩滅して機能停止しては、今後の都市運営計画が狂う。君、従ってくれたまえよ、我が同胞よ』


「はい……」


 冷淡な指示に黙々と従い、かつてフェイク・ヨーロピアで無慈悲な殺戮を実行した全身甲冑の不死者は去っていった。防音壁が彼女を飲み込み、おそらく外側へと吐き出した。


『こうした経緯から、我々は貴官、ネレイス五〇七号に君に特別の注意を払ってきた。貴官のもたらした結果は、驚嘆に値するものだった』


 ネレイスは現実を飲み込めないまま、どこか朦朧とした声で応えた。


「……反逆者として都市を出奔したこと、でしょうか」


『否定する。エリゴスと同様に、結論を先回りしようとする傾向があるようだ。貴官は……生来の気質として、他の生命資源に対して無制限に責任を負おうとする……そういった希有な市民だ。これは驚くべきことだ』


 黒い甲冑は右腕を上げ、注意を促すように指を一本だけ立てた。


『大抵、背負えるものは一つだけだ。愛する一つの生命資源のために尽す。これは誰にでも出来る。一つの血族の維持に命を賭けること、これも模範的市民の多くが実行している。だが多くの生命資源は、全人類に対しては、責任を負おうとしない……そういった意思は不死者たちが案じて実行し、凡庸な市民はただ結果を恩寵として拝領するのみだ』


 そして手を差し伸べるようにして、空のてのひらを、跪く少女へと向けた。


『しかし、君。ネレイス……。貴官はせっかくの強大な市民軍の規模を縮小してまで、フェイク・ヨーロピアに存在する責任を、我が身へと集約させた。市民たちを争いから遠ざけ、配下の僅かな手勢とともに、リスクの高い行動の一切を代行しようとした。市民をひたすらに愛し、惜しみなく与え、市長でありながら率先して苦難を背負い込もうとした。しかも着実に成果を出していた……。このような個体は二千年の歴史でも数例しか確認されていない。模範的であるだけでなく、人類を導こうという気概に満ちた、希少な生命資源だ。しかもアド・ワーカーの影響を受けていながら虐殺主義に全く傾倒していなかった……」


「……お褒め頂いている、のでしょうね。その点については、誇らしく思います」


 過分な言葉だ。ネレイスはかすかな喜びと悦楽、そして苦悩に息を詰まらせて、問いかけた。


「ならば、尚のこと分かりません。私に落ち度がなかったのであれば、何故、私の市民を無為に死なせたのですか。試練だというならば、どうしてそのことを教えて下さらなかったのですか……」


『回答。単なる不死者とメサイアドールでは、都市におけるクリアランスのレベルが全く異なる。我が身が試されていると知らずとも、最善の選択を行い、最善の結果を導く。それぐらいは出来なければならない。メサイアドールを継ぐには、単に市民を愛するだけでなく、必要に応じて無辜の市民を己の手で死なせる覚悟が必要だ。ネレイス、我々はあの人工病で、貴官に対して三段階の測定を行った。一つには、病の発生源を特定し、断てるか否か……』


 ネレイスは真っ直ぐにプロトメサイアを見た。


「……私には分かりませんでした」


『欺瞞である。その姿勢が我々を失望させ、同時に期待もさせた。貴官は一貫して分からないという演技をしていた』漆黒の支配者は言い切った。『フェイク・ヨーロピアにおいては、正規に流通している物資については、完璧な管理が成されていた。人口動態の記録も万全だった。こうなってくると、疑わしいルートの特定は容易だ。非公式に市場に出回っている()()()()()である。それが感染源になっている可能性が高いと、聡明な貴官ならばすぐに気付いたはずだ。しかし君は流通を殊更には取り締まらなかった。我々プロトメサイアは貴官に問う。何故だ?』


「……食料が足りていないのは、私の失政でした」


 フェイク・ヨーロピアは、他の都市と比較して、人員の損耗率が著しく()()()()

 無数の敵対的都市を攻め落とし、前進都市の占有権まで奪取してきた。

 そうやって大量の資源を獲得していたにも関わらず、指数関数的に増え続ける市民たち、彼らの行き交う市場には、食料が欠乏していた。

 交易しても不足は補えない。

 友好的な他都市とて、状況は同じだ。

 食料はどこでも常に足りない。

 不死者アスタルトの生産する食料が十全に行き渡っていれば、餓死者が大量に出るほどの飢饉が訪れる虞はない。

 だがそれは、必要最低限度生きていられるだけの量しかないのだ。市民の何割かはいつでも空腹感に悩まされていたはずだ。堪えきれなくなったとき市民が手を出すのが、市場の裏ルートで取引されている、小麦粉や大豆と混ぜられて成形されていない生の肉だ。

 それは帳簿に付けられていない生命資源の残骸で、他都市からの不法移住者や、権利を認められていない都市周辺者、また罪人や戦争捕虜から得られる。

 敗北したFRF市民から取得された、血の滴る肉だ。


『何故、即座に規制を強化しなかった? 君、答えたまえよ。都市において、生命資源の肉をそのまま喫食することは禁忌だということは、理解していたはずだ。少なくとも領域内部においては……』


 そうした行為が公式に認められているのは、領域外でアンデッドと戦う、一握りの浄化チームだけだ。

 浄化チームにおける領域外の新規都市開拓では、死亡した兵士は現地で解体されて調理されていた。

 領域外では補給線がしばしば途絶え、限界に近い状態での活動を強いられる。穢れた不死である造花人形も現場では多様な形で運用されてはいたが、彼女たちの再生速度や可食部には限りがあるし、運動性が低いため、どこにでもは、連れて行けない。

 機械甲冑を装備していようが、恩寵の軍刀を持っていようが、浄化チームは生身の市民の集まりである。

 そして変異捕食者はあまりにも怪物で、あまりにも不死身だ。生身の人間が相対すれば、呆気なく、連鎖的に殺される。各員が生命資源としてのあらゆる特性を利用しないと、簡単に部隊が壊滅してしまう。限界を超えた働きが必要になる。

 器官捕食者の封印がまだ済んでいないような地域では、携行する食料だけでは消費する熱量をとてもまかなえない。

 そういう場面ではどうしても同族食いの必要が出てくる……。

 最初期の試験で新兵が大勢死んで、生き残りがその死骸を食べる羽目になるのは、そうした極限状況に順応させていくためなのだ。

 ただし、作戦を終えれば、莫大な報酬と豊富な物資、都市開拓の名誉が彼らに禊ぎを与える。

 同族食いは極限状況における緊急避難的な行動として落着し、日常生活に引き継がれることはない。


 悲惨なのは、同族食いが蔓延してしまった都市……。

 そして他者を殺して貪り喰うようになった市民である。

 不要であると認定された都市の市場では、地獄絵図としか言いようのない光景がしばしば見受けられる。食料品店に新鮮な子供の死体が平然と吊るされ、市民がドラム缶に汚染された水を湧かして腕しか具のないシチューを煮込んでいる。路上で取っ組み合いの喧嘩をしているかと思えば相手の頭に鉈を叩き込んで殺し、その場で死体の解体を始める……。

 こうなってしまうと更生や秩序の再編はとても期待出来ない。

 同族食いが肯定される日常が永久に続く。

 だから、浄化チームが出動して、その都市を絶滅させるのだ。


 まさに絶滅の執行者として活動した経験も、ネレイスには当然にある。

 同族を生のまま食料にする都市の酸鼻さは、嫌と言うほど見てきたはずで、こうした未来はどの都市にも訪れ得ることだと理解していた。一度でも許せば、いずれ際限が無くなり、地獄を生み得る。

 それ故に、市長としての身分にあるならば、本来はこれを厳重に取り締まらなければならない。

 だが大半の都市では、多少の取引を黙認していた。

 食料は絶対的に不足しており、市民を飢餓状態に陥れて暴徒化させるぐらいならば、敢えて違法な食肉を流通させた方がトータルでは被害が小さく済むからだ。

 ネレイスも最終的にはそうした立場を取っていた一人だ。

 ただし非公式ながら規制をかけていた。素材がフェイク・ヨーロピアその他権利が保護された都市に由来する生命資源ではないこと、殺害者と解体者が別であること、あからさまに原型を残した状態で無いこと。流通していいのは、この三つを条件を満たす場合のみだ。違反すれば暗殺者として少女騎士のフンフが差し向けられるが、それ以外は見逃す。

 そもそも余程詳細な分析をしなければ、都市から発掘された冷凍肉なのか違法食肉なのか、見分けがつかない。ウォッチャーズですらこの三条件から外れた肉については咎めることがない、ということを、ネレイスは英雄フェネキアに隷属していた時期に、諸先輩から教わっていた。


「……あれらは、占領都市から流れてきた捕虜や罪人ども、そのうちでも大した用途がない生命資源の肉でした。私が不甲斐ないばかりに空腹に悩まされている生活たちへの、せめてもの慰めとして供与するのは、問題ないはずです」


『手続きや倫理上の問題はあるが、全体的には問題ない。同族食いが蔓延する状況さえ成立しなければ、我々プロトメサイアも強くは咎めない。食料が足りない状況の責任は我々にもあるからだ。しかし現在の争点は、当時すぐに規制を強めなかった理由だ』


 ネレイスはプロトメサイアを見た。何の感情も感じさせないその甲冑を見た。咎めるでも無い。責めるでも無い。だというのに猛烈な重圧を感じる。

 だが、それはプロトメサイアの放つ気迫では無いのだ。

 総統は私たち市民を映す鏡だ、とネレイスは瞑目する。責め苛む声がする。

 他ならぬネレイスが糾弾しているのだ。何故そうしなかったのか、と。

 少女は涙をにじませながら目を見開いた。

 氷を思わせる防音壁に、震える声が静かに響く。


「……感染源の可能性があるとしても、どのルートで流通している商品かまでは特定が出来ません。であれば、一律で規制を強化するしかありませんが……飢餓感は、反都市勢力を生む大きな要因です。私は、私の市民からアド・ワーカー認定者が大勢現れることを恐れました。アド・ワーカーとなった私の市民が殺されるところを、見たくなかったのです……」


 惰弱な言い分だが、それが当時の市長ネレイスが嘘偽りなく感じていたことの全てだ。

 殺戮の光景は散々に見た。見飽きた。己の都市で見たくなかった……。


『気持ちは分かるつもりだ。しかし冷厳に対処すべきだった。もっとも、我々が流通させた汚染肉は僅かだった。既に感染者は発生していたし、潜伏期間中にも感染を引き起こすように特性を編集していたから、感染源を断っても、然したる意味は無かったのだが。そして二つ目、感染者の処遇についてだが……これに関しては満足のいく成果を出してくれた。冷静に市民を統制し、自身の優れた免疫能力を活かして疫病の実態を探り、詳細をレポートに纏めて、隠し立てすることなく我々プロトメサイアに報告した。旧人類のような知識を殆ど持たないにも関わらず、勇敢かつ冷静に対処したのだから、これは称賛に値する』


 いっそ事務的とさえ言えるプロトメサイアの言葉に、ネレイスは発作的な反感を覚えた。

 恨み言が臓腑から湧いて、喉を突いた。


「……しかし、総統は、私を、私たちの市民を、救ってはくださいませんでした。事後の熱消毒については請け負うが、治療には協力しないと……」


『肯定する。あの時の君の表情を読み出すと、現在でも非常に心苦しい。補足する。治療法が無いというのは本当だ。このアルファⅢプロトメサイアは、都市に従属する物体なら自在に編集が可能だ。だが生物の肉体から病毒だけを取り除くような繊細な作業は出来ない』


 淡々とした、起伏のない、しかし傾聴せざるを得ない美しい声が、漆黒の甲冑から他人事のような釈明を紡ぐ。


『ただし、座して滅亡を待てというのも、些か不公平が過ぎると判断し、補填のために助言を実行した。奇跡などと言うくだらないものに期待するのはやめることだ、と。結果として君は行動的実践者となり……都市の内側ではなく外側に解決策を探しに行ってしまった。あれは予想外だった。死罪を覚悟して都市の外に活路を見出す市民は前例があるが、市長が器官飛行船まで使って探索に向かった事例は過去に存在しない』


 ネレイスは呻いた。絞り出すように応答する。

 

「……ああする以外に、方法はありませんでした」


『否定。方法はあった。あったとも、ネレイス。浄化チーム出身者が、疫病を封じ込めるための効果的な対処法を、発見出来ないわけがない。我々はそう思考する』


「……方法は、方法は……」


 選択的光透過性を持つ漆黒のバイザーの奥から、総統の冷たい視線が注がれているのが分かる。

 怖い。怖くて堪らない。

 総統閣下は全て見透しておられる……。

 しかし、しかし、それでも……。

 ネレイスはぎゅっと目を瞑って、断言した。


「方法は、ありませんでした」


『気持ちは分かるつもりだ』


 総統は頷いた。


『だが我々に嘘を吐くのは得策では無い』

『真っ先にこう考えたはずだ』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と』


 少女はびくりと体を竦めた。

 そして青ざめ、友人の死骸を差し出された子供のように、首を左右に振った。

 違う、と叫びたかった。

 そんなことは、決して考えなかった。

 自分は都市の代表、都市の庇護者、都市の母、ママだ……。

 全ての市民は、市長の子孫に等しい。

 それを、この手で虐殺することなど、誓って、考えなかった。

 ――否、考えたくなかった。


 誰にも落ち度は無い。

 罪人などいない。

 死に値する者など市民には……死んで良い生命資源など、この世には存在しない。

 敵対というポジションを選んだ相手なら、競争相手として殺せるが、浄化チーム時代は、反都市的な傾向に染まった無関係な市民を殺してしまうことにすら、かなりの抵抗があった。

 ましてや、浄化チーム時代に行っていたような大量殺戮を、自分の都市で行うなど、そんなことは、あってはならない……。


「ああ、総統は何もかもご存知なのだ」と少女は悟った。


 現実に、防疫のために虐殺を実行するべきだと、思いついてはいた。

 市庁舎に帰還するまでの道程で、密かに試算した。

 実行計画を仮に組んだ。

 だが全て破棄した……。

 自分がそうした発想に至ったこと自体、認めたくなかった。

 それを実行するのが正しいとも考えたくなかった。

 誰にも一言も相談しなかった。

 合理を追及し、無慈悲に事態を解決するには、それを実行するしかないと分かっていたからだ。

 少女騎士たちに打ち明ければ、あるいは真っ向から虐殺に反対してくれたかもしれない。

 しかし、愛しい娘たちが万が一虐殺に同意していれば、ネレイスは、止まらなくなっていただろう。

 だから、そんな手段があるなどとは、おくびにも出さなかった……。


『労苦はある。損害も大きい。だが、防疫目的での虐殺は、疫病を根絶するための確実な手段だ。感染者を殺し、感染疑いのある者も殺し、その近隣の住民、あるいは一つのブロックの住民までも、丸々殺して、焼き尽くす。病に罹患し得るヒトを駆除し続ける。そうすれば、都市を破滅させる病は、感染爆発を起こせないまま消え去っていた。想定通り行動していれば、フェイク・ヨーロピアの全生命資源の三割、約30万人を殺害した時点で<虐殺による封じ込め>は完成していた」


 ネレイスの試算でも同じだった。三割の生命資源を殺せば感染拡大は止められる。

 自分の考え違いだ、計算をしくじったのだ、こんな間違いは通してはいけないと言い聞かせて、必死に意識から排除してきた、究極的な解決手段。

 しかし、総統やウォッチャーズが数字を間違えるはずが無い……。


『これが我々プロトメサイアの示唆した、奇跡に頼らない正解であり、メサイアドールになるべき君に期待した采配だ。貴官も分かるはずだ。何も難しい話では無い。十を救うために一を切り捨てる。限られたリソースの中で都市を運営する市長としては、当然の判断だろう。現に貴官は違法は食肉になる憐れな市民を当然の犠牲と見なした』


「……はい……」


『責めているわけではない。市長ならば多かれ少なかれ実行している命の選別だ。では十万人を救うために一万人を切り捨てる。これは間違った考え方か否か』


「……いいえ……」


『肯定する。そしてメサイアドールともなればさらに遠大な視点が必要になる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これは許容されるべき発想か?』


「……」ネレイスは応えることを躊躇った。「……それは……」


『一朝一夕では受け入れがたいだろう。しかし、貴官はそれを受容する下地を持っていた。浄化チームの一員、それもフェネキアの隷下にあったのだから。計画的虐殺を実行すれば、人口動態は一時的に不安定になる。治世も乱れるだろう。だが、十紀年もあればリカバリ可能な損失だ。そもそも、軍事や行政機能を少人数に集約していた君の都市であれば、長期的に見れば然したるダメージにはならなかった。中枢部はネレイス系で固められていたのだから病とは無縁だ。何故実行しなかった』


「……だけど……そんなの、できませんでした……」


 ネレイスは俯き、とうとう床を涙で濡らし始めた。

 喘ぐように息をしながら、言葉を紡ぐ。

 己の愚かさを吐露する。告白する。

 許してもらいたくて、しかし誰にも許してもらえない感情を唇に紡ぐ。


「どうしても出来ませんでした……。それだけはぜったいに出来ませんでした。市長なんです。市民を守り、都市を発展させるのが、私の、ネレイスの仕事です。先代ネレイスは、まさに都市の母でした。だけど、私だって、都市の母だったんです。全ての市民を愛していたんです。罪人ならば、それは殺せます。市民を危険に晒す不穏分子だって、悲しいけれど殺せます。敵なら幾らでも殺せます……。だけど病を根絶するその巻き添えで何の罪もない市民を殺すなんて、私の愛し子たちを殺すなんて、いったい、どうすれば決断出来ましょうか。認めます……私は愚かでした。私は間違っていました。はっきりとした解決法がそこにあるのに、自分の手を汚す覚悟が、出来なかった……。少数を切り捨て、より多くの市民を救うべきなのに、そうしなかった。そしてありもしない偽りの希望を都市の外に求め……自分だけが生き残り、何の成果も得られないまま、おめおめと逃げ帰ってきて……都市は、私の市民たちは……いま、この時代、この三百年後の世界で、滅んでしまいました……私の責任です……私の……ぜんぶ、わたしの……うあ、あああ……ああああ……!」


『気持ちは分かるつもりだ。好きなだけ泣くが良いだろう』


 総統は頷いた。


『残り二五〇〇秒を切った。時間制限の範囲内で、好きなだけ泣くが良いだろう。残り二四五〇秒……二四四五秒……二四四〇秒……二四三五秒……』


 無機質な美声が時を刻んでいく。

 何の温度も無いカウントダウンが防音の氷室に谺する。

 こんなことをしている場合ではないとネレイスは理解している。

 人生で最後の瞬間だ。

 追い求めたことの答えを教えてもらえることが出来る、最後の猶予なのだ。

 もっと総統に聞かせて欲しいことがあるのに……。

 少女は伏して泣き続けた。

 愚かだった自分自身を許すことが出来ずに、それから四〇秒もの間、ただ涙を流し続けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] FRFの言い分って、こう......どこかつっかえるような違和感があったのですが、プロメサ氏の発言でようやく見えてきた気がします。最大多数の最大幸福を原理にしてたのですね。功利主義とか負の功…
[良い点] 仕方ないこととして流通する「食肉」。 都市を愛し市民を愛しその死を嘆く市長。 試験のために最低でも三割の虐殺を前提とされた人々。 倫理とは、倫理観とはと脳が揺れます。 ネレイスの当たり前の…
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