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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

サガワンタクロース(人材絶望の配達編)

作者: 孤独

「明けましておめでとう」


今日、何日だ?

そして、今。俺はなんでそれを言った?


「は?兵多、今。明けましておめでとうって言った?別に良いけど、そこはおはようで良いじゃない」

「……そう言ったな。たぶん」


奥さんの夏目に、朝の特別な挨拶が行われる1月の始めだ。


「あんた、今年初めての休みだから、時間感覚が狂ってんでしょ……」

「たぶんな。じゃなくて、そうだな」


クリスマスから年明けまでな、ずっと仕事だったら人生おかしくなるんだよ!!



◇     ◇


どんな仕事も忙しいのである。そして、自分の仕事一番大変だと伝えているのも、自分の心の安定のためなのかもしれない。


「は~…………」


あまりの忙しさと、連投に次ぐ連投。趣味、楽しみ。そんなものよりもぼーっとする事。眠ること。食べること。何も考えないこと。これを欲し、大切な休日の無駄遣いをする。社畜となればこんなもんよ。

山口兵多とて、例外ではない。


「大変だったわね。リンゴ剥いたよ」

「ありがと」


夏目に剥いてもらったリンゴを食べながら、兵多は仕事を振り返る。夏目も確かに一緒に働いていた(手伝い)が、途中でいなくなったというか。期間の終了によって先に休んでしまった。


「大丈夫?毎年、こーなってるのよね」

「…………そーだな。気候的には、俺の配達地域は恵まれてるぜ。北陸とかはこの時期ヤバイぜ」


配達において、最も難敵とされるのは天候である。

車にしろ、バスにしろ、タクシーにしろ、電車も、飛行機も。悪天候の中では運休という手段が最善とされるわけだが。


「客はそーもいかねぇんだ。天候なんか見ねぇで、頼むんだよなぁ」


とにかく、運転するのもキツイ。土砂降り、突風、台風、大雪、落雷。そんな状況でも依頼があれば、行かなきゃいけない。


「断りの電話するけどさ。やっぱりいるんだよ。それでも持ってくるのが、プロだろって。嫌な奴が。いやね、プロの判断は天候が良くなる後日に配達をするなのね。クレーマーはプロじゃないんだから、黙って言う事を聞けって思いながら、現地に行くんだが。この嫌な奴。絶対に出てこないんだよな~。嫌がらせ目的なの、分かってるんだよ。何がホントに来るとは思わなかった、だよ……」

「うへっ……」

「ちなみに連絡取れない場合も、行かなきゃいけねぇんだ。これもキツイ。絶対に受け取らないって分かるから…………。客も家に帰れねぇもん。これはしょーがねぇけど……」


配送において、商品の保護も当然の仕事。

故に、悪天候時の配送を避けたいのは商品がオシャカになる可能性が物凄く高い。雨の時はビニールに包んでの配送を心がけてはいますが、全てにできるほどの予算も時間も、袋もないです。大事そうなものだけです。水濡れ厳禁を優先してます。


いちお、兵多と同じく。自分も配達地域の天候にだけは恵まれているので、かなりマシな方です。



「そーだな…………お歳暮、クリスマス、年末年始。その忙しさについて語ろうか」

「雰囲気ですでに分かるんだけど?」


兵多はリンゴを食べ終えると、みかんに手を伸ばした。

いつもの元気がないのは明らかに、疲労である。


「そのな。まず。人手が足んねぇー」


どこの業界でもそうなんだけど。


「繁忙期なのに、通常の配送状況でこなさなきゃならん。これはクロネコ、郵便、佐川などなども。変わらないはずだ。人材によって、能力の上下が変わっても、この数が少ない事にはどーにもならん」

「人、雇わないの?」

「こんなブラック企業に来たい奴はいねぇよ…………。来ても、長続きしないで辞めること多い。あと、あんまり上も雇いたくねぇーんだよ」


ウチの地域のクロネコさんは凄い頑張ってるんだよ。

マジな話な。


「3か月ずーっと、同じ人が配達してるんだぜ。朝から晩まで、土日も休まず……。配達だけじゃんとか思うけど、区分けや集荷とかもしてるし。忙しいと飯食いながら運転したりするからな。食べない時もあるけど。そして、なんで俺がそれを知っているかもだいたい分かるよな?」

「やめんか。そーいうシフトかもしれないじゃない」

「そーなのかもしれない。そーいうシフトかもしれない。郵便も佐川も、似てるけどな」

「…………………」

「配送業界において、過労という要素はどの会社もテキトーにやっている。風邪引いても、配達やるほどだし。上や客から見れば、その日の配達を無事にこなしてくれれば、あとは配達員の状況なんてどーでも良い感じなのは事実だ」


…………………


「配達地域の大きい狭いより、その日の配送量と中身のが重要だ。1件に10つの荷物を運ぶのは大変だが、ほぼ1回で終わる。一方で、荷物の配達を10件やるのは時間が掛かる。これが希望指定の配達だとしたらなお大変だ。どのような配達ルートを組むか、しっかりと練らないとさらに時間のロスになる。知恵の輪をやる感じだな」


兵多はみかんを剥き終えて、頬張る。全然味わってない面だった……。


「お歳暮やお中元というのは、とにかくヤバイ。これに毎日やってくるAMAZONなどの通販があるんだからな。配達ルートを素早く作るのには、経験がモノを言う」

「数がいてもダメって事?」

「1人2人の素人じゃ変わらんって事だ。育成も大事なんだよ。もっと前から雇っておけって話。だが、繁忙期じゃないからって、会社はその前に人をあまり雇わないんだよ。育成期間すら立てないのはヤバイし、通常時の業務だって、人手が足らないのに無事に回ってるって報告しなきゃなんねぇ、辛さ」



暗ぇ……暗ぇよ……。



「で、人手不足、人材不足によって。繁忙期であるお歳暮とクリスマスを過ぎて、年末年始に入るとどーなるか……こーなります」



”年末年始やGW、お盆休みは、配達員1人で全地域なんとかしろ(笑)”


「大丈夫なのそれ!?」

「いや、ダメ。確かに年末年始だから、会社関係のものが極端に無くなるのは事実だし、営業なんつー事もできない。よって、ここの人手を減らし、繁忙期に人を寄せる。という算段になっている(ウチはそーなっている)。実際、常に配達員1人で頑張っている地域がある。ただ、物少ないからって配達エリアを広げるなよ……。会社によって色々違うんだろうけど。年末年始も同じ奴が働いているのは事実だ」



繁忙期の忙しさを引きずったまま、1人で配送業務をこなせとかいう。どこで休めばええのって言ったら。


「毎年、成人の日がよーやく終わって、年明けを感じる……かな。そこらへんから、いちお。通常になるからな……俺みたいに休めるかも」


元気がないほど、くたくた。

なるべく、仕事以外では疲れないように心掛け、家に帰ったらすぐに、飯、風呂、睡眠で補う状況。


「交通事故なんて起こしたら、もっとヤバイからな。軽い重い関係なしに」


配達員1人で全地域の配送を行う業務。


もっと詳しく言えば、他所の人がやっているところも配達してって事。別に1人でやっているところはないはずだが、とにかく人が少ないのは事実。年末年始なのに休めない人がいる!!


地域の事をよく知っており、単純な配送ができる能力だけでなく、朝から晩まで持つ気力と体力。事故やミスをしない集中力と注意力。さらには十分にかつ素早く休息をとれ、時間も守れて過労になんかに負けない社畜性。

ここまでの社畜を作るのが、どれだけ大変か……。


「ホント。休みを作るために、人材を現場で育成したいんだよ。その人材を雇わないし、育成すら設けないからな。配送や物流の育成をする学校ある?俺、聞いた事ねぇや」

「あのさ兵多。配達の話、どこいったの?人材の話になってるんだけど」

「まずは人がいて、能力を高めてからようやく、配達の話になるんだよ。仕事の話になるんだよ。俺が言いたいのは、配達の忙しさではなく。人が足りず、労働時間を延ばしてなんとかしようとする上の体質に怒っているんだよ。ミスの責任は全て、俺達のせいだ。だから、責任持って俺は配送しているんだ。でも、全員が俺というわけではない。あまりのキツさに音を上げるのも当然だよ」



辛さが零れ出る。しかし、社畜は言っちまう。しょーがねぇけど


「でも、慣れたら、どーとでもなるんだよな……はぁー……」


ずーっと忙しい状態が続き、いざ休みをもらうと、気が抜けて体調を崩すなんて事もよくある。

できればこんな状況が無くなればと思うのだが……。現実そうはいかねぇんだな……。




配達の話にしようと思いますが、人材の話に切り替えました。配送的には、天候が最大の敵ですけど。

理由はどの業界であれ、人材不足が常なんで。人材育成に会社だけでなく、社会全体が協力してくれたら嬉しいなと思ってのことで。

やっぱり、育成って大事だなーって自分は思っておりまして、業務の改善を当たる上で人材を把握しないとマズイと。最近、意識してます。まぁ、人の事を気にしているほど、実力はないんですが。見栄を張っているだけで。


まぁ、個人情報とか諸々考えたら、お客様との話は良くないんでね。クレーマーはどーでもいいけど……。


兵多が今、疲れているように自分も疲れてるんで、テンション低めです。


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